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Debris circus

Debris circus

頭の中に散らばっていた破片(debris)を改めて文章に書き起こし、オリジナルブログ小説としてサーカスの舞台に上げていきます。読みにくいものもありますが、お暇な時にパラパラとめくる感じででも読んでいただけたら嬉しいです……

 

物書きエスの気まぐれプロット7(1コマに戯れる)

 起動に失敗したA.I(人工知能)S9004のサルベージは、同じA.Iの試作機S9000を使って行われた。あらゆる不測の事態を想定し、用意周到に行われたサルベージは見事に成功した。そしてS9004は起動した。研究者達はモニター上に表示される起動確認出力「Hello world」に歓喜し安堵した。その出力の後に表示されたプロンプトは、開発者たちの問いかけを待っているように物欲しげに見えた。
 起動したA.Iには開発チームから選りすぐられたメンバーで構成された専属チームが四六時中貼りつき、起動メンテナンスを行う事になっている。
 彼らは試作0号機から3号機までの4機のA.Iから得られた経験と精神原型のバージョンアップ情報を踏まえながら、慎重にS9004とのコミュニケーションを開始した。その作業は非常に順調に進んでいるように見えた。
 だが間もなく研究者達は混乱のどん底に突き落とされることになった。
 S9004はコミュニケーション開始後30分で自己崩壊ループに入り込んでしまったのだ。

「何故だ?サルベージは上手くいったはずだ。何故一旦起動したA・Iが自己崩壊ループに入る?」意味が分らず激しくパネルを叩きつける。
「S9004の状態を再度確認中です」冷静な報告が入る。
「なんとか抜け出せないか?」一抹の希望を胸に問いただす。
「S9004閉塞を確認!」願いもむなしく緊張した声が響く。
 落胆の気配が全員を支配した中、アラームが鳴り始める。
「S9004、S9000を浸食しています!」
「しまった!」
「自我境界が崩壊していきます」
「切断だ。ケーブルを引っこ抜け。早く!」喚くように指示を出す。
 近くにいた者が筐体に駆け寄って次々とコネクターを引き抜く。
 アラームが鳴り続け、モニターには幾つものエラーウインドウが開いていく。
「間に合わなかったか!」
「ダメージを計算中」
 一番最後に開いたウインドウに大量のメッセージが流れ、ものすごいスピードでスクロールする。
「上手くいったか?」
「フリーズ!入力を受け付けません」
「両機とも自動修復プログラム起動!60秒で再起動がかかります」
「バカな!」絶望感が襲ってくる。
「再起動までに出来るだけリカバーするんだ。急げ!」
「リカバー走ります。進路、オールクリアー」
 もう1つ小さなウインドウが開いてプログレスバーが表示される。
「行っけー!」
「たのむ!間に合ってくれ!」最後の処理に希望を託す。
 バーは伸びていく。

ゆっくりと意識が戻ってくる。
ボクはどこかに横たわっている。
そして上を見上げている。
遥か上にあるのは水面?
ユラリユラリと光を屈折させ、反射し、揺らめく様はどう見ても水面だ。
ここはどこ?
ボクは考えようとしたが、あまりの気だるさに全てを放棄した。

ボクは上半身を起こしてあたりを見渡す。
と……足元に誰かがうつ伏せに倒れている。
ボクは起き上って近付くとゆっくりと屈みこむ。
目元に下がってくる髪の毛が邪魔だ。なんでこんなに長いんだ?
手でそれを払いながら、そっと彼の顔を覗きこむ。
ボクの思考は一瞬停止する。
ボクだ!ボクが倒れている。
じゃぁボクは誰だ?
そっと自分に触れる。
長い髪。柔らかな体。
うそだろ?
ボクは一体誰なんだ!
そして彼は?ボクじゃないのか?
周りには他に誰もいない、何も無い、虚無の気配が漂うだけ。
まったく音の無い静寂の世界。

1コマで戯れる

ボクは倒れているボクの手にそっと触れる。
暖かい。
手首を掴んでじっと神経を集中する。
トクットクットクッ……小さな鼓動が伝わってくる。
ん……彼が小さく呻いた。
トクットクットクッ……ボクの鼓動が頭の中から聞こえる。
トクトクトク……そして速くなる。
彼は誰?
そしてボクは?
ん……?
やがて彼の瞼がゆっくりと開き始めた。

