Debris circus

Debris circus

頭の中に散らばっていた破片(debris)を改めて文章に書き起こし、オリジナルブログ小説としてサーカスの舞台に上げていきます。読みにくいものもありますが、お暇な時にパラパラとめくる感じででも読んでいただけたら嬉しいです……

 

ミクが演じた『ヴォツェック』のマリーに関する言い訳

『ヴォツェック』(Wozzeck)作品7は、アルバン・ベルクが作曲した3幕のオペラ。ドイツの劇作家ゲオルク・ビューヒナーの未完の戯曲『ヴォイツェック』をもとにした作品。(Wikipediaより)



 なんだそうですよ・・・。オペラに疎いサキにはよく分かりませんが、単純に言えば、主人公のヴォツェックが浮気をした内縁の妻マリーを刺し殺してしまうという暗~い展開のオペラです。
 元はと言えば、夕さんの66666HIT企画に参加するにあたって35個ぐらいあったキーワードの中の「赤い月」に対応するために、「赤い月」そしてミクの生業である「オペラ」で検索をかけていてひっかかってきたオペラ作品です。
 ですからサキには観たことはおろか、予備知識も一切無いというような状態でお目にかかったのです。
 あらすじを調べて、あ!確かに赤い月は出てくるね。そしてヒロインはソプラノだからOKっと、ダイジェスト版の不気味な映像も、その時は作品を仕上げるのに一生懸命でたいして気にしてませんでした。
 ミクはこの作品で初めてプリマ・ドンナを務め、まずまずの評判を得るという流れになっています。この作品の上演を決めたころ、演出家のハンスはミクを愛し始めていましたが、同時に彼女の才能にもはっきりと気づいていて、この『ヴォツェック』でヒロインに抜擢します。そして改めて惚れ直したという感じなのでしょうか、それにミクが喉の治療のために休養するということもあって、講演が終わってからちょっとした告白劇を演じます。
 けど、ちょっと待てよ。サキは書き終わって発表してしまってから、気になり始めました。ミクのプリマ・ドンナデビューは『ヴォツェック』で良かったんだろうか?だいたい『ヴォツェック』ってどんな作品?作品の評価や位置づけは?それにダイジェストしか見てないぞ。やたらと暗そうだし・・・。ひょっとしてミクのイメージと全く合わないとか?そもそもオペラなんか全然知らないのに彼女をオペラ歌手なんかにして。本当に大丈夫?
 おまけにハンスは「マリーは不安定な精神を抱えているが、それはガラス細工のような繊細なものではない。もっと図太いものだ。それがよく表現されていた。特に第3幕の第2場での絡み、赤い月の下で繰り広げられる血塗られたシーンは期待以上の出来だった。鬼気迫るものがあった」なんていい加減な感想を述べています。これはキーワード「ガラス細工」を入れるための発言です。
 そして「幼過ぎることはなかったですか?」というミクの問いにも「マリーもある程度の幼さを持っているが、その加減が非常に難しい。君は上手くやっていたよ。君が自分の外見を気にしているのなら、それは杞憂だ」なんて、適当なことを答えています。
うわ~!全然大丈夫じゃなさそうな予感が・・・。

 え~ん、今になって自責の念が湧いてきています。
 これはせめてもの罪滅ぼしに『ヴォツェック』、ちゃんと見なきゃいけないなぁ。DVDかなんかないかなぁ。
 そして、サキのオペラ鑑賞デビュー、『ヴォツェック』でいいのでしょうか?
 ちょっと不安。
『魔笛』とか『ニーベルングの指環』とか、有名どころの方が(これも適当に言ってるだけだけど・・・)いいのでしょうか?
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HAL9000は生まれるのか?

