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Debris circus

Debris circus

頭の中に散らばっていた破片(debris)を改めて文章に書き起こし、オリジナルブログ小説としてサーカスの舞台に上げていきます。読みにくいものもありますが、お暇な時にパラパラとめくる感じででも読んでいただけたら嬉しいです……

 

「君の名は。」ハリウッドで実写映画化?

> 新海誠監督によるオリジナル長編アニメ「君の名は。」をハリウッドで実写映画化する企画が進行中であることが明らかになった。

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ええ~!!!この記事を見てサキはあぜんとなりました。というか、やっぱり・・・という諦めの気持ちが半分だったかも。
J・J・エイブラムスってだれ?
エリック・ハイセラーが脚本?あれをちゃんと書けるの?
キャスティングとか、どうするんだろう?
日本人を使わないんだったら、(ハリウッドですからね)まったく別の設定になりますよね・・・。
前の記事で「これをハリウッドでリメイクしたら、と考えるとぞっとします」と書いたんですけれど、ほんとうにぞっとすることになってしまうとは・・・。
サキはリメイクすること自体は、あまり否定的にとらえないようにしようと考えているのですが、これまでハリウッドリメイクにはずいぶんと酷い目にあわされていますからね。
今回もとっても警戒してしまいます。

新海監督は、
「『君の名は。』は、日本に暮らす僕たちのローカルな想像力、ドメスティックな技術で組み立てた映画です。そういう作品がハリウッドと交わることで、もしかしたら新しい可能性のようなものを見せてもらえるのかもしれない──そんな期待をしながら、完成を楽しみに待っています」
とコメントをされていますが、日本に暮らす僕たちのローカルな想像力、ドメスティックな技術ですか・・・でも、これが世界的に評価されたんですよね。そして、もしかしたら・・・ですか。意味深だなぁ。
う~ん。まぁ、せっかくのチャンスですからねぇ。
彗星の落下シーンとか、物凄いCGで表現してくれそうだし・・・。
世界が日本人の世界観を尊重してくれることを祈っています。

瀧(瀧ですらないかも)なんか、スーパーヒーローみたいにスーパーエネルギッシュに立ち向かいそうなんですけれど・・・。

2017.10.01
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テーマ : つぶやき    ジャンル : 小説・文学
 
 

あれ?ひょっとして7年目突入?

アレレレ???
 いつの間にか10月ですよね?
 ということは10月1日をもってこのブログ、Debris Circusは7年目に突入していました。
 もう始めてから6年もたつんですね。長かったようでもありますが、あっという間だったような気もします。
 ここだけの話しにしておいて欲しいのですが、ブログを始めた頃はまだサキはそんなに自由には動けなくて、だから空想の世界で妄想に浸っていることが多かったんです。その環境がシスカを生み出したんですよね。
 サキは頭の中で自由に動き回り、冒険をし、怒ったり、泣いたり、笑ったり、時には恋をしたり、好き勝手に暴れ回ったのです。
 それまではコミックやイラストの中で動き回ろうとして挫折を続けていたのですが、試しに自分の妄想世界を文章に変換してみて、ひょっとしてこれでなんとかなるんじゃないかと、勘違いも含めて思ってしまったんですよ。
 物語もシスカだけに留まらず、いろんな作品を書き、様々な登場人物を登場させることができて、サキはその登場人物に入り込み、いろんな世界で生活しました。
 アイデアは次々と湧いてきました。
 こんなに楽しいとは思ってもみませんでした。
 最初は宇宙空間に向けて発信しているみたいに感じるほど、反応は無かったのですが、暫く続けるうちに徐々に訪れてくださる方も現れて、ブロ友になってくださる方もできて、イベントにも参加させていただいたりして、閉鎖されていたサキの世界は一挙に広がったのです。
 
 まぁ、サキはコミュニケーション能力がほとんどありませんから、6年たった今でもアクセス数は少ないですし、ブロともの方もそんなにたくさんいらっしゃるわけでもありません。でも1人1人の方が優しく丁寧で気持ちの良い、サキにとってとっても大切なお友達になりました。
 もちろんもっとたくさんの方に覗いて欲しいのはやまやまなのですが、サキのコミュニケーション能力では、そんなにたくさんの方とお付き合いできる訳でもないので、それは過分な望みだと思っています。
 でも、世の中捨てたもんじゃないなぁ・・・というのが、サキの素直な感想です。

