Debris circus

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頭の中に散らばっていた破片(debris)を改めて文章に書き起こし、オリジナルブログ小説としてサーカスの舞台に上げていきます。読みにくいものもありますが、お暇な時にパラパラとめくる感じででも読んでいただけたら嬉しいです……

 

物書きエスの気まぐれプロット(24)Breaking Silence

Breaking Silence

「汝は何のために存在すると思っているのだ」カタリ神祇官の声は大きくなった。
 神祇官の前には1人の少女が神妙な面持ちで立っている。少女と言っても、まもなく青年の域に達しようとしているように見えるから13・4歳くらいだろうか。
「生まれたばかりの汝を聖女ナルファイが抱いてこの門をくぐりてより、ここバンガイル教会付属神学校が汝の故郷であり、汝の進む道を示す標であったはず」神祇官の頭部は頭巾で覆われ、そこには二つの眼だけが冷たく光っているだけだ。言葉を発しても口元の布がわずかに揺れるだけで、その表情を読む事はできない。
「やはりその右の黒い虹彩は、汝が望まれし者ではなかったことを暗示していたのだ。汝がここへ召された時にそれに気づくべきであった。やはり両目とも聖なるブルーである必要があったのだ。いくら白い髪とブルーの虹彩を持っていても片方ではやはり不完全であった。一点の欠点もあってはならなかったのだ」神祇官はそこで言葉を一旦止めると、汚らわしいものに投げつけるように声を張った。
「汝は異端になりさがった。もはや祝福も望めぬと知れ!」
 少女は恐怖に身をすくめた。
「汝は罰を受けなければならない。破門の後、奈落に堕ちるだろう」
 少女は両手を胸の前で合わせたまま崩れるように床に膝を着いた。
「明朝処分を申し渡す。それまでこの塔を出ることは禁ずる。静かに沙汰を待つがよい」神祇官はクルリと背中を向けると重いドアの向こうに消えた。鍵の落ちる音が大きくホールに響き、少女は薄暗い塔の内部に1人残された。

 少女はそのままの格好を暫く続けていたが、やがてゆっくりと立ち上がった。ドアに近づいてノブを引いてみるが、ドアはピクリともしない。
 塔のホールは赤い超々ジュラミック煉瓦の壁に囲まれた直径20メートル程の円筒形の空間だった。空間は塔の上部に向けて続いていて、その壁から突き出した太い角材が塔の上部に向けて螺旋状に連なっている。角材を踏み段にして塔の上部に登れるようになっているのだ。塔は高さ300メートルはある巨大な物だから、螺旋状に続く踏み段は300メートル程の高さまで続いていることになる。だが下の方にしか照明が点いていないので上部は暗くて見えない。
 少女は壁に近づいた。螺旋状の踏み段は高さ4メートル程のところまで降りてきて、そこで途切れている。そこから下は、どこかで操作をすれば壁から角材が突きだして踏み段が繋がるようになっていて、普段は登ることができないようになっている。少女は階段の真下に立って手を上に伸ばしたが、踏み段までにはまだ相当な空間が残されている。壁を登ろうとしてみるが、掴まれるような手掛かりはない。少女は煉瓦の隙間に指をかけ、なんとか壁を登ろうとする。何度かそれを繰り返すが結果は同じだった。
 少女は反対側の壁に目をやった。そこには6人の偉大な使徒に囲まれた主が図案化されたタペストリーが掛かっている。一片が5メートルはある大きな物だ。少女は暫くの間それを見つめていたが、意を決したようにそれに近づき、少し飛び上がってその下の端を掴んだ。ぶら下がったまま壁を足で蹴る。何度もそれを繰り返すと、やがて大きな音と共にタペストリーは少女の上に落下した。大量の埃が舞い上がる。激しく咳き込みながら少女はタペストリーの下から這い出した。
 埃が治まるのを待って、それを棒状に丸く巻いて行く。巻き終わるとそれを持ち上げようと両手で抱え上げる。踏み段に立てかけようというのだ。だが予想以上にタペストリーは重い。息を切らして持ち上げたり引きずったりしてみるが、ほとんど動かすことは出来ない。何度も何度もそれを繰り返す。あらためてホールを見渡しても、他に使えそうな物は見当たらない。やがて少女は諦めたのか、タペストリーを少し広げるとその上に横になった。荒い息はやがて収まり、呼吸は穏やかなものになる。少女は不安そうな目で上空を見上げながら考える。左目が聖なるブルーだとしたら、この焦げ茶色の右目はなんだというのだろう。奈落とはどんなところなのだろう。少女は疲れ果てていた。意識は遠ざかり、静かな寝息が聞こえ始めた。