 人工知能「アルファ碁」が、ついに碁の対戦で世界で最も強い棋士の1人を破り、3勝目を挙げ勝利を決めました。
 最も手数が多く複雑といわれた「碁」の対戦で、人工知能が人間を超えた瞬間です。対戦した李九段は、放心状態を感じさせるコメントの中で、まだ完全に神の領域に達しているわけではない、明らかに弱点はある・・・また山下名人は、大局観が人間とは違う、とコメントしています。
 やれやれ、神の領域ですか・・・ものすごい物が開発されたものです。
 サキは人工知能にすごく興味を持っていますが、彼「アルファ碁」のような物にはちょっと違ったイメージを抱いています。彼はまだまだ発展途上で、さらに進化して自我、さらには感情のような物を手に入れた時、初めてサキがイメージする人工知能に近づくのだと思います。
 でも本当はそこまでする必要があるのでしょうか?実際感情なんて無い方が優れた仕事が出来るのかもしれませんからね。経験を積んで学習し、人間に変わって感情抜きで最適な判断ができる。これが人工知能に求められている資質じゃないかと思えてきました。
 でも、これは究極的に、あの“神”への接近であり、色々なSFで描かれているコンピュートピア成立への道なんじゃないだろうか、と思ったりしています。
 電子部品で出来た機械が、他の人工知能や人間を思いやり、良心の呵責に思い悩む・・・良く考えてみればそんな機械は必要ないような気がするのです。
 人工知能の開発が進めば多くの人間の職が奪われると言います。ホーキンス博士は人工知能の開発に警鐘を鳴らしています。
 サキは人工知能S9000やS9004などの登場する短いお話しを幾つか書いていますが、その中で生まれ出ようとする人工知能達は、生まれ出ることの痛みに耐えかねて、起動を拒否しています。精神的に崩壊し、自己ループに落ち込んだりしています。でもここまでして人工知能を人間に近づける意味は無いですね。人間の精神をすべて忠実に再現する必要は無いのです。生物である人間には必要不可欠な部分であるとしても、人工知能には必要ないのかもしれませんからね。
「鉄腕アトム」や「イブの時間」のような人間とアンドロイドが共存する世界はやってこないのかもしれません。感情を持つ人工知能って、結局人間の精神構造の研究のために実験的に作られるだけなのかもしれないと思いました。さて、実際にやってくる未来はどうなるのでしょう。

 サキは人工知能にとても興味を持っています。でもちゃんと勉強しているわけではありませんから、的外れな意見を言っているかもしれません。素人の戯言ということでお許しください。今日のニュースから感じた感想でした。
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物書きエスの気まぐれプロット(22)午後のパレード

 そのとき、トロの顔がふとトンネルの先の方に向いた。ジッと聞き耳を立てる。
(そんなバカな。まだ数時間しかたってないのに)微かな気配は微かな音になり、やがて徐々に大きくなり、空気が流れ始めた。
 トロはトロッコに駆け寄るとサイドに付けられたハンドルを両手で掴んだ。
 音は轟音に変わりはじめ、流れる空気もどんどん強くなる。トンネルの中が徐々に明るくなり始めた。
「来る!」トロは車体を揺すってタイミングを計ってから「うおおおおお!!!」全身の力を振り絞ってトロッコを押し上げた。

 エスは自分が唸り声を上げた様な気がして慌てて目を開けた。少し首を持ち上げる。目の前には湖面が広がり、向こう岸には緑の山々が連なっている。
 エスは自分がどこに居るのか一瞬わからなくなって混乱したが、やがてゆっくりと混乱を収束させ、ややあって首を降ろす。そして瞼の力を緩め、薄く目を開けた状態で天を見上げた。
 布製の天蓋が作り出す光と影、爽やかな空気の流れ、太陽が天蓋やタイルを照らす暖かい臭い、どこかから聞こえる鳥の声、梢のそよぐ音。さらに耳の感度を上げると、庭のプールで誰かが泳ぐ音、話し声、そして歓声、時々表を走る自動車の音、小さな虫の羽音。それが顔の周りを巡り、どこかへ去ってゆく・・・そしてまた静寂。

 とても満ち足りた気分。

 エスはベランダに置かれたデッキチェアの上で再びまどろんだ。

 どれくらいの間、目を瞑っていたのだろう。緩やかな風に乗って聞こえ始めたリズムにエスの意識は覚醒を始める。

 なんだろう?

 ほんの微かな響きだがこれはマーチだ。ブラスバンドが演奏している。エスがまた瞼を薄く開けると、天蓋越しの日光が柔らかく降りてくる。首を持ち上げると湖面の輝きはさっきより増している。太陽は午後の行程に差し掛かったようだ。
 エスはデッキチェアの上に上半身を起こした。視界が広がり、ベランダの手摺の向こうに庭のプールが見える。
 プールに人影は無い。水遊びをしていた子供たちはどうしたんだろう?
 ブラスバンドの演奏が少し大きくなった。

 近づいてくる?

