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Debris circus

Debris circus

頭の中に散らばっていた破片(debris)を改めて文章に書き起こし、オリジナルブログ小説としてサーカスの舞台に上げていきます。読みにくいものもありますが、お暇な時にパラパラとめくる感じででも読んでいただけたら嬉しいです……

 

キャンペーン

「・・・というコンセプトで作ろうとしているわけだ・・・」
 気もそぞろだった私は、プロデューサーの話が終わったことに気がついて、慌てて顔を上げて愛想笑いを返した。
「オイ!コラ!ちゃんと俺の話を聞いているのか?」プロデューサーが私の顔を覗き込む。
「ゴメンナサイ、聞いてませんでした」
「やっぱり・・・」
「もう一度初めから説明してくださいますか?」私はお願いの顔をした。
 プロデューサーはやれやれという風情で顔を横に振ってから、ゆっくりと喋り始めた。「現代社会にとって原子力発電所は、今や欠かせないエネルギー源だということは君も認めるよな」
 私はそうは考えていなかったが、雰囲気に押されてちいさく頷いた。
「原子力発電所では燃えた核燃料は高レベル放射能廃棄物になる。再処理したとしても、再処理工程で高レベルの放射性廃液が出る。そしてそれらは安定して保管できるように、ガラス成分と混ぜ、溶かしたものをキャニスターに注入し固化させる。それがガラス化個体と呼ばれるものだ。しかしキャニスターに入ったガラス固化体は、致死レベルの放射能を持っていて、高熱を発している。これは約20秒で100%の人間が死亡するとされる被曝を生じる線量だ」
 私は酷い目眩を感じた。胃の辺りは何かを詰め込んだように重くなっている。
「そしてその線量は数万年から数十万年を経過してようやくウラン鉱石と同レベルにまで下がると推定されている。要するにとんでもなく危険なものだ」プロデューサーは私がちゃんと聞いていることを確認するように目を覗き込んでくる。
「は・・・はい」私は目を泳がせながら生返事を返した。
「だがな。科学の力は偉大だ。このとんでもなく危険なガラス化固体を全く危害の無いものにする事に成功したのだ」
「本当に?」私は怖ず怖ずと質問した。
「本当だ。新しく開発された方法で処理されたガラス化個体の表面線量は、放射線管理区域以下の線量になる。人間にとって全く問題のないレベルだ。それに発熱もほとんど無い」
「それで?」
「問題は・・・だ」プロデューサーは言い含めるように言った。後ろには私が動けないように、ディレクターとアシスタントディレクター、それにマネージャーが立ちふさがっている。
「この新しいガラス化個体が人類にとって無害であることを、誰も信じようとしないことだ。そこまでは分かるな?」
 私はまた小さく頷いた。
「そこで、そのことを社会に向けて強力にアピールするために、今回のキャンペーンが考え出されたわけだ」プロデューサーは満足げに笑みを漏らした。
 私は物々しい格好のスタッフに囲まれるようにして隣のスタジオに連れて行かれた。
「見たまえ」プロデューサーは調整室のガラス越しに、スタジオの中央に置かれた巨大なトレイの中に入れられた沢山の丸い物体を手で指した。それらは直径50センチくらいの赤や緑、そして黄やオレンジの美しい半透明の球体で、それぞれに白い筋が入っている。私は嫌な予感を憶えて1・2歩後ずさりをし、防護服の上からアシスタントディレクターの足先を踏みつけた。
「これがその新しいガラス化個体だ。リアリティーを出すために全て本物だ」
 予想通りの答えに私はおののいた。“ガラス化”の名に相応しくそれらの球体は艶々と光を反射している。
「マスコミ界を震撼させた天才子役の君なら、これからどういうシチュエーションで撮影が行われるかは想像できているだろう?」プロデューサーは調整室のガラスの向こうから薄笑いのままそう言うと、私の後ろに控えている3人に合図を送った。私は防護服姿の3人に、肩と太ももの位置で抱え上げられた。そしてリフターを使って、そっとガラス化個体の中に降ろされた。すでに用意されていた遠隔操作のカメラが回り始めた。
「***ちゃん!」ディレクターが私の名前を呼んだ。
「まず軽~く笑顔をもらえるかな?はい!笑って!!!」

