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Debris circus

Debris circus

頭の中に散らばっていた破片(debris)を改めて文章に書き起こし、オリジナルブログ小説としてサーカスの舞台に上げていきます。読みにくいものもありますが、お暇な時にパラパラとめくる感じででも読んでいただけたら嬉しいです……

 

物書きエスの気まぐれプロット クリステラと暗黒の石2

scriviamo!

「エス!」コハクは部屋に入るなり大きな声を出した。
 部屋には誰もいない。
 コハクは一通り室内を見渡した後、なれた様子で部屋の中を進み、押し入れを開けた。
 思った通り、押し入れの上段には毛布に包まり大きな抱き枕を抱えたエスがまるまっている。
「エ・・・」コハクは声をかけようとしたが、気持ちよさそうに目を閉じているエスの顔を目にすると、それを中断した。
 安らかな寝息が聞こえてくる。コハクは大きく息を吐き出してから、そっとエスの丸くて低い鼻を押した。
「ム・・・ン」小さく声を上げてエスの目が薄く開き、それから大きく見開かれた。
「コハク?」やがて焦点が合うと小さな声で呼びかける。
「ええ、私。なにを呑気に寝てるのよ」
「寝てた?いろんな意見を取り入れようとすると煮詰まっちゃって、ちょっとだけ休憩のつもりだったんだけど・・・」エスはまだ眠そうだ。
「また書いてたの?」
「ウン」エスは小さく頷いた。
「いろんな意見って、例のブログ企画のメンバーの?」
「そう、コハクはマリアの作品は読んだっけ?」
「途中までだけど読ませてもらってるよ。特にあの皇孫オルヴィエートが醜態を晒してからが面白いわ。マリアが吹っ切れた感じで、ロジェスティラの行動が生き生きしてるもの」
「ウチも含めてだけど、みんなに勝手なことばかり言われて、マリア、最初はグズグズ言ってたんだよ。オルヴィエートのイメージが、とか言ってね。でも、吹っ切ってからは早かったなあ。あっという間に物語が動きだした。もともとそんな設定があったみたいにネ。ロジェスティラが拘束を解かれて自由に飛び回るみたいで、凄いよ。さすがだなぁ」
「エスもずいぶん意見を言われたんじゃないの?」
「そう、みんな好き勝手な事ばかり言うんだよ。だけど、幾つかはとても参考になったし、面白いと思ったんだ。だから改稿するって宣言したのは良かったんだけど」エスは抱き枕に顔を埋めた。
「思ったより大変だった?」
「そういうこと。整合性を取るだけでも大変!特にあの・・・」エスは言葉を止めた。
「あの?」コハクが言質を取る。
「え・・・っと」しまったという感情がエスの顔に出ている。
 エスは起き上がって押し入れから出ると、ベッドの横に腰掛けた。コハクもその横に並んで腰掛ける。
「なぜ私が来たかわかる?」コハクは質問を変えた。
「わかるよ。クリステラと暗黒の石の更新版を送ったから、その感想を言いに?」エスは笑顔を作る。
「私はそれだけの用事ででわざわざやって来たりはしない」コハクの視線はエスを捉えたままだ。
「あ~、じゃぁなんだろう?」
「わかっているくせに。あのアンバーって登場人物なんだけど!」コハクは語尾を強くした。
「アンバー?誰だっけ?」エスは目を泳がせる。
「マリアからのアドバイスの中に『ドラゴンの結石が大量に必要なら、イラつくキャラでも派遣してドラゴンにストレスをかけてみたら?』ってのがあったじゃない」
「そうだったかなぁ」
「更新版の新キャラ、クリステラがドラゴンから大量の結石を得ようとして派遣した操者の女」
「ああ、あの操者の女ね・・・」エスはたった今思い出したように言ったが、これは明らかに演技だ。
「メチャクチャイラつくキャラなんだけど」
「そりゃぁ、ドラゴンにストレスを与えなくちゃならないからね。凶暴なドラゴンを操る人物だし、ヤワな性格じゃできっこないじゃない。それにストレスが大きいほど結石がたくさんできるっていう設定にしたんだから」
「でもその女の名前がアンバーってどういうことよ?アンバーってコハクの事だよね?」
「え?そうだった?偶然だなぁ・・・」エスはあらぬ方向に目を逸らす。
「もう!わざとやったでしょう?エスが私のことををどう思っているかよく分かったわ」コハクはおかんむりだ。
「ああ、待って」エスはあわてて付け加える。「彼女にアンバーって命名した時は、単純にカッコいい役だったんだ。素敵な役だから命名したんだよ。けど、意見を取り入れながら物語を進行させるにつれて、役柄が変わってきてるんだ。例のキャラの暴走ってやつ?」
「変わったって・・・だったら名前も変えてほしいわ」
「でも、ウチの中ではもうアンバーで出来上がっているキャラだから、今更変えられないよ。それにあくまでアンバーだから。コハクとは違うよ」
 コハクは大きくため息をついた。またいつものようにエスの屁理屈で丸め込まれようとしている自分に呆れたのだ。
「それに結構重要な役どころなんだよ。今後の展開もあるし、今は我慢してくれないかな。悪いようにはしないよ」エスはコハクの表情をうかがいながら言った。
 エスの“悪いようにはしない”はこれまでちゃんと実践されたためしがないが、ここで押しても暖簾に腕押しになるのはわかりきっている。
「しょうがないなぁ」コハクはついにその言葉を口にした。
 エスの口角がクッと上がった。
 
