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Debris circus

Debris circus

頭の中に散らばっていた破片(debris)を改めて文章に書き起こし、オリジナルブログ小説としてサーカスの舞台に上げていきます。読みにくいものもありますが、お暇な時にパラパラとめくる感じででも読んでいただけたら嬉しいです……

 

シュレーディンガーのこねこたち

大海彩洋さんと、ちゃとら猫&マコト幹事で開催中の「【2019オリキャラオフ会】豪華客船の旅」の参加作品です。
offkai.png リンク : 2019オリキャラオフ会へのご案内

サキも参加させていただくことにしました。
作中でキャラクターの紹介と宣伝だけはさっさと済ませ、とりあえず参加メンバーをツアーに参加できる状態にまでは持って行きましたが、あとは放置になりそうです。どなたか絡んでいただけると、とっても嬉しいんだけれど・・・。
というわけで夕さんへお届けする予定だったピッタリ35000HIT規格作品は、またまた延期になっています。
ごめんなさい。


シュレーディンガーのこねこたち

 ヘリコプターが灰色の水蒸気から抜け出たとたん、わたしは息を呑んだ。
 眼下には大海原が広がっている。真っ青な、そう、こういう色を紺碧というのだろう。
 ヘリコプターが飛行を続けているからには周りに空気があるはずだが、まるでなにも存在しないかのように透明度が高い。海面にはうねりや無数の波頭までもがくっきりと見えている。
 さっきまでのたっぷりの水蒸気はいったいどこへ消えてしまったのだろう。その痕跡は今の風景の中に微塵も残っていない。何処かにきっぱりとした境界線があったのだ。そしてヘリコプターは何の予告も無く一瞬でそこを通過したのだ。
『まるで世界が生まれ変わったみたい』
 わたしは窓の外に視線を向けたままその光景に飲み込まれていた。

 招待状を受け取ったのは一週間ほど前のことだった。
 赤い蝋と複雑な印章で封印された封筒からはただならぬ雰囲気が漂っていた。恐る恐る開封してみると、それは豪華客船クルーズへの招待状だった。船内ではすべてのものが無償で提供されるので、身ひとつで参加してもらえばいい・・・という破格の条件が書かれていた。
 だが、わたしはそんな身分不相応なものに興味は無かったし、招待される覚えも無かった。だから何かの間違いか、怪しげな勧誘に違いないと考えてほったらかしにしていた。
 ところが、いつのまにかその豪華客船でのステージオファーが入り、何をどう考えたのかハンスがそれを快く、それもわたしに無断で受けてしまうに至って、ついに観念せざるを得なくなった。
 そして今、わたしは豪華客船までのフライトに身を任せている。

 ヘリコプターは3人の乗客を乗せていた。
 1人目はシマ・アツコ。機長とは旧知の間柄らしく親しそうに話していた。職業は潜水艇のパイロットだが、こげ茶色の瞳と肩までかかるストレートの黒い髪を持った小柄でキュートな女性だ。
 アツコの言によれば、豪華客船のイベントとして深海探求ツアーのようなプログラムが組み込まれているらしく、潜水艇とそのパイロットがオファーされた。だが潜水艇の運用にはバックアップする母船と、そのパートナーである補給船、そしてそれぞれを運用するスタッフが数十人は必要で、今回はその2隻とスタッフも潜水艇と一緒に借り上げられているらしい。
 いったいどれだけの金が動いているのだろう。わたしはこの金に糸目を付けないオファーに疑問と得体のしれないものを感じていた。
 2人目はカスガ・アヤノ。黒髪のショートカットが似合う、愛らしい女性だ。意志の強そうな大きな目と、ふっくらとした頬で、いくぶん幼く見えるが、20台前半だろうか。
 彼女とは随分長い時間を一緒に過ごしている。チューリッヒからのフライトで隣同士だったのだ。お互いが日本人だとわかると、機内で暇だったこともあっていろいろな事を話した。
 彼女の言によれば、彼女はロンビア大学ジャーナリズム・スクールの学生で、ジャーナリストの卵だということだった。卵といっても、彼女は同じコロンビア大学で天体物理学も学んでいるから、頭脳明晰な才女であることは間違いない。
 彼女が教えを受けているのは、CNNで看板ニュースキャスターをしているジョセフ・クロンカイトという人物だ。彼は社会問題を得意とする超硬派ジャーナリストで、わたしでも名前くらいは聞いたことがある。
 ジョセフの教育方針は、徹底した実践主義のスパルタ方式で、今回はジュネーブに派遣されて、ひどい目にあわされたと語っていた(嬉しそうだったけど・・・)。詳しくは語らなかったが、事件に巻き込まれてパスポートを盗まれてしまったらしい。再発行の手続きが終わるまでは身動きがとれない状態だったが、豪華客船で行われる深海探求ツアーについて取材する事を条件にパスポートの即時発給が行われたらしい。どのような事情で、どのような組織が、その強権を発動したのかは不明のままだったが、これまで追ってきた取材対象に関連する事柄だったので、真実に1歩でもちかづこうとそのオファーに乗ったという。無鉄砲というか何というか・・・。
 潜水艇は母船――マザー2という船名らしい――に収容されているから、アツコとアヤノは最初に立ち寄るマザー2までの同行ということになる。
 そして3人目はわたし、ミク・エストレーラ。ドイツを中心に活躍するオペラ歌手だ。一流を名乗るにはほど遠いが、食べていけるくらいには売れている。日本人だが、6つも年下のポルトガルの青年と結婚して、今はポルトガルに住んでいる。

