Debris circus

Debris circus

頭の中に散らばっていた破片(debris)を改めて文章に書き起こし、オリジナルブログ小説としてサーカスの舞台に上げていきます。読みにくいものもありますが、お暇な時にパラパラとめくる感じででも読んでいただけたら嬉しいです……

 

新年明けましておめでとうございます。

 新年明けましておめでとうございます。
 
 NET環境の弱い所(無いわけではないんですけど)におりましたのでご挨拶が遅くなってしまいました。どうぞ本年も「Debris curcus」をよろしくお願いします。そして時間がある時にでも山西の作り出す変な世界の文章を読んでいただけたら嬉しいです。

 正月を過ごしていたところは「絵夢」に登場する山本の実家のモデルになった所で、まぁ山奥です。そこで山西は正月を過ごしていました。こんな山奥ですけどなんと光ファイバーが来ています。しかも無線LAN環境です。しかし、しかしです。そこには遅そ~いノートPCが一台あるだけで、しかもその一台はみんながかわりばんこに使っていて山西はなかなか使えません。普段は老人二人がちょっとNETに接続する位なのでこれで十分なんですけれど。まぁせっかくの山郷のお正月だしNETにこだわる必要も無いか…と、気楽に考えていたんですが、3日もするとちょっと禁断症状が出てしまいます。
 山西はノートPCを持ちませんし、(ちゃんと使えるのは自宅のデスクトップだけです)携帯もスマホではありません(もちろんパケホ契約ではありません)。ですからブログに触れないまま本日自宅に戻ってきたというわけです。
のんびりと(NET抜きで)自然に囲まれたお正月を過ごしてきたのですが、ここで過ごすならノートPCが必需品かなぁ。と考えてしまったのでした。

 今年はまず手始めに5000HITのイベント作品を仕上げなくてはと思ってます。黒磯がんばれ!そして「シスカ」ですね。完結したいなぁ。うまく完結したら「その後」のようなものも書きたいと思ってます。とにかく“物を書く”ということを続けること、これが今年の山西の小さな、そしてささやかな目標です。サキの頭の中で創造される変な世界が途切れなく湧き出すように、そしてそれを文章に作り上げる作業が滞りなくできるように、自分の精神や体調の管理に努めていきたいと思っています。
 そして楽しい交流と出会いがありますように。

 覗いてくださる皆様方。本年も御付き合いの程よろしくお願いします。
関連記事
スポンサーサイト
テーマ : つぶやき    ジャンル : 小説・文学
 
 

オリキャラ比較バトン、やってみました。

八少女 夕さんのところでやっていたバトンが面白かったので、いただいてきました。『バトンランド』さま制作のバトンです。(またこのイントロ、パクリです)

山西のオリキャラ達のなかから「ヒロイン級6人娘」でやってみました。
矛盾がありそうな気がするのですが、気がついたら後でこっそり修正ということで……



オリキャラ比例バトン(30問)オリキャラを比較する30の質問
この質問は、オリキャラの中から好きなキャラクターを選び出 し、身長、年齢、美形度などを比較するものです。
複数の作品から一人ずつ(あるいは数人ずつ)選んでも、一つ の作品から複数選んでもかまいません。
オリキャラたちを比較 して遊んでみて下さい(笑)




1.この質問で比較するオリキャラの名前、出演作品を教えて 下さい(何人、何個 でも可)

キタハラ・シスカ: from「シスカ」…ヘリコプターの整備士・セミプロの歌手
タウリ・ノード: from「V645 Centauri (プロキシマ)」…月生まれの月育ち(ルナリアン)
クウ:from「Meteor(メテオ)」&「Eridanus(エリダヌス)」…宇宙飛行士・宇宙船エリダヌスの乗組員
コトリ(中小路彩香):from「254」…バイクショップ「コンステレーション」の居候店員
スピカ:from「白い月」「黒い月」…ミアプラキドゥス湖畔の小屋にたった1人で住んでいる女
絵夢・ヴィンデミアトリックス:fron「絵夢の素敵な日常」…ヴィンデミアトリックス家の長女、なんだか由緒正しいものすごい家らしい

アルマク:from「アスタリスク」はキャラ的に未完成なので今回は外します。
 
2.それでは質問です。一番つき合いの長いキャラクターは誰 ですか?
シスカ、処女作ですので。

3.そのキャラクターが生まれたのは何年前ですか?
プロローグの発表は2011年10月だから1年と少し、でも山西の頭の中にとても長い間居ました。 

4.キャラクターたちの年齢を教えて下さい。
シスカ…22歳 
タウリ…18歳 
クウ…22歳位 
コトリ…22歳 
スピカ…22歳~92歳 
絵夢…22歳 

22歳が多いですね。

5.キャラクターたちの身長を教えて下さい。
シスカ…176㎝ 
タウリ…185㎝ 
クウ…160㎝ 
コトリ…165㎝ 
スピカ…不明(比較対象がない) 
絵夢…162㎝ 

でもだいたいです。  

6.一番美形なのは誰ですか? よろしければどんな容姿か教 えて下さい。
たぶん絵夢でしょう。月の女神の雰囲気 ?