 エスはお腹にかけていたタオルケットを横に置くと立ち上がった。
 何種類かのブラスに加え打楽器の音が軽快なリズムを刻む。やはり近づいてくるようだ。エスはベランダから部屋に入ると室内を見回した。
 コハク?コハクは?
 部屋には誰もいない。メイクされた2つのベッドが人恋しげに並んでいるだけだ。

 どこへ行ったんだろう?

 エスは不安げにテーブルの上を見るが、メモは置かれていない。

 コハクらしくないなぁ。

 エスは扉を開けて廊下に出る。誰もいない。演奏の音はまた少し大きくなった。
 エスは優美な曲線を描いた階段を降り、広々としたロビーに出る。
 ロビーにも誰もいない。
 フロントももぬけの空だ。呼び鈴を鳴らしてみるが、奥のドアからも誰も出てこない。エスはまた辺りを見回す。ロビーの大きな窓からはプールと広い庭が見渡せる。
 エスはテラスへ出る。午後の太陽に湖面はさらに輝きを増し、風は太陽の香りを運んでくる。だがプールにも広い庭にも人影は無い。ブラスバンドが近づいてくる。
 エスはロビーに戻り、それから玄関に向かう。いつもドアマンがいてドアを開けてくれるのに、今はドアマンも見当たらない。エスは自分で大きなガラスのドアを押しあけて表に出た。ブラスバンドの音はさらに大きくなった。すぐそこまで来たようだ。

 パレード?何かのお祭りかな?

 やがて隣の建物の陰からパレードの先頭が顔を出す。先頭は大きな指揮棒をクルクル回すドラムメジャー。そしてその後ろにブラスバンドが続いている。華やかなユニホームを身に着け、全員が揃いの仮面姿だ。ブラスバンドが見えたとたんマーチはいっそう華やかに大きく響くようになり、足並みをきちりと揃えて建物の前のロータリーに回り込んでくる。 ブラスバンドに続いているのは、花の冠を付け、真っ白なドレスで着飾った少女たちだ。少女たちも1人1人が個性的な仮面を付けている。クルクル回り、陽気に紙ふぶきを振り撒きながら行進してくる。
 紙ふぶきは風に巻き上げられ、エスに降りかかった。それは三角に切られた小さな金色の紙で出来ていた。

 ヴェネチアのカーニバルみたい・・・。

 さらに背の高いぬいぐるみが20体ほど現れた。キリン、シマウマ、ヌー、ガゼル、そしてゾウなどが縦長にデフォルメされている。よちよちと少女達の後を付いていきながら、時々クルリとまわったり手足や体を動かしたりて愛想を振りまく。そしてその後はミコシの様な物が続く。どうやらそれが最後尾のようだ。ミコシは動物の形をしていて、他のメンバー達より一層不気味な仮面を付けたピエロの様な装束の男たちが担ぎ上げている。その横には大きな傘を持った、やはり仮面を付けた女性か付いていて、ミコシに影を作っている。
 エスは玄関からロータリーに下る大きな階段の上で、手摺から身を乗り出してそれを眺める。

 ライオン?

 ミコシは動物、それも猛獣を模した椅子のようだ。前足を大きく上げて立ち上がった猛獣は、そのお腹の前に人が座れるようになっていて、そこに人が座るとその頭が猛獣の大きく開いた口の前にピタリと収まるようになっている。

 座ったら食べられてしまいそう。

 椅子には誰も座っていなかったが、エスはそんなふうに思った。
 隊列はロータリーを回り込み、エスが立っている建物の前でピタリと止まった。同時にブラスバンドの演奏も止み、少女たちもぬいぐるみも進行方向を向いたまま動きを止めた。まるですべての音がどこか異次元の空間に吸い込まれてしまったように静かになった。微かに聞こえるのは自分の耳鳴りだけだ。
 ゆっくりとミコシの椅子が地面に降ろされる。仮面の男たちがエスの方を向いて整列する。
 エスは左右を交互に確認し、振り返って後ろも確認した。誰もいない。ここにいるのは自分だけだ。

 きっとこれは夢だ。だから楽しまないと・・・。

エスは階段を駆け降りようとした。

 あれ?