シスカ?なにか問題?」副操縦士が機長に声をかけた。
 機内は思っていたより静かだったから聞こえたのだが、わたしは何事が起こったのかと顔を上げた。

作者の注釈 ①(通常、ヘリコプターの機内は騒音が大きく、会話に好ましい環境ではない。この作品でシスカが操縦している機体は物語の都合上、静粛性に優れた最新鋭の機種ということになっている)

 そう言えば機長はシスカという名前だった。東洋的な整った顔、それとのバランスを欠いたほとんど白に近いくらいの輝くプラチナブロンドの髪、左目が透き通るブルー、右目がダークブラウンのオッドアイ、スレンダーな長身、とにかく目立つ女性だ。
「いや・・・なんでもない」シスカは慌てて返事を返す。どうもわたしと同じように海面に見とれていたようだ。
「ちゃんと前を見てね」副操縦士の亜麻色の髪が揺れる。
「ちゃんと見てるよ。オートパイロットだし」ぶっきらぼうにシスカが答える。
「そうかしら」副操縦士はシスカの顔を覗き込む。透き通るようなブルーの瞳はシスカの左目と同じ色合いだった。
「マザー2こちらWE3030ご機嫌いかが?」母船に向けて副操縦士が通信を始めた。
「おう!キャシー。待っていたぞ。シスカは話せるか?」野太い声が返ってきた。どうやら副操縦士はキャシーというらしい。

作者の注釈 ②(副操縦士と呼ばれているキャシーは正確には整備士だ。パイロットの数が不足しているため、ヘリコプターはパイロットと整備士でコンビを組んで運用されることが多い。特に今回のような長距離のフライトでは1人での操縦はきつく、整備士の同乗は安全面からも必須だった。彼女はシスカより年上だったから、時々上から目線になるのが玉に瑕だったが、整備士としての腕は抜群だった。2人がコンビを組むまでには複雑な長い経緯(いきさつ)があったが、それはこの物語の本題ではない)