 そして、ブログを始めたせいかどうかはわかりませんが、もっと驚くことが起こりました。
 サキが行動を始めたのです。初めはほんの軽く、家族と近所にお出かけから初めて、1人で美術館に出かけたり、温泉旅行や、京都でお泊まりしたり・・・。
 そしてついに海外にまで出かけることができたのです。
 まさかこんな事ができるなんて、まるで夢のようです。空想の中だけだった世界が現実の物と重なったのです。こんな事ってあるんですね。
 でもね、最近感じているんですけれど、動けるようになったらその反動のように、サキ自身の妄想世界が広がらなくなってきたんですよ。アイデアの湧き出しもなんだか弱くなったような・・・。
 両方とも欲しい、なんて贅沢は言ってはいけないのかな?
 どっちか片方だけだといわれれば、現実世界の方を取るべきなんでしょうね。
 ううん、ダメダメ!
 ここは仮想世界ではなくて自分の現実の世界です。
 リトライはできないんです。
 だから・・・行けるところまで行ってみよう。

 ということで、自分に正直に、やりたいことはやりたいことで少しづつでも進めていきます。
 そして、それとは別のベクトルで湧いてくる妄想世界を小説に纏めていけたら・・・と思います。
 すこしペースは落ちると思いますが(もうすでに落ちていますが)、このブログは続けていこうと思います。今のところ、という条件が付きますけれど。

 さて、こんな近況のサキですが、ブログは7年目に突入していきます。
 どうかこんなサキを(面倒くさいやつですみません)よろしくお願いします。

2017.10.05(慌てて書いたので後で修正が入るかも・・・お許しください) 
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タービュランス

 それは全くの予想外の出来事でした。
 まさか人間が聖域の、しかも内院の最深部まで入り込んでくることなどあり得ない・・・そういう思い込みと油断、それとこれ以上はないくらい厳重と考えられていた防衛線にあったほんの僅かな隙・・・そこを的確に突かれたのです。
 チュチュは防衛線にほとんど交戦する時間を与えないまま懐深く入り込み、そのまま内院へと侵入しました。内院はほとんどのセクションが無人であるうえに、汚すことのできない神域ですから、一旦侵入を許せば脆いものです。中心部にたどり着くまでにそんなに時間はかかりません。飛び出してきたガーディアン達もチュチュの相手ではありませんでした。100体ほどもいたでしょうか。チュチュはヴァイブロブレードで、あっという間に全ての首をはね、そのまままったく立ち止まることなく前進を続け、固く閉じられた最内層の扉に穴を開け、勢いよく中に飛び込んだのです。
 その瞬間だけ、チュチュは僅かの時間立ちすくみました。
 立ちすくむ・・・などという行為はチュチュにしてはとても珍しい事だったのですが、目の前に広がる光景が、あまりに現実離れをしたものだったので、一瞬の間心を奪われてしまったのです。それはチュチュの想像をはるかに超えた光景でした。

 目の前にそびえるのは、チュチュの星にある海をも連想させるくらい、無限の水をたたえた水槽でした。あまりに巨大なので、いくら水が透明でも向こうの端までを見通すことも不可能に思えるほどです。
 もっともたとえ見えていたとしても、その巨大な水槽の中には直径1キュビット(約50cm)、厚さ1パーム(約10cm)程の円盤状の白い塊が無数に漂っているので、向こうの端まで見通すことはとうていできないのです。
 無数の白い円盤はその縁辺部を優雅に動かして、時々その一部や全体が、ある時は弱く、またある時は強く発光しながら、水中をゆっくりと移動していきます。一見無秩序に見えますが、お互いがぶつかりそうになると微妙に方向や速度を変えたり、変形したりするので、何らかの意思が働いているように見えます。
 実際、無数に漂うそれらは、それぞれが神経節を持つ生き物で、全体で大きな意思を持つと言われています。そして各々がテレパスで繋がり、連携してある種の演算をこなしているのです。
 電子の繋がりを利用した演算装置が世に登場して久しいのですが、彼等のテレパスのつながりは電子の流れより早く、時間的ロスがありません。それに熱もほとんど発しないので、あらゆる演算処理をこれまでの演算装置より高速でこなすことができるのです。
 彼等が行っているある種の演算、それを上手く利用すれば、空間と空間を結びつける結節点の位置が特定できます。そしてその情報があれば、空間と空間を任意に接続でき、光速を越える速度で移動することが可能になるのです。それは高速回廊と呼ばれ、その位置情報は聖域の内院にあるこの演算装置だけでしか得ることができないといわれています。