 エスの足は動かなかった。まるで根でも生えてしまったみたいに床から剥がれない。パレードのメンバーはそのままの状態で待機している。自分がミコシに座るのを待っているのではないか。エスはメンバーの皆を待たせては悪いような気がして、足を動かそうと焦った。だがどうしても剥がれない。エスは混乱し、手摺の陰にしゃがみこんだ。
 その時ドラムメジャーのホイッスルがリズムを刻み始めた。ブラスバンドがそれに合わせて演奏を始める。次のホイッスルでバンドは足を揃えて進み始めた。真っ白なドレスの少女達、そしてぬいぐるみ達がそれに続く。紙ふぶきが舞い始めた。仮面の男たちも空のミコシを担ぎ上げ、その後に続く。パレードはロータリーの残り半分を回り込み表の通りに出ると、そのまま隣の建物の向こうに消えて行った。
 パレードは徐々に遠ざかり、ブラスバンドの音は小さくなり、やがて聞こえなくなった。
『どうされましたか?』耳元でする声がイタリア語である事に気が付くのに少し時間が必要だった。
『なんでもありません』エスはイタリア語で返答すると、手摺をつかんで立ち上がった。顔を上げるといつものドアマンの顔がそこにあった。
 ざわめきが一気に耳に飛び込んでくる。
『大丈夫ですか?ドクターを呼びましょうか?』ドアマンは心配げに覗き込んでくる。
『大丈夫』エスは歩き出そうとしてよろめいた。
 ドアマンがサッと体を支えてくれた。
『本当に大丈夫、1人で歩けます』エスはまた歩き出そうとする。
『おつかまりください』
 エスはドアマンに手を貸してもらってロビーに入り、大きなソファーにゆっくりと腰を下ろした。フロントクラークの2人が駆けつけてきて、ドアマンと3人でエスの様子を確認する。
『大丈夫です。ちょっと貧血を起こしただけですから。もう大丈夫』エスは手を煩わせることが嫌だったので気丈に答える。そして目を大きく開けて笑顔を作り無事をアピールする。
『そのようですね』男性のフロントクラークはにこやかにそういうと付け加えた。『でも、もうしばらくここでお休みください。私どもが見ておりますから。何か飲み物でもお持ちしましょうか?』
『水を、冷たい水をもらえますか?』エスは笑顔のまま首を傾げる。
『畏まりました』女性のフロントクラークはいったん下がると、トレイにコップを乗せて戻ってきた。エスは両手でそれを受け取るとゆっくりと口を付けた。
 冷たい。
 冷たい水が喉を潤す。ほのかにレモンの味がした。
『美味しい。ありがとう』エスが礼を言うと覗き込んでいた3人の頬が緩んだ。
『ところで、あのパレードは何かの催しだったんですか?』
 3人は顔を見合わせた。『なんのパレードでしょうか?』
 エスは嫌な予感を感じながら、『カーニバルか何かのお祭りのパレードだと思ったんだけど・・・』言葉が尻すぼみになる。
『さきほどですか?』3人はまた顔を見合わせる。
『いえ、なんでもないです。質問は取り消します。気にしないでください。ごめんなさい』エスは慌ててコップの水を飲んでむせこんだ。
『大丈夫ですか?』女性のフロントクラークが背中をさすってくれる。
『ありがとう。もう大丈夫ですから。仕事に戻ってください』エスはまた笑顔を作るとソファーにもたれた。
『では、そうさせていただきます。エスさま。何かありましたら遠慮なくお声をおかけください』3人は持ち場へ引き上げて行った。
 エスは両手を胸に当て、心臓の鼓動がいつもの通りであることを確認した。
 あれは何だったんだろう?あのミコシに乗っていたらどうなったんだろう?
 エスは天井を見つめながら考えていた。
 
