Debris circus

Debris circus

頭の中に散らばっていた破片(debris)を改めて文章に書き起こし、オリジナルブログ小説としてサーカスの舞台に上げていきます。読みにくいものもありますが、お暇な時にパラパラとめくる感じででも読んでいただけたら嬉しいです……

 

---32---



 ヨウコはロビーのソファーに腰を掛け地下駐車場の入り口を見つめていた。どれぐらいここで待っているのだろう。もうすでに日はとっぷりと暮れて、駐車場の入り口は照明に浮かび上がっている。前のテーブルには冷たくなったブラウンコーヒーが、わずかに量を減らしただけで置かれている。
 ジュナと出かけたみたい……、食事に現われないシスカを心配するクラモチ達にヨウコはそう伝えた。クラモチ達は基本的にオルガでのシスカの行動に制限をかけたくないと考えているようだったので、もう少し様子を見てみようということになったが、ヨウコは胃のあたりに重苦しさを感じていた。
 長すぎる張り込みにそろそろクラモチの部屋を覗こうかと考え始めた頃、重圧なエキゾーストノートが聞こえ始めた。やがて黒いスポーツカーが地下駐車場に降りて行くのを確認すると、ヨウコはゆっくりと立ち上がった。そしてロビーを横切りエレベーターに乗り込み、自分たちの部屋のある階のボタンを押した。エレベーターはガラスで覆われたシャフトの中をロビーを見おろしながら昇って行った。
 ヨウコはエレベーターを降りると、エレベーターホールの角を曲がり廊下の隅にそっと立った。
 しばらくして”ポーン”とエレベーターの到着を示すチャイムが鳴った。降りてくる人物を影からそっと確認すると鉢合わせをするように廊下の角を曲がった。
「ごめんなさい」
『失礼!』
 双方で声が上がってからヨウコは「ジュナさん!シスカ!心配したよ?」と訊いた。
 少し間が空いてから「シスカさんと夕食を食べていたのですよ」ジュナがにこやかに答えた。
「色々お尋ねしたいことがあったので私がお誘いしたんですよ。ご心配をおかけしたならお詫びします」ジュナはシスカを見つめながら続けた。ヨウコはジュナのシスカに対する呼称が変化したことに気づいた。
「そうなの?」ヨウコがニュアンスに気をつけながらシスカに尋ねるとシスカは頷いた。
「それでは私はこれで、夜の会議でまたお会いしましょう。シスカさん、付き合わせてごめんなさいね」ジュナはそう言うと自分の部屋の方へ歩いて行った。
 ジュナを見送ってからヨウコはシスカに「何の話をしたの?」と改めて訊いた。
「僕の歌を聞いてみたいと言われた」少し決まりが悪そうにシスカが答える。
「歌を?あの子守唄?」
「ウン。ベクル語の子守唄とあの家族の歌と……」
「ふーん。なぜだろう?」ヨウコの目がメガネの奥で光った。
「さあね。わからない。でも、疲れた。少し横になりたい」シスカはそう言うと、まだ聞きたそうにしているヨウコにかまわず、自分の部屋へ入って行った。
 ヨウコは少しの間考え事をしていたが、クラモチ達にシスカの帰還を伝えようと廊下を戻っていった。

 ヨウコは早朝に目を覚ました。神経を使いすぎたのかまだ興奮が残っていて、すこしウトウトしたぐらいで目が覚めてしまったようだ。エネルギー相を迎えての会議は警備の関係で空港のターミナルビルで開かれたため、関係者全員がそこまで出向かなければならなくなったが、外交省の役人達が間に入って滞りなく終了した。ようするに後追いの承認儀式のような位置付けの会議だったらしい。大臣は自分がすべてを掌握している事を確認すると(それが事実であるかどうかは別にして)、慌ただしくシンキョウへ飛び立っていった。
 ヨウコは大臣の物々しい警備に比べて、自分達に付く警備や監視が非常にいいかげんなことに驚いていた。ほとんど形だけの警備で、どこへ行くにも咎められることは無かった。現にシスカの外出も可能だったし、自分も後を追ってホテルを飛び出したが何も言われなかった。(油田事故の始末屋ぐらいにしかとらえられていないのかな)ヨウコはそう解釈することにした。
 とりあえずの頭の整理を終えたヨウコだったが、とても眠れそうもないので着替えとメイクを済ませ、窓際に置かれたソファーに座った。そのままエネルギーが切れたアンドロイドのようにじっとしていると、ドアがノックされた。
 ドアスコープを覗くとシスカだ。ドアを開けて「おはよう」と言うとシスカは「おはよう。少し早いけど。朝食を食べに行こうか。まだだよね?」と言った。
「うん。昨日は疲れてたみたいだったけど、大丈夫?」
「昨日はちょっとね……でも一晩眠ったからもう大丈夫」
「体力あるね」そう言うとヨウコは部屋を出た。2人は昨日のことには触れないまま、エレベーターでレストランに向かった。

 レストランはまだ朝早いせいか空いていて、知っている顔は見えない。それはシスカが望んだことのように思われた。窓際の隅の席に向かい合わせに座るとスタッフが朝食を運んできて、テーブルの上にはパンや飲み物の他にハムやソーセージ・卵料理・サラダなどがいっぱいに並べられた。ヨウコは量の多さに少し驚いてシスカと顔を見合わせていたが諦めて食事を始めた。そして「昨日はどんな様子だったの?」もしよければ喋ってみない?という雰囲気が出るように心がけてシスカに話しかけた。
「僕はこの町で生まれたんだ」シスカは食べながら静かに話し始めた。
「こんな話は本当はキタハラに一番に話しておかないといけないんだろうけど、いま僕はとてもしゃべりたい気持ちだし、ヨウコには話しておいた方がいいような気がするんだ」シスカは意味ありげに微笑むとヨウコの目を覗きこんだ。理由を尋ねるのも気が引けてヨウコは曖昧に微笑みを返した。
「ラサは僕の顔を見て思い当たる人物があったんで僕を誘ったんだ」
「思い当たる人?」ヨウコはシスカがジュナのことをラサと呼ぶことに驚きながら尋ねた。
「直感だと言っていたけど、どうしてそう思ったかは言ってくれなかった」
「どこへ誘われたの?」
「場所はよく分からないけど小さなライブハウスだった。そこで歌ったんだ」
「あの2つの曲を?」
「うん。それで声までそっくりだと言われた」
「誰と?」ヨウコはもう会話のニュアンスなどを気にすることはやめて率直に尋ねた。
「戦争中この歌を歌っていた歌手と……反戦のアイドルだったらしいよ。ラサはその歌手と親しかったらしいんだ」
「それが思い当たる人?」
「そう」
「いまその人は?」
「亡くなっている」シスカはポツリと言った。
「そうだったの……」ある種の予感を感じながらヨウコは言い淀んだ。
「見て」シスカはウエストポーチを開けるとプラスチックケースを取り出してヨウコに見せた。
「これは?」ヨウコはちらりと写真を見て言ったが、すぐに写真をじっと見つめたまま黙り込んだ。シスカが何か言おうとしたが手でそれを制した。
「面影がシスカと似てる。この人はシスカに関係のある人?」慎重な言い回しをしてヨウコは顔を上げた。
「その人が反戦のアイドル……」シスカは一旦そこで言葉を区切ってから続けた。
「そして僕の母親だと言われた」
 予測はしていたがやはり衝撃的な答えだった。ヨウコは勤めて冷静に「そう……」と答えたが、言葉が続かなかった。
「その人、僕に似ていると思う?」朝食を口に運びながらシスカが唐突に訊いた。
「そうだね。先入観があったからかもしれないけど、そういう印象を持ったわ」ヨウコは素直に感想を述べた。
「僕はね、言われるまで気がつかなかった。自分よりもっとそっくりな人がいたからね」
「それは誰?」
「それはね、どこにも居ない人なんだ。もう1人の僕の世界の中にだけ居た人で、たぶん声も僕と似ていたんだろうけど、自分の声ってわからないからね。ただアルナとシキシマの背丈は違っていたし……それは多分僕の小さな頃の記憶がそうさせているんだろうけど。それに細かい部分の記憶がもう残っていないんだ。少しずつ炭酸が抜けて行くようにディティールがぼやけていくんだ」シスカは諦めとも悟りともつかない笑みを浮かべた。
「アルナとシキシマって?」
「ああ、ごめん。アルナは僕の母の名前。そしてシキシマが……」
「もう1人のシスカの世界の中にだけ居た人?不思議な話ね」
「ヨウコは僕の精神状態について詳しく知っているよね」
 ヨウコはどこまで喋っていいのか判断しかねて黙っていた。
「ずいぶん調べたんじゃないの?」
「……友達のことだもの……そりゃぁ気になるわ」ヨウコは返事が硬くなるのを感じていた。ライブラリを総動員しての調査によると、シスカは紛争終結直後のイルマで難民孤児として難民救済施設に収容されている。その時点で精神的に不安定な部分を抱えていたという報告があがっていて、紛争中から収容されるまでの間、劣悪な環境に放置されたことは明白だった。
「シンキョウ駅で僕が喋ったことは憶えてる?」
 ヨウコは一瞬戸惑ったが「蜘蛛みたいな長い手足の大男、そして国境軍のマーク……?」と確認するように言った。
「それはね。僕が母親と離れ離れになってからママさんに出会うまでの間に起こったことで、シキシマはその時に僕から生まれたみたいなんだ」シスカは少しうつむき加減になっていたがまたヨウコを見つめた。
 これまでの情報の断片をつなぎ合わせれば、幼いシスカに何が起こったのか推測することは可能だった。ヨウコは戦乱の中にたった一人で放り出されたシスカが受けた仕打ちを、心が二つの裂けてしまうくらいの仕打ちを思いやりながら沈黙していた。
「怒ってるわけじゃないよ。僕の言ったことを解ってくれたかどうか気になっているだけなんだ」シスカは微かに頬を緩めた。
「いくら友達でもその気持ちを完全に理解することはできないわ。でも理解しようと努力することと、自分に置き換えて想像することはできてると思う。それと、それをすることができる知識も充分に持っていると思う」
「ヨウコ。本当に僕を友達と思っていてくれてる?」シスカはヨウコの目を真っすぐに見つめて訊いてきた。隠し事はすべて見抜いているという目だ。
「私はシスカを友達だと思っているわ」ヨウコは嘘偽りの無い真実を述べた。
「ありがとう。それが聞きたかった」シスカはこぼれるように微笑んだ。
「それから食事が始まったんだ。結構美味しかったよ」
「どんなものが出たの」重要な話は終わったと感じたヨウコは好奇心に任せて尋ねた。
「なんていうんだろう。よく分からないんだけど食べたことの無い料理だった。何かの肉料理だったけど“ラド・ネラック”って掛け声をかけてから食べ始めたんだ。どこの料理だろう?けっこう美味しかった」シスカは卵料理を口に運びながらしゃべり続けた。
「ふ~ん……」ヨウコは小さくつぶやくと少し首を傾げ顎に手を当てた。
シスカはその様子を見ていたが「さあ。難しい顔は終わりにして食事を済ませてしまおうよ」と言った。
「そうだね」ヨウコも答え、朝食を続けた。


