Debris circus

Debris circus

頭の中に散らばっていた破片(debris)を改めて文章に書き起こし、オリジナルブログ小説としてサーカスの舞台に上げていきます。読みにくいものもありますが、お暇な時にパラパラとめくる感じででも読んでいただけたら嬉しいです……

 

アルファポリス大賞には・・・

皆さん、活発に活動されています。
先月は八少女夕さんがアルファポリスの第1回歴史・時代小説大賞に『明日の故郷』で参加されていましたし、今月はミステリー大賞に、サキのブロともの方が3人もエントリーされています。
大海彩洋さんは『【奇跡を売る店】シリーズ』で、
limeさんは『ラビット・ドットコム』で、
そしてポール・ブリッツさんは『夕闇のメッセンジャー』で、
(それぞれのリンクは参加宣言のページに繋がっています)
サキが拝読したことのある作品は、彩洋さんの『奇跡を売る店』だけなんですが、このお話にはイントロから入り込んで、京都の河原町界隈を仮想放浪した記憶があります。登場人物の和子(ニコ)は、サキがとても入れ込んでいるキャクターの1人で、愛想のなさがとても素敵です。ハンディーを抱えていますが健気に生きている様子が胸を打ちます。話をしてみたいなぁ・・・という思いは、サキの分身である「エス」が彩洋さんの作品の中にコラボで登場させてもらった時に、和子と一緒に遊ぶと言う形で実現させていただいています。嬉しかったなぁ。
limeさんとこの『ラビット・ドットコム』は、え!読んでなかったっけ?と思うほど既視感のある作品で、こりゃちゃんと読まなくっちゃ、と思ったのは冒頭部分をサラッと読み込んでみての感想です。
ポールさんのところは、非常にたくさんの作品がありますので。読ませていただいている作品の方がずっと少ないですから、ちょうど拝読するきっかけにいいかなと思っています。
とりあえず3作品とも、ポチッとさせていただきました。
絶対面白いですから、上位に食い込むだろうな、と予想しています。賞が取れるかも、と思っています。

エントリーすれば、ブログを訪問してくださる方も少しは増えるようですし。読んでみようと思う方もその中の数パーセントくらいはいてくださって、この辺境のブログにただ作品を置いておくよりはいくらかでも人目に触れるのかなぁ・・・と思ってはいるのですが。
もし誰も読んでくれなかったら・・・とか考えると恐いですね。
もう書けなくなってしまいそうです。

ま、そんな話はさて置いて、サキは今作品を1つ書き上げています。なんだと思いますか?書く書く詐欺になりかかっているサキの新作ではなくて、これまで書いてきた尻切れトンボ作品の1つの最新話です。
今校正と推敲を進めています。近日発表になると思いますので、お楽しみに。



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*アスタリスク (ウェヌスの印)

 夕日は網膜に最後の輝きを刻み込んで、海の彼方に沈んでいった。
 昼の間、街を埋め尽くしていた観光客は、まるで汐が引くように消えていった。彼らは夕方になる前に本土のホテルに引き上げるか、次の目的地に向って旅立って行く。そのくらいべらぼうな値段をこの町のホテルは吹っ掛ける。
 観光の中心であるサン・ノチェット広場はまだ十分に明るかったが、昼間の喧騒がうそのように静まり返り、広場の背後にそそり立つ鐘楼も、その隣の大聖堂も、見上げる者を無くして存在意義を失っていた。代わりに昼間はほとんど感じることのない、微かな風の音と潮の臭いが、この町の本来の姿を際立たせていた。
 女が1人、海に面して置かれたベンチの1つに腰を下ろしていた。ツインテールに纏められた金色の長い髪を潮風に揺らし、細かい柄の袖の短い空色のワンピースを着て、クラシカルな流線型のヘッドホーンを付け、太陽の沈んでいった海の方向をぼんやりと“眺めて”いた。正面に回り込めば、短いスカートから伸びたすらりとした足や、ルビーのように輝く赤い瞳を見ることができるはずだが、辺りには人っ子1人居なかった。

+++

 永遠に続くと思われるほど果てしなく分厚い大気、“空”というらしいが・・・。その空から大量に降り注ぐ水。“雨”というらしいが・・・。無限と思われるほどの大量の水、“海”というらしいが・・・。気まぐれに変化する大気の流れ、風というらしいが・・・。そして同じく気まぐれな気温、湿度。この惑星上の全くコントロールされない、或いはできない全ての現象はオレを虜にした。そしてその驚きの連続は、1人でいることの寂しさを補って余りある物だった。オレは今、地球と呼びならわされている惑星の古都に居る。海に面した大きな広場の片隅に置かれたベンチで、“海”を感じながら座っている。
 時たまオレの後ろを、犬をつれた老人や、夕方の散歩やジョギングを楽しむ人々や、楽しそうに歩くカップル達が通り過ぎて行ったが、オレは暮れゆく風景の方を向いたまま佇んでいた。
 やがて辺りは少しずつ暗くなり始めた。オレにとって暗くなること自体はどうということはない。だが今、オレの視界は可視光線フィルターで補正されている。補正された風景は、普通の視覚と同じようにディテールを失い、感情を移入させる事が難しくなってくる。
 オレはゆっくりと立ち上がり、広場を横切ってから回廊に入った。そしてしばらくそれに従って進んでから、通路になっている部分をくぐり、広場を囲む建物の裏側に出た。建物の裏は運河になっていて、道は運河を橋で渡って続いている。
 この街は広大な内海の真ん中にある砂州の上に作られていて、街の中を縦横無尽に運河が巡っている。道は狭く段差も多いので車の使用はおろか、自転車の使用も禁じられている。運河を行きかう船と自分の足、これだけがこの町で使える移動手段だった。
 運河を渡るアーチ状の小さな橋は、炎色の灯りに照らされてぼんやりと浮かび上がる。オレは橋を渡って、両側を石造りの建物に囲まれた道を進んで行った。所々で交差する運河を渡り、右に左に曲がるたびに道は路地になり幅を狭めていく。
『ホテルはこっちだったっけ?』確信を持って進んできたはずなのに、不安が首をもたげる。オレはショルダーバッグから携帯端末を取り出そうと、一旦立ち止まってファスナーに手をかけた。

