Debris circus

Debris circus

頭の中に散らばっていた破片(debris)を改めて文章に書き起こし、オリジナルブログ小説としてサーカスの舞台に上げていきます。読みにくいものもありますが、お暇な時にパラパラとめくる感じででも読んでいただけたら嬉しいです……

 

とんど

 今日1月15日は“とんど”と呼ばれる行事が行われる日だ。地方によってその呼ばれ方は様々だが、正月に飾ったしめ縄や松飾をたき火にくべて焼く行事で、鏡餅や蜜柑も一緒に焼いて食べたりする。書き初めを一緒に燃やすと字が上手になるとかいろいろ言われているが、僕の字はあまり上手にはならなかった。

 僕の母親の実家は、今住んでいる所から2時間ほど車で山奥に入ったところにある小さな村にあり、今は祖母が1人で住んでいる。村の行事はその村の住民から輪番で選ばれた人が当番になって催されることになっているのだが、その"とんど”の当番が祖母の所に回ってきたのが事の発端だった。
 祖母は年の割にはとても元気なのだが、やはり村の神社の大きなしめ縄や松飾を運んだり、大きな薪を組み上げて火を起こしたりするのは大変だ。それに大変だからと、もう1人居る当番の方に全部お任せしておくわけにはいかない。
 ・・・というわけで、昨日から僕たち一家3人は祖母の家にやって来て、村の神社の大きなしめ縄や松飾を外して運んだり、薪の準備をしたりと忙しく働いた。そして今朝も6時ごろから薪を組み上げ、火を起こすのに苦労していた。
 というのは、大陸から最大級の寒気団がやって来ていたからだ。昨日の夕方からずっと雪が降り続き、50センチほどは積っているだろうか。こんなに積ることはとても珍しい。祖母も昔はよくあったが、最近では記憶にないと言っているくらいだ。“とんど”の行われる広場まで行くだけでも、長靴が雪に埋まって大変だし、たき火の場所をまず雪かきしなけりゃならないし、薪や道具を運ぶ一輪車は雪に嵌って進まないし、薪を組み上げても降りしきる雪と風に消されてなかなか点火できないし、点いてもたちまち消えてしまうし、あ~寒い!!!本当に大変だ。

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 手も足もかじかんで細かい作業ができない。そろそろ村の人も集まってくる時間なのに、気ばかりが焦ってくる。
 でもついに僕らが持ってきた大量のバーベキュー用の着火剤と、もう1人の当番の方が持ってきた強力ガスバーナーの力を借りてようやく点火。炎が大きくなり始めたころ、村人たちがそれぞれしめ飾りや鏡餅を持って集まり始めた。
 餅を焼くための炭火も上手く熾(いこ)りだしたし、やれやれ、何とか間に合った。僕らはようやく一息入れて、たき火に当たりながら焼けた餅を頬張った。

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 次々と村の人たちがやって来て、しめ縄や松飾を灰にする。これを持ち帰って庭や畑に撒いて家内安全や豊作を祈るそうだ。
 そして持ってきた鏡餅や蜜柑も焼いて食べる。健康になるって言ってたかな?ちょっと聞きそびれた。雪は降り続いているが、のんびりとした時間が流れ、“とんど”を囲んだ村の人たちは世間話に花が咲く。なんか、噂話は盛り上がるなぁ。僕はそれとなく耳を傾ける。
「サキちゃんはどうなん?」
 僕の話はいいから・・・。
 やがて村人たちは銘々に自分の焼いたしめ飾りの灰や焼けた鏡餅を持って家路に着く。自分のしめ飾りの灰が分からなくなって、まぁいいか・・・とその辺の灰を適当に持って帰る人もいたけれど。いいのか?それ・・・。
 徐々に人が減り、たき火も小さくなって、それと同時に雪も風もまた強くなってきた。
 燃え残りの薪は消火してそのまま置いておくことにして、僕らは家路についた。片付けるのは雪が落ち着いてからにするそうだ。そんな降りになっていた。
 家までの道のりは遠かった。ほんのそこなのに、一歩づつ雪かきをしながら進まなくちゃならないから、遅々としてたどり着かない。
 まるで遭難しそうな気分だ。
 手先や足先の感覚が無くなってきた。
「ああ、寒いよう・・・」
 横殴りの風が吹き付ける。
「眠いよう・・・」
 一輪車を押して先に行く“先”の姿が降りしきる雪の向こうに小さく霞んで見えた。

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テーマ : つぶやき    ジャンル : 小説・文学
 
 

Comments

 
ひぇぇ…この寒波の中大変でしたね><;
最後の写真なんていかにもホワイトアウトって感じです……

とんど、お疲れ様でした!
夢月亭清修さん 
はい~、寒かったんですよ。
雪は綺麗で、幻想的だったんですけどね~。
村の行事ですから、きちんとこなしておかないといけないんですよ。

コメントありがとうございました。
 
こんばんは。

おお、こういう伝統があるのですね。
どんとって、そういうお祭りなんだ、知りませんでした。
お焚き上げなんですね。

しかし、世紀の大寒波が来た時にお当番なんて〜。
そうじゃなかったら、スルー出来ましたよね。
(しないのかな。私は大雪のときはクリスマスのミサを省略したりするんですけれど)

でも、お祖母さまにしたら、こうやって先さんご一家が助けにきてくださって嬉しかったでしょうね。
凍える寒さの中、お疲れさまでした。

お餅、そうやって焼くのか。美味しいだろうなあ……(結局それか!)
 
