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Debris circus

Debris circus

頭の中に散らばっていた破片(debris)を改めて文章に書き起こし、オリジナルブログ小説としてサーカスの舞台に上げていきます。読みにくいものもありますが、お暇な時にパラパラとめくる感じででも読んでいただけたら嬉しいです……

 

エンディング考

 ここのところサキは少しだけ欲求不満を溜めています。

 サキはコミニケーションが苦手で、基本的に必要以上の人間関係には触れたくないと思っています。それで済まないことが多いんですけれど・・・。
 ただ、現実世界ではない物語上なら、複雑な人間関係や裏切り、人間の精神のカオスなどに触れ、悶々と読み進めることは厭いません。
 複雑な伏線、神経をすり減らすハラハラドキドキのどんでん返し、たっぷり盛り込んであっても構いません。
 でもね、サキは精神的に弱いのか、やっぱりハッピーエンドであって欲しいんですよね。
 読み手としては(ここ重要です)様々な困難が起こっても、それを乗り越えて最後めでたしめでたしで終わるのが嬉しいのです。
 ですからアンハッピーエンドは、わかっていれば最初から手を出さないことが多いのです。ちなみに「君の膵臓が・・・」にはいまだに手を出すことができていません。
 ところが、ハッピー・アンハッピー、どちらとも言えないエンディングがあるんです。

 最近読み終えた作品でも、物語は素敵な、ある意味前向きなエンディングを迎えているのですが、あともう少しのところで置いて行かれてしまうのです。
 後は読者の想像にお任せします・・・というタイプのエンディングになっているんですね。
 もちろんサキは自分で物語を書きますから、こういうエンディングでは書かないなんていうことはありません。
 書き手としてはすべての物語をハッピーエンドで書くのは面白くないのです。
 アンハッピーで終わるお話も少ないですがちゃんと書いています。
 そして読者の皆さんの想像に任せてしまうというエンディングも、けっこう書いています。
 でも、そのことを充分にふまえた上で「え~!」と文句を言ってしまうのです。
 サキも理想的な展開をいろいろ想像はしますよ、でもそれはあくまでサキの世界であって、この物語の世界ではないように思えるのです。
『あなたの好きなように想像していただいたらいいんですよ・・・』という作者の声が聞こえてくるような気がしますが(自分で書いた時もそうですから)、ここまでこの物語の世界を紡いでこられた方の世界が覗きたくてたまらなくなるのです。
『だ・か・ら、作者のあなたはこの先どうなったと思っているんですか?』と・・・。その答えを知りたくて知りたくてたまらなくなってしまうのです。短いものでもいいからエピローグを書いてほしい。そう思ってしまうのです。
 たぶん二次創作をされている方々は、こういう気持ちが押さえられなくなったんだろうなぁと想像します。
 そして自分の中に矛盾を感じながら、欲求不満を募らせてしまうのです。
 創り出した側の狙いどおりなのかもしれませんが・・・。

 我儘ですね。
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テーマ : つぶやき    ジャンル : 小説・文学
 
 

物書きエスの気まぐれプロット クリステラと暗黒の石2

scriviamo!