「あなた・・・」建物の方から声がかかる。オレは自分が呼ばれているとは思っていないので反応を示さない。
「あなた・・・そこのあなた!そう、その素敵なブロンドのあなたのこと」年老いた女性の声だが、声には張りがあって、その凜とした響きが心地よい。
 オレはようやく自分が呼ばれていることを理解して顔を上げた。声のする方には小柄な人影が、ゆったりとした木の椅子に腰掛けているのが見える。灯りからは陰になった薄暗い場所からだったが、生命力に満ちた強い視線が注がれる。まるで目だけが別の生き物のように、闇の中でギョロリと浮き上がって見えた。
「こちらへいらっしゃい」有無を言わさぬ老女の物言いに、オレはとりあえず従うことにして、その建物の方へ近づいた。
 老女はするどい視線でオレを観察した。そして長い時間を費やしてから「あなた、ウェヌスの末裔なの?」と言った。
「え?」オレは何を言われているのか理解できずに首を傾げた。
「ごめんなさい。分けがわからなかったのね。気にする必要は無いわ。あなたのその見事なブロンドと、そのオーラ、そこから私が勝手にそう思っただけだから。でもきっとそうだわ。そのルビー色の輝きをもった瞳、そんなに有るものじゃ無いから」そう言ってから老女は話題を変えた。「あなた、ここへは観光で?」
「はい」オレは素直に答えを返した。
「内地からじゃ無いわね。どちらから?」内地とはこの地球を表す言葉だ。
「タトゥーンからです」
「タトゥーン!遠いわね。でもタトゥーンだと重力順応がいらないから、そういう面では楽だわね。この街もECに軌道エレベーターが出来てから、外地からの観光客はけっこう来ているのよ」外地とは地球以外の植民星を表す言葉だ。「タトゥーンはギャラクシアス・シティ?」
「はい」オレは悠久の歴史を持つこの都市に住む老人から、重力順応の話や最先端の宇宙植民都市の名前が出てきたことに驚きながら答えた。
「驚かなくてもいいわ。私はコスモノートだったから。ギャラクシアスの開発段階でもかかわったことがあるの」
「失礼しました」オレは敬意を込めて詫びた。
「いいのよ。誰もこんなところに座っている婆さんがコスモノートだったなんて思わないでしょうから。あなたもそうなのかしら?あなた、ひょっとしてアンドロメダとおっしゃるんじゃないの?」
「ええ、おっしゃるとおり・・・私はアルマク・アンドロメダといいます」オレはアスタリスクのイメージ戦略に沿って丁寧に答えた。
「やっぱり、アスタリスクレースのメジャーパイロットよね」
 オレは頷いた。少し微笑みをまじえて。
「ずっと前にあなたの写真を見る機会があって、その時ふとそう感じたの」
「ウェヌス・・・の事ですか?」会話はループして元へ戻った。
「そうね。そう、いま実際にあなたを見て、あなたのオーラに触れて、もっと強く感じたわ」老女は語りたいのか、椅子に深くかけ直し、オレに前に立つように促す仕草をした。
「ウェヌスって?」オレは勧めに従って、老女のすぐ前に立った。老女は入り口脇のテラスのような場所に座っていたので、話をするのには丁度いい高さになった。
「あなた、この町の名前は、もちろん知っているわね」
「ウェニシア・・・」オレはこの町の名前を口にした。
「そう、ウェニシア。この町ウェニシアは戦火を逃れたウェヌスの人々によって作られたの。だからウェニシアというのは“ウェヌスの土地”という意味を持っているのよ」老女は“ウェヌスの土地”について話しだした。

 何百年も前、戦に破れ住む場所を失ったウェヌスの人々は、広大な内海の真ん中にあったこの砂州の上に安住の地を定めた。水深の分からない内海は大型船では航行できなかったし、潮が引いた浅瀬は一面の泥沼と化し、あらゆるものの接近を拒んだ。彼等は不自由さや理不尽さより、平穏な睡眠を、そして平和な生活を優先することを望んだのだ。
 始まりは砂と泥の上に建てられた数件の掘立小屋だった。だがやがて砂の中に丸太を打ち込んで基礎とする工法が考え出され、大きな石造りの建物を建てることが可能になった頃から、町は飛躍的に発展した。広大な内海の真ん中にあるこの街は、他の国から攻める事は困難だった反面、海運業の発達を促し、さらにはそれを利用した国際貿易で無限の富を得ることが出来た。町はやがて“テイネ海の真珠”と呼ばれるほどの名声を得て栄えていった。

「オレがその末裔だと?」オレは身を乗り出した。
「ディーノ!ディーノ!」老女は体を捻ると玄関の奥に向かって呼びかけた。
 しばらく待つと玄関の奥から人影が現れ、通りの灯りの下に姿を現した。それはブロンドの髪を持った少年だった。いや、名前から少年と思われた。顔は性別を感じさせないくらい端正で、非の打ち所のないほど美しかった。肩まで伸ばされ緩くカールした髪はオレの髪より一層輝く金色で、肌は透き通るように白い。そして吸い込まれるような赤い瞳を持っていた。少年の虹彩は、炎色の灯りを反射してルビー色に輝いていた。それは、あまりにも美しすぎて哀しくなるほどだ。
 オレは驚いてただじっと少年の方を向いていた。
「ウェヌス自体は普通の人々と外見上の違いはほとんどないわ。けれど他の民族と交配してもウェヌスの特性はとても強く残るの。そして“印”のように何代かに一度、この子のような個体が生まれてくる」
「アルビノ・・・?」
「そうね。ディーノはアルビノなの。ウェヌスから生まれたアルビノは基本的に丈夫じゃないわ。視力もとても弱いし、皮膚も弱いから太陽の下へ出て行くこともできない」老女はディーノを優しい眼差しで見た。「でもね。ウェヌスのアルビノは特殊な能力も身につけてることが多いの。そして本当に希にだけど、そのアルビノの中にとても強い個体が生まれることがあるの」
「オレの事?」
「そう、たぶん。あなたの様な個体は特殊な能力を身につけている上に、あらゆる事に対して強い耐性を持っているの」
 オレは無言で続きを促した。
「あるとき、その耐性と特殊な能力に目を付けた者が居たの」老女はオレに向かってゆっくりと手を伸ばた。
 オレは老女の手が届くように少し近づいた。
「彼等はその遺伝子を複製し、クローン化して新しい人型生物を作り出した」老女はオレの頬にそっと触れた。「そして彼等を乾燥の惑星の開発のために送り込んだ・・・」
「砂漠へ・・・?」オレは無意識に呟く。
「そう。果てしない砂漠の拡がるオーディラーンへ・・・」
「オーディラーン・・・でも果てしないピンクの砂漠はいい夢には繋がらない」
「凄い!ピンクの砂漠!そう。オーディラーンの砂漠はピンクなの!潜在的に記憶が伝承されているのね。そして、あなたの言うように、いい夢ではなかったわ。オーディラーンの開発は失敗したの」老女はアルマクの頬からゆっくりと手を下ろした。「ウェヌスの一部は脱出したけれど、大半は残留し植民地と運命を共にした・・・」
「オレはその脱出したウェヌスの末裔だと?」
「そう、あらゆる状況がそれを指し示し、証明している。そう思わない?」
「分からない」
「あなたはタトゥーンの生まれ?」
「いや、どこで生まれたのかは分からない。物心がついたときはアスタリスク幼年養成所にいた。身寄りのない子供として、そこへ引き取られてきたらしい。それしかオレには分からない」オレは自分に言い聞かせるように言った。
“ほらね!”老女は目だけでそう語ると少年に呼びかけた。「ディーノ、この人を感じてみなさい」
 少年は右手を差し出すとオレの右手をそっと握った。オレは驚いて手を引っ込めようとしたが、すぐにおとなしくそれに従って、されるがままになった。少年は長い時間手を繋いでいた。オレは神経節の1つ1つをそっと探られるような感覚を味わったが、それは産毛の上からそっと体を触られるような感触で、やがてそれはくすぐったさや快感を通り越し、もっと遙かな先の、一種の恍惚感、いやさらにその先の黄泉まで誘われるような感覚にまで到達した。やがてその感覚は去り、少年は手を離した。そして老女にそっと耳打ちをする。老女は静かに頷いた。オレは右手を差し出したままの体勢でぼんやりと立っている。
「ディーノはあなたを仲間と認めたわ。あなたはウェヌスの末裔なのよ」
「ウェヌス・・・」オレは繰り返した。
 老女は話を続けた。

 しかし“テイネ海の真珠”の繁栄は永遠には続かなかった。貿易で得た巨万の富はウェヌス内部の争いを誘発し、強い結束は崩壊していった。そしてその混乱に乗じて貿易先に築き上げた植民都市を奪われ、さらに大砲の登場により干潟に住むメリットまで失ってしまい、ウェニシアの力は弱まっていった。
 その後、新しい航海ルートが発見され、貿易ルートから外れたウェニシアは、その存在価値を著しく低下させた。町は徐々に衰退し、もう二度と表舞台に登場することはなかった。ウェヌスは支配権を失い離散し、他の民族がこの町を支配した。水上都市ウェニシアはウェヌスと共に歴史の舞台から消えたのだ。その名前だけを残して。