とんど、私の実家のある集落でも、毎年1月15日にやってますよ。

正式には「左義長(さぎちょう)」って言うらしいですけど、私も子供のころから「とんど」と言い習わしてきました。
当方のとんどは、笹竹を組んで櫓を作って燃やします。そこで、お飾りなんかを一緒に焼きます。消防団員も動員して、けっこう大がかりですよ。

行くとあれこれ構われるので、最近はあまり顔を出してないんですよね。
サキさんの記事を拝見して、昔を思い出しました。ちょっと懐かしいです。
夕さん 
“どんと”ではなくて“とんど”と言います。
ずっと昔から続いている行事なんですね。
そうそう、当番でなければサキ達が参加することはなかったんですけれど、高齢だから当番はできませんという訳にはちょっとね・・・。
でも、お手伝いしてみてそれなりに面白かったですよ。
原始の時代から人類は火をたくことが面白いのかもしれませんね。
こんな寒波の中でなければもっと良かったんですけれど。
あ、焼けたお餅はシンプルに砂糖醤油でいただきました。
寒いからなんでも美味しかったです。
3枚目の写真、道路の先の方、写真中央に写っている小さな灰色の影は本当に“先”なんですよ。

コメントありがとうございました。
TOM-Fさん 
「左義長(さぎちょう)」ですか、そういう言い方をするとなんだか格調高い行事みたいですね。あ、実際格調高い行事なのか。
TOM-Fさんの所ではもっと本格的で大きな行事みたいですけど、サキの所ではただの大きな焚火イベントみたいになっちゃってます。
村人が集まってワイワイ言って・・・という感じです。

そうですね、おっしゃるように出席しちゃうとかなり構われますね。
サキは時々現れて何日か滞在するだけなので、こんなに話すことってないですから。なんか話しかけてあげないと・・・と思われているのかもしれません。
コミュニケーションイベントとしてはなかなか優れものですね。

コメントありがとうございました。
 
サキさん、とんどのお手伝い、お疲れ様です。
田舎って、持ち回りでいろんな役が回って来るので大変ですよね。
私の田舎でも母が毎年いろんな神事の役に当たって忙しそうです。
それにしてもすごい雪。
この中で年配の方が作業するのは辛いだろうなあ。

私が住んでる市でも毎年、神社の行事としてとんどが行われます。
甘酒や、おしるこがふるまわれたり、屋台がでたり、ちょっと楽し気です^^
大きな神社なので知り合いに会う事はないですが、やっぱり田舎だといろいろ構われちゃいますよねw

私は田舎の濃厚な付き合いが苦手で飛び出してきちゃったんですが、そう言う地域で生活している人は、辛抱強いですよね。
でも年配の人に負担がかからない方法を、少し考えてあげてほしいなと、ちょっとだけ思います。
サキさんも先さんも、お疲れ様でした^^
limeさん 
はい~、とっても寒かったんですよ。
雪はたくさん降ってるし、積もるし・・・小さい頃は雪が降るとワクワクしたんですけれどね。

limeさんの所では大きな行事なんですね。
こっちでは結構簡単な、それこそ簡易版のような感じに、こぢんまりと纏まっています。
これはやっぱり、年配の人に負担がかからないように、少しずつ簡略化されてきているからのようで、村で話し合って負担軽減をはかっているようです。
でも、伝統もあるし、村の鎮守に関する行事でもあるので止めてしまうという選択肢は無いようです。
これからも細々とでも続けるんだろうな。
なかなか興味深い作法やしきたりも見ることができて、面白いんですけどネ。
なんか小説のネタになりそうな。そう、夜千代村を彷彿とさせるような(ちゃんと裏山に祠もあります)、今回特にそんな印象を持ちました。

コメントありがとうございました。
おぉ、寒そう~ 
とんど、お疲れ様です~
なんだかとんでもない寒波の日に当たっちゃったんですね。この日、私は学会で三重だったのですが、ほんとなら車で行って巨石の一つでも見てくるはずが、天気予報を見てこりゃいかん、と電車で行きました。向こうでは缶詰だったけれど、朝、会場に行くのがちょびっと大変でした。どんな荒れた天候でもセンター試験はあるし、とんどはあるし、仕事もあるのですよね~(それにしてもセンター試験ってこんなこと多くない?)
うちは村の神社のとんどですね。私はもうそういう行事から離れて長いのですが、時々そういう「面倒くさいこと」に郷愁を覚えたりします。でも義務でやらなければならない状況って、郷愁ってわけにはいかない事の方が多いですけれどね……
サキさんが最近少し外へ出かけたり、それを記事にしたり、物語の断片を沢山書いたりチャレンジしたり、なんとなく開かれていっているような(拓かれて、かな)気がします。こんな日常の中の一コマの記事、いいなぁ。
彩洋さん 
ええ、寒かったですね~。
最近では無かったほど記録的な積雪になりました。家の裏にあったビニールハウス(小さな物ですが)も翌日に圧壊したそうです。
雪下ろしをしといたらよかった、と先も悔やんでいましたが、当日は自動車を動かすための除雪で手一杯だったんですよ。
近いうちに後片付けに行かないといけないかなぁ。
とんど自体は楽しかったですし、雪景色はとっても綺麗だったんですけど、寒すぎました~。

サキは去年から少しずつ行動範囲を拡げています。まだまだ監視付きですけどね。
3枚目の写真、サキが取り残されたように写ってますが、実際はすぐ横にママさんや村の人たちが立っていたりするんですよね。
この後、家に帰って暖房つけまくりでした。

コメントありがとうございました。

 
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プロフィール
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アスタリスクのパイロット、アルマク。キルケさんに書いていただいたイラストです。
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左からシスカ、サヤカ(コトリ)、サエ。ユズキさんにイラストを描いていただきました~。掌編「1006(ラグランジア)」の1シーンです。
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limeさんのイラストをイメージにSSを書いてみました。「ダイヤモンド・ダスト」
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