「エス!」コハクは部屋に入るなり大きな声を出した。
 部屋には誰もいない。
 コハクは一通り室内を見渡した後、なれた様子で部屋の中を進み、押し入れを開けた。
 思った通り、押し入れの上段には毛布に包まり大きな抱き枕を抱えたエスがまるまっている。
「エ・・・」コハクは声をかけようとしたが、気持ちよさそうに目を閉じているエスの顔を目にすると、それを中断した。
 安らかな寝息が聞こえてくる。コハクは大きく息を吐き出してから、そっとエスの丸くて低い鼻を押した。
「ム・・・ン」小さく声を上げてエスの目が薄く開き、それから大きく見開かれた。
「コハク?」やがて焦点が合うと小さな声で呼びかける。
「ええ、私。なにを呑気に寝てるのよ」
「寝てた?いろんな意見を取り入れようとすると煮詰まっちゃって、ちょっとだけ休憩のつもりだったんだけど・・・」エスはまだ眠そうだ。
「また書いてたの?」
「ウン」エスは小さく頷いた。
「いろんな意見って、例のブログ企画のメンバーの?」
「そう、コハクはマリアの作品は読んだっけ?」
「途中までだけど読ませてもらってるよ。特にあの皇孫オルヴィエートが醜態を晒してからが面白いわ。マリアが吹っ切れた感じで、ロジェスティラの行動が生き生きしてるもの」
「ウチも含めてだけど、みんなに勝手なことばかり言われて、マリア、最初はグズグズ言ってたんだよ。オルヴィエートのイメージが、とか言ってね。でも、吹っ切ってからは早かったなあ。あっという間に物語が動きだした。もともとそんな設定があったみたいにネ。ロジェスティラが拘束を解かれて自由に飛び回るみたいで、凄いよ。さすがだなぁ」
「エスもずいぶん意見を言われたんじゃないの?」
「そう、みんな好き勝手な事ばかり言うんだよ。だけど、幾つかはとても参考になったし、面白いと思ったんだ。だから改稿するって宣言したのは良かったんだけど」エスは抱き枕に顔を埋めた。
「思ったより大変だった?」
「そういうこと。整合性を取るだけでも大変!特にあの・・・」エスは言葉を止めた。
「あの?」コハクが言質を取る。
「え・・・っと」しまったという感情がエスの顔に出ている。
 エスは起き上がって押し入れから出ると、ベッドの横に腰掛けた。コハクもその横に並んで腰掛ける。
「なぜ私が来たかわかる?」コハクは質問を変えた。
「わかるよ。クリステラと暗黒の石の更新版を送ったから、その感想を言いに?」エスは笑顔を作る。
「私はそれだけの用事ででわざわざやって来たりはしない」コハクの視線はエスを捉えたままだ。
「あ~、じゃぁなんだろう?」
「わかっているくせに。あのアンバーって登場人物なんだけど!」コハクは語尾を強くした。
「アンバー?誰だっけ?」エスは目を泳がせる。
「マリアからのアドバイスの中に『ドラゴンの結石が大量に必要なら、イラつくキャラでも派遣してドラゴンにストレスをかけてみたら?』ってのがあったじゃない」
「そうだったかなぁ」
「更新版の新キャラ、クリステラがドラゴンから大量の結石を得ようとして派遣した操者の女」
「ああ、あの操者の女ね・・・」エスはたった今思い出したように言ったが、これは明らかに演技だ。
「メチャクチャイラつくキャラなんだけど」
「そりゃぁ、ドラゴンにストレスを与えなくちゃならないからね。凶暴なドラゴンを操る人物だし、ヤワな性格じゃできっこないじゃない。それにストレスが大きいほど結石がたくさんできるっていう設定にしたんだから」
「でもその女の名前がアンバーってどういうことよ?アンバーってコハクの事だよね?」
「え?そうだった?偶然だなぁ・・・」エスはあらぬ方向に目を逸らす。
「もう!わざとやったでしょう?エスが私のことををどう思っているかよく分かったわ」コハクはおかんむりだ。
「ああ、待って」エスはあわてて付け加える。「彼女にアンバーって命名した時は、単純にカッコいい役だったんだ。素敵な役だから命名したんだよ。けど、意見を取り入れながら物語を進行させるにつれて、役柄が変わってきてるんだ。例のキャラの暴走ってやつ?」
「変わったって・・・だったら名前も変えてほしいわ」
「でも、ウチの中ではもうアンバーで出来上がっているキャラだから、今更変えられないよ。それにあくまでアンバーだから。コハクとは違うよ」
 コハクは大きくため息をついた。またいつものようにエスの屁理屈で丸め込まれようとしている自分に呆れたのだ。
「それに結構重要な役どころなんだよ。今後の展開もあるし、今は我慢してくれないかな。悪いようにはしないよ」エスはコハクの表情をうかがいながら言った。
 エスの“悪いようにはしない”はこれまでちゃんと実践されたためしがないが、ここで押しても暖簾に腕押しになるのはわかりきっている。
「しょうがないなぁ」コハクはついにその言葉を口にした。
 エスの口角がクッと上がった。
 