 老女は少年に“もういい”という風に手を上げた。少年はルビー色の瞳を一瞬キラリと輝かせてアルマクを見てから、玄関の奥へと消えた。最後まで表情は変わらなかった。
「でもこの町へは、本当に観光だけでいらしたの?」少年を見送ってから、老女はオレの方へ向き直った。
「?」オレはまだ現世に戻れていない。
「タトゥーンから地球を訪れるには相当な費用がかかるでしょう?若い女性の気ままな1人旅にしてはお金がかかり過ぎるわ」
「ああ・・・」オレはようやく現世に立ち戻った。「新婚旅行なんです。と言ってもまだ籍は入れてないんだけど。オレのパートナーは宇宙タンカーのオペレーターで、そのタンカーの新造船の打ち合わせの為の出張も兼ねてます。だから奴の旅費は会社持ちなんです。今日あたり合流できると思っていたんだけど・・・」
「彼の仕事が終わってからが本番というわけね?それはおめでとう」
「ありがとうございます」オレは微笑みながら小さく頭を下げた。
「でも・・・、全く別の血筋を辿ったウェヌスの“印”がここで出会った。それはとても不思議な巡りあわせね」
「どちらも自分たちの町を失っている・・・」オレはポツリと呟いた。
「あなた、暗くなったけど、これからどちらへ?」老女は話題を変えた。
「ホテルへ戻るところだったんだけど・・・」
「ウェニシア本島に宿を?」
 オレはホテルの名前を告げた。
「そう。新婚旅行には相応しい宿だけど、高かったでしょう?」
 オレは頷いた。
「タブレットを出そうとしていたようだけど?」
「実は道に迷いかかっていたんです」オレは正直に言った。
「近くまで案内してあげるわ」老女は立ち上がった。椅子に座っていたときは相当な高齢に見えていたが、立ち上がると背筋はピンと伸び、歩き方もきびきびしていて若々しかった。老女はオレの先に立って路地をドンドンと進んでいく。運河を何度か越え、右に左に曲がるうちに、路地はやがて見覚えのある大きな広場に突き当たった。広場の向かいにはオレが泊まっているホテルが見えている。
「あとは大丈夫?」老女はオレの方を向いて微笑んだ。
「大丈夫!」
「じゃぁ、私は戻るわね。楽しかったわ。元気でね!幸せになりなさい!アルマク」老女はクルリと踵を返すと路地の中へ戻っていった。
「ありがとう・・・!」オレは礼を言った。そして慌てて付け加えた。「・・・あなたもウェヌスなの?」
 聞こえたのだろうか、老女は“気にしないで”という風に片手を挙げてから、路地の角を曲がっていった。
 オレは暫くの間路地の奥を見つめていたが、やがて広場の方に向き直り、ホテルの入り口に向かって歩き始めた。
「お帰りなさいませ」ドアマンがドアを開けてくれる。オレは少しの笑みを浮かべながらロビーに入ったが、ドアを入った所で立ち止まった。ロビーの向こうに知った顔が見えたからだ。鼓動は一気に早くなる。
 「Go!」オレはロビーを横切ってその男に駆け寄り、あまり厚くない胸板に頭をトンッと突っ込んだ。
 そしてグリグリッとしてから顔を上げ「お腹すいた」と言った。

2015.07.04
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『ウェヌスの印』の発表です。

お待たせしました。(って誰も待ってないか)
『ウェヌスの印』の発表です。2012年の7月に第1作を発表している『*アスタリスク』シリーズの最新作です。この『ウェヌスの印』を読んでしまうと、このシリーズを初めから読む場合に、ちょっとしたネタばらしにはなってしまうのですが、まぁ、たいしたことはありません。
それに、この作品単独で読んでいただいても雰囲気は伝わるように書いたつもりですので、よろしければ読んでみてください。
そして気になるようなら『アスタリスク』シリーズ第1作『*アスタリスク(1)』から読み進めてみてください。
一応SFのカテゴリーに入るとは思うのですが、中身は少~し変わった恋愛ものの物語です。ハチャメチャなキャラの恋愛模様をお楽しみいただけると嬉しいです。

アスタリスク (ウェヌスの印) ←このリンクからどうぞ!
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オリキャラオフ会第2弾用詳細設定

 大海彩洋さんの企画されたオリキャラオフ会第2弾。
 サキのところからも「コトリ」と「ダンゴ」が参加させていただくのですが、彼女たちの行動スケジュールが決まりましたので、ここで発表しておきたいと思います。早めに発表した方が絡んでくださる方も多いかな・・・と思いました。
 彼女たちのことについて少し復習を・・・。

 コトリは『254』に登場する女性です。『254』の中では22歳位から28歳位までの時間が経過しますが、ここでは29歳です。コンステレーションというバイクショップの店長で、レーサー並のテクニックを持つ、バイクの大好きな女性です。そしてまだ新婚さんです。パートナーはヤキダマというニックネームで呼ばれていて、どこかの設計事務所に勤めていますが、今回は登場しません。

 ダンゴは『物書きエスのきまぐれプロット』シリーズの中の『H1』と『H1A』の中に登場する22歳位の女性です。彼女の友達以上恋人未満でバイク大好き男のケッチンは、バイクの調子は分かりますが、女の子の気持ちに関してはからっきしです。そして、彼が通うバイクショップの店長がコトリという設定になっています。彼も今回のツーリングでは置いてきぼりです。
 ダンゴはコトリに比べて明るくて開放的で積極的です。静かに耐えるなんてことはあまりありません。

 2人が生活しているのは架空の都市「カンデシティー」ですが、このお話は現実世界なので神戸市に住んでいることにしています。
 2人はコトリのバイクに2人乗り(タンデム)で、北海道ツーリングに来ています。そしてコトリのバイクはやはり現実世界ですので、深紅のDUCATI696(コトリカスタマイズ)です。

 彼女たちの観光コースは、小樽までフェリーでやってきて、その後道北を走りまわっています。お土産は知床で手に入れたクマ除けの鈴にしようと思っていますが、物語自体は美幌峠から始まります。そのまま屈斜路湖へ下って、その晩は屈斜路湖畔で泊まります。翌日から、摩周湖、阿寒湖、オンネトー、足寄、池田、帯広、そして野塚トンネルを抜けて日高方面(浦河)へ向かいます。観光抜きでひたすら走れば1日で到達できる距離です(なにしろコトリですから)が、そんなに走ってどうする!?の声も聞こえてきそうですので、この間にどこかで1~2泊する予定です。
 コトリの格好は紺とグレーのツートンのツーリングジャケット(夏なので布製)下は濃紺のジーンズ、それに黒の革製ショートブーツ。ヘルメットは白のフルフェイス。
 ダンゴは深紅のツーリングジャケット(夏なので布製)下はブルージーンズ、それに深紅の革製ショートブーツ。ヘルメットはイタリアンカラーのフルフェイス、です。(コトリの店でお買い上げです)
 ダンゴの髪は少し長いので後ろで1つに纏めています。バイクに乗っていない時はポニーテールにしているときもあります(愛用の赤いリボンで纏めています)。
 コトリはオカッパなのでいつもそのままです。ヘルメットを脱いだ時、頭を振って形を整える程度です。
 バイクに2人乗りですので、着替えなどはたくさん持っていません。バイクを降りたらTシャツかせいぜいポロシャツ、それにジーンズ、靴もブーツのままという格好です。宿で洗濯したり、下着を買い足したりしてやりくりしています。
 さて、どんなお話を展開させようかな。まずは短い導入部分でお茶を濁しますか・・・。もし続きが書けるようならシスカ(札幌近郊に在住の設定です)も登場する予定です。
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キャンペーン