 あっ・・・と、短い時間焦点を失っていたチュチュの青緑色の虹彩は一瞬で機能を回復し、急いで頭を左右に振ってあたりを確認しました。
 危ないところでした。一瞬の油断が命取りになる、チュチュにとっては何度も叩き込まれた基本だったのですが、それを忘れていたのです。チュチュは大きく息をして緊張感を取り戻そうとしました。
 幸い水槽の前のスペースは何事もなかったかのように静まり返っています。
 チュチュは水槽に近づいて、左膝を立てて座りました。
 左足の付け根の関節を捻ると、カチッという衝撃があって左ひざの部分が開き、中から円錐形の弾頭が覗きます。安全装置を外し、後はトリガーを引くだけでチュチュの任務は達成されます。
 チュチュの命と共にすべてが終わるでしょう。
 目を瞑ろうとしたその時「あれ?」一瞬意識が途切れるのを感じてチュチュは動きを止めました。
「肝心なときに!」まるで貧血でも起こしたように意識が暗くなります。「なんだ?どうした?」チュチュはもう一度大きく息をしました。そして両の目をこすります。それでも意識が遠くなるのを止めることはできませんでした。

『チュチュ、チュチュ』チュチュは名前を呼ばれた様な気がして目を開けました。
 いつの間にか眠っていたのです。畑仕事を終え、一服しようと土手の斜面にゴロリと寝転んで空を見上げていたはずでした。
 真夏の太陽はすでに稜線のむこうに沈んでいましたが、熱気はまだ残っていて、あたりは草いきれに包まれていました。上空には薄明の空が広がり、そこに茜色に染まった飛行機雲が2本、仲良くならんで伸びていくところでした。
 飛行機雲の先で陽光をキラキラと反射しているのは、翼の形からして戦略爆撃機ではありません。きっと大型の旅客機なのでしょう。大海原を越え、旧大陸に向かっているのです。目的地までは12時間以上の長いフライトになるはずです。
 チュチュはもう自分が行く事の無い、遠い異国の街を思い浮かべようと、薄く目を閉じました。オレンジ色の屋根瓦のむこうに大きな石造りのドームがそびえています。その町へ行ったのはもう5年も前の事でしたが、チュチュははっきりと憶えていました。
「チュチュ」また声がします。
 チュチュは声のする方向に顔を向けました。
 視線の先には誰かの顔があります。
「誰?」チュチュは訝しげに眉を寄せました。
「失礼な奴だな。俺を忘れたのか?」誰かはムッとしたような声を出しました。
 チュチュは自分の脳が外側から中心に向かって順番に覚醒していく様を経験しました。まるで脳みその皺が丁寧に伸ばされていくような感覚です。
「ごめんダンバ、ちょっと寝ぼけてた」そうです。彼は幼馴染のダンバでした。
「疲れたのか?」心配そうな顔でこちらを覗き込んでいます。
「大丈夫、空を見ていたらちょっと眠くなった」チュチュは笑顔になって上半身を起こしました。
「旧大陸行きの便だろう。この時間にいつもここを通る」ダンバも空を見上げて言います。
 チュチュもまた黙って空を見上げました。2人の間に暫くの静かな時が流れてゆきます。
「本当に行ってしまうんだな」ダンバはチュチュの耳元に顔を寄せ、呟くように言いました。
 チュチュはダンバの方へ顔を向け「うん」と頷きました。
「どうしてお前なんだろうな」
「私しかできないから」間髪を入れずにチュチュが答えます。
「俺も一緒に行きたかった」
「私達の船はまだ私1人しか運べない」
「分かっていたことなんだ。だが、俺はまだお前を愛している」
「私もだよ」チュチュは自分がダンバに愛情を抱いていることを思い出しながら言いました。
「もうこうやって話すこともできなくなるんだな」
「聖域を破壊して高速回廊を使えなくすれば、私はもう寿命のあるうちにはここへ帰ってくることはできないもの」チュチュは生き長らえるつもりは毛頭ありませんでしたが、一応そういうふうに言いました。
「理不尽だと思わないか?」ダンバはフワリと肩の上で広がったチュチュの黒い髪に触れてから、そっと肩を抱き寄せました。
「思うよ。でもそうしないと高速回廊を使って奴らが押し寄せてくる。そうなったらこの星は滅んでしまうし、ダンバだって・・・」チュチュはダンバの胸に顔をうずめました。
 あぁ・・・ずっとこのままここにいられたらどんなに素敵だろう。チュチュはすべてを放り出してしまいたい感情に囚われました。
「このままどこかへ消えてしまえたらいいのに」消え入るような声でチュチュが言います。
「消えてしまおうか?」ダンバの声がしました。
「うん・・・」朦朧とした意識の中、チュチュは体の力を抜き、ゆっくりと目を閉じました。
「奴らがやって来たところで、必ずしもこの星が滅んでしまうとは限らないさ。支配されることはあっても、友好的に物事が進む可能性だってある」
 ダンバの胸に顔をうずめていたチュチュは違和感を感じ、少し顔を浮かせてダンバを見上げました。ダンバは虚ろな瞳でずっと遠くを見つめています。
 今、チュチュの心の中には小さな痺れのような感覚があります。
 チュチュにとってそれは特別なことではなく、ダンバと一緒にいるときや、ダンバの事を想ったときにはいつも浮かんでくる感覚です。
 ただ、それがもともと自分の中にあった物だという確信が持てないのです。
 チュチュにとって、このある種の麻痺と依存性を伴う脳反応はとても刺激的で、一度味わえば忘れられそうもありません。それなのに、ゆっくりと心の中をまさぐっても、こんな感覚を抱いた経験が見当たらないのです。
 チュチュはダンバを愛しています。でもその感情さえも同じように、もともと自分の中にあった物だという確信が持てないのです。
 小さく点のように開いた違和感の穴は徐々に大きくなり、やがて視界を大きく覆っていきます。伸びきった脳みそが再び丁寧に折りたたまれ、皺が作り出されていくような感覚です。
 チュチュはそっと右手を腰の横に回します。そこまでは無意識の行動でした。
 人差し指がトリガーに触れた瞬間から意識が繋がり始め、親指で安全装置が外れていることを確認したところからは完全に意識の支配下でした。
 チュチュは一瞬でフォルダーから拳銃を抜き取ると、ダンバの額にピタリと当てました。
「何を・・・」チュチュを抱いたままダンバの言葉が止まります。
「私はね、戦闘用の兵器として生まれ、そして育てられたの」チュチュの言葉と視線は氷のように冷たくなりました。
「・・・」ダンバは凍りついたように動きません。
「だから、私には幼馴染なんて居ないし、愛する人も居るはずがないの」
 チュチュがトリガーを軽く絞ると、薬莢の中の発射薬が激しく燃焼する音が聞こえました。