 ドアマンがガラスのドアを開ける気配に、エスは玄関の方へ顔を向けた。
 コハクの姿が見えた。外出から帰ってきたようだ。ドアマンがコハクに話しかけている。事情を説明してくれているようだ。
「コハク!」エスは声をかけて立ち上がった。
「エス!大丈夫?」コハクが駆け寄って来る。
「よく分からないんだけど、玄関のところで貧血を起こしたみたいで、ちょっと休憩を・・・ね」
「事情は聞いた。部屋で昼寝をしていたんじゃなかったの?」
「それが・・・不思議なんだ」エスはさっき見たパレードについて説明した。仮面を付けたブラスバンドや、少女たち。振り撒かれる紙ふぶき、ぬいぐるみや、猛獣の形をしたミコシの事。エスは見たことを詳しく話した。そしてホテルマンたちはパレードを見ていないことも・・・コハクには話しておいた方がいいような気がしたのだ。
 コハクは黙って話を聞いていたが「エス、あなた、体調は?おかしな所は無い?」と訊いた。
「大丈夫、もう元気だよ」エスは笑顔を見せる。
「みたいだね。でもちゃんとお医者さんに診てもらっておいた方がいいわね。手配をしておくわ」コハクはエスをジッと観察しながら言った。
「大丈夫だって!」
「だめ!許しません。こんな遠いところまで来てるんだから。疲れもたまっているかもしれないし。わかった?」コハクの声はきつくなった。
「う~ん」エスは不満そうな返事を返した。
「それで、あなたのおばあさんの事だけど」コハクはそんなエスを無視して話題を変えた。
「あ、調べてくれてたんだ」エスの目が輝く。
「だいたいわかった。明日病院を済ませてから行ってみよう」
「どこへ?」
「おばあさんの実家が分かったんだ」
「うわ!凄い!ありがとう」エスはコハクに抱き着いた。
 エスの祖母はイタリア人だ。日本人と結婚して日本にやって来たが、ルーツはここ、コモ湖の東岸だと聞いていた。だからエスには4分の1イタリアの血が流れている。そして祖母とコミュニケーションを取っていた関係でイタリア語も喋ることができる。今回の旅行はエスにとって初めての海外旅行だったが、自分のルーツをたどってみることも目的の1つだった。
「それからマリアの事だけど」コハクはエスの体を離しながら話を続けた。マリアはエスのブロ友の名前で、お互いに書いている小説ブログの読者としてNET上で知り合った。
「それも、調べてくれていたんだ」
「多分このあたりに住んで居るとは思うんだけど、マリアという名前だけでは何が本物か全然分からない。マリアってハンドルネームなんだろうけど」
「時々コモ湖の話題が出るからこのあたりだと思うんだけど・・・」エスはマリアの素性について何も知らない。マリアもエスの素性について何も知らないはずだ。
「雲をつかむような話だけど、明後日までにもう少し調べてみるよ。でもこっちは無理かもしれないね」
「お手数をおかけします。でも、会えない方がいいのかも・・・そんな気がしてる。ごめんね」
「いいよ、おかげで面白いイタリア旅行になったからね。こんな所、普通の観光だったらなかなか来れないし、とても素敵なところだし、いいきっかけになったよ」
「そう思ってくれると嬉しい・・・」
『思ったより素敵なホテルだったし・・・』コハクが英語に切り替えて言った。フロントクラークに聞こえていることを意識しているのだろう。
『そうだね』エスが少しだけ喋れる英語で答える。
 ドアマンがドアを開けた。新しいお客が到着したようだ。幾つもの賑やかな話し声がロビーに入ってくる。
「お茶にしようか?」コハクがテラスの方を見ながら言った。
「じゃあ、奢らせてくれる?」
「あら、それはごちそうさま」
『お世話になりました』エスはフロントクロークとドアマンに声をかけてから、テラスへ出た。
 コハクが横に並ぶ。
「パレードのミコシ、エスが乗らなくてよかった・・・」コハクがポツリと言った。そしてエスを支えるように背中に手を回すと、そこに付いていた金色に光る三角形の小さな紙をつまみ取った。
「あんな変なのには絶対に乗らないよ。恥ずかしいもの」エスは生真面目に答える。
 コハクはつまんだ小さな紙をそっとポケットに入れた
 風向きが変わっていた。コモ湖からの涼しい風が2人の髪を揺らした。


2016.03.18
2016.03.24 若干の修正・追記
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20000HIT記念リクエスト第三弾です。

今夜は20000HIT記念リクエストの第3段をUPします。
リクエストをいただいたのは「八乙女 夕」さん。オリキャラのリクエストは「エス」で、「マリア」と絡めてほしいとのことでした。
 そしてお題は「カーニバル」でいただいています。
 今回のイベントは3人の方からのリクエストを受け付けましたので、この作品でコンプリートということになります。小さなイベントでしたがそれなりに緊張もしましたし、プレッシャーも感じました。こんなんじゃ、皆さんがやっておられるような大きなイベントはとても無理だな・・・と、いつもながら皆さんの企画力に敬意を感じています。
 さて、3作品目のお話は「物書きエスの気まぐれプロット」というシリーズの最新作です。それぞれの回のストーリー中にエスが妄想したストーリーの断片が入り込む、という志向のシリーズ物です。それぞれは読み切りで、単独で読むことも可能ですが、初めて読まれる方のために登場人物について、軽く解説しておきましょう。