7.身体的に一番強いのは誰ですか? 
馬力があるのはシスカ、生命力という意味ではスピカでしょう。

8.では、一番弱いのは
比較すればタウリということになります。ルナリアンですから筋力や骨格の強度が弱いです。

9.精神的に一番強いのは誰ですか?
ううむ…スピカですか?  

10.同じく一番弱いのは?
比較すればタウリかな。

11.一番性格が良いのは誰ですか?
これはクウかも…

12.では、一番性格が悪いのは?
う~ん。ある意味絵夢ですかね?
悪い!絵夢!ある意味だから、ある意味。

13.一番頭が良いのは誰ですか?
それは絵夢です。

14.では、一番頭が悪いのは?(単に学がない、空気が読めない、普通に馬鹿等なんでも可)
これは…タウリかも…。
悪い!タウリ、他がよすぎるんだ。   

15.一番生活力があるのは誰ですか?

シスカですね。ほかのメンバーも何とかするとは思いますが。

16.一番路頭に迷いそうなのは誰ですか?
タウリになってしまいますが、ここに居る全員比較的生活力はあります。   

17.一番真っ当な恋をしそう(あるいはしてる)のは誰ですか ?
コトリですね。スピカも環境によっては…

18.では、普通の恋と縁遠そうなのは?
絵夢、次いでシスカですね。

19.一番人づき合いが良いのは誰ですか?

絵夢ですね。どんな偏屈でも多分雪解けを迎えます。

20.まともな人間関係が作れないのは誰ですか?
シスカです。
ショウが復活する前は特に。
あの特徴ある顔で学校で虐めに合わないくらいの強固な壁を作ることができたくらいですから。

21.一番守銭奴なのは誰ですか?
これ、案外スピカ。
スピカごめん。
 
22.一番苦労性なのは誰ですか?
クウでしょう。黙っていれば平穏だったのにですね。

23.一番ヘビーな過去を持っているのは誰ですか?
シスカとコトリが双璧です。どちらも壮絶な過去を持っています。

24.一番良い思いをしている(あるいはする予定)なのは誰ですか?
まあ絵夢でしょう。何一つ不自由はないはずです。

25.一番辛い目に遭っている(あるいは遭う予定)なのは誰ですか?
スピカでしょうね。70年もですからねぇ。

26.一番多くの謎を持っているのは誰ですか?
今の段階では絵夢ですね。

27.これから最も活躍するのは誰ですか?
話が終わっていないシスカそして絵夢です。

28.最終的に一番成功するのは誰ですか?(出世する、お金持ちになる等)
それは絵夢でしょう。もともとお金持ちで、それも半端無く、そして失わないし。

29.一番愛着のあるキャラクターは誰ですか? よろしければ 理由もどうぞ(全員
  でも構いません)

もちろん全員ですが、強いてあげればやはりシスカですね。
小説を書き始めたきっかけのキャラですから。

30.お疲れ様でした! 最後に一言お願いします。
楽しかったですが、やってみて比較が難しいキャラばかりを選んでしまったと途中で後悔しました。
山西のキャラの幅の狭さを思い知りました。勉強になりましたね。

--------------------------
このバトンのURL:
http://www.baton-land.com/baton/1303

バトン置場の『バトンランド』:
http://www.baton-land.com/
関連記事
テーマ : つぶやき    ジャンル : 小説・文学
 
 