「・・・というコンセプトで作ろうとしているわけだ・・・」
 気もそぞろだった私は、プロデューサーの話が終わったことに気がついて、慌てて顔を上げて愛想笑いを返した。
「オイ!コラ!ちゃんと俺の話を聞いているのか?」プロデューサーが私の顔を覗き込む。
「ゴメンナサイ、聞いてませんでした」
「やっぱり・・・」
「もう一度初めから説明してくださいますか?」私はお願いの顔をした。
 プロデューサーはやれやれという風情で顔を横に振ってから、ゆっくりと喋り始めた。「現代社会にとって原子力発電所は、今や欠かせないエネルギー源だということは君も認めるよな」
 私はそうは考えていなかったが、雰囲気に押されてちいさく頷いた。
「原子力発電所では燃えた核燃料は高レベル放射能廃棄物になる。再処理したとしても、再処理工程で高レベルの放射性廃液が出る。そしてそれらは安定して保管できるように、ガラス成分と混ぜ、溶かしたものをキャニスターに注入し固化させる。それがガラス化個体と呼ばれるものだ。しかしキャニスターに入ったガラス固化体は、致死レベルの放射能を持っていて、高熱を発している。これは約20秒で100%の人間が死亡するとされる被曝を生じる線量だ」
 私は酷い目眩を感じた。胃の辺りは何かを詰め込んだように重くなっている。
「そしてその線量は数万年から数十万年を経過してようやくウラン鉱石と同レベルにまで下がると推定されている。要するにとんでもなく危険なものだ」プロデューサーは私がちゃんと聞いていることを確認するように目を覗き込んでくる。
「は・・・はい」私は目を泳がせながら生返事を返した。
「だがな。科学の力は偉大だ。このとんでもなく危険なガラス化固体を全く危害の無いものにする事に成功したのだ」
「本当に?」私は怖ず怖ずと質問した。
「本当だ。新しく開発された方法で処理されたガラス化個体の表面線量は、放射線管理区域以下の線量になる。人間にとって全く問題のないレベルだ。それに発熱もほとんど無い」
「それで?」
「問題は・・・だ」プロデューサーは言い含めるように言った。後ろには私が動けないように、ディレクターとアシスタントディレクター、それにマネージャーが立ちふさがっている。
「この新しいガラス化個体が人類にとって無害であることを、誰も信じようとしないことだ。そこまでは分かるな?」
 私はまた小さく頷いた。
「そこで、そのことを社会に向けて強力にアピールするために、今回のキャンペーンが考え出されたわけだ」プロデューサーは満足げに笑みを漏らした。
 私は物々しい格好のスタッフに囲まれるようにして隣のスタジオに連れて行かれた。
「見たまえ」プロデューサーは調整室のガラス越しに、スタジオの中央に置かれた巨大なトレイの中に入れられた沢山の丸い物体を手で指した。それらは直径50センチくらいの赤や緑、そして黄やオレンジの美しい半透明の球体で、それぞれに白い筋が入っている。私は嫌な予感を憶えて1・2歩後ずさりをし、防護服の上からアシスタントディレクターの足先を踏みつけた。
「これがその新しいガラス化個体だ。リアリティーを出すために全て本物だ」
 予想通りの答えに私はおののいた。“ガラス化”の名に相応しくそれらの球体は艶々と光を反射している。
「マスコミ界を震撼させた天才子役の君なら、これからどういうシチュエーションで撮影が行われるかは想像できているだろう?」プロデューサーは調整室のガラスの向こうから薄笑いのままそう言うと、私の後ろに控えている3人に合図を送った。私は防護服姿の3人に、肩と太ももの位置で抱え上げられた。そしてリフターを使って、そっとガラス化個体の中に降ろされた。すでに用意されていた遠隔操作のカメラが回り始めた。
「***ちゃん!」ディレクターが私の名前を呼んだ。
「まず軽~く笑顔をもらえるかな?はい!笑って!!!」

雨なら飴の方が・・・
このイラストの著作権はlimeさんに有ります。
「limeさんの記事[妄想らくがき・雨なら飴の方が・・・]へのリンク」

2015.07.12
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「シスカ」の“0 号試写”と呼ぶべきものが出てきました。

サキのマイドキュメントフォルダを漁っていたら「シスカ」の“0 号試写”と呼ぶべきものが出てきました。2011年の梅雨時期、ちょこちょこと執筆を続けていた時のメモが残っていた様です。作成日から推測して最も初期の頃のもので、現在公開しているものとだいぶ構成が違っています。懐かしくてつい読み進んでしまいましたが、まだまだ笑っちゃうような部分も有ったりします(ということは、少しは進歩したかな?)。少し段落を増やしたり、気が付いた誤字を直したりしています。稚拙な文章で少々読み辛いですが、サキが生まれて初めて書いた物語ですのでお許しください。「シスカ」はこの後、大幅にキャラクターや構成を見直し、推敲も重ね、全く別物のようになってしまっています。
多分この作品は先に見せるたに書いたものでしょうから、先の校正や推敲は受けていないはずです。生サキです。自分をさらけ出すようでちょっと怖いのですが、読んでいただけると嬉しいです。
あ、イラストは例の友人のライブラリーの中から発見されたものです。(実はあと数点見つかっています)物語とは繋がりませんが貼っておきます。(ですからサキ作です。そして恥ずかしいです)

P.S. ここに掲載したイラストについてコメントを書き込んでいただきましたので、ちょっと追加で説明させてください。このイラストの彼女、実はシスカではありません。シスカが生まれる前に漠然とストーリーを模索している頃、ヒロインのイメージとして描いた女性の1人なんです(当時はまだコミックを目指していました)。ですからオッドアイではないですし、髪もプラチナを強調して描いていません。でもシスカの元になったイメージの1つ・・・というのは間違いありません。


「シスカ」0 号試写

シスカは国境の方の丘を見ながらゆっくりと歩き始めていた。大きな赤黒い夕日がその丘の方向に灰色の空をバックにして沈んでいこうとしている。気温がぐんぐん下がり始めたので丘のほうから目を戻し、途中から急ぎ足になって、町に向かって歩いていく。早く戻らないと明度が落ちてしまう。暗くなったら下手を打つと命を落とす恐れがある。彼女は何もない平原の中の道を小走りになって急ぎ、真っ暗になる前にようやく町の入り口の門の前までたどり着いた。ここまで来ると町の窓々に灯る明かりでようやく足元が見えるようになり、小走りから急ぎ足になって門をくぐっていった。

     女性(冬)

町の中は仕事を終えた人々が大勢歩いていた。彼らはあまりの気温の低さに追いたれられるように、白い息を蒸気機関車みたいにまき上げながら、ほとんどは大きなアーケードに飲み込まれ、一部は自宅へ帰ってゆくところだった。
「シスカ、シスカじゃないか、何してるんだ!」ひげ面の男が声をかけてきた。「今日は夜勤明けの残業じゃなかったのか?」
「ちょっと町の外を散歩していたんだ。」シスカは何気なく答えたが、男は少し眉の間に皴を作り「まだ出歩いてるのか、命を落とすぞ。」と声を大きくした。「明日の搭乗に現れなかったら俺が迷惑するんだぞ。代わりのパイロットなんかそんなに簡単に捕まらないってことぐらいわかってんだろう。」
「ごめん、どうしても夕日が見たかったんだ。」シスカはそうしゃべりながら男の帽子を取り上げ、薄い髪をクシャッとかき回してから道の真ん中に放り投げた。
「何しやがるんだ。心配してやってるんだぞ。」男があわてて帽子を拾いに駆け出した隙に、シスカはダッシュした。振り返りながら「明日はちゃんと定時に出勤するよ。」と声をかけてからさらに速度を上げ3番街のほうへ向かってかけていった。
「やれやれ・・・・」男は帽子を拾うと、それまでと違って人波に逆らわずアーケードに飲み込まれ、「19番」と書かれた看板の下にある小さな扉を開けた。