 クリステラと暗黒の石2

 何千テルリも彼方にある環礁は一瞬で光の玉に飲み込まれた。
 一定のエネルギーしか透過しないマガヌガラスは光量を落とし、窓の向こうに広がる風景は真っ暗になったが、その光の玉だけは中央にぽっかりと受かんでいる。
「すざましい!」オルガノートは驚嘆の声を上げた。
 やがてすべてを焼きつくし蒸気に変えてエネルギーが使い果たされると光の玉は小さくなり、それにつれてマガヌガラスの窓は明るさを取り戻した。
 オルガノートは声を失った。
 紺碧の海の中に馬蹄形の美しい曲線を描いていた環礁は姿を消し、代わりに白く濁った広大な海面が残されていた。一瞬でそこにあった物すべてが蒸発してしまったのだ。
 オルガノートを乗せた巨大な飛行戦艦は爆風と衝撃波を受けて小刻みに振動する。鉄で作られたこの巨大な構造物は、本来は海に浮かべるものだ。だが、今は暗黒石の力によって空中に浮かんでいる。
 もともと巨大な戦闘艦だったものをオルガノートが自分の立場を利用して指揮下に置き、クリステラの指導の元、秘密裏に改造を行ったのだ。莫大な費用が発生したが、これだけの能力を見せつければ反対していた閣僚たちの意見も賛成に転じ、王の信頼もこれまで以上に厚くなるだろう。これを使えば我が国はたちまち世界の頂点に君臨することができるのだ。
 だが俺はそんなもののためにここまで来たわけではない「世界は私の前にひれ伏すのだ」オルガノートは込み上げてくる笑いをグッとこらえた。
 位置を修正すべく自動操縦装置が出力を調整しているのだろう。石英ガラスのケースに納められた暗黒石は回転を早め、表面には複雑な模様が浮かび上がった。

*****

 その笑い声が自分のものだということに気がつくのに暫くの時間が必要だった。
 笑っているのだ。自分が笑うなどということは信じられなかったが、この昂った感情を押さえることはできなかった。小さく目立たぬように、肩を震わせながら、押し殺すように自分が笑っている。やがて声は少しずつ大きくなり、完全な笑い声になった。
 軽く乾燥した笑いだった。
 アンバーはその下品さに驚いて自分の感情に蓋をした。
 目の前には、なみなみと水を張られた巨大な水盤が置かれている。その水面は受像装置になっていて、そこには白く濁った広大な海面が映し出されている。
 紺碧の海の中に馬蹄形の美しい曲線を描いていた環礁は一瞬で気化したのだ。
 そのエネルギーはクリステラが予想した通り強力なものだった。クリステラが言っていたように、世界はこの強大な力を持つ者の前にひれ伏すだろう。
「だが、それはお前ではない」アンバーはずっと握りしめていた兄弟石を床の上に置くと、大きな暗黒石を両手で持ち上げ、振りかぶって兄弟石の上に打ち下ろした。兄弟石は砕けて四方に飛び散った。
 兄弟石を失った暗黒石は自己崩壊を起こす。持っているエネルギー全てを放出するのだ。どれだけの威力があるのかはわからなかったが、これは史上最強の破壊兵器の実験だ。
 水盤上にはさっきとは比べものにならないくらい巨大な光の玉が出現した。
「バイバイ、オルガノート」アンバーは軽い調子で別れを告げた。
 あとはクリステラさえいなくなれば、世界は私の前に触れ伏すのだ。
 アンバーの口元が大きく歪んだ。
 そしてそこから軽く乾燥した笑い声が漏れ出した。