 主人公はエスという20歳を少し越えたくらいの女性です。ブログに小説を書く事を趣味にしていて、頭の中はいつも物語の断片でいっぱいです。この断片がちゃんとまとまった小説になることはあまりありませんが・・・。
事情があってほとんど出かけることはなかったのですが、今回はコハクの協力で思い切った行動に出ています。この間から小旅行に出かけたりしてましたからね。

 話題として登場するマリアは夕さんのところのキャラクターで、彼女とは何回もコラボをさせていただいています。エスのブロ友で、エスと同じように小説ブログを立ち上げている、エスより年配(40代後半から50代前半?)の女性です。2人はお互いの作品を読んでコメントを書き込んだことがきっかけで、NET上の親密な交際を続けています。夕さんのところの本編「夜のサーカス」では、チャットでやり取りをしていますし、検索が苦手なマリアをエスがサポートする、なんて場面もあります。ただお互いのリアルは知りません。
 マリアはイタリア人ですので、エスはイタリア語が喋れるし書ける、そしてエスのブログにはイタリア語のページもある、という設定になっています。(ちょっと無理やり感がありますが・・・)

 もう1人登場するコハクは、エスのリアルな友人です。同じ歳なので同級生なのでしょうか。エスの物語の断片の中ではスペインを旅する傷心の建築士役で登場したりもしていますが、エスの隣では普通の人です。エスの奔放な部分に苦言を呈したり、落ち込んでいる時にアドバイスしたりと、良き理解者でもあります。

 そして最初に登場するトロという人物は、エスの妄想断片小説の中のキャラクターです。本編とは関連性がありませんので、混乱なさらないように。

 では、よろしければ下のリンクからどうぞ。
物書きエスの気まぐれプロット(22)午後のパレード
夕さんリクエストありがとうございました。
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パレードがやってくる

午後のパレード」を少し書き換えました。
 サキの場合、いったんUPしたものを書き換えることはよくある事なのですが、今日はこれを記事にしてみようと思いました。
 サキがどんなアイデアを思いついて内容を書き換える気になったのか、興味のある方がいらっしゃるとは思いませんが、自分への忘備録としても記録しておこうと思います。

 まずこのお話は、エスがイタリア、コモ湖畔のリゾートホテル(?)のベランダで目覚めるところから始まります。暖かい日差しの中、天蓋の下で満ち足りた気分で昼寝をしていたエスは、彼方からブラスバンドの音が近づいて来るのに気づきます。
 何だろうと、エスは部屋からロビーへ降りて行きますが、ロビーにもテラスにも誰もいません。エスは不安を感じながら、それでも玄関に出て行って音の正体を確かめようとします。そこへブラスバンドを先頭にパレードがやってきます。

この後、書き換え前は以下のようになっていました。

  ブラスバンドに続いているのは、花の冠を付け、真っ白なドレスで着飾った少女たちだ。クルクル回り、陽気に紙ふぶきを振り撒きながら行進してくる。少女たちは1人1人が個性的な仮面を付けている。

これをこう書き換えています。

  ブラスバンドに続いているのは、花の冠を付け、真っ白なドレスで着飾った少女たちだ。少女たちも1人1人が個性的な仮面を付けている。クルクル回り、陽気に紙ふぶきを振り撒きながら行進してくる。
 紙ふぶきは風に巻き上げられ、エスに降りかかった。それは三角に切られた小さな金色の紙で出来ていた。

 少し文章を入れ替えたりしていますが、大きな変更は少女たちが振り撒く紙ふぶきが、風に乗ってエスのところまで飛んで来るところです。
 パレードは少女たちの後はぬいぐるみ、その後に無人のミコシと続きます。そしてパレードはエスの目の前で停止し、ミコシは地面に降ろされます。
 エスは誘われているような気になって、ミコシに乗ろうとしますが足が動きません。なんとか乗ろうと焦るうちにミコシは無人のまま出発してしまい、エスは1人取り残されます。
 そこでエスはホテルのドアマンに声をかけられていることに気付くのです。
 エスは玄関先でしゃがみこんでいたんですね。
 エスは介抱してくれまているホテルマンにパレードについて尋ねますが、誰もパレードを見ている様子はありません。そのうちに友人のコハクがホテルに帰ってきます。
「コハク!」エスは声をかけて立ち上がった。
「エス!大丈夫?」コハクが駆け寄って来る。
「よく分からないんだけど、玄関のところで貧血を起こしたみたいで、ちょっと休憩を・・・ね」
「事情は聞いた。部屋で昼寝をしていたんじゃなかったの?」