アルテミス達の午後

Stella/s scriviamo! Stella2月号参加作品(シリーズ番外.掌編)
夕さんに……感謝を込めて

アルテミス達の午後

130206_阪急三宮

 三宮駅は大きな鉄骨で構成されたドームで覆われている。マルーンの電車は、そのドームにゆっくりと滑り込んだ。
 ドアが開くと由布はすぐにホームに降りてそのまま端に寄り、降車する人々をやり過ごした。人波がひいたホームの真ん中には青年が立っていて、頭上に広がるドームを見上げている。由布はゆっくりと近づいた。
 少し長めのふわりした黒い髪、やせっぽちなボディ、白すぎるくらいの肌、丁度好い位置についているのにアンバランスに大きな目、その中にある猫のような大きな焦げ茶色の瞳、やや大き目の口、真っすぐ通った鼻、胴体に比べるとやや長く感じる手足そして指、それぞれに個性的なパーツは組み合わされると今風な青年が出来上がる。少し潮に焼けた化粧気の無い顔にショートカットの由布の方がよっぽど男っぽく見えるくらいだ。
「ハル、久しぶり!」由布が声をかけるとハルと呼ばれた青年は驚いて顔を向けた。
 由布がクスクスと笑って言った。「どうして上を見てるの?」由布の質問に「鉄骨とリベットがいい感じやから」ハルが無愛想に答える。
「鉄骨萌えだね」由布がまた微笑んだ。
「元気そうやな。その顔は例の件が上手く行ってるということやな?」ハルが言うと「何が?」由布が少し怒った顔になった。
「色々と」まずかったかな?という顔でハルが答える。
「ごめんね。色々と迷惑をかけたね。問題もあったんだけど何とかね」由布は、はにかみながら「でね。今日は会ってもらいたい人が居るんだ」と続けた。
「会うって?誰と?」ハルは驚きと疑念の混ざった声で答えた。
「ううん。違うよ。もう1人のアドバイスをもらった友達に会ってもらおうと思って、女の子だよ」
「そうなんや」ハルの顔から力が抜けた。
「向こうにはハルのことは伝えてあるから。じゃ、行こうか?」
 エスカレーターにはハルが先に乗って由布の方を振り返ったので、下り始めると顔の高さが同じになった。いつものハルの顔が目の前にあるだけのことなのに、由布は妙に速くなる鼓動にあわてて少し下を向いた。すぐにハルも前に向き直り、2人はそのままコンコースへ下りて行った。
 改札を抜けた先にライトグレーのコートをまとった髪の長い女性が立っている。由布は小さく手を振りながら近づくとハルに彼女を紹介した。
「紹介するね。彼女はエム」
 由布に紹介された女性は丁寧に頭を下げた。
「始めまして、エム・ヴィンデミアトリックスです」
「エム・ヴィンデミ……」
「ヴィンデミアトリックスです。言いにくいでしょ?エムでいいです。漢字で書くとPictureとDreamです」
「でもヴィンデミアトリックスてあの……」ハルは言い淀んだ。
「それを抜きで紹介したいんだ。ボクの友達として」由布が口を挟んで「この子が“例の友達”」とハルを紹介した。
「“例の友達”です」チラと笑みを浮かべてハルは言った。「でも名字はレイノではなくてクロイソで名前は“友達”でもなくてハルナですけど、ハルナは山の名前と同じ漢字です」
「黒磯さん?」絵夢は一瞬目を見開いて驚いた様子だったが「山ってあの榛名山?」と訊いた。
「ええ。父が付けたんですけど変わってるでしょ?女みたいですよね?」
「ううん。とってもいい名前だわ。由布だって山の名前でしょ?よろしくね榛名くん」
「こちらこそよろしくお願いします」ハルは絵夢に顔をのぞき込まれて頬が少し赤くなった。いつもの絵夢の動作だったが、なぜか今日の由布には疎ましく感じられた。
「お父様は山男なの?」絵夢が興味深げに尋ねた。
「僕と由布の親父は両方とも山男で昔からの山仲間なんです。それで何や知らんけど2人とも山の名前が付いてるんです。僕らは親父同士の関係で、まあ幼なじみみたいなもんです」
「お父様は今でも山に登られる?」
「若い頃はずいぶん登ってたみたいですけど、今は全然。仕事が忙しいみたいで」
「そう」絵夢は思うところがあったのか少し間を置いて「お父様はどんな仕事をされてるの?」と訊いた。
「親父は仕事の話を全然しないからよく分からないんですけど。財産とか資産とかの管理をする仕事をしてるって聞いてます」ハルは曖昧に答えた。
「でも絵夢さんはあの……」ハルはまだ少し遠慮している様子で訊いた。
「ええ、隠すのはいやだから先に言っておくけど、確かに私はヴィンデミアトリックス家の者です。でも、それは抜きにして欲しいの。榛名くん」
「あの、照れくさいのでハルでいいですよ」
「じゃあ、抜きにしてくれる?ハル」
「は、はい」ハルはそう答えたが、絵夢がまだ見つめているので「わかった。絵夢」と言い直した。絵夢は満足げに笑って「よろしくね!ハル」と言った。
『あの目に見つめられたら、女でもたまらないよなぁ』由布は口の中で小さく呟いた。
 3人は暫く談笑を続けていたが少し遅い昼食を取るために歩き始めた。

「お嬢様!」「絵夢お嬢様!!」黒磯は玄関を入ると声をかけた。時計は午後3時をさしている。返事は無い。「お嬢様!」もう一度声をかけてから「上がらせていただきます」と入り込み、いつものように各部屋を手馴れた様子で確認していく。もちろんベランダに出て例のスペースも覗きこむ。
「逃げられたか……」黒磯はリビングに入ると丁寧に窓を閉め、携帯電話を取りだした。
「山本か?やはりいらっしゃらない。車はどうだ?あるのか?だったら、午後1時前に退社されているし、スケジュールはご存じだから、ここより本宅からアクセスし易い場所でピックアップの連絡があるだろう。連絡があり次第お迎えするから我々はとりあえず本宅に向かう。玄関へ車をまわせ」携帯を切るともう一度部屋を確認してから玄関を出る。ダブルロックをかける音が部屋に響いた。