 クリステラと暗黒の石2

 何千テルリも彼方にある環礁は一瞬で光の玉に飲み込まれた。
 一定のエネルギーしか透過しないマガヌガラスは光量を落とし、窓の向こうに広がる風景は真っ暗になったが、その光の玉だけは中央にぽっかりと受かんでいる。
「すざましい!」オルガノートは驚嘆の声を上げた。
 やがてすべてを焼きつくし蒸気に変えてエネルギーが使い果たされると光の玉は小さくなり、それにつれてマガヌガラスの窓は明るさを取り戻した。
 オルガノートは声を失った。
 紺碧の海の中に馬蹄形の美しい曲線を描いていた環礁は姿を消し、代わりに白く濁った広大な海面が残されていた。一瞬でそこにあった物すべてが蒸発してしまったのだ。
 オルガノートを乗せた巨大な飛行戦艦は爆風と衝撃波を受けて小刻みに振動する。鉄で作られたこの巨大な構造物は、本来は海に浮かべるものだ。だが、今は暗黒石の力によって空中に浮かんでいる。
 もともと巨大な戦闘艦だったものをオルガノートが自分の立場を利用して指揮下に置き、クリステラの指導の元、秘密裏に改造を行ったのだ。莫大な費用が発生したが、これだけの能力を見せつければ反対していた閣僚たちの意見も賛成に転じ、王の信頼もこれまで以上に厚くなるだろう。これを使えば我が国はたちまち世界の頂点に君臨することができるのだ。
 だが俺はそんなもののためにここまで来たわけではない「世界は私の前にひれ伏すのだ」オルガノートは込み上げてくる笑いをグッとこらえた。
 位置を修正すべく自動操縦装置が出力を調整しているのだろう。石英ガラスのケースに納められた暗黒石は回転を早め、表面には複雑な模様が浮かび上がった。

*****

 その笑い声が自分のものだということに気がつくのに暫くの時間が必要だった。
 笑っているのだ。自分が笑うなどということは信じられなかったが、この昂った感情を押さえることはできなかった。小さく目立たぬように、肩を震わせながら、押し殺すように自分が笑っている。やがて声は少しずつ大きくなり、完全な笑い声になった。
 軽く乾燥した笑いだった。
 アンバーはその下品さに驚いて自分の感情に蓋をした。
 目の前には、なみなみと水を張られた巨大な水盤が置かれている。その水面は受像装置になっていて、そこには白く濁った広大な海面が映し出されている。
 紺碧の海の中に馬蹄形の美しい曲線を描いていた環礁は一瞬で気化したのだ。
 そのエネルギーはクリステラが予想した通り強力なものだった。クリステラが言っていたように、世界はこの強大な力を持つ者の前にひれ伏すだろう。
「だが、それはお前ではない」アンバーはずっと握りしめていた兄弟石を床の上に置くと、大きな暗黒石を両手で持ち上げ、振りかぶって兄弟石の上に打ち下ろした。兄弟石は砕けて四方に飛び散った。
 兄弟石を失った暗黒石は自己崩壊を起こす。持っているエネルギー全てを放出するのだ。どれだけの威力があるのかはわからなかったが、これは史上最強の破壊兵器の実験だ。
 水盤上にはさっきとは比べものにならないくらい巨大な光の玉が出現した。
「バイバイ、オルガノート」アンバーは軽い調子で別れを告げた。
 あとはクリステラさえいなくなれば、世界は私の前に触れ伏すのだ。
 アンバーの口元が大きく歪んだ。
 そしてそこから軽く乾燥した笑い声が漏れ出した。