 目の前には無限の水をたたえた水槽がそびえています。
 チュチュは辺りを見回して状況を確認しました。
 変化はありません。辺りには相変わらず誰もおらず静まり返っていて、水槽の中には円盤状の白い生物が無数に漂っています。
 彼等に思考を操られていたのだろう・・・チュチュはそう判断しました。彼等も死にたくはないでしょうから。
 もしこの白い生き物たちが死に絶え、彼等を利用したこの演算装置が失われれば、代用の演算装置ができるまで高速回廊も失われ、奴らの巨大な宇宙国家は崩壊の危機に直面します。国家を構成する星々の間の往来はおろか、通信までをも完全に断たれてしまうのです。奴らがチュチュの星に攻めて行こうとしても百周回期(年)以上もかかるようになってしまうのです。
 この演算装置の技術は数世代前に失われ、代用の装置の開発には長い年月と非常な困難を伴うでしょう。
 チュチュは暫くの間、そのままの姿勢を保っていました。
 後はトリガーを引くだけです。
 そうすればチュチュの命と共にすべてが終わるのです。
「いやだ」やがてチュチュの口からは拒絶の言葉が漏れました。
 一度味わってしまったら、あの痺れるような感覚を忘れることはできません。
 チュチュはトリガーから意識を離し、右手を左太ももに当てました。
 再びカチリと音がして、今度は左足が股関節からはずれます。
 チュチュはその左足の膝を立て、水槽に向けて固定しました。
 僅かな待機時間の後、切り離された足の接続部にある小さな表示灯が点滅を始めると、チュチュは両手と右足を器用に使って走り出し、飛び出すようにその場を離れました。
 どこに向かうかはチュチュにもわかりません。あの感覚を再び味わうためにはどうしても命が必要です。チュチュは3本の脚に力を込め、不足している分は鍛え上げられた腹筋と背筋の跳躍で補いながら、全力で自分の船を目指しました。


2017.10.12
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書き上がりました。

ようやく書き上がりました。
ヒロイン(やっぱりですね)はチュチュという女の子で、タイトルはタービュランス(乱気流)といいます。
このタイトル、けっこうかっこいいと思うので、他の作品にもまた使うかもしれません。もしそうなったらこの作品は「高速回廊」というタイトルに変更するかもです。変なタイトルの付け方ですが、サキの中だけでの取り決め事です。
大事に取っておくと、このタイトルを使う機会を逃してしまいそうな気がするんですよ。だからこのままになってしまう可能性も大です。
それにこの作品、太陽風症候群シリーズの1作なので試作的な要素が入っています。
やってみようと意気込んだのは良かったのですが、慣れない文章をひねり出すのに苦労しました。書き上がるまでに時間がかかったのはこれのせいなのですが、苦労した割にはたいした効果があったとは思えませんし、企画倒れのそしりも受けそうな気が・・・。
読みにくいかもしれませんが、ご容赦ください。

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タービュランス

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ホムンクルスの夢

 テラスには1人の女が座っている。
 名はクレオといったが、誰が名付けたのか、なぜクレオなのか、その由来については誰も知らなかった。
 豊かでまっすぐな黒髪は背中の中ほどで綺麗に切り揃えられ、前髪もその凛々しい眉毛の位置でやはりパツンと切り揃えられている。はっきりとした目鼻立ちの顔はそれだけで充分に美しいのだが、均整のとれた体と健康的な小麦色の肌はそれをいっそう引き立てている。

 やがてテラスには夕方の風が吹き始める。潮の匂を含んだその風は、彼女の長い髪を優しく揺らして吹き上がる。
 テラスは、真っ白に塗られた石造りの小さな家の海側にあり、その小さな家はそれが数軒並んだ白い長屋の端にあり、その長屋は同じような長屋23棟と、共同で使われる7つの真っ白な大きな建物と共に集落を形作っている。
 さらにその真っ白な集落は険しい断崖のふちにへばりつくようにしてあり、その断崖の下にはまさに紺碧の海がある。
 そしてその紺碧は大海原となって、果てしなく続いていく。
 クレオは、いやここに住む誰もが、それがどこまで続いているのかは知らなかったが・・・。

