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Debris circus

Debris circus

頭の中に散らばっていた破片(debris)を改めて文章に書き起こし、オリジナルブログ小説としてサーカスの舞台に上げていきます。読みにくいものもありますが、お暇な時にパラパラとめくる感じででも読んでいただけたら嬉しいです……

 

新世界から Scene1(旧作)

Stella/s月刊ステルラ8・9月合併号 投稿作品


 エルロン(補助翼) とは、飛行機を左右に傾ける(バンク、横転、ロール)ために使う動翼である。通常左右の主翼後縁の外側に取り付けられており、機体の前後軸を中心とした回転運動を制御する。

 ラダー(方向舵)とは、飛行機の機首を左右に向ける(ヨーイング)ために使う動翼である。通常垂直尾翼後縁に取り付けられており、機体の上下軸を中心とした回転運動を制御する。エルロンと併用すると、定常釣り合い旋回を行うことができる。

 エレベーター(昇降舵)とは、飛行機を機首上げ、機首下げの姿勢にするために使う動翼である。通常尾翼後縁に取り付けられており、機体の左右軸を中心とした回転運動を制御する

 フラップとは、高揚力装置の一種で、飛行機の揚力を増大させるための装置である。必要時に主翼から展開させるタイプのものが多い。副次的に抗力が増大するため、機体を減速する作用もある。
(Wikipediaより抜粋し補筆)

Firkin(ファーキン)

 ファーキン、それは特定の戦闘機のパイロット、或いはそのパイロットが乗り込む機体を表すコードネームだ。本来は小型の樽や容器を意味する単語だが、この世界では頭文字がファイターを表す「F」だということの方が重要だった。コードネームは戦闘に関連の無い単語が選ばれることが多いが、「G」(ジェネラル、グレート、ガン)や「T」(トップ)など、頭文字に意味を見出し、それに関連付けて付けられることが多かった。戦闘機乗り達はコードネームの頭文字で相手の腕の良さを想像した。

 ファーキンはコックピットからあらゆる方向を素早く見回した。
 空に溶け込むようなブルーグレーの戦闘機が2機!識別は赤。敵だ!
 それを確認すると、エルロンを僅かに操作して機体を右へロールさせる。でもこれはフェイントだ。
 敵のうち1機は右へ流れた。残ったのは1機。
 すぐに反対へロール。左下へほとんど背面でダイブ。
 ついておいで・・・おいで・・・おいで・・・ファーキンは口の中で繰り返した。
 フラップを使って急激に減速。今だ!エレベーターを上げる。目いっぱい。敵は急激な減速と姿勢の変化にに対応出来ず、射撃のタイミングを逃した。エレベーターを戻す。一瞬ラダーをあててからスロットルを閉じる。浮遊感が襲ってくる。
 機体が方向を変え始める。スロットルいっぱい。
 ほら!相手の横っ腹が見えた。トリガーを絞り込む。相手のコックピットに弾が吸い込まれていき、キャノピーが赤く染まる。
 やった!快感!快感!ファーキンの口の左端が僅かに上がった。
 機体は自由落下を続けている。舵面に当たる空気の速度が遅いからまだ舵が効かない。墜ちる。舵は?まだか。敵は?ファーキンは焦り始める。
 その時、ガン!ガン!ガン!機体に大きな衝撃があった。撃たれた?ばかな?どこから来た?裏からか?ファーキンは辺りを見渡す。
 コックピットの中を何かが跳ね回ってる。
 舵が戻った。左へ急旋回。ロール。キャノピー越しに敵の姿を捉えた。怒りが沸々と湧き上がってくる。アドレナリンの分泌は最大だ!この野郎!ファーキンは怒りにまかせて必要以上の弾を打ち込んだ。お返しだ!破片が飛び散り翼がもげる。まだ弾を喰らわせる。相手が火を噴いた。もんどりうって落ちていく。
 ヒャッホ~!
 離脱。反転して下を確認してからゆっくりと姿勢を戻す。辺りを確認。他に機影は見えない。もういないはずだ。
 まずったな~。ファーキンは思い切り顔をしかめた。