(2013.11.04 見直し)
(2014/06/09 更新)
(2014/08/13 更新)
関連記事
スポンサーサイト
テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
 

シスカ32話、今日はまとめてUPします。

31話は去年の10月ですから4ヶ月も空いてしまったことになります。シスカを書くためにこのブログを始めて、幾つかの出会いがあって、幾つかの物語を書いて、そのうちの幾つかはまがりなりにも形になり、幾つかはそうならず、そしてシスカがついに行き詰まって、4ヶ月がたって、ようやく再開です。
でも、プロットが最後まで出来たわけではないんです。もう少し進んだらまた止まります。そしてまたプロットの作成作業が待っています。長い時間が必要なようです。
サキは考えて、考えて、書き出して、読み直して、考えて、そして書き直すのです。さらに何度もそれを繰り返すのです。(これじゃあ永遠に完成しないね?)
ただラストは決まっています。そこに向かって少しづつ、少しづつ、進んでいこうと思います。
他のお話(たとえば絵夢シリーズとか)も書かなくちゃいけないしね。
プロットが出来ている分だけはしばらくは続けることができるので、よろしければ読んでみてください。シスカは相変わらず愛想が悪いです。ちょっとは絵夢を見習えよ。

短い単位で発表していきます。そして1話分揃ったら土曜日にまとめてUPします。そんなスケジュールで暫くいってみます。ご勘弁ください。
こうやって更新回数を水増ししていく魂胆ですが、これは内緒の話です。
そしてもし、もしですよ、感想を書いていただけるのなら、本文の方にコメントください。
この記事はカテゴリーが違いますので……。
関連記事
テーマ : つぶやき    ジャンル : 小説・文学
 
 

---33---

 ヨウコ達がヘリポートに着くとAW289のドアが開きキタハラが顔を出した。シスカはそれを見ると訓練の行き届いた兵士のように機敏に駆け寄っていき、少しの間話し込んだ後すぐ機体の点検に取りかかった。早朝の低温の中、シスカは白い息を吐きながらクルクルと動き回ってルーチンをこなしてゆく。作業はいつもより念入りに行われているようにヨウコには見えた。
「いつもより念入りだね」キタハラに感想を伝えると「わけの分からんところで一晩過ごしたからな。気温も相当低かったしな」と答えながらシスカの後を確認してゆく。作業が終わるとチェックリストの読み上げが始り、エンジンもスタートした。
 打合せでは復路の飛行でヨウコ達マザー2のスタッフとジュナ達サルベージスタッフを船まで運び、ベクレラ軍の大型ヘリで外交省の役人とオルガノ州政府関係者とガス会社スタッフを輸送するという飛行プランが組まれていた。ヨウコは機体から少し離れて携帯端末を操作していたが、ジュナ、ボースンそしてオラクが到着したのであわてて端末をしまった。今回のプロジェクトには直接の作業を指揮してきたボースンとオラク、そして責任者のジュナが同行することになっていた。
 キタハラに紹介され、にこやかにあいさつを終えた3人はAW289に乗り込んだ。続けてヨウコ達が乗り込むと、シスカは離陸許可を取るため管制官と交信を始めた。エンジンが出力を上げAW289はマサゴ市と変わらぬ灰色の空へと離陸した。また雪が舞い始めていた。
 
 ヨウコはジュナとシスカを交互に見なが今朝の話について考えをめぐらせていた。
 速度が落ちたので窓の外を見やると、海上にはマザー2が見え、AW289はマザー2のヘリポート上空でホバリングをはじめていた。それをジュナにベクル語で伝えるとジュナは『分かっていますよ』と答えた。ヨウコは思い切って尋ねてみた。『昨日キタハラの歌を聞かれたみたいですけど、どうでしたか?』
 ジュナはにっこり笑って『勝手に連れだしてしまってごめんなさい。素晴らしかったですよ!あなたのおっしゃっていたベクレラの子守唄と家族の歌を聞かせてもらったんですけど、感動しました。戦争中有名な歌手が歌っていた曲なんですけど、シスカはその歌手にも負けないくらいの歌唱力を持っていますね。お会いした時、髪がプラチナだったのでベクル人かと思って驚いてしまったんですけど、間違いありません!シスカにはベクルの血が入っていますよ』とニッコリと微笑んだ。
 ヨウコはジュナがシスカのことを親しみを込めた口調で「シスカ」と“さん”まで外して呼んだことに驚いたが、その微笑みはまた拒絶のニュアンスを含んでいたので、ヨウコは『小さな食堂でしか歌ってないんですけど、仲間うちでも評判なんですよ』と事実だけを付け加え会話をやめた。
 AW289はマザー2に向けて降下を開始した。
 着船したAW289は乗客を降ろすと再び上昇した。そして今度はプログレスに着船し、給油を始めた。空いたマザー2のヘリポートには間もなくベクレラ軍のクラシカルな大型ヘリが着船し、外交省の役人とオルガノ州政府関係者そしてガス会社スタッフが到着した。プログレス船上では、シスカが作業の手を休めてそのレアな大型ヘリを眺めていた。


(2014/04/26 更新)
(2014/08/13 更新)

関連記事
テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
 

シスカの33話UPします。

シスカの33話を一挙にUPします。といっても短いものですが。
で、ですね。まとめてUPした方が読みやすいという御意見を頂きました。
「そのままでもかまいません」という御意見もあったんですが、積極的に賛成されているわけでも無かったので、読みにくくない方法を取りたいと思いました。
このお話を読んでいただいている数少ない方のご意見なので、最優先で尊重しなくてはいけないと思います。読みにくくなってはいくら実験でも何にもなりませんからね。
次回からは1話ずつUPしていくことにしましょう。
1話分ずつまとめて校正と推敲を急ぐことにします。
下にリンクを置いておきます。よろしければどうぞ。

