Debris circus

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頭の中に散らばっていた破片(debris)を改めて文章に書き起こし、オリジナルブログ小説としてサーカスの舞台に上げていきます。読みにくいものもありますが、お暇な時にパラパラとめくる感じででも読んでいただけたら嬉しいです……

 

物書きエスの気まぐれプロット10(南風)

Stella/s 月刊ステルラ5月号 投稿作品


南風

 一瞬のことだった。
 春の風が吹いたように感じて僕が顔を上げると、右側を女の子が追い越して行くところだった。
 そう、本物の春の風のはずはない。ここは地下鉄の駅のコンコースなんだから。

 桜色のスプリングセーターに紺のミニスカート、真っ直ぐに伸びた髪は肩のところでクルリと弧を描き、律動的な歩調に合わせてユラユラと揺れている。
 黒いストッキングのほっそりとした足と踵の低い黒い靴に挟まれた桜色の靴下は、その歩調に合わせて颯爽と進んで行く。
「あんなに急いでどこへ行くんだろう?」
 戸惑ったのは一瞬だった。僕は少し歩調を速めた。
 しかし午後6時を回った地下街はもう仕事を終えた人でいっぱいだ。
 少しずつ彼女との距離は開いていく。
 僕は彼女との距離が開かないようにもう少し速度を上げたが、あまりジッと見つめるのもはばかられ、壁際にある売店のショーケースに目をやり、壁に貼られた大きなポスターを見てから、また彼女の方に目を戻した。
 すると彼女は小走りに進んでいて間に何人もの人が挟まって、うっかりすると見失いそうな距離にまで遠ざかっている。
 あからさまに走って追いかけるのは気が引ける。僕は何とか距離を維持しようと、前をゆっくり歩く人を避けながら少しの間小走りに進んだ。距離は縮まったが安心する間もなく、彼女は目の前にある階段をトントンと駆け上がった。
 僕は彼女が自分の目的地と同じ方向へ進むのを確認してから、そのままの速度で階段に近づき、勢いをつけて駆け上がった。階段を上りきってから彼女の進んだ方向を確認すると、たくさんの人の向こうに一瞬だけ急ぎ足の彼女の後ろ姿が見えた。
 僕はさらに歩幅を広げたが、とうとう彼女は人ごみの中に紛れ込んでしまった。
 間もなく地下街はT字路になり、百貨店に向かう人とJRに向かう人がそれぞれの目的地に向かって分かれていく。
「あれ?百貨店の方へ向かったのかな?」
 僕は少し残念な気持ちになったが、そのままJRの方へ大股で進んでいった。
 しかし、地下街を少し進んで角を曲がったとき、僕の心はまたふわりと舞い上がった。桜色の後姿を見つけたのだ。彼女は通路を進みJRの改札口に向かうエスカレーターを軽やかに駆け上がる。
 僕はその横の階段を一段飛ばしで駆け上がった。
 僕は西口から改札を入らなければならない。なのに急ぎ足の彼女は時々小走りになりながら中央口の方へ向かっていく、そして人ごみの中に消えていった。

 一瞬の春の風、そして桜はあっという間に散ってしまった……。
 僕はゆっくりと西口の改札に向かって歩き出した。


「これじゃぁストーカーじゃない」コハクは顔を上げた。
「そんなこと無いよ。きちんと相手のことを考えながら行動してるし、そんなに近づいてないし、もの凄く気になるって事あるんじゃないのかな?」エスは自分の書いた主人公のために弁護する。
「冗談よ。これでストーカーなら世間の男はみんなストーカーよ」コハクはエスの必死の顔を眺めながら頬を揺るめた。
「基本のアイデアはオジサンから?」
「そう。今日は春の風を感じたって、夕食の時に話してくれたんだ。へぇ、桜色のスプリングセーター……素敵だろうなって思ってそこから膨らませたの。父さんの話は追い越されて『おお!春の風みたいだ』って感じただけで終わってたんだけど、少し付け足してね」
「それでストーカー気味になってるんだ」コハクはそう呟いてから「でもこれでお終い?私の話も続きが書けていないうちから、また新しいシーンを書いて何も完成しないね?」と言った。
「ごめんね。断片は浮かんでくるんだけど、それが纏まらないんだ。こんな物ばかりブログに上げていたら、みんなに愛想を尽かされてしまうのはわかってるんだけど。ずっとアクセス数も増えないしね。どうしようも無いんだ。それにウチは書くのも読むのも遅いから、書いているうちはなかなか他のブログを読んでコメントをすることができないし、読んでいるうちは書けないし、悪循環だよ」フウ……とエスはため息をついた。
「イタリア語のページも、マリアぐらいしか見てくれてないんじゃないかな。マリアが覗いてくれたのは奇跡だよ」」エスの声は沈んでいく。
「シュンとしない!!!」コハクはエスの肩をポンと叩いた。
「ごめんね」エスの声は益々沈んで行く。
「いいよ。断片でも何でも、書ける時に書いておけばそのうち繋がってくるよ。私がちゃんと読んであげるから」コハクの声は優しくなった。
「ありがとう」エスはテーブルの上に伏せてしまった。
「しょうが無いなぁ。じゃぁ今日は特別にコーヒーを入れてあげるよ。私が持ってきたケーキを開けよう」コハクは立ち上がるとキッチンへ入っていった。
 エスはテーブルから顔を上げるとフニャリと笑った。