雨なら飴の方が・・・
このイラストの著作権はlimeさんに有ります。
「limeさんの記事[妄想らくがき・雨なら飴の方が・・・]へのリンク」

2015.07.12
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Comments

うわ~~! 
これは本当に驚きのSSです!
このイラストから、まさかこんなお話を思いつくなんて。
最初から食い入るように読ませていただきましたが、まさかの展開に思わずうなってしまいました。
これは・・・すごい。
リアルなSFです。笑えない結末なんだけど、なんか、もう一度読み直してしまう魅力が・・・。
この子役の子にしてみたら、本当に戦々恐々ですよね^^;お気の毒・・・。
(無害であることを祈るばかりです)
これは面白いです。さっそくリンクさせてもらいますね。
トップ画面から外れそうになってしまったのが悔しいですが、いろんなところに紹介リンクをつけておきますね^^
うわ~~! 
と、思わずlimeさんと同じ叫びを上げてしまいました。
実は最初、まさかこのイラストのSSだとは気がつかず、最後にようやくわかりました。飴玉をそんなすごいガラス化個体と解釈する点からしてすごいです。やっぱりサキさんだなぁ。こちらを拝読して、いかに自分にはSSが向かないか、書けないかが分かりました(@_@)
驚きと感動、そして楽しく楽しく拝読しました!!
limeさん 
あ、もう読んでいただけましたか。ありがとうございます。
なんといっても、驚いていただけたのが一番嬉しいです。だって、ひねくれ者のサキは斜めから物事を見て発想を変えて、そう感じてくださったら良いのにな・・・と狙っていますから。
limeさんの飴玉のイラストからカラス玉をイメージし、“ガラス化個体”という単語に繋がりました。楽しんでいただけたのなら良かったです。
飴姫の彼女には悪いことをしてしまったと反省していますが、面白いとおっしゃってくださるのなら許してくれるかな。
素敵なイラストをお貸しいただいてありがとうございました。

リンクも付けていただいてこちらにもお礼を申し上げます。
彩洋さん 
彩洋さんも驚いていただけましたか。ありがとうございます。嬉しいです。
イラストのSSと気づかず読んでいただけたのなら、イラストを一番最後に挿入した甲斐がありました。
でも、このSS、limeさんのイラストが無いと全く意味を成しません。やっぱりイラストの表現力って凄いなぁ、と改めて感じました。

コメントありがとうございました。
うぎゃっ! 
こんにちは。

最後まで、あのイラストについた話だとは思わず。
飛び上がりました。
あのファンシーなイラストから、なんて怖いお話を思いつくんですか!
さすがはサキさんです。
ああ、怖かった……。
うわぁ 
更新、お疲れさまでした。

飴じゃなかったのかっ・・・・・・。
私も、途中までまったくあのイラストにつけられたお話だとは気付きませんでした。
サキさん、ほんとうに上手いです。かなりブラックジョークというか、そういうネタなのに、limeさんの可愛いイラストにぴったりと合っている。
今回もまた、完全脱帽です。
ああ、こういうお話、しびれるなぁ、書いてみたいなぁ。
 
絵でやっとオチが分かりました。

人が悪いというか……ひどいや(← 褒め言葉(^o^))
夕さん 
おお!夕さんにも驚いてもらえたようですね。嬉しいなぁ。
でも今回のSSへのコメントを読ませていただくと、皆さん少~し怒りと呆れのニュアンスが感じられるんです。
ちょっとひねって書きすぎたのかなぁ・・・。
サキは自分でも感じていますが、意地悪なんですよ。
コメントありがとうございました。
TOM-Fさん 
はい!飴じゃなかったんですよ~!なんだか嬉しそうでしょ?やっぱりサキは驚いていただけて喜んでいます。
なるべくlimeさんのイラストのイメージが感じられないように書いていますから、最後の方までイラストとの繋がりはでてきません。
でも、この作品、よく考えてみると、イラストが無ければどうにもならないお話です。意味さえ不明になりかねません。
limeさんのイラストとセットで初めてオチが付く作品なんですね。
サキはあらためて、イラストの表現力を感じています。
コメントありがとうございました。
ポール・ブリッツさん 
えへへ、ポールさんになら“人が悪い”って言われても嬉しいですね。
はい、サキはひどいやつです。
コメントありがとうございました。

 
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プロフィール
こんにちは!サーカスへようこそ! 二人の左紀、サキと先が共同でブログを作っています。

山西 左紀

Author:山西 左紀
「山西 左紀について知りたい方はこちら」
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limeさんのイラストをイメージにSSを書いてみました。「ダイヤモンド・ダスト」
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スカイさんシスカイメージ
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シスカ・イメージ高橋月子さん作
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