シスカ33話
関連記事
テーマ : つぶやき    ジャンル : 小説・文学
 
 

FC2トラックバックテーマ 第1597回「布団の中で考える事」

 シスカ33話をUPして、今夜はゆっくり…ではなくて34話の校正と推敲を始めています。33話、短すぎでしたよね?34話はもう少し長くなります。
でもチョコッと更新もしておきたくて、トラックバックテーマをやっておこうかな。と思いました。


FC2トラックバックテーマ 第1597回「布団の中で考える事」


眠くなって布団に入ってみたものの
なかなか寝られない時って、ありませんか?
眠くなるまで時間がかかってしまい、気づけば空が明るくなっている、
という経験が、加瀬には何度かあります(笑)。

皆さんはそんな経験、ありますか?
加瀬はそんな時、目を瞑って、一日の出来事を思い返します。
「あれは楽しかった~!」とか、「あの時のあのタイミングのボケは
良かった!」とか、楽しい事ばかり思い出します。
だから、眠れないのかも知れませんね(笑)。

 そうですね。サキはブログを始めて以来、物語のストーリーを考えていることがほとんどです。
 でもですね。まずほとんど構想を練っていることはありません。なぜなら5分も経たないうちに眠ってしまうからです。
その5分間に考えたことも、朝が来たら覚えていることはありません。「意味ないじゃん?」の声も聞こえてくるような気もしますが、枕元には鉛筆とメモ用紙が置いてあるんですよ。眠いけれども寝返りを打ってメモメモ……そして寝ます。
 ほとんど無いんですが、たまに眠いときに限ってドドドドドッとストーリーが展開するときがあります。その場合はやむを得ません、むくっと起き上がってガガガッと書いてしまいます。終わったらバタンキューです。サキはあまり体力が無いので眠らなくてはなりません。
 サキはIMEで文章を書くことがほとんどですが、ここで書いているメモだけはアナログです。漢字が苦手なので(ちょっと恥ずかしいですが)ほとんど平仮名と片仮名で書いてしまいます。
 このたった5分で結構面白い展開が……ということもたまにあります。
あとは先のアイデア、ですね。この変人の考えるストーリー展開は傑作(決してすばらしい作品という意味ではありません)です。笑っちゃいますが、カオスがコスモスに、混沌と混迷がスッキリと理路整然と(同じか?)収まったりするんです。不思議です。
 こんな風にサキの書く物語はできあがっていきます。
 今日はもう寝ます。寝床でシスカのプロット練ってみます。
 では。
関連記事
テーマ : つぶやき    ジャンル : 小説・文学
 
 

ブラブラ三宮から元町

 今夜の話題は三宮と元町です。写真をUPしますが著作権は山西左紀に有ります。
えらそ~に?でも一回言ってみたかったんだ!こういうの。著作権ってとても複雑で、フリーと謳われていても、ちょっと使うことを躊躇してしまいますよね。
ですから自分で撮ってきました。これで文句ないでしょう?山西はカメラマンとしては下手くそでお見苦しいでしょうがご勘弁ください。
 もう少しちゃんとしたカメラを買おうかな?何しろこれ古~い携帯電話のカメラなんです。

このページに挙げておきますのはまず元町の大丸百貨店。↓震災から復興して綺麗になりました。
ここの売り場には「海側」「山側」という案内板が架かっているんですよ。方向音痴の方、助かりますよね?
130206_神戸大丸

 元町通り商店街(この通りの一本海側(左側)が中華街です)↓
130206_元町通り

 センター街(元町側の入り口です。三宮側はもう少し幅があって賑やかです)↓
130206_センター街

 トアロード(JRのガードの位置から見上げています。一番奥は六甲山ですね)
 トアロードは旧の外国人居留地からお屋敷の有った山手を一直線に結んだ道で、当然上り坂です。上ると異人館の有る北野地区の端に出ます。↓
130206_トアロード

 そしてトアロードを下りてきてJRのガードをくぐった所です。なんでしょうね?この建物は。面白いです。↓
130206_トアロード2
 ブラブラ歩く神戸の街、なんとなく落ち着くのは地元だからでしょうか?
山西はこの町で生まれたわけでも住んでいるわけでもないんですけれどもそう感じます。
不思議な雰囲気のある街です。

 で、ですね。なぜこんな記事を書いたのかというと、今回の一連の写真の一部をですね。絵夢シリーズの「アルテミス達の午後」の挿絵(挿写真?)として貼り付けました。ちょっと覗いてみてください。雰囲気が伝わりやすくなっていればいいんですけど。
ではまた。
関連記事
テーマ : つぶやき    ジャンル : 小説・文学
 
 

---34---

 ヨウコはベッドに腰かけていた。ヨウコはオルガノ州政府関係者とガス会社スタッフ、ジュナ達ベクレラのサルベージ会社の3人、とマザー2チームを引き合わせた後、通訳を外交省の役人に任せて少し時間を作った。部屋は設えられた二段ベッドが二つあるだけのシンプルな作りで、この船に勤務する女性、ヨウコとアツコそしてシスカに当てられた船室だった。アツコは潜水艇の起動準備の為にハンガーに、シスカは給油と整備の為にプログレスに出ているので、今この部屋に居るのはヨウコ1人だけだ。まもなくジュナ達サルベージスタッフを交えて作業の打ち合わせが始まるはずだ。
 ヨウコは上着の内ポケットから携帯端末を取り出すと素早い手つきで画面にタッチした。目的は達せられ、ヨウコは小さく頷いてさらに作業を続けようとした。
 その時、ノックの音がした。「どうぞ」ヨウコがそう言い終わる前にドアが開いてアツコの顔が覗いた。
「ヨウコ、コントロールルームまで来て!サルベージの打ち合わせ、始めるって」
「わかった。ありがとう。すぐ行くわ」ヨウコは間の悪さに一瞬イラついた顔をしたがすぐに顔を元に戻し、アツコが部屋を出てから端末を内ポケットに戻し立ち上がった。
「もうみんな集まってるの?」部屋を出ながらヨウコはアツコに尋ねた。
「ウン」アツコは頷きながら、もう背を向けて歩き始めている。ヨウコも急ぎ足で後を追った。