*****

 目の隅に置いていた発光管に一瞬ルビー色の縞が現れた様な気がして、オルガノートは振り向いた。
 石英ガラスで作られた直径2サレン(約28センチ)長さ2.5テルリ(約3.5メートル)の発光管は内部に精化された鉱質と妖気が充填され、暗黒石の状態をその発光色により表示する。ルビー色は異常を表す色だが、今発光管はエメラルド色に輝いている。
『気のせいか?』オルガノートは加速装置のコントロールのために再び発光管に背を向けた。
 その瞬間だった。
 発光管全体がルビー色に変化し輝いた。
 その発色が正面のマガヌガラスに写り込む。
 オルガノートは振り返り、驚愕の顔を発光管に向けたが、その時はもう遅かった。
 全ては強烈な光に包まれ、空中に巨大な光の玉が出現した。

*****

 クリステラの実験室に置かれた水盤には、巨大な光の玉が出現し消えた。
 それは環礁を蒸発させた時の物の数倍はあろうかという大きな物だった。
 オルガノートの乗った飛行戦艦は一瞬で蒸発し、後には何も残らなかった。
 エネルギーは膨大な量の海水を沸騰させ気化し、大きな津波まで発生させた。爆風と衝撃波は大気圏を越えただろう。
『自己崩壊?そんな馬鹿な・・・』マガヌガラスの眼鏡に守られた赤い瞳をさらに手で庇いながらクリステラは呟いた。
 エネルギーの放出は上手くいった。あの破壊量からすれば放出されたエネルギーは計算の範囲内だったはずだ。
 その程度の放出で暗黒石にダメージが出るはずはないし、放出後の状態でオルガノートの艦は存在していたから、暗黒石も安定していたと考えていいだろう。暗黒石に問題が起こっていれば、その時点で連鎖的に崩壊が起こったはずだ。ということは暗黒石自体の問題とは考えにくい。
『それなのに、なぜ?』安全係数は充分に取ったはずだ。
『なぜエネルギーの放出と自己崩壊に時間差がある?』クリステラは考えを巡らせる。
『エネルギーを放出してから、何か全く別の事象が発生したと考えるべきなのか?』クリステラは舌をチロッと出して上唇を舐めた。
『アタシを謀ることはできないよ』白い髪がフワリと嵩を増し、クリステラの体が青白い燐光を放ち始めた。


 自分で自分がふくれっ面になっているのがわかる。読み終えたコハクは「もう!」とエスに背を向けた。。
 エスはコハクの背中を見ながら『さて、どうしたものかな?』というふうに首を傾げた。

2018.02.07
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テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
 

「scriviamo!」参加作品の完成です。

 ようやく「scriviamo!」参加作品の完成です。
「scriviamo!」は八少女夕さんのブログ「scribo ergo sum」で催されている企画です。“いっしょに書きましょう”というような意味で、それがそのまま企画の趣旨になっています。今のところ年1回、春先に開催されていて今回で6回目、伝統ある企画になってきました。

 企画の参加者が自分の作品を登録すると、夕さんがそれを元に“お返し”を書いてくださる、或いは夕さんに先に書いていただいて、それに対して参加者が“お返し”の作品を書く、という仕組みです。
 夕さんは参加者一人一人に対して、意図を汲みながら作品を書かなくてはいけませんから、その苦労の程は想像に難くないのですが、毎年軽々とこなされるその創造力には驚きです。

 今回UPする作品は、サキの分身であるエスというキャラクターと、夕さんの分身とまでは行きませんが同じ小説ブロガーのアントネッラ(ハンドルネームはマリア)の、2人の物書きがNETを通じて交流を重ねる様子を描いたお話です。
 前回の「scriviamo!」では、2人が共に苦手としているファンタジー、マリアが「夜のサーカスと天空の大聖殿」を執筆中、エスは「クリステラと暗黒の石」を執筆中という設定でした。
 マリアとエスが悩みながら書いている様子を夕さんと作品を通じてやり取りしたのですが(サキも夕さんもファンタジーが苦手というか、書いた経験が少ないのです)、今回夕さんははマリアがその続き「夜のサーカスと漆黒の地底宮殿」を書いている様子を書いてくださいました。
 こう来られたらサキの方も「クリステラと暗黒の石」、すなわち苦手なファンタジーをスルーするわけにはいかないじゃないですか。
 サキは「天空の大聖殿」の続きを書いてくださるとは予想してなくて、ちょっと手間取ったのですが、それに対する“お返し”の作品がようやく完成したというわけです。

 あ~大変だった!