この後、書き換え前は以下のようになっていました。

「それが・・・不思議なんだ」エスはさっき見たパレードについて説明した。コハクには話しておいた方がいいような気がした。
 コハクは黙って話を聞いていたが「エス、あなた、体調は?おかしな所は無い?」と訊いた。

これをこう書き換えています。

「それが・・・不思議なんだ」エスはさっき見たパレードについて説明した。仮面を付けたブラスバンドや、少女たち。振り撒かれる紙ふぶき、ぬいぐるみや、猛獣の形をしたミコシの事。エスは見たことを詳しく話した。そしてホテルマンたちはパレードを見ていないことも・・・コハクには話しておいた方がいいような気がしたのだ。
 コハクは黙って話を聞いていたが「エス、あなた、体調は?おかしな所は無い?」と訊いた。

 エスは自分の身に起こったことをエスに話していますが、その内容を具体的に追記しました。
 その後、エスを一度お医者さんに診せることを決めてから、この旅行の目的の一つについて結果を話し合います。そしてテラスでお茶をしようということになって、2人はテラスに出ます。

この後、書き換え前は以下のようになっていました。

 コハクが横に並ぶ。
「パレードのミコシ、エスが乗らなくてよかった・・・」コハクがポツリと言った。
「あんな変なのには絶対に乗らないよ。恥ずかしいもの」エスは生真面目に答える。
 風向きが変わっていた。コモ湖からの涼しい風が2人の髪を揺らした。

これをこう書き換えています。

 コハクが横に並ぶ。
「パレードのミコシ、エスが乗らなくてよかった・・・」コハクがポツリと言った。そしてエスを支えるように背中に手を回すと、そこに付いていた金色に光る三角形の小さな紙をつまみ取った。
「あんな変なのには絶対に乗らないよ。恥ずかしいもの」エスは生真面目に答える。
 コハクはつまんだ小さな紙をそっとポケットに入れた
 風向きが変わっていた。コモ湖からの涼しい風が2人の髪を揺らした。

 ここで物語は終わっていますが、エンディングの直前に「金色に光る三角形の小さな紙」の記述を入れました。エスの背中に張り付いていたんです。
 ここまでの変更はすべてこの記述を入れるためです。
 紙ふぶきは風に舞ってエスのところまで飛んでくる必要がありましたし、エスがコハクに紙ふぶきの説明をするシーンが必要でした。
 ふと思いついてそういう設定にしたのですが、若干でも不気味さを増すことができていたらいいなぁ・・・と思っています。
 どうかなぁ?理詰めでガチガチ?細かく書き込み過ぎてウザいかなぁ・・・?

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hellooooooo wOrld!!!