 コントロールルームの一部をアクリル板の窓の付いたパネルで仕切って作られたミーティングルームには、リーダーのクラモチ、サブのコバヤシとイシダ、潜水艇長のキリュウ、ベクレラのガス会社スタッフ、それにジュナ達サルベージ会社の3人がすでに着席していた。アクリル板越しには手の空いたマザー2チームの面々が覗いている。アツコはジュナの横に座ると事情を説明しているのかすぐに談笑を始めた。ヨウコはアツコのコミュニケーション能力の高さに感心しながらクラモチの横に席を取った。すぐにクラモチの挨拶からミーティングが始まった。
 さまざまな意見が交わされたあと、クラモチが言った。
「ようするにBOPの上部をシャットダウンしてしまえば流出は止まるんだな?」
「そうです。その作業をおこなうために潜水艇が必要なのです」ジュナがイルマ語で付け加えた。
「もう一度確認するが、この作業は無人艇では不可能なんだな?」
 クラモチの確認にボースンがベクル語で答え二カ国の間をヨウコが繋いだ。
『そうです。現場はかなりの悪条件で遠隔操作の作業ではとても対応できません。現に無人艇での作業は5回も行いましたが、ことごとく失敗しています。そのうえ最後には無人艇も失ってしまいました。視界が非常に悪くて流れも速い為、コントロールが難しく、正直、有人艇でも成功するかどうかは五分五分だと思っています。現場はかなりの悪条件なので非常な危険が伴うと思いますが、お互いに協力して作戦を成功させたいと思っています』
 間を拾って今度はジュナがベクル語でしゃべる。それをまたヨウコが翻訳した。
『マザー2チームの噂はここオルガまで聞こえています。我々はこの優秀なチームをこの作戦のために迎えることが出来て、そして一緒に仕事ができることをとても幸運だと思っています。我々はベクレラが起こした事故のために多大な迷惑をかけ、損害を与えていることは充分に認識しています。事故はベクレラが責任を持って処理するのが当然と思いますが、残念ながらベクレラ側の実力ではこれを収束できないことが分かりました。どうか我々を助けて欲しい。どうか我々と一緒にこの困難に立ち向かってほしい』
 クラモチはチラリとキリュウの表情を確認してから口を開いた。
「もちろん立ち向かう。そのためにやってきたんだから。なぁ!野郎ども!」クラモチはアクリル板の窓越しにマザー2チームの面々を見渡した。
「オオ~!」マザー2チームの面々が雄叫びをあげた。
「ありがとう」ジュナは立ちあがって、イルマ式に頭を深々と下げた。それを見ていたボースンとオラクも並んで頭を下げた。ベクレラのガス会社スタッフはそれを呆然と見ていた。
「で、その潜水艇のメンバーだが」クラモチが喋り始めるとミーティングルームは水を打ったように静かになった。
「まず艇長は当然キリュウ、そしてコパイはシマ、この2人は外せない」クラモチはキリュウを見、そしてアツコの顔を見た。アツコは少し頬を染めてしっかりと頷いた。
「後、シートは2つだが人選はどうする?」クラモチはジュナに話を振った。
「それについてはもう選んであります。まずBOPの専門家のオラク、彼が居ればBOPのすべてが解ります。そして私です。通訳もできますし、この作業の責任者でもありますから」ジュナがイルマ語でにこやかに答え『そして、お願いがあります』とベクル語で続けた。ヨウコが同時通訳する。
『この作業には失敗は許されません。万全を期すため、キリュウさんとシマさんにBOPの実物で実際の操作を体験してもらった方がいいと思います。すみません。もっと早く提案すべきだったのですが、昨日の段階では潜水艇の乗組員がいらっしゃらなかったものですから。これからオルガまでヘリを飛ばすことになり、二度手間になりますがリーダーはどう思われますか?』
 ヨウコの通訳が終わるとキリュウが手を上げた。「それは俺の方から提案しようと思っていた事なんだ、クラモチ、この計画には万全を期したい。少し着手が遅れるが行かせてもらえないだろうか?」
「そうだな。俺もその方がいいと思う。ここまで来て焦りは禁物だ。キタハラとシスカはまだプログレスか?そうか。すぐ呼びもどしてくれ」クラモチは結論を出して指示してから「メンバーはキリュウ、シマ、それとモニタリング側から……」と周りを見渡した。コバヤシの手が上がっていた。
「コバヤシが行ってくれるか?そちらは?」とジュナの方を向いた。
「私達は一旦全員オルガへ引き上げたいと思います。サポートも必要ですし、こちらに残る意味がありませんから」ジュナが答える。「了解。じゃあコバヤシ、本部に連絡して手配を始めてくれ。それとイシダ、外交省の役人とオルガノ州政府関係者に事情を説明して、誰か付いて行くように手配してくれ。そうでないと身動きが取れんだろう」クラモチの指示にコバヤシとイシダが「了解」と短く答えて立ちあがった。
「あの、私も……」ヨウコが手を上げたが「ダメだ!こっちに使える通訳がいなくなってしまう。作戦開始までにやることはたくさんある。こっちに残ってくれ」クラモチがそう言うと静かに手が下がった。


(2014/04/26 更新)
(2014/08/13 更新)
関連記事
テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
 

シスカ34話UPです。

 今夜はシスカ34話をお披露目です。
 ほんの短いものですが校正が終わりましたのでUPしておきます。
 マザー2でのお話ですが、ヨウコが少しずつ行動を始めているようです。どう動くのかな?でも内緒です。
 ところで皆さんはIMEは何をお使いですか?MSIME?Google変換ですか?山西はATOKを使うことにしました。MSIMEの変換に疑問を感じたのがきっかけですが、サキは漢字が苦手で、うっかり違った変換をされても気がつかないことも多いです。ATOKに変えて少しましになったかなと思いました。お試しで結構長い間使っていたんですが、ATOK2013が発売になったのをきっかけに正式に使用し始めました。
 サキは“物書き”を名乗るほどの文章は書きませんが、文章を書くことを趣味の1つとする者として、これくらいの投資はしておいてもいいんじゃないかと考えました。
 ATOK、結構真面目に変換してくれますよ。打ち間違いや変換候補もタイムリーですし、使い慣れると良いかもと思ってます。さてこれで試用期間の終了を気にしないで心置きなく物語を書けるようになりました。書いていきますよ!
ではまた。
関連記事
テーマ : つぶやき    ジャンル : 小説・文学
 
 

---35---



「冷えるね」プログレスの食堂でシスカはキタハラと向かい合わせに座って特製のココアを飲んでいた。極寒の時期この船に着船した時はいつもプログレス特製のココアで暖まることになっている。ここの調理長が気を利かせて用意してくれるのだ。
「そうだな。こっちは特に冷えるような気がする」キタハラは熱い液体を息で冷ましながら少しづつすすった。
「キタハラ?」シスカが名前を呼んだ。
「なんだ?」いつものように無愛想にキタハラが答える。
「今夜、時間が取れるかな?」
「なんだ改まって」キタハラは少し顔を緩めた。
「うん。話しておきたいことがあるんだ。きちんと時間が取れる方がいい」
 思ったより切実なシスカの様子に驚きながらキタハラは「飯の後、カウンセリングルームでいいか?」と言った
「そうだな。込み入った話なんだ」
「わかった。部屋を確保しておく」そう言った時、キタハラの携帯電話が鳴りだした。
 もちろんここでは圏外になるので外から電話が掛かって来ることは無い。マザー2やプログレスに搭載されたアンテナで船の周辺だけ通話が可能なのだ。キタハラが電話に出て話し始めたが途中から声が大きくなる。シスカは聞き耳を立てた。
「……なに!今から向かって明るいうちに帰って来るとなると、向こうで取れる時間はそんなにないぞ。この海域では夜間飛行は自殺行為だからな。むう……そういう可能性も考えての人選だろうな。わかった。こっちの用意はもう終わっている。すぐそちらに向かう」キタハラは電話を切るとシスカの方を向いた。「シスカ、今からオルガへ向かう。潜水作業の予行演習が必要なんだそうだ。作業が終わらなければまた向こうで泊まりもあり得る。頼むぞ」
 シスカはオルガの名前を聞いて速くなる鼓動を意識しながら「わかった」と短く答えると冷め始めたココアを飲み干し、コップをキタハラの分も返却口に返すと「ごちそうさま」と奥に声をかけ、キタハラを追って食堂を出た。そのまま廊下を小走りに駆けヘリポートに飛び出すとコ・パイロット席に乗り込んだ。すぐにローターが回転を始めた。

 シスカはコ・パイロット席での確認作業を終わらせ客席を振り返った。すぐ後ろの席にはアツコとラサが並んで座っている。その後ろにキリュウ、コバヤシとボースンそしてオラク、さらに後ろに外交省の役人とオルガノ州政府の役人が2人仲良く座っている。ラサはシスカと視線を合わせると柔らかく微笑んだ。続いてアツコと目が合うとアツコは「どうかした?」と訊いた。
「いや、何でもない」シスカはそう言うと視線を前方に戻した。

 シスカは怒っていた。いや怒っていたいと考えていた。
 シスカはオルガのホテルの一室で夜の帳の降りた街を眺めている。潜水作業のメンバーは検証作業からまだ帰ってこない。シスカはそれに付き添わされ、いつ終わるとしれない検証作業にイライラしながらじっと作業現場に待機し、夕方になって飛行制限時間にかかる事が確定したとたん、手配されたホテルに連れてこられたのだ。キタハラの指示だったが、もちろん自分はヘリを離れないつもりだ。厳重に警備されたヘリポートに残るより検証現場やホテルまで移動した方が、この町をより感じることができると思ってくれているのが良く分かる。チャンスを広げてやろうとする心遣いが痛いほど伝わってくる。でもシスカはその心遣いに腹を立てているのだ。ホテルの部屋で1人じっとしている自分に腹を立てているのだ。きちんと時間を取って説明したかったのに、キタハラに自分の母親の話も出来ていない。シスカは自分の段取りどおりに事が運ばないことについても腹を立てていた。
 コンコン……ノックの音がした。ドアスコープで確認するとアツコだ。ドアをそっと開けると少し疲れたアツコの顔があった。「終わったのか?」シスカが訊くと「やっとね……」アツコが珍しく弱々しい声を出した。「シスカがちゃんと寝る場所があるかどうか確認したかったの。だから、安心した。じゃぁ、もう寝るね。明日のこともあるし」
「他のみんなは?」
「みんなは部屋、バタンキューだよ」
「そう。明日は夜明けと同時に出発だから」
「わかってる。じゃ、おやすみ」
「うん。おやすみ」シスカがそう言うとアツコは軽くハグをしてから自分の部屋へ入っていった。シスカはそれを確認してからドアを閉じた。そしてゆっくりと窓際に近寄り、両の手のひらを窓ガラスにそっと当ててオルガの町を眺め始めた。興奮は収まらず頭は冴え渡り、とても眠れそうになかった。ガラスは氷のように冷たかった。
 ホトホト……ノックの音が遠慮がちに聞こえた。シスカは跳ね上がるように振り返り、足早にドアに近づいた。ドアスコープの向こうには、やはりラサの笑顔があった。シスカは静かにドアを開けるとラサを室内に招き入れた。
 シスカがドアを閉めるとラサは「シスカ、少し出かけない?」と言った。
「どこへ?」
「内緒!」ラサは謎めいた微笑を浮かべる。
 シスカは黙ったまま外出の用意を始めた。そうせざるを得ない心境だった。
 エスカレータで地下二階の駐車場に降りると、そこには前の真っ黒なスポーツカーではなく真っ白なセダンが待っていた。(STELLAのS400、普通の車に見えるけどこれはVチューンだ……)シスカはリアに付いている小さなエンブレムを見逃さなかった。
「乗って!」ラサの声に我に返り助手席に乗りむと車は静かに発進した。そしてスロープを登って道路に出ると一気に加速する。シスカはその心地よいGに身を任せた。