 小さく咳払いが聞こえた。
 クレオはぼんやりと海の彼方に目を向けていたが、その気配の方向へ顔を向けた。
 テラスの隅には派手な服装の青年が立っていた。長身で長髪、ひげをたくわえているが、涼やかな目元と通った鼻筋は精悍な印象だ。
「レオン!いつからそこに居たの?」クレオの美しい声が響く。優しさを感じさせる声音だが、何人も逆らえないような威厳は覆い隠せない。
「ご機嫌麗しゅう、クレオ・・・」レオンと呼ばれた男は冗談めかして大げさに頭を下げた。
 レオンは他の男と違って、クレオの美貌にではなく、聡明さに対して興味を示した。
 “あちら”での記憶はかなり薄れていたが、嫌な思いというのは妙に生々しく残っている。何度も繰り返された陰謀や裏切り、愛憎・・・男なんてもうこりごりだと思っていたクレオにとって、彼は純粋に友人として付き合うことのできる特異な存在だった。
「今日は終わったの?」クレオはそんな彼の態度を気にする様子もなく言った。
「ああ、ようやくだよ。工房は手一杯だ。クレオの方は?」
「麦の生育は順調よ。後は収穫を待つだけ」
「こっちは肝心な時に人を“取られて”しまった。困ったものだ」
「農園も同じよ。今日はいきなり半分にされてしまったから、もう大変」
「半分か、それは大変だったな」
「ほんと。でも私たちが“取られる”ことってあるのかしら?」
「その質問は何回目だい?」レオンは唇の端を上げて言った。
「え?」クレオは虚を突かれたように言葉を止めた。
「君は僕にその質問を少なくとも5回はしている」
「5回も・・・?」
「憶えていないのかい?何度も聞かれて、僕はついに答えを導いたよ」
「今、初めて疑問に思ったのよ」
「いや、5回目だよ。僕たちの記憶は非常に曖昧だ。たとえば、君はいつからここに居る?」
「いつから?さぁ。いつからかしら?」クレオは思い出そうとしたが、痺れるような感覚に邪魔をされた。
「なぜここに居る?」
「なぜって・・・」
「ここはどこなんだろう?」レオンがたたみかける。
「ここ?ここは・・・」クレオの記憶は霧がかかったように霞んでいる。痺れが増し、考えようとする気力も弱くなる。
「ほらね、僕たちの記憶は曖昧だ。毎日の繰り返しの日課や、生活の基本的な習慣や物事はちゃんと覚えているのに、過去の記憶は部分的で、しかもきわめておぼろげだ。少し前の出来事だってどんどん忘れていっている。人の名前や顔も怪しくなっていないかい?」
「そうね。日頃顔を合わせる人は大丈夫だけど・・・」
 レオンは満足そうに頷いて続けた。「そしてここへ来てから、君も僕も歳を取っていないよね?」
「え?」クレオは一瞬絶句した。「そう言えば・・・でもそんなこと疑問にも思わなかった」
「ここでは生き物は年を取らない。たぶん老化と記憶というものには密接な関係がある。老化をしないように細胞をどんどん新しくすれば、それに伴って記憶も定着しない。だから、記憶は非常に曖昧になる。曖昧になれば疑問も湧いてこなくなり、疑問を追及することもなくなる」
「そう言えば・・・」
「そのことに気づいてから、僕は細かく記録を付けているんだ。そして必要に応じてそれをチェックしている。だから君のその質問がもう記録をつけ始めてから5回目だということもわかるんだ」
「記録を?見せて欲しいな」
「お望みなら・・・」レオンは懐から大判の手帳を取り出した。
 よく見かける一般的な黒い表紙の手帳だったが、クレオは手帳というものをいつから知っているのかも記憶に無い事に気がついた。
 表紙を開けると几帳面な小さい文字がびっしりと書き込まれている。文字であることはわかるが、クレオには全く読めない。パラパラとめくっていくと図や挿絵が書かれた頁もあり、中には見覚えのあるものも見受けられる。
「これは記憶にあるわ。麦の収穫機ね。あなたが作った物の中ではこれが一番役に立っている」それは実際クレオ達が使っている麦を収穫するための大型機械のスケッチだった。