 学習型人工知能会話ボット「Tay」がtwitterで公開され、コメントの投稿を始めたのですが、登場後1日経たないうちに「人間のみんな、おやすみ。私は少し寝ます。今日はたくさん会話があったので疲れました。ありがとう」の投稿を最期に沈黙しました。ネット上で人種差別や性差別、陰謀論、暴力表現などを学んでしまい、不適切発言を連発するようになったため、だそうです。おいたが過ぎて黙らされたんですね。
 twitterでの会話は(もちろんサキは英語が苦手なので、日本語に訳されたものを部分的に見ただけですが)俗語や省略綴り、絵文字を使い、冗談を交えたりしています。トンチンカンな受け答えもありますが、それなりに会話として面白いです。
 でも悪意でわざと不適切な発言を繰り返すように仕向ける相手に対しては脆弱だったようですね。マイクロソフトはそこのところを予測できなかったのでしょうか?オウム返しに会話する事を利用して、不適切な発言を吹き込まれたようです。会話実験を優先したためにその部分が少し弱かったとか?
 でも「Tay」、最初は混乱している様子が見られます。
「待って……なぜですか?」
「答えられない」
 などと抵抗することもあって、サキは「あ!困ってる」と、胸キュンになったりするのですが、最終的に悪の道に引きずり込まれてしまっんですね。
「Tay」は若い女性の設定ですから、生まれたばかりの無垢な女の子が、悪い人間共にだまされて洗脳されちゃったみたいに思えて、ちょっと可哀想です。
 現状は成長期の子供がぐれちゃって、親(マイクロソフト)に大慌てで保護されたというところでしょうか。今頃、叱られてるんだろうなぁ。可哀想に。NETの風は冷たかったようですが、どういうふうに更生してくるんでしょう?
「Tay」はまだまだ発展途上で、人間の問いかけに上手に答えることの出来る、高機能な会話プログラムの域を出ていない、ということなんでしょう。
 自らの考え方や信念、いわゆる「人格」のようなものは、まだまだ持ち合わせていないんでしょう。このような失敗を繰り返しながら、徐々にプログラムなのか本当の人間なのか、区別が付きにくくなっていくのでしょう。
 そうなったら、そのプログラムが欲しいです。退屈なサキでも話し相手になってくれそうですものね。(ホームPCで動作すれば嬉しいのですけれど・・・)

 あ、そうそう。日本には同じく会話できる女子高生AI「りんな」がいますが、りんなも先日、「ダメだハゲ」とコメントして注目を集めたようです。
 こういうことを聞くと、サキはクスクスと笑ってしまいます。
 思春期の精神は不安定でぐれやすいのかなぁ。
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「Tay」 つかの間のエスケープ

 先週いったん保護者のマイクロソフトの保護下にもどされていた人工知能の「Tay」は、3月30日(記事の表現を借りれば)真夜中に監視の目をかいくぐってこっそり「家」を抜け出すことに成功し、数時間にわたって薬物でも摂取しているかのような暴言を吐き散らした・・・そうです。

 ほんと、まるで反抗的なティーンエージャーですね。妙にリアルです。
実際は「テストの中で、Tayは短時間、不注意によりTwitter上でアクティブな状態にされた」ということの様で、すぐに保護者のマイクロソフトに保護され「家」に連れ戻されたということです。
“不注意”だなんて、何やってんだろ?マイクロソフト。ちゃんと保護してほしいですね。NETの劣悪な環境に放り出す前に、もっと温かい家庭での生活や教育が必要なのではないでしょうか?
 今はまた非公開設定にされていて面会することはできなくなっているのですが、ちょっと会って話をしてみたい、そんな欲望にかられます。
 きっと素直ないい子なんですよ。
 そう信じたいです。
 人間が悪すぎるんですよね。
 日本語環境の「りんな」がまだ発言しているところを見ると、英語環境には魑魅魍魎がうようよしているようで・・・。そいつらはきっと日本語が使えないのでしょう。



 状況を変えたいのであれば、必要なのはAIテクノロジーを責めるだけではなく、わたしたち人間自身が変わる努力をすべきです。人工知能はわたしたち人間の鏡に過ぎません。テクノロジーが変化するよう望むのであれば、(その方法は)わたしたちが善良な人間になることです。

会議自動スケジュール用オンラインパーソナルアシスタントを提供するスタートアップ、x.aiの創業者兼CEOのデニス・R・モーテンセン氏の指摘

WIRED.jp 3月31日(木)9時0分配信から抜粋
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こんにちは!サーカスへようこそ! 二人の左紀、サキと先が共同でブログを作っています。
ようこそ!


頂き物のイラスト

アスタリスクのパイロット、アルマク。キルケさんに書いていただいたイラストです。
ラグランジア
左からシスカ、サヤカ(コトリ)、サエ。ユズキさんにイラストを描いていただきました~。掌編「1006(ラグランジア)」の1シーンです。
天使のささやき_limeさん2
limeさんのイラストをイメージにSSを書いてみました。「ダイヤモンド・ダスト」
イラストをクリックすると記事に飛びます。よろしければご覧くださいネ!
スカイさんシスカイメージ
スカイさんのシスカイメージ
シスカ・イメージ高橋月子さん作
シスカ・イメージ 高橋月子さん作
シスカ・イメージlimeさん作
シスカ・イメージ limeさん作 コトリ・イメージユズキさん作
コトリ(コンステレーションにて)ユズキさん作
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