(2014/04/26 更新)
(2014/08/13 更新)
関連記事
テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
 

シスカ35話をUPします。

 シスカ35話をUPします。
 下にリンクを置いておきます。よろしければどうぞ。

http://debriscircus.blog.fc2.com/blog-entry-192.html

「シスカ」少しずつ進んでいます。つらい部分も書いていますが何とか上手く収まって欲しいなぁ……と思ってます。エンディングまでのプロット?(メモです。5行ほどしかありません。これではプロットとは言えませんね)は一応できあがりました。これにたっぷり肉付けして膨らませて完成させたいと思っています。もちろん大幅な変更も大有りですが。
 エディターで文章の下に書き足した断片ストーリーは、ほぼすべて使い切りました。残っているのはゴミばかりです。今は38話を書いています。書きながらまた思いついた断片を記録してアイデアをためていきます。
35話をUPしたので、今夜から36話の校正を始めます。

そして6000HITが迫っています。

 では前回と同じように、カウンター6000を見られた方、自己申告で結構ですから“お題”を1つと、これまで山西が作りだしてきたオリキャラの中から1人選んでコメントをください。ただし今回は女性に限ることにします。男性も面白かったんですが、やはりサキは苦手なのか話が今一歩膨らみませんでした。女性でしたらサブキャラや端役キャラでもOKです。そのお題をテーマに、そしてそのオリキャラを登場させて掌編を作ってみます。ただし主人公ではない場合もあり得ますのでご了承ください。
 6000前後でも結構ですのでHIT番号をお申し出ください。一番近い方(というか、こうなると早い者順になりますね)のお題を採用して何か書いてみようと思います。
 お申し出が無ければ無かったことになるのかな?……寂しいのでどなたでも結構です。面倒がらずにお申し出ください。飛び上がって喜びます。
関連記事
テーマ : つぶやき    ジャンル : 小説・文学
 
 

---36---

 セダンは駐車場へ入っていった。そのままバックで駐車スペースに入れる。
「ここは?」シスカが建物を見上げながら訊いた。周りにはマサゴの町では見かけることのない高層の建物が立ち並んでいた。
「私の家があるの。秘密のネ!」ラサは楽しげに片目をつぶって「こっちよ」と玄関の方へとシスカを案内した。エレベーターのボタンは15まであってラサはその中から13を押した。「驚いた?この町でもこんな高層のアパルトマンはとても珍しいの、マサゴには1つもないんじゃないかしら?」シスカは黙って頷いた。「オルガのほうが先にできた分、少しだけ発展しているのかもしれないわね」ラサは自慢げに言った。エレベーターを降りると外廊下を歩いてドアの前に立った。「ちょっと待ってね」とダブルロックを開けて「どうぞ。私の隠れ家へようこそ!」おどけた調子でそう言うと、ラサはシスカをリビングまで招き入れた。エアコンをセットし、シスカの防寒着と帽子を脱がせ隅のソファーにそっと置くと「着替えてくるから少しここでくつろいでいて」そう言ってラサは入ってきたドアから出て行った。
 部屋は40平米ぐらいだろうか、広々とした空間にゆったりとしたソファーが余裕をもって配置されている。夢のような光景に圧倒されながらシスカは部屋を見回し、少し開いていたカーテンに近づいた。窓の外に広がるオルガの町の夜景は、マサゴより灯りの数が多いような気がする。シスカは暫くぼんやりとそれを眺めていたが、カーテンを閉めると部屋の中に目を戻し、壁に設けられた飾り棚に近づいた。棚には3つのポートレートがフレームに収められて飾られている。始めにシスカの視界に入ったのは、見覚えのあるアルナの写真だった。多分シスカが持っているものと同じ物だ。この写真がここにあることは驚きだったし、その理由が思いつかなかった。単にファンだったということだけでは説明ができないように思われた。その横、中央には西域系の端正な顔にブラウンの髪、ブラウンの瞳の女性がこちらを向いて笑っている。(ラサによく似ている、ラサの母親かな)そう思いながらその隣の写真に目をやってシスカは固まってしまった。
「それは誰だと思う?」ラサの声にシスカは驚いて振り返った。ドアのところにトレイを持ったラサが立っていた。トレイの上にはコーヒーのセットが用意されてる。
 シスカは自分の直感を述べることができずじっと黙っていた。
 ラサはゆっくりと笑って「その人はね。私の父なの」と言った。シスカはただ黙って立っていた。「私は母親似だからあまり似てないんだけど、そう、その真ん中が私の母なの」そういうとラサはトレイを持ったまま部屋の真ん中に進んだ。「シスカ、コーヒーでも飲まない。疲れたでしょ?こっちにきて座ったら?」そういってコーヒーのセットをテーブルに載せるとシスカを促した。シスカはゆっくりと部屋の中央に向かい、ラサの向かいに腰掛けた。
「砂糖とミルクは?」ラサか優しく問いかける。
「入れてください」シスカはよそよそしく答えた。
「これぐらいでいいかしら?」
「はい」
「これくらい?」
「ええ……」
 ラサは甲斐甲斐しくシスカの世話を焼いて、スプーンでカップを軽くかき混ぜるとシスカの前に置いた。そして自分はブラックのままカップに口を付けた。だが、シスカは上の空のだった。
「なぜ、ここにアルナの写真が並んでいるんですか?」シスカがコーヒーを見つめながら言った。
「どうぞ、召し上がれ。冷めないうちに」
 シスカはカップを持ち上げて二口三口と飲んでから「なぜ、ここにアルナの写真が並んでいるんですか?」と繰り返した。
「アルナ?私がすごく好きだったからよ。人間としても、歌手としても、友達としても。子供でもそういうことってあるでしょ?憧れだったんじゃないかしら」ラサはそういいながらコーヒーを飲んだ。シスカもカップを取るとまた口を付けた。
「美味しい?」
「ええ。とても」
「私のスペシャルブレンドなの、酸味を控えて飲み易くしてもらってるの」
 シスカはまた口を付けた。ラサは愛しい者を見るようにシスカを見つめている。
 シスカはじっとコーヒーを見つめていたが意を決したように顔を上げた。「ラサのお父さん、プラチナブロンドなんですね」
「そうね」ラサは単純に肯定した。そしてシスカと目を合わせると暫く黙っていた。
「ラサ……」シスカが喋ろうとするのを目で止めると、噛み締めるように「シスカ……」と呼んでから、ラサはグロー語で喋り始めた。『私の父はね、とても厳しい仕事をしていたの。小さい頃は私はそれが良く分からなくって……当たり前よね、家庭を顧みない父を随分恨んだわ。母もその気苦労がたたったのか早くに亡くなって、私はそれがすべて父のせいだと思っていたの。父はね。その仕事をこなしながら男手1つで私を育ててくれたわ。それでも私は父を快く思っていなかったの。そして私が父と決別する出来事が起こったの』ラサはシスカを見つめ続けていた。
『母を失っていた父は場末の酒場で歌っていた歌手と恋に落ちたの』
 シスカは黙ったままラサと目を合わせていた。口が微かに開いている。
『小さかった私は、よく父に開店前の酒場に連れて行かれたわ。私を開店前のホールに入れるとすぐに父はどこかへ行ってしまったから、私はホールで1人遊びをしていたの。2時間ほどだったかしら、いつもそうやって遊んでいると2階からその歌手が降りてきて私と遊んでくれたの。優しい人だった。よく子守唄を歌ってくれたわ。綺麗な声だった。そして私はその人に憧れたの』ラサは遠い目をしていた。『そんなふうに思うようになった頃、父にその人が私の新しいお母さんだと聞かされたの』ラサはそっと下を向いた。
『私はね。爆発しちゃったの。二人の前で狂ったように暴れまわったんだと思うわ。よく覚えていないんだけど。その人のお腹に赤ちゃんが居ることも聞かされていたのにね』ラサはここで顔を上げるとシスカの目を正面から見つめた。シスカはさっきの姿勢でじっと固まったままだ。
『そう。その時その人のお腹の中に居たのがシスカ、あなたなの……』
「じゃあ」立ち上がったシスカの声がラサの話を遮った。「その写真の男の人が僕のお父さんで、ラサ!ラサは……」そう言いながらふらついたシスカにラサが駆け寄って力強く抱きしめた。
『そう。そうなの。あなたは私の妹なのよ。この白い髪を見た時そう思った。これは父さんの髪だもの』そしてシスカの髪を優しく撫ぜた。
 フレームに入れられた3枚目の写真には、西域系の顔にシスカとそっくりなプラチナブロンド、ラサと同じブルーの瞳……それはシスカの左目と同じだったが……の凛々しい面構えの男が少し斜に構えて写っていた。
 シスカはラサに抱きかかえられながらラサの体を強く抱きしめようとして腕に力が入らない事に気が付いた。ラサの顔が歪み、「シスカ…シスカ……」声も遙に遠ざかって行く。それは自分の意識レベルが低下しているからだということに気が付いて戻ろうと必死にあがく。そしてどんどん薄れてゆく意識に空しく抵抗する自分を外から観察しながら、シスカは闇の中へ落ちていった。