*****

 目の隅に置いていた発光管に一瞬ルビー色の縞が現れた様な気がして、オルガノートは振り向いた。
 石英ガラスで作られた直径2サレン(約28センチ)長さ2.5テルリ(約3.5メートル)の発光管は内部に精化された鉱質と妖気が充填され、暗黒石の状態をその発光色により表示する。ルビー色は異常を表す色だが、今発光管はエメラルド色に輝いている。
『気のせいか?』オルガノートは加速装置のコントロールのために再び発光管に背を向けた。
 その瞬間だった。
 発光管全体がルビー色に変化し輝いた。
 その発色が正面のマガヌガラスに写り込む。
 オルガノートは振り返り、驚愕の顔を発光管に向けたが、その時はもう遅かった。
 全ては強烈な光に包まれ、空中に巨大な光の玉が出現した。

*****

 クリステラの実験室に置かれた水盤には、巨大な光の玉が出現し消えた。
 それは環礁を蒸発させた時の物の数倍はあろうかという大きな物だった。
 オルガノートの乗った飛行戦艦は一瞬で蒸発し、後には何も残らなかった。
 エネルギーは膨大な量の海水を沸騰させ気化し、大きな津波まで発生させた。爆風と衝撃波は大気圏を越えただろう。
『自己崩壊?そんな馬鹿な・・・』マガヌガラスの眼鏡に守られた赤い瞳をさらに手で庇いながらクリステラは呟いた。
 エネルギーの放出は上手くいった。あの破壊量からすれば放出されたエネルギーは計算の範囲内だったはずだ。
 その程度の放出で暗黒石にダメージが出るはずはないし、放出後の状態でオルガノートの艦は存在していたから、暗黒石も安定していたと考えていいだろう。暗黒石に問題が起こっていれば、その時点で連鎖的に崩壊が起こったはずだ。ということは暗黒石自体の問題とは考えにくい。
『それなのに、なぜ?』安全係数は充分に取ったはずだ。
『なぜエネルギーの放出と自己崩壊に時間差がある?』クリステラは考えを巡らせる。
『エネルギーを放出してから、何か全く別の事象が発生したと考えるべきなのか?』クリステラは舌をチロッと出して上唇を舐めた。
『アタシを謀ることはできないよ』白い髪がフワリと嵩を増し、クリステラの体が青白い燐光を放ち始めた。


 自分で自分がふくれっ面になっているのがわかる。読み終えたコハクは「もう!」とエスに背を向けた。。
 エスはコハクの背中を見ながら『さて、どうしたものかな?』というふうに首を傾げた。

2018.02.07
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テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
 

Comments

こちらも雪降っていますよ 
こんばんは。

わああ、サキさん、「ファンタジーは苦手」「読書で進まない」なんておっしゃっていたのに、スラスラ書いちゃっていらっしゃるじゃないですか。

暗黒石には兄弟石という反物質(? 化学のことはよくわかっていない私です)があったのですね。

それにしても。
コハクがおかんむりになるのも宜なるかな。アンバー、どうみてもラスボスじゃないですか! ここからどうやって「悪いようにはしないから」になるのか、そのウルトラCが知りたいですよ。

そして、オルガノートもあっさり死んじゃったし。「世界を支配することも簡単だ」とか言っていたのに〜。クリステラとアンバー、どうなるのか、プロ友たちだけでなくても氣になりますよ。

無理を言って続きを書いていただいた甲斐がありました。
また近い内に続きが読めることを期待しています。
それに、コハクがあまり怒らないように、うまくエスが丸め込むことができますように。

素敵なお返し作品、どうもありがとうございました!
 