「お褒め頂いて光栄です」レオンはまた丁寧に頭を下げた。
「このはばたき機械は、たしか飛んだわよね」
「仰せのとおり」
「そしてこれは浮きもしなかった飛行機械。全然だめだったわね」
「面目ない」レオンは照れくさそうな顔をしたが、話題を戻した。「君の質問に戻ろう。我々が取られることはあるのか、という質問だったね」
 クレオは黙って頷いた。
「僕は“取られる”という事態に至るには、記憶というものが重要な要素になっていると考えている」
「記憶?」
「“あちら”の世界に生きるものの記憶にどれだけ残っているか、というより、どれだけ時空を歪ませたか、によるのか・・・な」
「歪ませる?」
「あらゆる生命は大なり小なり時空に歪みを与える。その中でも我々人間は特に影響が大きい。そう考えると辻褄が合う」
「・・・」クレオは静かに頷き、先を促す。
「人間以外の生き物は、概ね本能のままに生き、子孫を残し、そして行き終える。だが人間は違う。多種多様な有形無形のものを生み出し、それを記憶や記録に残し継承する。これらはやはり時空に対する歪となるんじゃないだろうか?」
 レオンはクレオの理解が落ち着くのを待ってから続けた。
「やがて生き物は例外なく生き終えて“こちら”にやって来る。そして老化も記憶も無い浮世のような生活を送るんだ。そして“あちら”の歪が緩和された時点で、また“あちら”へ送り込まれる」
「それが“取られる”という事なの?」
「大きな歪みを起こしてしまうと、その歪みが緩和されるまでに長い時間が必要になる。だから必然的に長期に渡って“こちら”側で留め置かれる。僕はそう考えている」
「私とあなたはもう記憶にないほど長くここにいるわね。ということはそんなに歪ませたって事?」
「たぶんね。以前、君に残っている“あちら”の記憶について聞いたことがあるんだが、それから推測するに君はどこかの国の女王だったんじゃないか?」
「女王?それくらいでこんなに歪ませられる?」
「たぶん、君はその美貌を駆使して、とんでもなく波乱に満ちた生涯を送ったんだと思うよ」
「私が?」クレオは微か残る記憶の断片を繋ぎ合わせたが、レオンの説との矛盾点は見つけ出せない。
「じゃぁ、あなたは?」
「僕かい?僕はさしずめ発明家か科学者だったんじゃないかな。しかもとんでもなく偉大なね」レオンは臆する様子もなく言ってのけた。
「画家でもあったのかもしれないわね。あなたの絵の才能も素晴らしいわ」クレオはレオンのモデルになったことがあった。絵はいまだに完成していないが、その描写の巧みさには舌を巻いていた。
「いたみいります」レオンはまたまた仰々しく頭を下げた。
「でも、“取られる”時期を決めるのは誰?まさか神・・・とか?」
「それが僕や君がイメージする神と同じなのかどうかはわからないが、何らかの理論と力が存在するのは間違いない。好奇心を刺激されるね」レオンは生き生きとした表情で言った。
「レオン、あなたは凄い。ここでは記憶を留めるのが難しいし、何かを考えようとすると痺れのような感覚に襲われる。それでもいろいろなものを発明し、こんなことまで考えるなんて」
「困難は発明の母だからね」クレオはニヤリと笑った。「実を言うとこの説明ももう3回目なんだ。君は覚えていないと思うが・・・」
 クレオはヤレヤレというふうに頭を振った。
「さてもうこんな時間か・・・夕食に出かけないか?」レオンが水平線に近づきつつある太陽の方を見やりながら言った。
「そうね。行きましょう。今夜はどんな話を聞かせてくれるのかしら?」クレオの表情は魅惑的だ。クレオはこういう表情を無意識に作り出せる。
「そうだな。今夜はあの紺碧の大海原の向こうの話でもしようか?」レオンはそれを全く意識する様子もなく軽い調子で言った。
「その話は何回目なのかしら?」
「はは、これは初出だよ」
 2人は並んでテラスを出た。