(2014/04/26 更新)
(2014/08/13 更新)
関連記事
テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
 

---37---

 *

 ヨウコはマザー2の自分の船室で1人座っていた。同室のシスカとアツコはオルガに泊まっているので、今はヨウコが部屋を独占できているのだ。ヨウコは鞄の中から携帯端末を取り出してイヤホンを接続し片方の耳に入れ、画面を何度かタッチするとそれに向かって喋り始めた。
「部長?お元気かしら?」
 イヤホンからは男の声が聞こえる。「お気遣いありがとう。元気にやってるさ。ゴリアテ、君は?おっと!今はヨウコだったな?」
「ええ、こちらはなんとかやってますわ。レポートは読んでいただけました?」
「読ませてもらったよ」
「じゃあ報告事項はそれ以上ありません」
「うむ!完璧な報告書だったよ。事件が解決していないことを除いては」
 ヨウコはそこでため息をついた。
「これがそんなに簡単に決着すると思われますか?皮肉はよろしいですから、こちらの質問に答えていただけますか?」
「うむ。君の質問は非常に興味深いものだった。あらかじめ言っておくが全ての前提を覆す恐れさえある」
「それはどういうことですか?私は少し気になった言葉の意味を尋ねただけなんですが……」ヨウコは部長の発言の真意が理解できずに質問した。
「君はネラヴ人の話を聞いたことがあるか?」
「ネラヴ人ですか?聞いたこと無いですね」
「又聞きの発音にも随分と惑わされたが、君の質問の“ラド・ネラック”というのはおそらくそのネラヴ人が話していた言葉、ネラヴ語だ」
「話していた?」ヨウコは過去形であることが気になって訊いた。
「そうだ。その民族も、その人々が暮らしていた国ももう存在しない。その国、というか先の大戦直前までベクレラの西のはずれにあったネラヴェラという小さな自治州だった」
「なぜ、存在しないんですか?国や民族が消えるということは相当大きな出来事だと思うんですが、なぜ私の記憶にないんですか?」
「まず最初の疑問に答えよう。ネラヴ人はベクレラに侵略され服従を強いられてきた歴史を持っている。そして何度も解放を求めて立ち上がっている。大戦直前にも独立を企てて立ち上がったんだが、その地域に住むベクル人を保護するという名目でベクレラ軍の侵攻を受けて鎮圧された。そしてそれが最後の抵抗になった。その後自治州は自治権を剥奪されて隣の共和国に吸収され、今では影も形も無い。ネラヴ人とベクル人の混血もさらにすすんでいる。言葉も伝承されていないはずだ。そのせいもあって解読に非常に手間取ってしまったのだ」
「言い訳はいいですから“ラド・ネラック”というのは?」ヨウコは冷静な様子で部屋のドアを見つめながら訊いた。
「“ネラック”というのはネラヴ人の信じる全能の神だ。“ラド・ネラック”で神への感謝の言葉になる。色々な意味を持つが君の言ってきた場面で使われたとすれば、それは“いただきます”という意味で使われたと思われる」
「じゃあ、そういう意味では何も不自然なことは無いですね」
「そういうことになるが、ことはそう単純じゃない」
「といいますと?」
「この言葉を使った人間が居るということが気になる。君の質問だけではどのような人物がその言葉を使ったのかわからないが、使うということはネラヴェラに縁のある者の可能性が高い。この言葉は現在ベクレラでは使うことを禁じられていて、あえてこの言葉を使う者がいるとすれば、それは紛争後地下に潜った抵抗組織ぐらいしか考えられない」
「それは侵攻したベクレラに恨みを持つ組織に属する者の可能性があるということですか?」
「君の推測は正確だ。ただもう一面の現代史を理解していない」
「私は現代史の専門家じゃないですから。皮肉はいいですから本質を教えてください」
「君にお願いされるのは快感だね」
「事件の解決が遅れたのは部長の回答の送れが原因だったと、報告書に書きますよ」
「ははっ、それは勘弁願いたいね。実はネラヴェラ自治州がベクレラの侵攻を受けたとき、援助を求めた国がある」
「援助……ですか?」ヨウコは一瞬思案していたが「まさか」と声を上げた。
「そう。その、まさかだよ。ベクレラとの領土問題を抱えていた我が国、イルマに仲裁と援助を申し入れているのだ」
「続けてください」
「だが大戦に突入する直前であったために、イルマはここでベクレラとの関係を悪化させるわけにはいかなかった。イルマはその要請を無視したのだ。だから要請の記録はいまやどこにも残っていない。この紛争自体の記録も跡形もなく消されてしまっている。連合を組む必要のあったグロイカでも同じような対応だ。まさにネラヴ人は歴史の狭間に消された民族ということができる。君の膨大なメモリーに無いのも無理はない。これがさっき君が訊いた二つ目の疑問に対する答えだ」
「ということは、侵攻したベクレラに恨みを持つだけでなく、見捨てたイルマにも恨みを持つ者の可能性があるということですか?」
「この情報だけでは断定できないが、その可能性があるとはいえる」
 ヨウコは軽い目眩を覚えた。「今部長が話されたことは、私の調査にとってとんでもなく重要な要素になっていると思われますが?」
「そうだな。そういう組織の存在は、今回のガス田事故はおろか、マザー2爆破事件へのこの組織の関わりをうかがわせ、しかも一気にテロという言葉を浮かび上がらせる。全ての前提を覆す恐れさえあるというのはそういうことだ」
「私はどうすればいいですか?」ヨウコは困惑した声で尋ねた。
「マザー2爆破事件について、我々は単純にベクレラ側の妨害工作だと考えていた。確認になるが、君にマザー2スタッフの調査を命じたのはこの事件への協力者の存在を疑ってのことだ。だが君を送り込んだ船はオルガに派遣され、君が何気なく聞いた一言から、予想外の当たりくじを引いてしまった可能性がでてきた」部長はいったん言葉を切った。そしてトーンを少し下げて続けた。
「ヨウコ、その言葉を使ったのは誰なんだ?」
「すべてはまだ仮定と可能性の範囲をでていません。ですからもう少し調査を進めてからお答えします」
「今の段階で強制はしない。そのまま調査を続けてくれたまえ。だがミッションは変更するわけではない。あくまでこの事件の協力者の調査という範囲内でだ。だがその過程で明らかになる事柄に制限をかけるつもりはないが……」
 ヨウコはまた大きく溜息をついた。「またそれですか……連絡を終えますが、他に何かありますか?」
「ネラヴェラの抵抗組織に関する情報をファイルで送っておいた。現状については何もわかっていないが参考にしてくれ。他には特にない」
「では、また連絡します」
「気をつけてな」
 ヨウコはベッドにバタンと倒れ込むと、上を向いたまま目を閉じてじっとしていた。
 そして30秒後、腹筋を使って勢いよく起きあがると携帯端末を操作し始め、苛つくように同じ操作を何度か繰り返してから「チッ」と舌打ちをして、そのまま部屋を飛び出していった。