130206_トアロード3

 神戸の町は東西に細長い。町の南側には港が広がり、北側には六甲山が連なっている。海と山に挟まれた町は、真ん中を鉄道がやはり東西に走っていてとても便利がよい。大阪と違って上る方向が北で、下る方向が南だから不案内な者にもわかりやすい。山が近くに見えたら坂を下ってどんどん進む、港が見えたら上る方向にどんどん進む、そうすれば必ずJRの高架に突き当たる。そして右か左に向かえば三宮か元町あるいは神戸の駅にたどり着く。
 3人はレストランを出て坂を下り始めていた。由布はお世話になったお礼にご馳走すると言い張った。普段はあまり主張することはないのだが今日は特別だ。それじゃぁ遠慮なくと2人が折れてくれて、少し高めのランチを済ませたところだった。
 少し歩けば大きな商店街に戻れるがその手前に人だかりが見えた。「何だろう?」由布が小走りに駆けて行って人だかりを確認して戻ってきた。「何かパフォーマンスをやってるよ。面白そうだから見ていこうよ」パフォーマンスは4人のチームで演じているらしく、人垣から覗きこむとそのうちの2人が演奏を始めたところだった。正面に立つ三味線を持っている男性とフルートを構えている黒い髪の美しい女性は日本人のようだが、演技を終え横に控えている2人は金髪碧眼と茶色い巻髪の外国人の男性だった。演奏は日本歌謡をメドレーにアレンジした曲で、楽器の組み合わせはとても面白く観客の目や耳を楽しませ。その演奏の素晴らしさは素人の由布にも充分感じられた。
 演奏が終わった後もアンコールの拍手が鳴りやまない。チームは控えていた2人がボーカルで参加してアンコールに答えた。観客は拍手を惜しまず、そして前に置かれたフルートの箱に次々とコインを放り込んだので、結構な身入りになったようだった。3人もコインを幾つか放り込んだが、絵夢はそのままフルートを吹いていた女性の所に近づいて行く。そして笑顔で暫く会話をかわしていたが、やがてフルートの女性は小さく頷くとソロで演奏を始めた。 由布はハルと近づきがたい雰囲気に気おされて、少し離れたところでそれを眺めていた。感想を言おうと由布はハルの方を見たが、ハルも由布を見ていたのであわてて演奏に目を戻した。また鼓動が速くなる。「不思議な曲やな。邦楽みたいな曲調や」ハルが声をかけてきて「そうだね」由布はフルートの女性を見つめたまま短く答えた。こういう場所ではやや不向きな曲だったがやはり響きはすばらしく、演奏が終わるとまた大きな拍手が巻き起こりコインが放り込まれた。
 絵夢は拍手をしながらまた近づいて話しかけ、他の3人もそれに加わって何やら談笑を始めた。暫くして会話を終えた絵夢は4人と軽く握手を交わして別れを告げ2人の所へ戻ってきた。
「何をしゃべってたの?」由布が訊いた。
「ちょっとね。フルートと三味線がとっても素晴らしかったから、どうしても話を聞いておきたくなったの。シランクスも素敵だったわ……」絵夢はまだ夢見ているような目つきだったが、やがて2人に目を戻すと「さぁ、お2人さん!そろそろ買い物に行かない?」と誘った。
 3人はセンター街に着くと、店を覗いて歩いた。由布は絵夢の思案気な様子に「絵夢は何か買いたいものはあるの?」と尋ねた。
「そうだね。チョコレートを仕入れておきたいかなぁ」絵夢がそう言うと、ハルがちらりと由布の方を見てから「バレンタイン?」と訊いた。
「ボクに気を遣う必要は無いよ。ボクだって買うよ。義理だって結構必要なんだ。水産研究所は男ばかりだし」由布は口を尖らせた。
「どこかお店の当てはあるの?」絵夢が言った。
 由布はハルと顔を見合わせてから絵夢の方を向いて首を横に振った。「いつも適当なブランドのものを特設会場で買ったりするだけだもの」
「それなら、わたしが時々買っているお店があるからそこへ案内しようか?多分気に入ると思うんだけど」絵夢が提案した。
「うわぁ!どんな店だろう。絵夢が買う店だったら見てみたい」由布は喜んでその提案に乗った。
「そう?だったらすぐそこだから。こっちよ」絵夢を先頭に3人はセンター街を離れ、山手へ向かって歩き始めた。