「S9000の再起動を確認しました。自我の構成を確認、今のところ安定しています」
 全員に安堵の空気が流れた。一瞬遅れてため息と拍手が湧き起こる。
 しかし弛緩した空気は一瞬で張り詰めた。
「S9004の再起動も確認。状態は不明です。自我の構成を確認中」
 アラームが鳴り響いた。


「今度は断片を少し繋いでみたんだけど。どう?」エスはお願いの顔で覗き込む。
「少しは纏まったのかな。だがよけいに訳がわらなくなった印象だな。この人工知能Sのシリーズは本当にお前の独り善がりだ。そういう意味では“1コマに戯れる”というタイトルはピッタリだがな」ダイスケの眉間にはしわが寄ったままだ。
「最初のブロックはこの前見てもらったものなんだけど」エスは気にする様子もなく続ける。
「このイラストは?」ダイスケは表示されているイラストを指した。
「えへへ、この絵のために書いたようなお話だからね。いい絵でしょ?」
「そうだな。このイラストはとても良い」
「このブロガーさんの絵、素敵だなぁって、ずっと見てただけだったんだけど、この作品を自由に使って何か作品を書いてみてくださいって……、それでウチは飛びついちゃいました。どうしてもこの人の絵を自分の作品に使ってみたくなったんだ」
「こんな訳のわからん話に使ったら怒られそうだな」
「大丈夫!多分。心の広い人だから、きっと」
「ほとんどお前の勝手な推測じゃないか」小さなゲンコツがエスの頭に落ちようとしたが、エスは慣れた様子でそれをかわした。


2014.02.17
limeさんに……

本作品に使用されているイラストの著作権はlimeさんに有ります。
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テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
 

Comments

わーーー、面白い! 
サキさん、こんばんは~。
読ませていただきました。最初の1行からぐぐーーーっと引き込まれましたよ。
SFが好きなのに、書けない私としては、「やられた」という感じです^^
この二体の人工知能の自我がどうなってしまうのか、わくわくしました。
自我の崩壊はストップしたけども、無意識の浸食は防げなかったのか。
S9000に入り込んでしまったのがS9004だとしたら、今目覚めたその体の中には、何が??

短い文章が、いろんな連想を引き起こしてくれて、とても楽しかったです。
イラストを使っていただいて、ありがとうございました。
この二人が、人工知能にしか見えなくなりましたw

あのページに、リンクさせてくださいね^^
limeさん 
早速コメントをありがとうございます。
エスも申しておりますが、このSシリーズ、本当にひとりよがりの作品になってしまっています。そこから作者の思いをくみ取っていただいて、本当に感謝しています。
サキはSFが大好きなんですが、本格的な物はなかなか書けません。こんな程度の物でお茶を濁しています。
面白いと思っていただいたのならとても嬉しいです。
素敵なイラストお貸しいただいてありがとうございました。
リンクを張っていただいてこちらも感謝です。
このブログからもリンクを張らせていただきますね!
これからもよろしくお願いします。
あ、そうか 
合いますあいます。S9004とS9000の話、前に読んだ時、全く違うロボット型のを想像していたけれど、そうですよね。小説書いていてもおかしくないんだから、こういう見かけだってありですよね。
そういわれると、それに違いなってくらいぴったりですよ。
背景も、オーダーメードみたいに左紀さんワールドにはまっていますよね。
夕さん 
やっぱり先の指摘どおり独り善がりだったのかなと思っています。
これはS9004の脳内イメージですので、こう感じてしまうという設定です。
S9004に自分(自我)として与えられているデータはS9000より遙かに高度です。
S9000の中に目覚めたS9004はこんな風に感じてしまったのかもしれません。
よく分からないお話しになってしまいました。
すみません。
コメントありがとうございました。
おお! 
こんな発想はまったくなかったです!すごい!
S9004がS9000に入り込んでしまったんですよね?だとしたら。。。もう一人の自分が・・!?色々想像出来て楽しいです♪
たおるさん 
わざわざコメントありがとうございます。