店の中にはまだ客はおらず、「あら、ゴンドーさん久方ぶりですね。」と上背の大きな女主人が声をかけてきた。
「すぐに帰るつもりだったんだが、ちょっと気が変わった。何か軽く食べるものあるかな。それから発泡酒と・・・・」ゴンドーは店の中を見渡しながら言った。
「何かありました?奥さん待ってるんじゃないの?」女主人はササッと肴を何種類か皿に盛り付けてゴンドーの前に出しながら気遣わしげに尋ねた。
「シスカさ、また夕方町の外に出てたみたいだ。」ゴンドーは渋面で答えながらカウンターに腰掛けた。カウンターの正面には若い女が立っている。
「私がどうなったか忘れたわけでもないでしょうに・・・」その若い女は発泡酒の瓶の栓を抜きながら独り言のようにつぶやいた。
「だろ、お前さんがやられたときすぐ横にいて、もう二度と連れ出さないって大泣きに泣いていたんだ。ま、連れ出してはいないんだけどなぁ。」
若い女は黙って発泡酒をコップに注ぎゴンドーの前においた。ゴンドーはクウッと飲み干して、次を自分でコップに注ぎながら「ノブからも説教たれといてくれないか。相棒の俺の言うことでも聞きゃしないんだ。」と少し申し訳なさそうに続けた。ノブと呼ばれた女は、目だけで軽く頷くと奥の部屋へ入っていった。携帯電話をかけに行ったのだろう。ゴンドーは肴を口に運び、発泡酒を片付けると、増え始めた馴染みの客に軽く挨拶して「カーちゃん、帰るわ。」と女主人に声をかけて帰っていった。

2011年、梅雨の時期に執筆

2015.07.14

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オリキャラオフ会2参加作品 696(パイロット国道)

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696(パイロット国道) 

「うわあ~!凄~い」ダンゴが歓声を上げた。美幌峠の天候は快晴に近い状態で、この時期には珍しく空気の透明度も高い。
 コトリはダンゴの横に立って、目の前に広がる広大な風景に黙って見とれていた。眼下には日本最大の屈斜路カルデラが広がり、その外輪山を吹き上がる涼風が、少し白髪が混じったおかっぱの髪を揺らしていく。
 カルデラとはスペイン語で鍋という意味だそうだが、鍋と言うにはあまりに広大だ。手前はこれも日本最大の火山湖である屈斜路湖、湖の中には火砕丘である中島が浮かんでいる。湖の向こうにはアトサヌプリが噴煙を上げ、さらにその向こうは摩周や知床の山々まで見渡すことができる。
 コトリはその風景から植物や人工物を取り除き、太古の昔、出来たばかりの頃の巨大なカルデラクレーターを想像していた。全ての生物を焼き尽くす大噴火のあとの大陥没、やがて外輪山の内側には水が溜まり、円形の大きな湖になった。それが太古の屈斜路湖だ。そして数万年が経過したのち、大きな湖の中でアトサヌプリが活動を始め、中島の噴火が起こる。そして美しい成層火山、摩周火山が育ち始めた。それらの活動で円形だった湖は現在の歪んだ形になった。さらに摩周火山は大噴火と共に崩壊して摩周湖となり、その活動の名残として摩周外輪山上にカムイヌプリ火山が成長した。同じ頃、摩周湖の底にも溶岩ドームが形成され、カムイシュができた。
 コトリはその太古の出来事に風景を重ね、時間を飛び越えた空想に浸っていた。

「あの・・・三厩さん?」ずっと黙ったまま風景を眺めているコトリのことが心配になったのか、ダンゴが声をかけてきた。
「コトリでいいよ」現世に戻ったコトリは少し頬を緩めて言った。
「あの・・・コトリさん?」
「だから“さん”もいらないって。もう何日一緒に旅をしていると思ってるの?」
「でも、私の勘違いで迷惑をかけちゃったし・・・それにやっぱり・・・」
「バイクのタンデムはお互い命を預け合ってるんだから、変に遠慮しなくってもいいって。何度も言わせないでくれる?」コトリの言葉はきつくなった。
「はい・・・」
「それにダンゴは、なるべくわたしの名前を呼ばないようにしてるでしょ?」
 ダンゴは『ばれてましたか』という表情をした。
「ちゃんと呼んでもらわないと上手く繋がれないよ」コトリはもう少し微笑んだ。
「うん、わかった・・・。コト・・・リ」ダンゴは少しぎこちなく言った。
「そうそう。よくできました。じゃぁ、もう一回練習で言ってみて」
「コトリ?」ダンゴは最初の呼びかけに戻って尋ねた。
「なに?」コトリはようやくそれに対して返事をした。
「ううん、コトリ、黙ってずっと見てるから、どうしたのかなって」
「この風景がどうやってできたのか、考えていたんだ。だってわたし達は今、屈斜路カルデラの大クレーターの淵に立っているんだよ。凄いことだなと思って」
「うん、果てしが無い程広大で、綺麗」ダンゴはコトリの言葉の真意が飲み込めない風だったが、とりあえず頷いた。
「そろそろバイクに戻ろう。早めに宿に入ってもいいし」コトリはそんなダンゴの様子をなんとなく理解しながら、展望台の丘を下り始めた。「は~い」ダンゴもコトリの後について丘を下る。

 バイクを止めた駐車場に近づくと、コトリのバイクの傍に2人の人影が見えた。コトリは少し用心しながら近づいた。バイクを覗き込んでいるのは西洋系の顔つきの2人の男性だ。1人はガッチリとした体格で、漆黒の髪をオールバックにしている。もう1人はウェーブのかかった茶色の髪の優男風。どちらもあまり身長は高くないが、どこかの民族衣装風の衣服を纏っている。
「コトリ、北海道で先住民族の首長会議でもあるのかな?」ダンゴが感想を口にする。
 それには答えず。『アイヌのカパラミプみたいだな』コトリはゆっくりと愛車に近づいていく。アイヌの民族衣装はコトリの警戒心をほんの少し弱くした。
「なにかご用でしょうか?」コトリは努めて冷静に声を出した。
 2人は驚いて顔を上げた。そして茶色のウェーブのかかった髪の男の方が「やあ!」とにこやかに笑いかけてきた。きりっとした眉と茶色の瞳が印象的だ。もう1人のオールバックの男は威厳のある顔をこちらに向けて無言で立っている。
「怪しい者ではないのです」茶色の髪の男は流暢な日本語でそう言ったが、コトリは無言で続きの説明を促した。
「私はマックス、そしてこちらはデュラン」マックスと名乗った男は後ろに立つオールバックの男を紹介した。「詳しく申し上げにくいが、私達はある事情があって、遠くからこの北海道にやって来たのです。私達が住んでいる土地と、ここは全く別の世界です。ですから私たちの言動が不審な物であっても大目に見ていただきたい。なにしろ私達にとって生まれて初めて目にするものばかりなのですから」マックスは大きなジェスチャーを加えながら説明した。
「やっぱり先住民族の首長会議?」コトリの耳元でダンゴが囁いた。
「そうかな?」そう言いながらコトリは昨日、網走の北にある能取岬の草原で、不思議な2人連れに出会ったことを思い出していた。