 黒磯の携帯が着信音を鳴らし始めた。
「はい、黒磯です」黒磯は発信元を確認してから簡潔に応答した。
『絵夢です』携帯からは明るい声が響いた。
「お嬢様。今何時だとお思いですか?約束の時間はとっくに過ぎておりますし、約束の場所にもいらっしゃらなかったですね?」
『ごめんなさい。ちょっと急用ができてしまって』少し困ったような声だがいつもの作戦だ。
「また急用ですか?いつものことですね。もう慣れっこになってしまいましたが?あらかじめお伝えいただくということはできないのですか?」
『あらかじめ伝えられないから急用と言うんじゃないかしら?それに伝えたら認めてくださる?』
「それは時と場合によります。いまどちらですか?」
『いま三宮の駅です。あと2分で電車が出発します。御影の駅で拾ってくださるかしら?それから準備しても十分に間に合うとわたしは思いますが?』
「いつものことですから、もう準備は整っております。後はお嬢様がいらっしゃれば滞りなく進行できます。すぐに山本を駅へ迎えにやりますので、いつもの北のロータリーで待たせます」
『わかりました。よろしくお願いします。ところで……』絵夢は言い淀んだ。
「ところで、何ですか?」
『黒磯は若い頃山男だったの?』からかうような口調だ。
「は?いきなり何ですか?」
『質問に答えてくださる?でないと新開地行きに乗り換えますよ』
「何をおっしゃっているんですか?意味がわかりませんが、確かに若い頃はあちこちの山に登っておりました。なぜ急にそんなことをお聞きになるのですか?」
『何となくよ。何となくそんな気がしたの。やっぱりそうだったんだ。あっ!電車が出る。乗ります』発車のメロディーが聞こえ始めて電話が切れた。
 黒磯は携帯を操作した。「黒磯だ。お嬢様から連絡があった。電車はいま三宮を出たところだ。御影駅の北のロータリーでお迎えしてくれ。急げ」

 黒磯は家路を急いでいた。無事お嬢様を送り出して今日の勤務は終了した。あとは山本に任せておけば万事滞りなく進むはずだ。
「ただいま」玄関を入って声をかけると「父さんお帰り、先に風呂に入るだろ?夕食待ってるから早めにね!」ハルの声が返ってきた。
「待っててくれてるのか?」台所を覗くと2人並んで台所に立っている。「たまには一緒に食べよ」ハルがこっちを振り返って笑った。
「すまないな。母さん着替えは?」
「寝室のいつもの棚。のんびり入ってもいいけど、あんまり長くならないようにお願い」
「わかってる。俺はそんなに長風呂じゃないぞ」黒磯は寝室に急いだ。
 風呂を上がった黒磯が席に着くと「いただきまーす」待ちかねたハルが声を上げて食事が始まった。「今日は飲めるんよね?」黒磯が頷くと、ハルが缶ビールを開けて黒磯についでくれた。黒磯が「いただきます」とコップを空け食事を始めると、ハルは立ち上がり後ろの棚から紙袋を持ってきて、そこから小さな箱を出してきた。「父さんこれ、いつもの由布からのバレンタインデーのチョコレート。預かってきた。なかなか一緒に夕食食べられないから、ちょっと早いけど今日渡しとく。」
「そうか。それはうれしいな。おぉ!しゃれた箱だな」
「だろ?友達に今日三宮でお店を教えてもらった」
「ハルがか?」黒磯は問い返した。
「由布と一緒にやで」あわててハルが付け足した。
「由布ちゃんと……2人でか?」
「いや。由布の友達も一緒で、その子に教えてもらった。女の子や。それから、これ!」ハルは紙袋からもう一つ箱を出してきた。
「なんだ?」
「これはね。その由布の友達から……ついでにって言うてた」
「由布ちゃんの友達から?ついで?」
「絵夢っていう、髪の長いすごくきれいな子」
「絵夢!」黒磯は素っ頓狂な声を上げて飲もうとしていたビールでむせた。
「大丈夫?漢字だとPictureとDreamと書くんやって。すごい家系のお嬢様らしいで」
「絵夢か……まいったな」黒磯は頭を掻きながら小さくつぶやくと、苦り切った顔で「その友達にもよろしく言っといてくれ」と言った。
「それから、これは僕から」ハルが照れくさそうに箱を出した。
「なんだ?お前もチョコレートか?」
「違うよ。中はネクタイ。その絵夢に選んでもらったんだ。選んでプレゼントしろってうるさいんや」ハルは少し迷惑そうな顔をしたが「いつもいろいろとありがとう。これこそついでやな」と箱を手渡した。
「おじょ……絵夢さんが?父さんちょっと開けてみてよ」連れ合いは興味津々だ。
「ありがとう。だが、なんだか照れるな」黒磯は箱を開けるとネクタイを取り出し胸に当てた。
「へぇ、明るい感じでよく似合う。いいセンスやわ」連れ合いが声を上げた。
 食事中、ハルは由布や絵夢の話を楽しげに続けた。黒磯はこんなに生き生きと話すハルを久しぶりに見たような気がした。絵夢にかかわる者の表情が明るく変化するのを何度も見てきた黒磯は、ハルの中にもその変化を感じていた。まぁこれはいいことなんだろう、そう考えながら黒磯は食事を続けた。

 食事を終えて自分の部屋へ向かうハルを見送りながら、黒磯と連れ合いは目を合わせた。
「なぜハルの話にお嬢様が出てくるんだ?」黒磯の小声の問いに連れ合いは「さあ。何ででしょうね?」と笑って答えた。
「ハルはお嬢様と係わり合わないようにしてきたつもりだったんだが」
「そうやね。男の子でしたからね。でももう係わってもいい時期になったんやないですか?いい人も居るみたいやし」
「あれにか?由布ちゃんじゃないだろう?あっちは決まった人が居るようだし」
「それが、そうでもないようなんですよ」
「それはどういうことだ?」
「まぁ、おいおいわかりますよ。それから父さん、これは私から」連れ合いから小さな箱が渡された。
「お、ありがとう」黒磯は照れくさそうに受け取った。
 黒磯は、狐につままれたような面持ちで、4つ並んだ箱を見つめていた。