2013.10.22 訂正追記
(2014/04/26 更新)
(2014/08/13 更新)
関連記事
テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
 

物書きエスの気まぐれプロット

ポール・ブリッツさんに、愛をこめて……
そしてエスの大切な友人に、感謝をこめて……。


 フラウンホーファー炉、それは様々な物質をエネルギーに変え、逆にエネルギーから様々な物質を生成することが出来る変換炉だ。大型の物から小型の物まであるが原理は同じで、大型の炉からは様々な物質、人類に必要なあらゆる原材料が生産される。
 一方小型の炉は大切に彼女の体内に埋め込まれ、生命を維持するためにあらゆる物質を供給する。これを埋め込まれた者は何も食べなくても生きて行けるのだ。
 炉から発生するエネルギーは、受容器を備えたあらゆる機器に有線を介すること無く送られ、それらを駆動する。余ったエネルギーは、個体毎にハブとして機能する炉の相互リンクによって作りだされたリゾームに溢れ出す。それは、単にエネルギーのスマートグリッドとして機能するだけでは無い。同じ機能を利用して超高速で大容量のデータをやり取りする巨大なソサイエティーを構成する。
 さらにこの炉は作られてから何の補充も無しに、200公転期は機能を維持することが出来る。
 200公転期、それは目の前に置いたパワータブのタッチキーボードを軽やかに叩いている彼女の余命の優に二倍はある。
 フラウンホーファー炉。それの発見は、彼女達、ここでいう人類のすべてを変えた。


「エス、帰ったよ!ただいま」ダイスケの声が聞こえた。
「おかえり」リビングの隅に置かれた小さな机で、PCに向かって軽やかにタイピングをしていたエスは、モニターを見つめたまま答えた。
「ケイは?」キッチンを覗きこみながらダイスケが訊いた。
「母さん?回覧板を回しにちょっとそこまで出てる。すぐ戻って来ると思う。立ち話が長引かなければね」タタタタッと軽いタッチの音を立てながらエスが答えた。
「で、父さん、先に風呂に入る?湧いてるよ」ちらりと顔を上げてエスが訊いた。
「そうさせてもらおうかな。ケイも済ませたようだしな」
「じゃあ、上がったら作品を見てくれる?まだ断片しかないけど」
「おお!俺でいいならな」服を脱いで下着でウロウロしていたダイスケはバスルームに消えて行った。

 マルベル機関は軽やかな音を立てて快調に回っている。
 その動力を受けて台車は快調に線路を走る。
 トロの台車は町の工場で作られた小さな車輪に木製の台枠を組み、その上に板で作った荷台を載せた簡単なトロッコだ。これで人や荷物を運ぶのがトロの仕事だ。
 今日のお客はおばさん連中が5人、野菜のたっぷり詰まった籠を台車の上に置いて、世間話に花を咲かせている。彼女らは町へ野菜を売りに行くのだ。トロは彼女らの会話に耳を傾けながら、町の外れにある青空市場へと台車を進めていた。台車はレールの継ぎ目を通り過ぎるたびにゴトン・ゴトンと振動する。台車にはサスが無いので、振動はダイレクトに伝わりお尻に堪える。おばさん連中もトロも、断熱材を入れた袋をお尻の下に敷いていた。
 線路は高架橋のスラブの上に敷かれていて、ほぼ真っすぐに伸びている。頭の上は刷毛で軽く掃いたような雲が所どころに有るだけの吸い込まれるような青空。周りは一面の緑深い森。そして、森の彼方には降り注ぐ太陽の下、キラキラ輝く海が広がっている。海は台車の進行に合わせて木々の間に隠れたり、またパァッと広がったりしてトロを退屈させなかった。トロの真黒な髪は肩まで届いてはいなかったが、微かに潮とフィトンチッドの香りを含んだ風を受けて、気持ち良さそうに揺れいていた。好奇あふれる大きな焦茶の瞳は、目の前に広がる世界の無限の大きさと、5人の客から受け取ったチップの気前良さに輝いていた。さらに車輪の軸受けをメタルからベアリングに交換して走行がとてもスムーズになったこともトロの顔を明るくさせていた。
 間もなく前方に駅の跡が見え始めた。台車がそこに近づくと内陸の方からもう一本の高架橋が寄り添ってきた。その上にはやはり線路が敷かれていて、やがてトロの台車の走っている線路と合流する。ゴトンゴトン、台車はひときわ大きな音を立てて分岐ポイントを通過した。錆ついた分岐機には、内陸へ向かう方向へ開いた形跡は無い。
 トロが酒場で耳にしたところによると、内陸へ向かう線路は新界というところに繋がっているらしい。でも、そこへ着くまでにリンクが切れるという噂もあった。“リンク切れ”それはすなわち死を意味していた。
 トロは内陸に向かって伸びる線路を、台車の上に立ちあがって眺めてから、プラットホームの跡に目を戻した。減速してホームに沿って緩やかなカーブをなぞると、今まではホームの影になっていて見えなかった線路の向こうから、一台の台車がこちらに向かってくるのが見えた。トロは額に手をかざしてトロッコを操っている主を見た。「タモ?」先に出発した仲間の名前を口に出し「もう折り返してきたのか。速いなあ」トロはすれ違いの為に台車を止めると、前方にある分岐機の方へ歩いて行った。


 風呂上がりのダイスケは、パジャマを着た上にフリースを羽織って、リビングのPCの前に座っていた。
「うーむ」と薄くなった髪をかき上げる。
「この台車はこの間テレビでやっていたのがあったよな。あれがモチーフか?」
「あれ?ばれた?そう。それを使ってる」エスはチロリと舌を出した。
「この話の前半部分の“フラウンホーファー炉”か?これはなんだ?」
「これを埋め込めば、何も食べなくてもとりあえず生きてはいける。すべての物質やエネルギーもこれがあれば無限に供給できる。食べ物ですらそうなの。食べなくても生きていけるとしても、人間にとってやっぱり必要でしょ?すべての物にほぼ無限の循環が与えられるの。こんなものが人間に与えられたらどうなるかなって思って、ババッと書いてみたの」と言ってヘヘッと笑う。
「ネットワークもだろ?」ダイスケはエスを見た。「あくせく仕事をしなくても食っていけそうな社会が出現しそうだな。面白い発想とは思うが、これは難しいぞ。矛盾なく展開させられるか?それにこの後半?マルベル機関の部分にどうやって繋げるんだ?」ダイスケは一応厳しい顔をした。
「マルベル機関もフラウンホーファー炉からのエネルギーを受容器で受けて動くんだよ。この万能の炉を発見した人類が、その後どういう道をたどったのか。トロのいる世界はその後の世界なんだけど、なぜこんな世界になったのか。トロやタモ達は幸せなのか。内陸に続く線路はどこへ繋がっているのか。謎はとてもたくさん有るわ。そしてあとは父さんが考えるんだよ」エスはあっけらかんと答えた。
「バカヤロウ!お前の作品だろう?」ダイスケの声は思わず大きくなった。
 エスはそれを笑って受け流し「わかってるって。そんなにむきにならないでよ。もう少しまとめてから校正をお願いするよ。まだまだ荒削りなきっかけだけの断片なんだけど、今の段階で意見を聞いておきたかったの。」とお願いの顔をしてから続けた「でね、あともう1つ意見が聞きたいの」
ダイスケは、お願いの顔はまだ練習の余地があるなと思いながら、「なんだ?」と、少し顔を優しくして訊いた。
「ウチのブログのブロともさんで、ウチに会いたいっていう人が現われたの。女の人なんだけど、20代後半くらいかな。用事でこっちに来るらしいんだ」
「会いたいったって……それは無理だろう?」ダイスケは困惑の顔になった。
「わかってるって。それは何とか説明したんだけど。ラージエスでもいいから会いたいって」
「ラージエスって俺のことか?無理だって、相手は若い女性だろ?無理無理!それに会ってしまったらどうしたって、なぜおまえが会えないのか説明することになるだろう?それは俺にとって……楽しいことじゃない」
「だよね……。分かった。何とか説明してみる。それを聞いておきたかったんだ」
「相手に失礼にならないように、そしてこれからもブロともとして付き合ってもらえるようにちゃんと言えるか?それに付いては俺は校正できないぞ」
「考えてみるよ。難しいけど」エスはぎこちなく微笑んだ。
 その時、ドアが開く音がした。
「あれ?もう帰ってるんだ。すっかり遅くなっちゃった」玄関から声が聞こえた。
「母さん。やっと帰って来た」エスの顔がパッと明るくなった。
「いつまで井戸端会議をやってるんだ。ケイ。もう風呂も上がったぞ」ダイスケが玄関に声をかける。
「すみませんねぇ!じゃあ急いで夕食にしましょう」ケイはパタパタとキッチンへ入っていった。
 ダイスケとケイは食卓に向かい合わせに座って食事を始めた。エスは2人の会話に時々加わりながら、リビングの隅に置かれた小さな机で、PCに向かって軽やかにタイピングを続けていた。