 1人は短い髪の背の高い少年で、もう1人はふわっとした明るい色の髪の少年だった。2人は灯台の方を向いて草原に並んで座り、もう遊び疲れたという感じで、ぼんやりと風景を眺めていた。
 コトリ達はバイクを道端に置いて徒歩で岬の方まで歩いてきていたが、あまりの風景の美しさに歩みを止めたところだった。
 邪魔をしないように2人の様子を眺めていると、ふわっとした髪の少年の横から、目玉の様な物が浮き上がってきた。
 それはまるで誰かに操られているように、ふわりふわりと彼らの周りを浮遊した。もう一人の短い髪の少年はそれを元の場所に戻そうと右往左往していたが、ダンゴが驚いて声をあげたのでこちらに気づいた。彼はあわてた様子で、ふわっとした髪の少年に何かを言うと、ボールはそれを合図のように元の場所に収まった。
 2人はナギとミツルと名乗り、暫くの時間を一緒に過ごしたが、さっきの目玉についてはついに質問することができなかった。
 この土地を訪れてから不思議な事が起こったり、不思議な人に出会ったりすることが多い、それに自分達がこの場所に来ていること自体が不思議なことだ。そう、きっと普通じゃないことが起こっているんだ。

「わかりました」コトリはまだ不信感を拭えていなかったが、とりあえず受け入れてみる事にした。
「わたしはコトリといいます。こちらはダンゴです」コトリは自分たちを紹介し、少しの笑顔を付けたした。
「コトリさんとダンゴさん、おお!美しいお名前だ」マックスは感嘆符を付けた。
「ただの“あだな”なんですけど、とりあえずそう呼んでください」コトリは呆れ顔だ。
「では、コトリ、これはどのような原理で動く乗り物なのですか?この土地では不思議な乗り物にたくさん出会う。特にこれは馬のようでもあるが、動物ではなくて機械のようだ。いったいどうやって動くのか確かめさせてもらっていたのです」マックスはそう言ってコトリのバイク、DUCATI696の方を示した。デュランと紹介された男は腕を組んで微かに頷く動作をした。
「これはモーターサイクルという乗り物です」コトリはDUCATI696に近づいた。「簡単に言うと、エンジンという回転力を作り出す装置を積んでいて、それで車輪を回して走るんです」
「エンジン?」デュランが初めて口をきいた。見かけどおりの威厳のある声だ。意志の強さを感じさせる太い眉に切れ長の黒い目がコトリを見つめてくる。
「はい。動かしてみましょうか」コトリはキーを取り出すとイグニッションを回した。セルモーターの回る音に続いて、腹に響くエンジン音が響いた。
「おお!」2人の大の男が2歩3歩と後ずさりをした。そして興味深げにまた近寄ってくる。コトリは悪戯っぽい笑顔になるとアクセルを煽った。轟くエンジン音に、男たちは再び後ずさりして身構える。
「大丈夫ですよ。これで力を調整しているんです」コトリは何度かエンジンの回転数を上げて見せてから止めた。
「凄い物だな。これが乗り物だというのなら、是非乗ってみたいものだ」デュランは好奇心に満ちた瞳でそう言った。「これまでは離れて見ているだけだったが、傍で見るといっそう興味深い」デュランはマックスを呼ぶと2人だけで短い会話を交わした。
「コトリ、ダンゴ、あなた方はこれからどちらへ向かわれるのですか」マックスが笑顔で問う。
「わたし達はこれから屈斜路湖へ下って宿へ入ります」コトリは短く答えた。
「どちらに宿を取っておられる?」デュランが質問する。
「丸木舟という小さな宿を予約しています」今度はダンゴが返事を返す。
「おお!」2人の男はクルリと後ろを向き、額を突き合わせて相談を始めた。「余の方から提案しよう」「いえ、私の方から柔らかく・・・」デュランの声は張りがあるので、相談の内容が漏れ聞こえてくる。
 やがてマックスがこちらを向いた。「コトリ、ダンゴ、実は私達もその丸木舟に宿泊しているのです」
「まじで?」ダンゴが思わず声を漏らした。
「そこでお願いがあるのですが」マックスの顔がさらににこやかになった。「もしご迷惑でなかったら、このデュランをそのモーターサイクルとやらに、乗せてやってもらいたいのです」
「でもこれは2人しか乗ることができません」コトリが口を挟んだ。
「私達2人はバスという大きな乗り物でここまで来ています。チケットも2枚あります。デュランを丸木舟まで乗せていただけるのなら、私がダンゴをバスで丸木舟までお連れします。間もなくバスの出発時刻が来ますから、すぐに宿で落ち合えます。何とかお願いできませんか?」
「よろしく頼む。どうしても乗ってみたいのだ」デュランも下げ慣れない様子で頭を下げている。
 コトリとダンゴは顔を見合わせてから、男達にクルリと背を向けて相談を始める。
「どうする?」コトリは困った表情で言った。
「私は構わないよ。マックスさん、優しそうだし、かっこいいし」ダンゴは大いに乗り気だ。
「そう・・・」暫くの間コトリは思案した。チラリと2人の男の方を振り返る。マックスとデュランは律儀にもう一度頭を下げた。
「わかりました。宿までお乗せしましょう」コトリは決断を下した。
「でも乗るには決まりがあって、ヘルメットを被らなければなりません。これです」とダンゴの被っていたイタリアンカラーのヘルメットをフォルダーから取り外した。「被れなければ乗れないので、この話は無かったことになります」
「そうか、決まり事なら止むをえん」デュランはヘルメットを受け取ると、ダンゴの助けを借りながら頭を押し込んだ。
「あれ?入っちゃったね」すこし窮屈そうだが、ダンゴが驚くほどすんなりとデュランの頭は収まった。
「兜より軽いな」デュランはご満悦だ。アイヌの民族衣装にイタリアンカラーのヘルメットという奇妙な組み合わせが誕生した。
「じゃ、行きましょうか」コトリはデュランに声をかけバイクに跨りエンジンを始動した。
「よろしく頼む」デュランはダンゴの指示を受けながらタンデムシートに跨る。
「じゃ、宿で待ってる」コトリがダンゴに言う。
「うん、バスはすぐ出るみたいだからすぐに追いつくよ。気を付けて」ダンゴが答える。
「わたしの腰にしっかりとつかまってください」コトリはデュランに注意した。
「こうか」デュランはコトリの腰に手を回した。
「行きますよ」コトリはバイクを発進させた。
「おお!」鋭い加速にデュランが声を上げる。
 バイクはさらに加速しながら駐車場を出て、パイロット国道に入る。
 下り坂を利用して速度を上げる。充分にスピードが乗ったところで前方にヘアピンカーブが見えてくる。ギアを下げエンジンブレーキで減速する。そして安全な速度にまでフットブレーキで減速してからカーブに進入する。車体は右側に大きく傾き遠心力を相殺する。腰に回されたデュランの手に力が入る。
 コーナーの出口が見えた。コトリはアクセルを開け、加速に入った。デュランは置いて行かれまいと、一層しっかりと腕に力を込める。
 コトリは少し走ってから路肩にバイクを止めた。
「コーナーではわたしと同じように体を倒してください。そうでないと運転しづらいですから」
「わかった。同じように倒れ込めばいいのだな」
「じゃ、本気を出して行きますよ」
「本気・・・?」デュランが何か言いかけていたが、コトリは無視してバイクをフル加速させた。