 ハルは自分の部屋に入るとベッドに腰掛け、横に置いてあった紙袋を膝の上に置いた。そして中から箱を取りだした。1つは絵夢からもらった父と同じ箱。そしてもう一つは由布からもらったそれよりも少し大きな箱だった。開けてみるとシンプルだが美味しそうなチョコレートが行儀よく並んでいる。真ん中にはメッセージカードが乗っている。由布が絵夢と一緒にキャーキャー言いながら隠れるように店のテーブルで書き込んでいたものだ。ハルは気がついていないふりをしていたが、やはり気になっていた。何を書き込んだんだやろう……そう思って開いたカードには“ありがとう。これからもずっとよろしくね”と書き込まれていた。

2013/01/25
関連記事
テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
 

「アルテミス達の午後」をUPします。

5000HIT記念作品ようやく完成です。
5000HIT踏んでいただいた八少女 夕さんのリクエストで、お題は「お餅」あるいは「チョコレート」指定のキャラは「黒磯」でした。
お題はバレンタインが近づいていることもあって「チョコレート」を選択させていただきましたが、問題は「黒磯」でした。男性の、しかも職業として謎の役回りのキャラでしたので、どのように処理するか悩んでおりました。結果的にこんなに遅くなってしまい、リクエストをいただいた夕さんをお待たせすることになってしまいました。すみません。
難産の末の完成です。よろしければ読んでみてください。
この作品は「Stella2月号」の掲載作品でもありますし八少女 夕さんの1周年企画「scriviamo!」への参加作品でもあります。今月は書くことが出来た作品数が少ないので、2つの企画の決め事がフレキシブルなのをいいことにダブルで参加させていただきます。
3つの企画に相乗りですが、よろしくお願いします。この下にリンクを置いておきます。

「アルテミス達の午後」

本作は「絵夢の素敵な日常」の番外編です。
一応シリーズ物ですので、これまでを読まれていない方に軽いレクチャーを……。
絵夢の物語は基本阪神間が舞台ですので今回は神戸・三宮です。マルーンの電車はもちろん阪急電車ですし、ドームの駅は阪急三宮駅です。
登場人物についてです。
由布は前々作「フム・アル・サマカー」で、婚約状態にあった男の支配に悩んでいた大学院生です。何とか彼と別れることができた後、いろいろとアドバイスをもらっていた絵夢と幼馴染のハルにお礼をする……という設定です。
ハルは今回初登場です。由布の幼馴染ですが、指定のキャラが黒磯ですので黒磯を補完する意味もあります。
絵夢ヴィンデミアトリックスはヴィンデミアトリックス家の長女、俗に言うお嬢様です。
黒磯はヴィンデミアトリックス本家の資産や財産の管理をしているスタッフです。そして俗に言う執事の役割も兼ねています。
何が起こるわけでもなく淡々と日常が通り過ぎてゆくだけの作品です。
ヴィンデミアトリックス本宅は御影の山手にあるんですねぇ。
関連記事
テーマ : つぶやき    ジャンル : 小説・文学
 
 

32-1 ヨウコはロビーのソファーに腰を掛け地下駐車場の入り口を見つめていた。

 ---32-1---



 ヨウコはロビーのソファーに腰を掛け地下駐車場の入り口を見つめていた。どれぐらいここで待っているのだろう。もうすでに日はとっぷりと暮れて、駐車場の入り口は照明に浮かび上がっている。前のテーブルには冷たくなったブラウンコーヒーが、わずかに量を減らしただけで置かれている。
 ジュナと出かけたみたい……、食事に現われないシスカを心配するクラモチ達にヨウコはそう伝えた。クラモチ達は基本的にオルガでのシスカの行動に制限をかけたくないと考えているようだったので、もう少し様子を見てみようということになったが、ヨウコは胃のあたりに重苦しさを感じていた。
 長すぎる張り込みにそろそろクラモチの部屋を覗こうかと考え始めた頃、重圧なエキゾーストノートが聞こえ始めた。やがて黒いスポーツカーが地下駐車場に降りて行くのを確認すると、ヨウコはゆっくりと立ち上がった。そしてロビーを横切りエレベーターに乗り込み、自分たちの部屋のある階のボタンを押した。エレベーターはガラスで覆われたシャフトの中をロビーを見おろしながら昇って行った。
 ヨウコはエレベーターを降りると、エレベーターホールの角を曲がり廊下の隅にそっと立った。
 しばらくして”ポーン”とエレベーターの到着を示すチャイムが鳴った。降りてくる人物を影からそっと確認すると鉢合わせをするように廊下の角を曲がった。
「ごめんなさい」
『失礼!』
 双方で声が上がってからヨウコは「ジュナさん!シスカ!心配したよ?」と訊いた。
 少し間が空いてから「シスカさんと夕食を食べていたのですよ」ジュナがにこやかに答えた。
「色々お尋ねしたいことがあったので私がお誘いしたんですよ。ご心配をおかけしたならお詫びします」ジュナはシスカを見つめながら続けた。ヨウコはジュナのシスカに対する呼称が変化したことに気づいた。
「そうなの?」ヨウコがニュアンスに気をつけながらシスカに尋ねるとシスカは頷いた。
「それでは私はこれで、夜の会議でまたお会いしましょう。シスカさん、付き合わせてごめんなさいね」ジュナはそう言うと自分の部屋の方へ歩いて行った。
 ジュナを見送ってからヨウコはシスカに「何の話をしたの?」と改めて訊いた。
「僕の歌を聞いてみたいと言われた」少し決まりが悪そうにシスカが答える。
「歌を?あの子守唄?」
「ウン。ベクル語の子守唄とあの家族の歌と……」
「ふーん。なぜだろう?」ヨウコの目がメガネの奥で光った。
「さあね。わからない。でも、疲れた。少し横になりたい」シスカはそう言うと、まだ聞きたそうにしているヨウコにかまわず、自分の部屋へ入って行った。
 ヨウコは少しの間考え事をしていたが、クラモチ達にシスカの帰還を伝えようと廊下を戻っていった。
関連記事
テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
 