2014.04.05
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物書きエスの気まぐれプロット「FindYou」

 エスが作品を発表しているブログの名前、知ってる?
 知らないよね?あまり見ている人はいないみたいだし。
 あ、わたしは他にすることもないから時々見てるよ。
 ブログの名前は『物書きエスの気まぐれプロット』っていうんだけど、もちろん“エス”というのは本名じゃ無くて彼女のニックネームなんだ。ハンドルネームとしてそのまま使ってるんだね。

 わたしはいつものように誰もいない気配に目を覚まして、パンヤの片寄りを気にしながら動き出し、いつものようにブログを覗こうとエスの小さな机に上がってマウスの上に座ったところだった。
 パソコンの起動を待って(8.1だから結構速い)、マウスの上に乗ったまま上手にカーソルをタイルに合わせると、左手でクリックしてブラウザを起動、そしてお気に入りからエスのブログを開いた。
 さてエスの最新の記事は?

11 Apr

こんばんはエスです。
今日の記事は“ここのところ”です。
そう、ここのところ作品を書いていません。未完の長編をエンディングに向かって書いていきたと思っているんですけど、これまではぼんやりとあったエンディング、それすらも浮かばなくなってきましたし、考えが纏まらないし、悶々と考え続けて結局何も出てこなくって、皆さんのブログ小説を覗いて感想を書いたりもしたいのに、なんとなく時間を作れなくてそれもかなわない。つまんないんで音楽を聞いていたりして。
1日が無意味に過ぎていくことが続いています。
音楽?もちろんエスのことですから、ネットを彷徨って探してきたボカロを聞いているんですけど……。

 あ、ボカロを聞いているんだ。わたしの曲かな?
 わたしは膝の間のスクロールボタンを両手で回した。


今日聞いていたのはこんな曲です。

[Hatsune Miku V3 English & Meiko V3 English] Find You [Vocaloid]
ZEDDの Find Youをボカロでカバーした作品ですが、素敵です。
オリジナルを知った上でも、エスはやっぱりボカロカバー版も素敵だなと思ってしまいます。
歌い出しはMEIKOです。そしてMIKUが絡みます。
MEIKOの大人の女性を思わせる歌声とMIKUの人間離れした高い声の組み合わせが絶妙だなあ。
そして2人共最新版V3なので結構上手に歌います。それも英語音源ライブラリを使って英語でですね。聞き取りやすくなったんじゃないかと思っています。V2の時は日本語音源でしたから、カタカナで英語を歌わせても何言ってるのか意味不明のことが多かったんです。凄い進化です。
ボカロは只のコンピュータプログラムで、人間じゃ無いんです。エスはそこに魅力を感じてしまいます。天性の歌唱力を授けられていなくても歌うことができる(自分の思うとおりに歌わせることができる)んですから、凄い事です。
そしてつい何回も聞き入ってしまって、今日も何も進まないのです。
お粗末様でした。

 やれやれ……。これでお終い?それにまたぼやいてるよ。

 わたしはイヤホンを左右に並べて自分の方に向けるとPLAYボタンをクリックした。伸びやかな曲が流れ始める。

 へぇ。MEIKO姉さんとわたしとのデュエットなんだ。世界中の人が色々と考えて工夫してるんだね。相当に上手くチューニングしてくれないとこんなに伸び伸びと歌えないもんね。MEIKO姉さんも、すごく色っぽい。