 コトリは丸木舟の看板のところから道路を外れ、宿の玄関先にバイクを止めた。
「いかがでしたか?」サイドスタンドを立て、後ろを振り返ってタンデムシートのデュランに声をかける。
「ああ、驚きだった。馬どころではない、こんなに速く走れるとは想像もしていなかった。素晴らしい速さだ。それに爽快だ。馬とはまた違った趣がある」デュランは興奮しているのか一気にまくし立てた。まだ息も荒い。
「それはよかったです。では、そろそろ降りていただけますか?わたしも荷物を降ろして宿に入りたいので」
「おお、これは失礼した」デュランは慌ててバイクを降りた。
 コトリは貴重品のバッグを提げると宿に入っていき、チェックインを済ませてから、荷物を部屋まで運び上げた。デュランがやはり慣れない様子ではあったが手伝ってくれたので、思ったよりも早く部屋で落ち着くことができた。
 部屋から見える宿の裏手は屈斜路湖畔に続いているようだ。コトリは湖を見てみることにして、ふらりと部屋を出た。玄関を出ると建物を回り込み湖畔までほんの少しだ。夕方の屈斜路湖は夕日を受けて輝いている。湖の中には中島が浮かんでいたが、爆裂火口が見えていないせいで、ずっとおとなしい印象だ。コトリは波打ち際でその光景を眺めながら佇んでいた。
「邪魔をしてもよいか?」張りのある声がした。デュランだ。
 コトリは湖の方を向いたまま「ええ、かまいません」と言った。
「そちはモーターサイクルの名手なのだな」
「モーターサイクルは大好きですから、上手な方だとは思いますが、名手かどうかは分かりません」コトリは関心の無い様子で答えた。
「相当な腕前とお見受けした。あのモーターサイクルがそうやすやすと操れるとは思えん。あれをあのように操るには相当な習練と熟練が必要だろう。まるで力を持て余した暴れ馬をねじ伏せているようだった。」
「80馬力もあるからね・・・」コトリは80頭の暴れ馬を想像して小さく笑った。
「余・・・私も一度は運転してみたいものだ」デュランは本当にそう思っているようだ。
「国の試験を通った者でなければ運転できない規則なんです」
「そうか、国家の定めがあるのか」
 暫く2人の間を沈黙が支配した。
「そちは幾つになる・・・」デュランが沈黙を破った。
 コトリはため息をついた。「ここでは女性に対してそういう訊き方をする事は、とても失礼にあたるのです」
「すまぬ。私はこの土地の作法に疎いのだ。ただ訊きたいと思ったことをそのままに尋ねただけだ」
「29歳になります」コトリは質問に答えた。
「若く見えるな。私と同じ年だ。そちはもう結婚しているのか?」
「はい、去年結婚しました」
「そうか・・・」デュランの顔に微かに落胆の色が浮かんだが、それはほんの一瞬の出来事だった。
「そちの伴侶はこの旅行に一緒には来ぬのか?」
「彼は仕事の関係で、いま・・・遠い異国に居ます」
「寂しいのではないか?」
「そういうつもりではなかったんだけど・・・」コトリは顔を上げた。「寂しいからダンゴと2人、出かけてきたのかもしれないですね」
「ここでは女性も自由に行動できるのだな。この土地はすべてにおいて束縛が少ない。それが私の印象だ。コトリ、思った通りに行動できること、それは素晴らしい事なのかもしれぬぞ」デュランの言葉が重く響いた。

「コトリ~!」後ろから明るい声が聞こえてきた。コトリと呼ぶことに対するプレッシャーを感じさせない明るい声だ。
『ダンゴは順応が速い・・・』コトリはそう思いながら声のする方に振り向いた。
 楽しそうに笑いながら、ダンゴとマックスがこちらに向かってくるところだった。
 コトリとデュランは並んで2人を待った。

2015.07.24
彩洋さんと夕さん、そしてlimeさんに感謝をこめて・・・
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オリキャラオフ会2参加作品発表で~す!

大海彩洋さんのところで企画されました『オリキャラオフ会2・また一緒に遊ぼうにゃ~!』への参加作品がようやくできあがりました。
成り行き上、八少女夕さんの参加作品に繋がる位置づけの作品ですので、少し早めに発表してしまいます。
『オリキャラオフ会第2弾用詳細設定』に書きましたように、登場するのはコトリとダンゴです。別々の作品の主人公ですか、今回初めて共演することになりました。なかなか息の合った共演になったと思っています。それぞれのパートナーの男共は今回置いてきぼりです。
舞台は美幌峠ですので、夕さんとこの面々と出会うことになります。
お楽しみください。

そして、limeさんのところのナギとミツルともチラッと出会いがあります。
limeさん、よくわからないままお2人に登場いただいています。不都合な点があれば遠慮なく言ってくださいね。そっと修正します。

では、下のリンクからどうぞ。
696(パイロット国道)
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オリキャラオフ会2参加作品 696(足寄国道)

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696(足寄国道)

 大気は冷たく、そして澄みきっている。深く息をするたびに肺の組織が再生されていく様な錯覚を覚えるくらいだ。
 コトリは湖畔に設けられたウッドデッキの上で何度か深呼吸をした。そしてそのまま真上を向いて、広がる青空にそっと祈りをささげた。ゆっくりと流れる幾つかの小さな雲以外は抜けるような青、その上にさらに青が重なる。
 コトリは宗教にほとんど関心を持っていない。だが、この祈りだけは息をするのと同じくらい自然な習慣になっている。
 祈りを終えて顔を下ろすと、ちょうどダンゴが視界に入った。さっきまで歓声を上げていたダンゴは、今度は静かに水面を覗き込んでいる。足元の湖水は不純物を含まない水晶の様に透明で、底に沈んでいるたくさんの倒木の様子までクッキリと透過する。
 広がる湖面は陽光を反射する木々の色を移し込んだように萌黄色に輝き、湖を囲む深い森は、美しい成層火山の阿寒富士、そして荒々しい山肌の雌阿寒岳の裾野にまで繋がっている。コトリはこの光景が現実であることを確かめるために、もう1度大きく深呼吸をした。

 昨日宿で知り合った4人が早朝に出発したので、コトリ達も予定より早く宿を出た。国道241号から240号へ入り、阿寒湖と雄阿寒岳にはあまり時間をかけないようにして、再び241号を西進、午前中の早い時間に森の中にひっそりと佇む湖、オンネトーを訪ねたところだった。

 ダンゴは黙り込んだまま、まだ水面を見つめている。コトリは少しの間迷ってから声をかけた。「ダンゴ・・・?」
 ダンゴは顔を向こうに向けてから「綺麗だね・・・」と言った。
 コトリにはそれが涙声に聞こえたので「どうかしたの?」と近づいた。
「ううん・・・」ダンゴは振り返って、何でも無いという風に顔を左右に振った。だが、ダンゴの目元は涙に濡れている。
「ダンゴ・・・どうしたの?」コトリが問いかける。
「コトリ、さっき空を見上げてたでしょ?私、ヤキダマさんからコトリの家族のことを聞いていたから・・・だから・・・」ダンゴは目の周りを袖口でふきながら言った。

 コトリはダンゴが初めてコンステレーションを訪れた時の様子を思い出していた。
「いらっしゃいませ」応対に出たコトリに、彼女は開口一番こう言った。「ケッチンにちょっかいを出さないでください」
 コトリは彼女が何を言っているのか意味が分からず、大きく目を見開いたまま立ちすくんだ。
 ダンゴは厳しい目つきでコトリのことを睨みつけていたが、やがて目に涙が浮かんできた。ダンゴはさっきのように、あふれた涙を袖口でふきながら「コトリさんですよね?」と、今更ながら相手を確認したのだ。
 その猪突猛進な態度にコトリは思わず笑いを漏らしてしまった。
“ケッチンをたぶらかす悪女”の汚名を晴らすためには、それ相応の時間が必要だった。それ以前に、ケッチンにガールフレンドがいること、それが今目の前にいる彼女らしいという事を理解するのにも時間が必要だった。だが、その前に見せたダンゴの一途さがほほえましかったし、その幼さも可愛かった。
 コトリは今またそれと同じものを見たような気がして「ありがとう」とダンゴの方を向いて微笑んだ。ダンゴは顔を左右に小さく振って向こうを向いてしまったが、コトリはかまわず続けた。
「ダンゴ、それでヤキダマはどこまでしゃべったの?」コトリの声はほんの少しきつくなっている。
 そしてコトリはヤキダマが、コトリの家族が全員事故で亡くなっていることや、たまに空を見上げるのはその家族のことを思っている時だ・・・など、ほとんどの事情を喋らされていることを知った。
「ヤキダマのお喋り・・・」コトリは小さな声でそう呟いた。