 よろしければ下のリンクからお進みください。
クリステラと暗黒の石2

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テーマ : つぶやき    ジャンル : 小説・文学
 
 

きみがそうしたいのとおなじように・・・

 宇宙ステーションBR39、通称ベイルート39は0.8Gの人口重力を生み出すためにゆっくりと回転を続けている。
 ロビーの天井に設けられたガラスドームの向こうでは、それにつれて流れるように位置を変える幾千万の星々が、それぞれに輝きを放っている。
 宿泊の手続きを終えたシュンは、ロビーのソファーに腰をかけ、背もたれに体重を預けると、その天井に設けられたガラスドームを見上げた。
「ン?」シュンは一瞬大きく目を見開いた。
 ガラスドームの端にはドッキングポートが見えていて、ポートAにはシュンが乗っている探査船シャンポリオンが係留されている。それはもちろん彼にとっては当然で、それに対して驚くことは無い。
 シュンが驚いたのは隣のポートBに係留された船が見えたからだ。
 ポートBには、タイフーン級強襲揚陸艦が武骨な姿を晒している。
『カスリーンか?』シュンは艦体に描かれたナンバーを読み取り、その艦名を確認した。
 シャンポリオンが入港したときポートBは空いていたから、ついさっき入港したに違いない。
 通常、軍艦の航行スケジュールが公開されることは無く、シュンにカスリーンの入港予定を知る術はない。一方、公船であるシャンポリオンのスケジュールは公開されている。
『きっとやってくるだろう』シュンは自分の部屋で待ってみることにしてソファーから立ち上がった。