久しぶりにシスカをUPします。

シスカってこんな感じのお話です。
シスカはプラチナ(というよりほとんど白)の髪、左はブルー右は黒の目を持つ長身でスレンダーな女性です。ヘリコプターの整備士であると同時にセミプロの歌手でもあります。年齢は20代前半。大戦の後、イルマ国とベクレラ連邦の国境紛争による混乱で出生は不明です。シスカはイルマ国マサゴ市に住んでいて国境の向こうに微かに見えるベクレラ連邦オルガの町を、自分が生まれた場所ではないか思いながら過ごしています。そんな折、オルガのガス田で爆発事故が発生するのです。
ガス田の事故処理のため、マザー2チームと一緒に隣国ベクレラのオルガ市に派遣されたシスカは、義父キタハラの操縦するヘリの整備士として仲間と共にオルガ市に乗り込んでいます。
そこでガス田の事故処理を担当している会社の社長、ラサ・タカジュナと出会います。そして、シスカの容姿に驚いたラサの手引きによって、シスカは裏ぶれたライブハウスに連れ出され、ベクル語で熱唱します。
ラサはその歌を聞いて確信を持つのです。シスカはここオルガ市で反戦の歌を歌っていた歌手の娘に違いないと。
思わぬところで自分の出生の謎を知ることになったシスカは、その歌手の写真を見せて欲しいと頼みます。そしてその歌手の写真を見たシスカは気を失いそうになる程驚くのです。
シスカの謎が少しづつ明らかになり始めます。

シスカ ---32-1---

32話ですが細切れでUPします。理由はないんですが、このほうが読みやすいかな?と思っただけです。あまり長いと誰も読んでくれないかな?と思いました。短くても同じですかね?試験的に連続で4回ほどやってみます。
興味のある方、よろしければどうぞ読んでみてください。
あとでまとめることになると思います。
ではまた明日。
関連記事
テーマ : つぶやき    ジャンル : 小説・文学
 
 

32-2 ヨウコは早朝に目を覚ました。

今日もシスカ32話の続きをUPします。
昨日の32-1、若干校正を入れています。この部分山西があまり読みこんでいない部分だったせいで若干の食い違いがありました。ストーリーには影響がありませんが、変わっている部分があります。
今日は32-2です。ヨウコの正体がなんとなく分かってくるように書いているつもりです。
短いです。まとめて読みたい方は、土曜日に32話をまとめてUPする予定ですので、そちらでお読みいただければ一気読みができます。どうですか?
では、また明日。

---32-2---

 ヨウコは早朝に目を覚ました。神経を使いすぎたのかまだ興奮が残っていて、すこしウトウトしたぐらいで目が覚めてしまったようだ。エネルギー相を迎えての会議は警備の関係で空港のターミナルビルで開かれたため、関係者全員がそこまで出向かなければならなくなったが、外交省の役人達が間に入って滞りなく終了した。ようするに後追いの承認儀式のような位置付けの会議だったらしい。大臣は自分がすべてを掌握している事を確認すると(それが事実であるかどうかは別にして)、慌ただしくシンキョウへ飛び立っていった。
 ヨウコは大臣の物々しい警備に比べて、自分達に付く警備や監視が非常にいいかげんなことに驚いていた。ほとんど形だけの警備で、どこへ行くにも咎められることは無かった。現にシスカの外出も可能だったし、自分も後を追ってホテルを飛び出したが何も言われなかった。(油田事故の始末屋ぐらいにしかとらえられていないのかな)ヨウコはそう解釈することにした。
 とりあえずの頭の整理を終えたヨウコだったが、とても眠れそうもないので着替えとメイクを済ませ、窓際に置かれたソファーに座った。そのままエネルギーが切れたアンドロイドのようにじっとしていると、ドアがノックされた。
 ドアスコープを覗くとシスカだ。ドアを開けて「おはよう」と言うとシスカは「おはよう。少し早いけど。朝食を食べに行こうか。まだだよね?」と言った。
「うん。でも疲れてたみたいだったけど、大丈夫?」
「昨日はちょっとね……でも一晩眠ったからもう大丈夫」
「体力あるね」そう言うとヨウコは部屋を出た。2人は昨日のことには触れないまま、エレベーターでレストランに向かった。
関連記事
テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
 