執筆、お疲れさまでした。

エス、天然というかなんというか、こりゃコハクも文句を言いたくなるでしょうね。しかも、八少女夕さんも言っておられますけど、アンバーのラスボス感たっぷりですしね(笑)

暗黒石のパワー、おそるべしです。戦艦を空に浮かせたり、強大なエネルギーを継続的に取り出せたり。でも、そこに面倒くさい理屈がつかないところが、ファンタジーですよね。そういう意味では、しっかりファンタジーのテンプレートになっていると思いますよ。
ど派手な花火が二発炸裂したわけですが、さて、世界を制するのはアンバーかクリステラか、それとも奇跡的に生き延びた(それもファンタジーw)オルガノートか。この続きは、来年のscriviamo!2019のお楽しみ、でいいんですよね、ね!
と、ブログ企画のメンバーの一人としては、勝手なおねだりをしておきますね(笑)

面白いお話を読ませていただきました。
夕さん 
いえいえ、これかなり苦労してますから。
スラスラだなんてとんでもない。
いつの間にか理屈っぽくなって、SFになっていくんですよ。
科学(化学)的に考えてしまうと雰囲気が全く変わってしまいます。
難しいものです。
暗黒石や、その反物質のような兄弟石もそうですが、もう今回だけのやっつけ仕事だから・・・と、あちこちから設定やアイデアをパクリまくってきています。
ラスボス感たっぷりのアンバーは、夕さん(マリア)からの提案をどうしても絡めたくって登場させたキャラです。
ま、コハクにとっては災難だったんですが、2人の面白い絡みが出来たかな?
エス、悪いようにはしない方法なんて、これっぽっちも考えてないと思いますよ。
自分の思い通りに作品を展開させる事を最優先にすると思っています。
コハクは、まぁ折れてくれるだろうと、完全に甘えています。
酷いやつですね。

続きを期待されるんですか?
ということは「暗黒の地底宮殿」の続きも書いていただかなくちゃいけませんよ!

コメントありがとうございました。
TOM-Fさん 
エスはサキの好きなように、思い切り我儘に行動させています。
天然といえばそういうことになるのでしょう。
物語の中の分身ですから、これくらい許されるかな。ということで、必ず許してくれるコハクに思いっきり甘えています。
すっかりラスボスになってしまったコハクにとっては災難ですけれど。
気まま勝手に振舞うエスに怒るコハク、同情してやってください。

暗黒石は完全に飛行石のパクリなんですが、実は前回ファンタジーの断片を仕上げるために、その時だけの都合で組み合わせたアイデアで、その後の展開なんか全く考えてなかったんですよ。
今回あの続きというか、その後の展開の断片を書くはめに陥って、兄弟石(反物質?)まででっちあげて、もう大変だったんです。
ファンタジーですから、面倒くさい理屈が無いのは良いように思えるのですが、まったく理屈無しというのはサキにとって許せませんし、理屈を(屁理屈とも言う)付けすぎると、とたんにSF調になってしまうので、この辺のさじ加減が難しいですね。

世界を制するのはアンバー?クリステラ?そんなこと考えてるはずないじゃないですか。またまた今回だけの適当断片ですよ。
あ、オルガノート?奇跡的に生き延びるのか・・・。それ、面白いかも。
違う違う、続きは考えてませんってば!

読んでいただいて、そしてコメントをいただいてありがとうございました。
 
「例のブログ企画のメンバー」にまず勝手にニマニマ^^ 
(→放っておいてください -_-;)

特別な石とその魅力とその能力は物語の大きなトピックになりますよね。その物語に登場する人物たちが、執筆の背景にいるのが見えるところが面白いですね。ネタバレを含む(?)二人の会話が楽しいです^^

さらにその背景をも操る大元の作者様がいらっしゃるという三重構造(?)が物語をさらに面白くしています。この三者が重なっていても底までが透けて見える、何というか、そんなことを勝手に感じました。(→適当に放っておいてください -_-;)
けいさん 
これですねぇ・・・。
物語部分、それを書いているエス、そしてコハクや仲間たち、さらにそれを書いているサキ、そしてサキのブロ友さん達・・・。
自分でも境界線があやふやになってきてるんですよ。
キャラ達や自分がいったい何処にいるのか、混乱してしまうんですよね。
本音をポロリと書いてしまいそうで、そしてサキの実態が漏れ出てしまいそうで、キャラクターの辻褄を合せるのにも苦労しています。
もうすでにだいぶブレているんですよ。

コメントありがとうございました。

 
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