「何か用か?」シスカが短く返事を返す。男のような口のきき方だ。
「久しぶりの再会に、ずいぶんと冷たい言いぐさだな」野太い声は気安い様子で声をかける。
「余計なことは言わないだけだ。何か用があるなら早く済ませてくれ。こっちは手が離せないんだ」シスカは前を見つめたまま愛想が無い。
「ベテランがよく言うぜ。ちょっくら声が聞きたかっただけだ。ゆっくりと近況を語り合いたいところだが、こっちも時間が無い。また今度ゆっくりと顔を見せてくれ」
「そうさせてもらうよ」
「ところでアツコはそこに乗っているんだろうな?」
「ああ、いるよ。そちらへ降ろすお客はキリュウ・アツコとカスガ・アヤノの2名だ」シスカはチラリと後方のシートに目をやった。
「おお、聞いているぞ。女性記者が取材なんだってな。それはそれで楽しみにしているんだが、うちの会社から新規の依頼がある」
「というと?」
「うちのメンバーを1人豪華客船まで運んでほしいんだ。これはお宅の会社でも了承済みで、運賃もうちの会社から支払われる。なんなら確認してもらってもいい」
「どういうことだ?」
「じつは豪華客船クルーズにうちのクルーが招待されたんだ。本人は辞退したんだが、とても断り切れないルートからの依頼らしくてな、参加せざるを得ないんだ。ということで、彼女をその豪華客船まで運んでやってくれ」
「彼女?」
「そうだ、このプロジェクトに派遣される前、急にマザー2の厨房に欠員ができてな。緊急に雇っていた調理スタッフなんだが、どういうわけか彼女に招待が来たってわけだ。こっちとしても困るんだか、我々としては断るという選択肢は無いみたいだ」
「どんな人物なんだ?」シスカはわたしが抱いていた疑問を代弁するように言った。
タニグチ・ミホ、日本人だが、本人曰くイタリアンレストランを営むウルトラ地味な人だそうだ」
 どういう基準で選ばれているんだろう?わたしは自分のケースも含めて、何もかもが疑問でいっぱいだった。
「タニグチ・ミホ?」何か心当たりがあるのか、隣に座っていたアヤノが声を出した。
「とにかく準備を急がにゃならん。すぐに降りてくれ」
「了解。すぐに降りる。ビビって揺らさないでくれよ」シスカが軽口を叩いた。
「ばかやろう。じっとしててやるからとっとと降てこい!」野太い声はそう言ったが、2隻の船はかなりの速度で航行している。
 シスカはその航行速度に合わせて機体を滑らせながら、ゆっくりと船首にあるヘリポートへと近づいていき、少しもふらつくことなくそのまま一発で着船した。
 ローターが回転を落とし、キャシーがサイドドアを開けると、作業員と1人の女性が駆け寄ってきた。
「ミホさん!?」機体から降りたアヤノが叫んだ。
「アヤノちゃん!?」ミホと呼ばれた女性も驚いた様子だ。
 2人は短く近況と事情を話し合ったようだったが時間は限られていた。
 作業員に促されてミホが乗機し、アツコとアヤノが機体を離れるとすぐ、シスカはローターの回転を上げてそのまま離床した。
 ブリッジのデッキでこちらに向けて手を上げている武骨い男が見える。
 シスカとキャシーもそろって右手を上に挙げた。
 それが挨拶だった。機体はさらに高度を上げ方向を変えると、一直線に加速した。
 10分後、紺碧の洋上に巨大な白亜の船体が見え始めた。それは水平線の向こうから唐突に現れ、見る間にそそり立つ巨大な建物になった。その白亜の壁は無数の窓に覆われ、まるで時空を超えて蘇った幻の王宮のように見えた。
 広大な地域を恐怖で支配した永遠王が作った巨大王国、悠久の時の流れの中にようやく忘れ去られようとしていた恐怖の歴史、その中心だった幻の王宮が、今蘇ったのだ。
「でかい!!!」シスカが声を上げた。
「全長700メートルはある」キャシーが目測した。
 ヘリコプターは王宮に向かって降下を開始した。


2019.10.14
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テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
 

Comments

祝! 参加 
こんばんは。

お、豪華メンバーでのご参加ですね。
彩洋さんご指名のシスカチームとミクはいいとして、なぜか綾乃と美穂が?
これは、ジョセフの周りで修羅場を起こそうとしています?

このメンバーでどんなお話をお書きになるのか、興味津々です。楽しみにしています。

あ、ジョゼとポールはまた放置?
 
執筆、お疲れさまでした。

おおお、山西サキさんもイベントに参加なさるんですね。今回は~とか書かれていたので、ちょっと残念に思っていたんですよ。よかった。

で、このタイトル(笑)
シスカ操縦のヘリで、なんとも豪華なメンバーが集結ですね。
……って、綾乃っち、なに便乗しるかなぁ。でもまあ、可愛がってくださって、そしてお連れいただいて感謝です。ちょこっと彼女の出番を作ろうかな。美穂もいるし。あれ、なにげにジョセフ、今回はハーレム状態じゃん(笑)

さて、サキさんの女子会メンバー、せっかくですので、すこし絡ませていただこうと思います。シスカとミクをお借りしますね。
夕さん 
ありがとうございます。
ようやく間に合いました。
もちろんサキが望んでいるのは修羅場です。
ジョゼ?もちろんポルトでお留守番です。
ポールは何をしているか知りませんが・・・。
前書きに書いたように、オフ会の方はこのまま暫く放置しておいて、夕さんのリクエストを書き始めようかなと思っています。
暫くお待ちください。

コメントありがとうございました。
TOM-Fさん 
はい~。ようやく参加することができました。どうぞよろしくお願いします。
お借りしたキャラ、ちゃんと書けているかとても不安です。
ま、お祭りですから、あまり気にしないように割り切って書いてますけれど。
今回はジョセフに関連したキャラを無理やり登場させました。
望む修羅場・・・ということでセッティングしたのですが、TOM-Fさんが絡んでくださってホッとしています。
サキはこれで一旦放置、お任せして待つことにします。

コメントありがとうございました。

 
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