「ファーキン。いるか?」無線が入った。
「ガリレオ。いるよ。今のところ2機」
「こっちも2機、状態は?」
「う~ん」ファーキンは少し間を置いた。「コードL33」
「どこだ!」ガリレオの声が慌てている。“L”は「一部に損傷」“33”は「緊急着陸を要請する」というコードだったからだ。腹側から打ち抜かれている。どこか油圧系統もやられて油圧が下がっている。燃料系もエラーが出ている。エンジンにも喰らったようだ。「もってくれると良いんだけど」ファーキンはガリレオに聞こえないように呟いた。
 それにさっき跳ね回った何かがどこかに当たったらしい。ラダーが思うように操作できなくなってきた。さっきまで大丈夫だったのに。
 ガリレオが上がってきて右に並んだ。ファーキンはガリレオに向かって手を振った。
「ファーキン、陸地までは遠い、その様子じゃもたないと思うが、どうだ?」
「かもしれない」ファーキンは短く返事を返した。
「近くに空母が居る。お前の腕なら甲板をいっぱいに使って降りられるだろうし、だめなら着水という手もある。そこへ向かうか、あとは時間はかかるが降りやすい91ベースまで飛ぶかだ、どっちを選ぶ?」
 ファーキンは少し考えてから答えた。「空母を選択する」
「了解、ついてこい」
 ファーキンはそのままガリレオの左側に並んで降りていった。

 高度を下げ、いったん水平飛行に入ってからガリレオが真横、少し上方に並んできた。背面飛行でコックピットを覗き込んでくる。ファーキンはガリレオに向かってもう一度手を振って見せた。
「ファーキン、戦闘空域を出た」ガリレオから無線が入る。
「了解」
「空母とは連絡を取った。甲板は着くまでに空けてくれるそうだ。機体は空母の軸線に乗っている。このまま真っ直ぐ進入する」
「了解」
「大丈夫そうだな。だが主翼と胴体に幾くつも穴が開いているぞ」
「へまやっちゃった」ファーキンは声を振り絞った。
「オイルが漏れているようだ。コントロールは?」
「真っ直ぐなら問題ない」
「エンジンは?」
「シリンダーが2つ死んでいる」
「またあれをやったのか?」ガリレオが訊いてくる。何もかもお見通しだ。ファーキンは返事をすることが出来ない。
「そいつは無暗に使うなと言ったろう?無防備になるから、やるのは相手が1機の時だけだ」
 言い訳をすることが出来ない。でもこれまでそれで生き延びてきたんだ。ファーキンは心の中で呟いた。
 ガリレオが少し離れて前方に出た。
 ファーキンはコックピットを覗き込まれなくなったのでホッとした。腰から下の感覚が無い。でも真っ直ぐなら問題ない。問題ない。自分に言い聞かせる。
 徐々に高度が下がる。雲が切れて下にはキラキラ光る海面が見え始めた。この機体であそこに降りたら助かる保証はない。滑らかに着水する自信はあったが、ほんの僅かな角度の違いが、うねりのタイミングが、致命的な結果をもたらすことはよく分かっている。できれば甲板にふわりと降りたいんだけど・・・。ファーキンは楽観的に考えることに意識を集中した。
 飛行艇に乗っていたころなら、あそこは帰るべき場所だった。滑るように海面に降り立ち、そのままゆっくりと機体を桟橋に横付けする。そして係留作業を眺めながらエンジンを止めると、その日の仕事は終わった。呑気なものだ。
 そして桟橋ではあいつが待っていた。ファーキンはほんの少しの時間、あいつの顔を思い浮かべた。
 夕闇の迫る茜色の風景が広がっている。
 ヤシの木は穏やかな風に微かに葉を揺らせる。
 ラグーンの海面は穏やかだ。
 潮の香りがした。

 空母までまだあるのかな?視界は徐々に暗くなり始めた。日が沈もうとしているのかな、ファーキンはそう考えた。
「ガルレオ、空母に誘導灯を点けるように言ってほしい」
「なんだって?ファーキン、繰り返してくれ」
 下半身ばかりでなく痺れと冷たさは徐々に拡がり始めている。太陽は完全に沈んでしまった。辺りはどんどん暗くなる。どうしたんだろう?空母は?誘導灯は?ファーキンは足掻く。
「ガリレオ・・・あと・・・どれぐらい?」
「あと3キロ、いや2キロだ」
「暗いな・・・」
「どうした?」
 体がゆっくりと傾き始める。
「おい!そっちじゃない。戻せ!ファーキン!ファーキン!」
 無線機からは叫び声が聞こえる。妙にはっきりと。
「カンザキ!上げろ!カンザキ」
 アタシを呼んでいる。
 だがファーキンにはどうする事も出来なかった。