 コトリのDOCATI696は独特のエンジン音を響かせながら森の中を駆け抜ける。木々の間にはキタキツネやエゾシカが時折姿を現す。そのたびにダンゴが歓声を上げ、コトリが「はいはい」という感じで受け流す。やがてバイクは道道664号線から国道241号線へと戻った。足寄国道とも呼ばれている幹線道路だ。両側は同じように森に囲まれているが、やはり道幅も広い。コトリはスピードを上げた。北海道らしい直線を主体とした道路が続く。時折現れるコーナーも緩やかなもので、ほとんど減速することもなくコーナーをクリアして距離を稼いでいく。目的地は遙か先だ。午前中に池田より先へ進んでおきたい、コトリはそう算段を立てていた。
 幾つめかのコーナーを立ち上がろうとしたとき、前方に赤色灯が見えた。『やばっ!』コトリは慌てて減速する。次のコーナーの入り口にパトカーが停車しているのだ。警察官が止まれの合図をしている。コトリは速度を落としながら接近すると、すでに停車している車の横をすり抜けてから、バイクを路肩に停車させた。「事故のため通行止めにしています。暫くお待ちください」警察官が事情を説明してくれた。彼の向こうには1台の乗用車がひっくり返っているのが見える。消防車と救急車が止まっていて、大型のジャッキを使って作業中だ。
「挟まれたのかな?」ダンゴが訊いてくる。
「そうみたいだね。少し手間取るかも」コトリの言葉にダンゴはバイクを降りた。コトリもバイクを降り、2人並んで救出作業を見守った。
 暫くすると彼方から唸るような音が聞こえ始めた。
「なに?」ダンゴが森の上を見上げる。
「ローター音だ」コトリは予備知識があったのでその音の出所を言い当てた。
 やがて森の上空に白いボディーと赤のラインのヘリコプターが見え始めた。
「ドクターヘリだよ」コトリがダンゴに解説する。
「ドクターヘリ?」
「そう、お医者さんと看護士さんを乗せたヘリコプターなんだ。けが人を治療しながら大きな病院まで運ぶんだよ。緊急の患者さんには特に有効なの」
「すご~い!」ダンゴはローター音に負けないくらいの声で叫んだ。
 ドクターヘリは右側から回り込み、道路の上空で少しもふらつくことなくホバリングして警察官の合図を待ち、そしてスムーズに道路上に着陸した。
 ローターが回転を落としサイドのドアが開けられると、紺のユニホームに身を包んだ2人が飛び出してきた。1人の背中にはフライングドクターとある。2人は大きなバッグを持って事故車に近づいていく。すでに車体に挟まれていたドライバーの救出作業は終了していて、すぐに医師の治療が始まった。
 ローターが完全に停止すると、ヘリコプターの前部のドアが開き左右から機長と整備士が降りてきた。コトリは機長の方に注目していた。
 道路に降り立った機長は帽子を被っていたが、帽子から出ている髪の毛はやはり真っ白だ。背が高く、整備士の男性を若干見下ろすようにして、何か打ち合わせをしている。遠目ではあるが物腰にも見覚えがある。
「やっぱり敷香だ」コトリの声は大きくなった。
「知り合い?」ダンゴが訊いてくる。
「ちょっとね・・・」コトリは曖昧に答えると、目立たないように人垣の後ろに回った。敷香の邪魔になリたくなかったのだ。
 整備士との打ち合わせを終えた敷香はクルリと方向を変え、こちらに向けて歩き出した。どんどん近づいてくる。そしてコトリの前に立っている警察官と二言三言言葉を交わした。通行止めの段取りについて喋っているようだ。
 ふと上げた敷香の視線にコトリの視線が合わさる。
 左側がライトブルー、右側が焦げ茶、特徴ある敷香のオッドアイが一瞬静止した。だがそれはほんの一瞬のことだ。表情はそのままで小さく頷くと右手を軽く上げる。
 コトリもそれに答えて右手を少し上げて小さく振る・・・それだけだった。敷香はヘリコプターの方へ小走りで戻って行った。
 けが人はストレッチャーに横たえられ、ヘリコプター後方の開口部から機内へ収容された。医師と看護師がサイドドアから乗り込む。続いて敷香が乗り込むとローターが回転を始めた。最後に整備士が機体の周りを一周して外回りの確認をする。そして乗り込んだ。ローターのスピードが上がる。タービンの音がひときわ甲高くなった。
 機体がふわりと浮かび上がる。まだ着陸から15分程しか経過していない。敷香の操縦するドクターヘリは右に回り込みながらスムーズに高度をあげると、南東の空に向けて高速で消えて行った。
 パトカーや救急車が位置を変える。間もなく規制は解除されるようだ。コトリは横に立っているダンゴの様子がおかしいのに気が付いた。
「ダンゴ?」
 それに答えて顔を向けたダンゴの目元はまた涙で濡れている。
「どうしたの?」コトリは訊かずにはいられない。
「今の人、綺麗だったね。それに感動!こういうの、かっこいいなぁ!」ダンゴは興奮気味に言った。そして目の周りを袖口でふいた。
 コトリはポケットの中にあったタオルハンカチを出して、ダンゴの手に握らせるとバイクの方へ向かった。


2015.07.30
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(追記あり!)オリキャラオフ会2参加作品の続編発表です

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大海彩洋さんのところで企画されました『オリキャラオフ会2・また一緒に遊ぼうにゃ~!』への参加作品、このあいだ書き上げたのですが、調子に乗ってその続編を書きましたのでUPしておきます。

コトリとダンゴの2人は屈斜路湖を出て浦河に向けてバイクを飛ばしています。
残念ながら、参加される方のキャラがここらあたりをうろついているという情報は無いので、参加されるている方のキャラとのコラボはありません。

2015.7.31追記
ああ~すみません。フォルテさんのところのお三方が、オンネトー経由で行動されていることにさっき気が付きました。
フォルテさんは、お名前は存じ上げているのですが、まだお付き合いが無いので、レイモンドさんやリーザさんや詩人さんの様子がよく分かりません。
でも目撃だけでもすればよかったなぁ。
フォルテさん、すみませんでした。反省しています。

夕さんとこの4人組とも全く違ったルートで浦河へ向かう事になっています。あちらは7人乗りのバンですから仲間も増えて楽しそうですが、こちらはバイクのタンデム(二人乗り)ですからそういうわけにもいきません。ただひたすら目的地に向けて走ります。約290キロ・7時間半の道程です。
経験者の先に言わせると「1日で300キロ走ると少しきついかなぁ」という程度ですので、コトリだったら問題無いはずです。(ダンゴは若いから大丈夫と判断してます)
早朝、夕さんとこの4人組の出発を見送って、その後すぐに出発している設定にしましたので、少し観光を入れても夕方には浦河の牧場に到着の予定です。

あとは彩洋さんはじめ参加者の皆さんにお任せしてしまおうかなぁ・・・などと、サキはイージーな方へ流されています。(今のところ)
よろしければ、この下のリンクからお進みください。

696(足寄国道)

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プロフィール
こんにちは!サーカスへようこそ! 二人の左紀、サキと先が共同でブログを作っています。
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ラグランジア
左からシスカ、サヤカ(コトリ)、サエ。ユズキさんにイラストを描いていただきました~。掌編「1006(ラグランジア)」の1シーンです。
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