+++

 ノックの音がした。
「はい」客室係かな?電話をくれればいいのに。変だなと思いながら、シュンはドアスコープを覗いた。
 スコープの向こうには小柄な女が立っている。ボブにまとめられた真っ赤な髪、前髪の隙間からアンバーの瞳が見つめてくる。
「アニマ!」シュンは慌ててドアを開けた。珍しく軍服以外の服を着たアニマがそこに立っていた。シンプルなワンピースで、彼女がスカートを履いているのを見るのはひょっとして初めてではないだろうか?シュンは少しの間混乱した。
「変」シュンの視線に気づいたのか、アニマは自分を見下ろしながら訊いた。
「いや、似合ってるよ。いつもと違っているからちょっと驚いただけだ」
「そう」アニマは安心したように顔を弛めると、シュンの前に立った。アニマの背はシュンの肩までしかなかったから、そこからジッと見上げてくる。アンバーの瞳はセンサーのようにシュンの顔を観測する。
「げんきだった」長い間見つめてから、アニマは抑揚を欠いた少しハスキーな声で訊いた。
「ああ。元気だよ。アニマは?」
「・・・」アニマは黙って見上げるだけだ。
「聞くまでもなさそうだな。でも驚いた。よくここに居ることがわかったね」
「簡単だ。シャンポリオンの航行スケジュールは完全に把握している」
「いや、そうじゃなくて、よくこの部屋がわかったと思ってね」
「簡単だ。軍のIDカードを見せたら部屋番号を教えてくれた」
「IDカードに物を言わせたのか?」シュンは呆れた顔になった。
「どうして」
「自分の立場を考えろよ」
「わたしの立場」
「アニマは軍の上級士官だろ。このステーションは軍の管轄だから、君の権限は絶大なんだ。そこのところをちゃんと理解してIDカードを使いなよ」ちょっとした動揺がフロントクロークに走るのを想像しながらシュンはたしなめた。
「・・・」アニマはもう1つ納得できないような顔で立っている。
 シュンはため息をついて「まぁいいよ」と言った。
「時間はある?」シュンはアニマを部屋に招き入れ、扉を閉めながら訊いた。
「上陸許可は3交代で8時間ずつだ」
 おそらく、内戦が勃発したシグナ星系のシグナスDあたりへ鎮圧に向かっている途中なのだろうが、行き先を訊いてもアニマから返事は無いだろう。
「だから・・・」アニマは下げていたバッグから小さな箱を取り出し「これ」と、シュンの前に差し出した。
「何だろう?開けても大丈夫?」アニマの行動には戸惑うことが多い。シュンは少し警戒しながらそれを受け取った。
「聖バレンタイン・デーは知っている」アニマが訊いた。
「ああ、けど・・・」
「軍曹からこの日には女性から男性にチョコレートを贈ると聞いた。だから・・・」
「その軍曹がどこの出身かは知らないけど、そういうのは初耳だな」
「そうか。違うのか」少し斜めに視線をやりながらアニマが応える。
「いや、でも、その日に何かを贈りあう風習はあちこちにあるみたいだよ」『そしてその日はローマの時代にまでその起源を遡る恋人たちの誓いの日だ』シュンは後半部分の言葉を飲み込んだ。もうその日を過ぎているけれど、この際それは関係ない。「だから問題無い」シュンは笑顔で言った。
「そう」アニマは頬笑んだ。
 その稀有な瞬間を無駄にしないようアニマの顔を堪能してから、シュンは丁寧に包みを開けた。箱の中には可愛らしい、そして高級そうなチョコレートが綺麗に並んで納まっている。宇宙でこれを手に入れるのは大変だっただろう。
「ありがとう」シュンはアニマの体をそっと抱いた。
 アニマは一瞬体を硬くしたが、やがてシュンの腰に腕を回した。
 軽い抱擁は強い抱擁になり、やがて次の段階へと進んでいった。

+++

「さっきは驚きましたね」ゲストが途切れ手が空いたので、フロント研修生は先輩のフロントクロークに声をかけた。
「普段こういうことは無いんだが、いきなりIDカードを見せられたのには私も驚いたな。軍服ではなかったし、ひょっとすると軍内部で何か内偵が行われているのかもしれないな。だが、それにしてはあけっぴろげだったな」先輩クロークは声を低くして言った。
「あんなに可愛いのに、少佐でしたからね」研修生も声を低くする。
「所属部隊も見たか?」
「見ましたが、数字だけじゃ・・・」
「ありゃ、特殊急襲部隊だぞ」
「え?あんなに小柄なのに、ですか?」
「だから余計に驚いたんだ。しかも階級からして隊長クラスだろ。以前、あの部隊を担当したことがあるんだが、あんな奴らを束ねるなんてとても信じられん。だがカスリーンが入港しているし・・・対テロ作戦じゃなければいいんだが」
「このところ不穏な空気もありますからね・・・」
 その時、フロアー全体が地獄の底から響いてくるような不気味な音をたてて振動した。
 2人は顔を見合わせた。
 フロントに置かれたモニターの画面が切り替わる。
『第22デッキで爆発!隔壁は閉鎖された。各自次の行動に備えよ』
 もう一度、今度はさっきよりさらに大きな振動が来た。

+++

 シュンの下で体を反らせていたアニマが目を開けた。
 両手でシュンの体を持ち上げ脇へどかせ、起き上がる。
「どうした?」シュンは訝しげにアニマを見上げる。
「来る」アニマがそう言ったとたん、客室の床が地獄の底から響いてくるような不気味な音をたてて振動した。
 アニマは俊敏に最善の行動を開始した。

2018.02.16
2018.02.17 名前の混乱を修正しました。
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30000HITとバレンタイン