 S9000……それは後ろにシリーズを付けるとA.I(人工知能)の形式名になる。単にS9000と表記すれば、それはS9000シリーズの個体番号になり、一桁目の0は試作機を表す。本体である頭脳は相応に大きくなるし、発熱もするので特定の場所に置かれている。したがって、通常人の目に触れるのはボディだけだ。S9000の場合、ボディは別名“人形”とも呼ばれる人型の本格的なものと組み合わされている。
 本体とボディの間は、大量のデータを高速でやり取りする必要があるので、専用の回線と専用の無線インターフェース・ステーションを使用する。そのためボディはステーションからあまり離れることは出来ない。せいぜい半径100mの範囲を動き回ることができる程度だ。外観も有名なデザイナーの手でデザインされてはいるが、人間とそっくりな形態は取らない。フィギュアチックな外観を選択したのは、下手に人間そっくりにして違和感を覚えるのを防ぐためだ。S9000とコミュニケーションを取る人間は、人間とは違う知性体として接することができ、かえって違和感を覚えることは少ない。現在のA.Iは、まだそこまで完璧に人間と同じように機能することは出来ない。
 だから人間に似て非なるものであるS9000は無理やり食事を取るふりをする必要もない。食事をする人間の邪魔にならないように軽く会話に加わりながら、PCに向かって軽やかにタイピングをしていても少しも不自然ではない。
 試作機から3号機までの運用テストは現在継続中で、4号機S9004の起動は間もなくの予定だ。



関連記事
テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
 

6000HITイベント用の作品第一弾できました。

 ポール・ブリッツさんのリクエストで、お題は?見当たりませんが、ご指定のオリキャラはエスでした。エスをご指定とは、すこしは読んでくださっているのかな?と、嬉しかったです。
 でも、今回はまったく新しくエスというキャラクターを作り直しています。というのは前に作っていたエスのキャラクターは、由布というキャラになってしまっているからなんですが、エスというネーミングには思い入れもありましたし、居なくなったのは寂しいので作っちゃいました。
 パッチワークのような良く分からないお話が出来てしまいましたが、よろしければ読んでみてください。登場させてみてからとても気に入ったキャラも出てきています。

リンクからどうぞ。「物書きエスの気まぐれプロット

 イベント用の作品、引き続き第二弾・第三弾と書いていきますのでお楽しみに。
 次はクウの登場で、お題は桜……ですか。ウムム……。
関連記事
テーマ : つぶやき    ジャンル : 小説・文学
 
 

テンプレート変えてみました。

気分転換です。3カラムのコンパクトなものに変えました。

山西左紀とういうのは実は二人で一人なのですが(そんなこと分かってるって?)、二人で二人分の体験を合成して記事を書いてきたんです。ところが、ゴチャゴチャになってしまって、しかも一人が暴走することが多くなって、記事の内容に混乱をきたすようになってしまいました。
記事も書きにくいですし、この際ちゃんとプロフィールを明らかにして混乱を収束しようということになりましたので、気分転換を兼ねての変更ということになりました。ヤレヤレ。

山西左紀、中身の一人目は、まず“サキ”です。彼女がすべての物語の骨格を創作しているこのブログの主です。
そしてもう一人が“先”です。彼が(ややロートルですが)このブログの管理人です。

二人は相談して以下のように取り決めました。

二人が合意して合作で書いた記事を発表する際には“左紀”を使います。
これまで通りこれが一番多いことになると思います。
そしてよく暴走して勝手に記事を書いていますが、“サキ”が単独で記事を書いた場合は“サキ”を使うようにします。
あと、あまりないでしょうが“先”が一人で書いた記事は“先”を使いましょう。
こうして責任をはっきりさせることにします。あらためてどうぞよろしくお願いいたします。

ついでにプロフ画像も変更です。
“みまさか”さんに特別にお願いして使用許可をいただきました。「ミクダヨーさん」を使わせてもらいます。実はサキが隠れたボカロファンなもので……。

ここのところですが、サキは6000HITリクエストへの作品第二弾を書いています。「クウ」で「さくら」のお題なんですが、少し悩んでおります。どう持って行くかな?少し時間が必要かもしれません。
「物書きエスの気まぐれプロット」を書き終わって、自分が表に出てもいいような発言があって今回の記事に繋がっているんですが、第二弾でも何かを吹っ切りたい雰囲気です。どんなものが出てくるかお楽しみに。
このブログを覗いてくださる方や、物語を読んでくださっている方には、あまり関係ないことだとは思いますが、本人達には大切なことですので区切りを付けておきます。
お騒がせしました。
ではまた。

あ!そうそう、正体明かし記念の追加イベントです。
このテンプレート、始めてみられた方早いもの順です。
何かお題がございましたらお申し出ください。
掌編でも書いてみましょう。でもこの調子だと夏頃までかかるかもしれませんね。
それでもよろしければどうぞ。

山西 左紀
関連記事
テーマ : つぶやき    ジャンル : 小説・文学
 
 

暫くおやすみです。

えぇっと。明日から少しの間更新とコメ返が滞ります。
実は先が土曜日まで出張に出てしまうからなんですが、どこ行くんだろう?
「どこ?」
「どこでもいいだろう」と言っております。
海外みたいです。後で聞いておきますが、ここには書かないようにと言っております。
期間が短いですし多分アジアなんだと思います。
「アジアなんでしょう?飛行機に乗れるのは嬉しいんだ。仕事はしたくないけどね?」
あぁ。どうもそのようです。仕事がしたくないのはいつものことですが。向こうに行ってしまいました。
で、なぜ滞るのかと言いますと、僕もブログに記事やコメントを書き込むのを控えるからです。水木金と3日間も僕が勝手に書き込んだらブログが修復不能になって、先に見放されてしまうかもしれないからです。
僕は「Debris curcus」を覗くだけにして、6000HITリクエストへの作品第二弾をコソコソと書いていることにします。先が戻ったら校正を初めてもらうことにしますが「クウ」と「桜」……浮かんでくるイメージそのままでは仕上げたくないな、と思ったりしていて難しいです。
今のところ時間をかけても進みません。3日あっても何行進むのかなぁ。なにかきっかけがあるとまた勢いよく動き出すのかもしれないけど。
なにやってんだろ?なんだかパスポートを探しているようです。
「あったの?」
あったようです。いいかげんです。
「おみやげ、何か買ってきてね!!!」

では、土曜日の夜に何か記事が書けるといいんですけど。
暫くおやすみです。
おやすみなさい。

サキ
関連記事
テーマ : つぶやき    ジャンル : 小説・文学
 
<- 02 2013 ->
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 - -
プロフィール
こんにちは!サーカスへようこそ! 二人の左紀、サキと先が共同でブログを作っています。
ようこそ!


頂き物のイラスト

アスタリスクのパイロット、アルマク。キルケさんに書いていただいたイラストです。
ラグランジア
左からシスカ、サヤカ(コトリ)、サエ。ユズキさんにイラストを描いていただきました~。掌編「1006(ラグランジア)」の1シーンです。
天使のささやき_limeさん2
limeさんのイラストをイメージにSSを書いてみました。「ダイヤモンド・ダスト」
イラストをクリックすると記事に飛びます。よろしければご覧くださいネ!
スカイさんシスカイメージ
スカイさんのシスカイメージ
シスカ・イメージ高橋月子さん作
シスカ・イメージ 高橋月子さん作
シスカ・イメージlimeさん作
シスカ・イメージ limeさん作 コトリ・イメージユズキさん作
コトリ(コンステレーションにて)ユズキさん作
リンク
ブロとも申請フォーム

Archive RSS Login