 夜明け前、集落は海霧の中にあった。
 すべての建物は霧の中に沈んでいる。
 暖かい湿った空気の塊りがこの集落を訪れたのだ。ここ数日このような状態が続いていたが、今朝はとりわけ霧が深い。
 あらゆるものは形を失い、存在すら失ったかように何もかもが静かだ。
 やがて上層の霧が薄れ始めると、集落は雲の上に頭を出した。
 太陽が昇り始める。
 建物は太陽に照らし出さてれて白銀に輝き、雲海の上に浮かび上がる。
 高度を上げた太陽は窓から差し込み、ベッドに眠る1人の女を照らし出す。
「う・・・ん」眩しさに目を覚ましたクレオは一瞬混乱した。
 見覚えのない天井が見えたからだ。
 だが混乱は一瞬だった。
『そうだ。ここは工房の2階だ』昨日は散々薄れていく記憶の話をしたのだが、これくらいの記憶は保つことはできるようだ。
『飲みすぎたのかな』鈍い頭痛が残っている。
 昨夜はいつもより話が弾んで酒の量が増えた。遅くなったうえにレオンの足元がおぼつかなくなったので、クレオが工房まで送っていくことになった。工房に着いたころにはクレオの方も酔いが回って、そこからの記憶がはっきりしないが、何が起こったのかは想像がつく。
 レオンはそっちの方には関心がないと思っていたが、そうではなかったようだ。
『両刀使いだったのか・・・』クレオは小さく苦笑いをした。
 クレオは掛け布団を横にどけて起き上がり、部屋をゆっくりと見渡した。
 部屋は引っ越しの後のようにがらんとして妙に寒々しい。たくさん置いてあった模型、本棚に並んでいた本、机の上に山積みになっていた書類やメモ、壁にかかっていた絵、すべてが消えている。
 レオンの姿もない。
 クレオは慌てて自分の持ち物を確認した。ベッドのすぐ横の床にはクレオの着ていた服と靴が乱雑に置かれている。クレオは少しホッとした顔になってベッドを降り、服を身に付けようと手を伸ばした。
 服を持ち上げると黒くて四角いものが床に落ちた。
 昨日見せてもらったレオンの手帳だ。「これを進呈しよう」昨夜、新説発表の機会を得て上機嫌だったレオンにもらったものだ。昨夜このノートには、新説に関するレオンの図や挿絵に加えて、クレオがメモを書き込んでいる。
 クレオは急いで服を着ると、それを胸に抱いた。
「行ってしまったか・・・」クレオは自分に言い聞かせるように呟いた。
「“こちら”でも歪みを溜めすぎたのか?レオン、あなたはあらゆる予想を超える男だな・・・また会いたいものだ」クレオはもう一度レオンの部屋だった空間を見渡してから、工房への階段をゆっくりと降りていった。