2015.08.26
2016.09.05 若干の修正
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Comments

あわあわ 
こんばんは。

以前読んだエスのプロットのところ、基本は一緒なのにずいぶんと違う作品のようです。こちらの方がノスタルジックで、映像的かな。飛行艇を待っていた桟橋の「あいつ」。映画のように美しい光景ですけれど、今の状況でそれを思い浮かべているのは反対にとてもヤバい状況なのかと緊迫した思いにとらわれます。

それに怪我をしていて、感覚と意識が薄れていっている? 
始まったばかりですがドキドキの連続です。

たしかシーン2は、プロットでは全く違った場面だったはず。ファーキンがどうなってしまうのか、心配です。

続きも楽しみに待っていますね。
おおう 
更新、お疲れ様です。

改めて読み直してみました。
いまさらですが、「ファーキン」という言葉でジェット機を思い浮かべていましたが、これってレシプロ機ですよね? 空母の甲板いっぱいを使ってなんとか着艦できる、とか、シリンダーが、とか言ってるし。さすがにジェット機じゃ、そうはならないですよね。だとすると、現代世界のお話ではない、あるいは、別の世界のお話?
すみません、ストーリーと直接関係ないのでしょうけど、そこが気になってしまいまして(笑)
でも、謎が多い出だしで、興味がそそられます。
空母あるいは海面への不時着、しかも怪我をしていてうまく操縦もできないし、意識もとびかかっている。
そんななかで、穏やかなラグーンの思い出がよみがえる。うわぁ、そっち行っちゃダメ……あ、お花畑じゃないか(爆)
この引きで、タイトルが「新世界から」だとすると……ふむう、どういう展開になるのか、気になりますね。
シーン2を楽しみにしています。
夕さん 
お読みいただいてありがとうございます。
そうですね。エスのプロットの時はインフルエンザにやられていて、熱の中で書いた物ですから、ちょっと支離滅裂ですね。
物語を発展させながらだいぶ書き直しました。視点も変えています。映像的になっているとおっしゃっていただけて嬉しいです。あぁ、ノスタルジック・・・確かにそんな思いもあります。
桟橋の「あいつ」・・・風景を思い浮かべながら書いていますが、確かにやばいですね。あっち側に行ってしまいそうです。

シーン2は場面転換して始まります。
例によってプロットはいいかげんで、シーン3はカオスになっています。
でもシーン2だけは完成していますので、UPをお待ちください。
コメントありがとうございました。
TOM-Fさん 
読み直していただいたんですか?わざわざすみません。
でも嬉しいです。
プロット、そして本編と読んでいただいて、左紀の創作の変遷を感じていただけたのなら、ちょっと嬉しいです。
迷いながら少しずつ完成に向けて改変していっています。少し恥ずかしいですが、どんな感想を持たれたのでしょう。ちょっと気になりますね。
設定は仮想世界が舞台になっていますので、サキの思うままです。どんな風に展開するか、お楽しみに!
ただ現時点で言えることは、ファーキン達の操っている機体はレシプロです。そういう世界なんです。と言うことだけです。
TOM-Fさんは相変わらず鋭いので、あまり語るとネタバレになっていまいます。今日のところはこのへんで。
シーン2、お楽しみに!
コメントありがとうございました。
こんばんは 
元になったお話を読んでいないのですが、緊迫した空中戦の映像が鮮やかに伝わってきました。
ファーキンというのは、このパイロットのコードネームだと思っていいのですね。何かアクシデントがあったようで、この先が心配です。
唐突に一人称で応えた”あたし”の存在も気になるところですが。
またゆっくりと制作していってくださいね。
サキさんの、サキさんらしさが凄く感じられる作品になりそうですね。
limeさん 
読んでいただいてありがとうございます。
いきなり空中戦で始めてしまいましたが、これのプロットとなる作品を書いたとき、サキはインフルエンザだったのですよ。
熱の中で書いたせいもあって支離滅裂だったのですが、これを新作の出だしとして書き直しました。

はい、ファーキンはこのパイロットのコードネームです。本当の名前は後ほど出てきます。
かなり緊迫した状況になっていますが、一人称での応答も含めて、コメントを差し控えます。
続きを読んでいただければ嬉しいです。

ゆっくりと書き進めることになると思います。サキはとても遅筆ですから。
寛大な気持ちでお付き合いいただければ嬉しいです。
コメントありがとうございました。

 
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プロフィール
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