 え~っとカウンターが29900を越えて30000に近づいてきました。
 大台ですので30000HITの企画をやろうと思います。
 内容についてはいろいろ考えたんですが、なかなか良いアイデアが浮かびません。
 凝った物にするとサキが対応できないかも・・・なんて考えたりして。
 なので、いつものように皆さんのリクエストで何か小説を書いてみようと思います。

 30000HITに達した瞬間からリクエストの受付を始めますが、受け付けは先着3名様とさせていただきます。
 キリ番ではありません。カウンターが30000を超えていて、リクエストの書き込みがまだ3名に達していなかったら、あなたにも権利があります。
 何でもいいんです。お題、コラボやサキのオリキャラのリクエスト、或いはそれらの組み合わせ、その他、なにかご希望がありましたら、この記事にコメントとして書き込んでください。その際ご覧になったカウンターの数字を書き込んでくださると嬉しいです。
 リクエストにしたがって山西左紀としてなにか作品(多分番外編とかSS?)をでっち上げます。

 30000だし、もう少し受付の人数を増やしてもいいかなと思ったのですが、このブログを覗いてくださる方、その中でもリクエストしてやろうと考えてくださる方の人数と、サキの能力を考えるとこの辺りが妥当かなと考えました。
『こんなものをサキが書けるか見てみたい、ちょっと困らせてやれ、あのへんなキャラでSSを書け!』動機はなんでも結構です。せっかくの機会なので(このブログが10000HITするのには長い時間が必要です)遠慮なくお申し付けください。
 リクエストが無いなんてがっかりですから。
 無かったらブログ閉鎖ものですよ。
 時間はいただくかもしれませんが、必ず書かせていただきます。

 そして、もう1つは聖バレンタインデーの話題です。
 2月14日はもう過ぎていますが、バレンタインバージョンのSSを1編UPしておきます。
 いつもの格差カップルのお話で、サキが思い切り遊んじゃってます。マンネリパターンですが、お許しください。
 よろしければ下のリンクからどうぞ。

きみがそうしたいのとおなじように・・・

 下のリンクはシリーズ前作(時間軸は今回発表したお話より後)です。アニマに興味をもたれたらこちらもどうぞ。

あなたがそうしたいのとおなじように・・・

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30000HITになりましたね。

 ご訪問ありがとうございます。
 2011年10月1日、この変なブログ「Debris circus」は生まれています。
 誕生以来7年と少し経ったわけですが、いろんなことがありました。
 訪問してくださる方はそんなに多くないのですが、濃いお付き合いをしてくださる方もいらっしゃって、サキは楽しくブログ生活を送ってきました。
 考えを整理しながら打ち込める文字でのコミニケーションは、サキの生に合っていたようです(その割にグダグダのコメントも多いですが・・・)。
 感想や意見をいただいたり、感想や意見のコメントを書かせていただいたり、覗かせてもらったブログから新しい考え方を学んだり、サキにしては充実した、内容の濃いコミニケーションが出来たと思っています。
 言葉でのコミニケーションではこうはいかなかったでしょう。

 そして、かなり活発に活動できるようにもなりました。
 スペインにまで行くことができたのは、本人が一番びっくりしています。
 これも訪問していただいた皆さん、お付き合いいただいた皆さんにエネルギーを頂いたおかげです。最大の感謝を申し上げます。
 ブログを始める時、後押しをしてくれた“先”にも、この場を借りて感謝の気持ちを伝えておきたいと思います。

 あとどれくらいこのブログが存続できるか、未来のことは全く分かりませんが、こんなに楽しい事なんですもの、出来るだけ長く継続出来たら・・・と思っています。
 暫くの間、お付き合いいただけたら嬉しいです。

山西 サキ


 さて、30000HTI企画がスタートしました。いつものように皆さんのリクエストで何か小説を書いてみようと思います。先着3名様の受付です。遠慮なくリクエストをお寄せください。お題、コラボやサキのオリキャラのリクエスト、或いはそれらの組み合わせ、その他、なんでも結構です。お待ちしています。
 あ、権利だけ宣言してリクエストは後からでも結構ですよ。
 