「おい!君」ホールに大きな声が響く。
 少女は驚いて目を開けた。慌てて体を起こし、あたりを見渡す。いよいよ奈落に落ちるときがやって来たのか、少女は無意識にカタリ神祇官の姿を探す。キョロキョロとあたりを見渡す少女に「こっちだよ」と声が降ってくる。
 塔の上から下ってくる螺旋状の踏み段の一番下に人影が見える。少女はようやくそれに気づき、その侵入者を見た。カタリ神祇官じゃない。もっとずっと若い少年だ。いや、ひょっとすると女の子?少女には判断がつかなかった。それくらい中性的に感じられる。歳は少女と同じくらいだろうか。
 このホールには入り口は1つしか無い。踏み段に座っているということは塔の頂上から降りてきたのだろうか。いや、それ以外に考えられない。いずれにしろ、まだ奈落に落とされる時間ではないようだ。少女は少しだけ落ち着きを取り戻した。
 少年は踏み段の一番下の段に腰掛け、足をブラブラと揺らしていた。「こっちに来いよ。顔を見せてよ」少年が言う。少女はホールを横切って踏み段の真下に立った。
「ふむ・・・」少年は少女の顔をじっと見つめる。
 少女もその顔をじっと見上げる。長く伸ばした真っ黒な髪は首の後ろで1つに束ねられ、鼻筋の通った端正な顔には茶色の虹彩を持った一対の目が聡明そうな光りを放っている。
 少年は暫くの間少女の顔を観察してから唇の端を少し上げ「その白い髪、焦げ茶色とブルーの目、やっぱり君はきれいだ」と言った。
 少女は始め何を言われているのか理解できなかったが、長い時間じっと見つめられると、やがてゆっくりと記憶が蘇る。遙かな過去の微かな記憶だ。少女はゆっくりと頬を染めた。
「気がついた?ヨウコという名前を出せばもっとはっきりする?」その様子を見て少年は言った。
 ヨウコ?そう言われれば少女にも名乗るべき名前があった。それは自分の通り名ではない全く別の名前だ。そしてこれまでその名を口に出したことはない。今こそそれを名乗るべきなのだろうか。少女は躊躇っていた。
「500年経ったということ?」少女は記憶にしたがってものを言う。
「さあね。そんなこと、誰にもわからないよ。それよりここを出よう。もうすぐ夜が明ける。そうしたら君にとってまずいことが起こるんだろう?」
「うん」少女は小さく頷いた。
「さあ」少年はロープを床まで垂らした。「それに体を結わえるんだ。早く」
 少女はそのロープを拾い上げると自分の胴回りに巻き付けた。そして両手でロープをしっかりと掴む。
「じゃあ、いくよ」そう声をかけてから少年はロープを引っ張り始める。少女は足で壁を支えながら踏み段の上に引き上げられた。
 躊躇いは消えていた。少女は少年としっかりと抱き合った。


「ふうん。この子、例のあの子なんだよね」モニターのテキストファイルを読んでいたコハクが顔を上げた。
「わかる?!わかる?!」エスが嬉しそうに繰り返す。
「そしてもう1人が500年後の約束のあの子?」
「そう、そうなんだ。よかった」エスは安堵の顔になった。「わかってもらえなかったらどうしようって心配してた」
「まぁ、読んだことのある人なら普通分かると思うけど」コハクは冷静だ。
「じゃぁ、読んだことのない人だったら?」エスはコハクの顔を覗きこむ。
「それは諦めてもらわないと。何のことだかわからないうちに終わってしまうと思う」コハクは極めて冷静に答える。
「だよね」エスは小さくため息をついた。「でも、しょうがないんだ。これはお題を受けて書いたSSだから」
「お題って、いつものキリ番イベント?」
「選択してもらったエスのオリキャラがこの子で、出してもらったお題が“思わず顔を赤らめちゃった事”だったんだ」
「へぇ!面白いね。あの子が顔を赤らめるなんてちょっと想像できない」コハクは少し口調を変えた。
「人ごとだと思って~。なかなかの難題だったんだよ」
「そうだね。でもこんなシチュエーション、考えもしなかった。エスも驚いたんじゃないの?」
「お題をもらった時はわくわくしたんだよ。でも、すぐに途方に暮れたの。正直」
「それで捻り出したのがこれ?」コハクは呆れ顔になった。
「そう!・・・彼女はこうでもしないと顔を赤らめないんだもの」
「よくやるよ。でも、これって別の物語の世界なんじゃない?町の名前も同じだし」
「そこまでははっきりさせなかったんだけど、意識的にはそう。この後300メートルあった塔は崩壊することになるんだ」
「エスは物語で遊びまくってるね」
「どうせなら、楽しく書かなくっちゃ。で、どう?」エスは我慢できなくなって、またコハクの顔を覗きこんだ。
「どうといわれてもねぇ・・・」コハクは軽く受け流す。
「え~っ!なにか意見を言ってよ」
「意見ねぇ・・・」コハクは目を細くしてエスを見た。
「もう!意地悪。今日のおやつは取り上げにするよ」
「どっちが意地悪なのよ」コハクは吹き出しそうになりながら答えた。