 わたしは曲を3回リピートしてようやく満足したが、その記事にコメントと拍手が無いことを確認してちょっとがっかりした。
 そしてブラウザを閉じコンピュータをシャットダウンすると、食卓に飛び移って窓際に向かい、カーテンの隙間から外を覗いた。
 ベランダの向こうには夕暮れに変わり始めた春の風景が遠く海まで続いていて、手前の山では薄紅色の山桜が若葉の芽吹きと共に満開を向かえようとしている。わたしは最初からそこに置かれていたように気配を消し、じっとしたまま風景を見つめていた。
 やがて夕日は山にかかり始め、夕暮れの気配は一層濃さを増す。
 まだ誰も帰ってくる気配は無い。


2014.04.12

追記がありますが……。
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今回はサキのここのところです。

 こんばんは。皆様お元気ですか?
 へへ、サキはあまり元気じゃぁないんですよ。
 それで、ここのところ更新が滞っているんですが、あんまり更新をしないのもシャクなので近況をちょっと記事にしておこうかなと思いました。

 で、サキが何をしているかというと、そうです「シスカ」を書いているんです。
 なぜ元気が無いのかというと、そうです「シスカ」の展開に頭を悩ませているからなんです。
「シスカ」はサキが生まれて始めて書き始めた小説でしかも長編です。これまで短編すら書いたことが無かったんですよ。山西左紀はこの物語を書くために作った名前ですし、このブログもそのために作ったブログなんです。
 2011年夏頃、サキの頭の中に長い間埋まっていた物語を考えも無しに書き始めて、10月から掲載を始めたんですが、やはり途中で物語が崩壊して、にっちもさっちも行かなくなっていたんです。でも“ここのところ”、少しずつですが考えて考えてエンディングに向けて進んでいます。ところがやっぱりプロットがないので矛盾が吹き出しておりまして、33話まで遡って修正が必要になってきています。
 書き直して読み返して、さらに校正と推敲を繰り返してはいますが、今のままでは上手く纏まりません。
 やはり辻褄を合わせて次の展開へ進むために、33話から再度UPしなおしていく必要があるかな?と考えています。つまり33話以降を一旦消去して再び書き直した33話からをUPしていくつもりなんです。あ、もちろん本文を入れ替えるだけなのでいただいたコメントなどはそのまま残します(大事な宝物なんですもの)。ですからすでに38話までお読みいただいた方は(あまりいらっしゃいませんが……)わざわざ読み返す必要はないと思います。基本線は変わっていませんから、ほとんどつじつま合わせの変更です。
 さて、新規に書いている部分の内容についてです。主人公のシスカはサキの最初の分身ですし、思う存分動き回りたいんですが、今書いているところではヨウコが動いています。彼女は謎の部分が多い人物で使いづらいので、相棒を登場させて少し楽しみながら書いています。
 あまり長くかからずにシスカの登場する場面に繋がるはずなので、もう暫く頭の中のスイッチをヨウコにしたまま書いていきたいと思います。これ結構頭が痛いんですよ。
 今の段階では44話まで書き上がろうとしていますが、校正と推敲は終わっていません。これに時間がかかるんです。そして、この後数話で完結したいと考えているんですが、やはり文章力や構成力が無いんで、どう持って行けるのか不安でいっぱいです。
 でも、開き直ってしまえば、サキは素人ですし完成させることにこそ意義が有るんじゃないかということで、とりあえずエンディングに向けて一生懸命書いていきます。初めての長編なんだから……と、寛容な心で見守っていただければとてもありがたいです。
 ある程度完成したらまたお知らせします。
 でもそれまでに他の作品にかかってしまうかも。そうするとまた遅れてしまいますけど。お許しくださいね。
 では……。
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プロフィール
こんにちは!サーカスへようこそ! 二人の左紀、サキと先が共同でブログを作っています。
ようこそ!


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アスタリスクのパイロット、アルマク。キルケさんに書いていただいたイラストです。
ラグランジア
左からシスカ、サヤカ(コトリ)、サエ。ユズキさんにイラストを描いていただきました~。掌編「1006(ラグランジア)」の1シーンです。
天使のささやき_limeさん2
limeさんのイラストをイメージにSSを書いてみました。「ダイヤモンド・ダスト」
イラストをクリックすると記事に飛びます。よろしければご覧くださいネ!
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