 詳しい内容は下のリンクから。リンク先の記事にリクエストコメントを書き込んでください。

30000HTI企画リンク

追記
★お一人目:へろんさんからいただきました。「現代と中世を結んだタイムパラドックスもの」とのことです。
★お二人目:大海彩洋さんからいただきました。お題は考え中とのことです。
★お三人目:TOM-Fさんからいただきました。・お題はタイトルかテーマに「30000」を使う・サキのオリキャラと、他のブログからゲストキャラ3人とでコラボするとのことです。
あっという間に受け付け終了になってしまいました。ビックリです。
ありがとうございました!

おまけ

 こんなものを見つけました。
 記念にリンクさせておきます。
 これって目薬のCMに出演していた3Dモデルかな?

見えない方はこちらから・・・https://www.youtube.com/watch?time_continue=2&v=lkxkBozWWHc
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ここのところ・・・

こんばんは。
ここのところ・・・の時間です。
「ここのところ」というのは、サキがここのところ何をしているか、何に夢中になっているのかを書かせていただく記事なのですが、今夜久しぶりに書いちゃいます。

さて、サキはようやく書き始めました。
もちろんこのブログ「Debris circus」の30000HIT企画のリクエストにお答えする掌編を・・・です。
リクエストは3人の方からいただいたのですが、まずはお一人目、へろんさんのリクエスト「現代と中世を結んだタイムパラドックスもの」です。
こういうお題だともちろんSFものになると思うのですが、タイムパラドックスですので、タイムトラベル?この要素が絡みますよね?
そしてさらに問題はこの中世ですよ。
タイムパラドックスというお題を成立させるには時間を遡らなければなりません。
中世から誰かがタイムトラベルをしてきても、タイムパラドックスは起きません。
ならば誰かの行き先は中世?
それはまぁいいとして、そもそも中世って・・・何?
そこからですからね。
苦労しています。
考証に耐えない作品が出来そうな気もしますが、寛大な心で読んでいただけたらありがたいです。
もう暫くお待ちください。

ということなので、お二人目の大海彩洋さん、お三人目のTOM-Fさんのリクエストについては全く未対応です。
まず、1作目を書いてからですね。

そしてもう一つ、水面下でプロジェクトが進行中です。
今年のメインイベントになると思います。
まだまだ不確定なことが多すぎますし、実現するかどうかもわかりません、ちゃんと決まったらまたお知らせしますね。
実現しなかったらそのまま黙ってこっそりスルーしてしまいます。悪しからず。
リクエスト企画の方も書き上がらなかったら黙ってこっそりスルー・・・というわけにはいかないんですよね。

さて、また書き始めようかな。
それとも、もう寝床へ入っちゃおうかな?
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プロフィール
こんにちは!サーカスへようこそ! 二人の左紀、サキと先が共同でブログを作っています。

山西 左紀

Author:山西 左紀
「山西 左紀について知りたい方はこちら」
(ニコニコ静画フリーアイコンより)

ようこそ!


頂き物のイラスト

アスタリスクのパイロット、アルマク。キルケさんに書いていただいたイラストです。
ラグランジア
左からシスカ、サヤカ(コトリ)、サエ。ユズキさんにイラストを描いていただきました~。掌編「1006(ラグランジア)」の1シーンです。
天使のささやき_limeさん2
limeさんのイラストをイメージにSSを書いてみました。「ダイヤモンド・ダスト」
イラストをクリックすると記事に飛びます。よろしければご覧くださいネ!
スカイさんシスカイメージ
スカイさんのシスカイメージ
シスカ・イメージ高橋月子さん作
シスカ・イメージ 高橋月子さん作
シスカ・イメージlimeさん作
シスカ・イメージ limeさん作 コトリ・イメージユズキさん作
コトリ(コンステレーションにて)ユズキさん作
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