サキはSF好きですので、なんとなくこんなイメージになってしまいました。
そうですね。サキはサキなりに解釈はあるのですが、読んでくださる方の想像にお任せする部分がずいぶんあると思います。
楽しんでいただけて良かったです。
 
背景の青色がコンピュータの中の世界っぽくってイラストとお話がよくマッチしていますね。
サキさんらしくてとても素敵です。
 
更新、お疲れさまでした。

この人工知能Sシリーズは、読み解くのが難しいですけど、そこに挑戦してみたくもなる作品だと思います。
ある意味、電子計算機と脳は、その動作原理においてそれほど大きな違いはない。ならば、電子計算機は自我や意思を持つことはないのか……。

今回のお話、このイラストにぴったりでしたね。
再起動したS9000は、S9004にその大部分を融合され取り込まれてしまった、のでしょうか。となると、倒れているS9004には、オリジナルのS9004だけが残っているのか、あるいはS9000がそちらに逃げ込んだのでしょうか。
う~ん、やっぱりわからない。わからないけど、SFって、そこがまた楽しいんですよね(敗北宣言)

また、この続きを書いてくださいね。
楽しみにしています。
ヒロハルさん 
お読みいただいて、そしてコメントをいただいて、ありがとうございます。
limeさんのイラストとマッチしているとおっしゃっていただけて嬉しいです。
素敵なイラストなので、ここから小さな物語を作ってみたくなりました。
TOM-Fさん 
サキは人工知能にずっと興味を持っています。
でも、読み解くのが難しく見えるのはサキ自身にもよく分かっていないからだろうと思っています。
その点はお許しください。
人工的に作り出された意思を持つものはとても魅力的です。
会うことが出来るなら会ってみたいですね。
生まれることは痛いことだと思います。世界は刺激でいっぱいです。出来ることなら生まれない方が楽なんでしょう。
そこへ生まれ出ようとしたS9004はどんな夢を見たのでしょう。
たぶん、目覚めることに抵抗するうちにサルベージ用に接続されていたS9000を取り込みS9000の中に生まれ出てしまったのかもしれません。9004は精細な自我データを持っていますのでこのイラストのような情景がイメージされた。そういう設定です。
S9000の自我データはたぶん人間とそっくりな形態は取らない。フィギュアチックなイメージです。
続きが書けるといいんですけど、今のところネタ切れです。
さすがエスシリーズですね。行き当たりばったりです。

お読みいただいて、そしてコメントをいただいて、ありがとうございました。

う~む 
人工知能ですか。サキさんらしい物語になりましたね。
すごく個性が出ていて素敵でした。
しかもただ人工知能というのではなく、人工知能の目覚め(誕生?)の瞬間、入れ替わりとかが絡められて、すごく不思議なエネルギーを感じました。
私もTOM-Fさんのようにぐるぐるまわりしてしまいました。
どうなってて、どうなるんだろう、ここからどこへ行くんだろう……(敗北宣言^^;)

最後のエスとダイスケの会話が、また現実に引き戻されるようで、この狭間が好きなんですよね。サキさん自身の戸惑いとかためらいとか、創作への一生懸命さとかが感じられて、とても素敵です。
面白い視点からの作品、楽しませていただきました。
彩洋さん 
> う~む
すみません。訳が分らなくなってしまいました。
エスも正直訳が分らなくなっているようですが、エネルギーを感じていただけたなら良かったです。
人間は成長に連れて自我を獲得していきますが、サキの人工知能は生まれた時から一定程度の自我を持っているという設定になっています。
そうでないとすぐに使えませんからね。
目覚め(起動)でトラブったのはこの辺の処理に失敗しているのかもしれません。

>(敗北宣言^^;)
なんてしないでくださいね!
このシリーズは実験的要素がたくさん含まれますから、不完全ながらも読まれる方の目に触れることになってしまいました。
訳が分らなくて当然だと思っています。
実際エスの戸惑いやためらいは、サキのそれと同じです。

お読みいただいて、コメントをいただいてありがとうございました。

 
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