2016.06.13
2016.06.14 若干の追記と校正をおこないました。
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22222HIT企画第一弾発表です!

こんばんは、今夜は22222HIT企画の第一弾を発表します。
八乙女夕さんのところの77777HITに比べると小さな数字ですが、まぁサキなりに頑張ってきた結果ですからね。

さて、第一弾ですが。リクエストをいただいたのはlimeさん、オリキャラは「シスカ」そしてお題は「思わず顔を赤らめちゃった事」でした。
ここのところ更新が滞っていたのは、このお題に悩んでいたからですが、なんとかひねり出しました。ずいぶんお待たせしてしまいました。申し訳ありません。
若干の変化球で、リクエストをいただいたlimeさんのイメージとは違った形のリターンになっているかもしれませんが、楽しんでいただければ幸いです。

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物書きエスの気まぐれプロット(24)Breaking Silence
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ここのところ・・・

日本(近畿)は梅雨です。うっとうしい季節ですが皆様元気にお過ごしでしょうか?
ここのところ、サキはTOM-Fさんのリクエスト(22222HITイベント)を少しずつ書いています。少しずつなのは、展開がとても難しいからです。
展開と言えば、ここのところ世界がザワザワしていますね。テロや難民問題もありますが、それに端を発してEUはなんだか揉めていますし(どうするつもりだろう?)、声の大きな国や人が主張を強めていますし(サキは基本的に宣伝カーのうるさい候補者は支持しません)、いったい世界は、そしてサキの住む国はどうなっていくんでしょう?なんだか不安な今日この頃です。
「選ばれた選択肢が正解になるように努力するのが政治家だ」なんてどこで聞いたのか忘れてしまいましたが、選ばれた政治家の方々、そうなるように努力してくださいネ。今度の選挙、サキも心して選ばせていただきますから。
さて、小難しい話はここらにして、執筆の話に戻ります。
TOM-Fさんのキャラクターリクエストは「アルマク」なので必然的に物語は
「アスタリスク」になります。お題は「おしとやか」ですから、アルマクをご存じの方にはおわかりでしょう?そうです、アルマクに存在しない“おしとやかモード”を作り出すことに四苦八苦しているのです。ついこの間シスカの“顔を赤らめるモード”を作り出したばかりですから、またまた頭を絞ることになって熱がでそうです。
でもね、これがまた楽しい時間なんですよね~。結構サキはSかも・・・・。
一生懸命悩んでいますから、発表までもう暫くお待ちください。

アルマク達が生きているような未来がちゃんとやって来ますように。
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プロフィール
こんにちは!サーカスへようこそ! 二人の左紀、サキと先が共同でブログを作っています。
ようこそ!


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アスタリスクのパイロット、アルマク。キルケさんに書いていただいたイラストです。
ラグランジア
左からシスカ、サヤカ(コトリ)、サエ。ユズキさんにイラストを描いていただきました~。掌編「1006(ラグランジア)」の1シーンです。
天使のささやき_limeさん2
limeさんのイラストをイメージにSSを書いてみました。「ダイヤモンド・ダスト」
イラストをクリックすると記事に飛びます。よろしければご覧くださいネ!
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シスカ・イメージ limeさん作 コトリ・イメージユズキさん作
コトリ(コンステレーションにて)ユズキさん作
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