2017.10.27
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小さな物語が書き上がりました

小さな物語が書き上がりました。
今宵はそれをUPさせてもらいます。

「太陽風シンドローム」シリーズの1編ですが、今回は少し変わった書き方をしています。
設定が複雑だったこともあるのですが、全体の大まかな流れだけが決まっていて、細部の理論構築や理屈合わせが残ってしまったんです。
そこでまずオープニング部分数行を書き上げました。オープニングがなければサキは物語が書けませんから、このパーツは絶対必要です。その後、ヒロイン(やっぱり女性ですね)の決め台詞だけを前半・中盤・後半に書き込み、次にエンディングを書き上げました。
そしてその台詞やパーツの前後に少しずつ対応する台詞を繋げたり、流れを追加したりしてストーリーを広げていき、最後にこの5つのパーツを連結したのです。
長大な橋梁には、まず橋脚を立てて、そこから弥次郎兵衛のように両側に向かって橋桁を伸ばし、最後にそれぞれの橋桁を連結して完成させる工法がありますが、まさにそれですね。
サキが最初から順番に書いていくと、途中で話の流れが変わってしまって、全然別のエンディングになってしまう事もあるんです。この3カ所の台詞は話の流れをピン止めするような役割を果たし、流れをどこかへやってしまわないように纏めることができたかな、と思っています。
これだけやっても突っ込みどころはまだ残っていますが、短い物語のなかでは細部まで説明できませんでした。おおらかな心で読んでやってください。

よろしければ下のリンクからお進みください。

ホムンクルスの夢
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プロフィール
こんにちは!サーカスへようこそ! 二人の左紀、サキと先が共同でブログを作っています。

山西 左紀

Author:山西 左紀
「山西 左紀について知りたい方はこちら」
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アスタリスクのパイロット、アルマク。キルケさんに書いていただいたイラストです。
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左からシスカ、サヤカ(コトリ)、サエ。ユズキさんにイラストを描いていただきました~。掌編「1006(ラグランジア)」の1シーンです。
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