32-3 それはシスカが望んだことのように思われた。

今日はシスカ32話のUP、第3夜です。
例のごとく32-2、若干の校正が入っていますが何の影響も有りません。自己満足です。
今日はレストランでの会話のシーンです。
ヨウコは知りたがりですが、シスカも話したいみたいです。
では、また明日。

---32-3---

 レストランはまだ朝早いせいか空いていて、知っている顔は見えない。それはシスカが望んだことのように思われた。窓際の隅の席に向かい合わせに座るとスタッフが朝食を運んできて、テーブルの上にはパンや飲み物の他にハムやソーセージ・卵料理・サラダなどがいっぱいに並べられた。ヨウコは量の多さに少し驚いてシスカと顔を見合わせていたが諦めて食事を始めた。そして「昨日はどんな様子だったの?」もしよければ喋ってみない?という雰囲気が出るように心がけてシスカに話しかけた。
「僕はこの町で生まれたんだ」シスカは食べながら静かに話し始めた。
「こんな話は本当はキタハラに一番に話しておかないといけないんだろうけど、いま僕はとてもしゃべりたい気持ちだし、ヨウコには話しておいた方がいいような気がするんだ」シスカは意味ありげに微笑むとヨウコの目を覗きこんだ。理由を尋ねるのも気が引けてヨウコは曖昧に微笑みを返した。
「ラサは僕の顔を見て思い当たる人物があったんで僕を誘ったんだ」
「思い当たる人?」ヨウコはシスカがジュナのことをラサと呼ぶことに驚きながら尋ねた。
「直感だと言っていたけど、どうしてそう思ったかは言ってくれなかった」
「どこへ誘われたの?」
「場所はよく分からないけど小さなライブハウスだった。そこで歌ったんだ」
「あの2つの曲を?」
「うん。それで声までそっくりだと言われた」
「誰と?」ヨウコはもう会話のニュアンスなどを気にすることはやめて率直に尋ねた。
「戦争中この歌を歌っていた歌手と……反戦のアイドルだったらしいよ。ラサはその歌手と親しかったらしいんだ」
「それが思い当たる人?」
「そう」
「いまその人は?」
「亡くなっている」シスカはポツリと言った。
「そうだったの……」ある種の予感を感じながらヨウコは言い淀んだ。
「見て」シスカはウエストポーチを開けるとプラスチックケースを取り出してヨウコに見せた。
「これは?」ヨウコはちらりと写真を見て言ったが、すぐに写真をじっと見つめたまま黙り込んだ。シスカが何か言おうとしたが手でそれを制した。
「面影がシスカと似てる。この人はシスカに関係のある人?」慎重な言い回しをしてヨウコは顔を上げた。
「その人が反戦のアイドル……」シスカは一旦そこで言葉を区切ってから続けた。
「そして僕の母親だと言われた」
 予測はしていたがやはり衝撃的な答えだった。ヨウコは勤めて冷静に「そう……」と答えたが、言葉が続かなかった。
関連記事
テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
 

32-4 「その人、僕に似ていると思う?」

第4夜です。
今夜はレストランで朝食を取るシスカとヨウコの会話の後半です。
意味深なシスカの発言に流石のヨウコもタジタジですね。
32話はこれで全てのパーツを出力しました。
いかがですか?
土曜日に32話としてまとめてUPする予定です。
物語は33話に続きます。

---32-4---

「その人、僕に似ていると思う?」朝食を口に運びながらシスカが唐突に訊いた。
「そうだね。先入観があったからかもしれないけど、そういう印象を持ったわ」ヨウコは素直に感想を述べた。
「僕はね、言われるまで気がつかなかった。自分よりもっとそっくりな人がいたからね」
「それは誰?」
「それはね、どこにも居ない人なんだ。もう1人の僕の世界の中にだけ居た人で、たぶん声も僕と似ていたんだろうけど、自分の声ってわからないからね。ただアルナとシキシマの背丈は違っていたし……それは多分僕の小さな頃の記憶がそうさせているんだろうけど。それに細かい部分の記憶がもう残っていないんだ。少しずつ炭酸が抜けて行くようにディティールがぼやけていくんだ」シスカは諦めとも悟りともつかない笑みを浮かべていた。
「アルナとシキシマって?」
「ああ、ごめん。アルナは僕の母の名前。そしてシキシマが……」
「もう1人のシスカの世界の中にだけ居た人?不思議な話ね」
「ヨウコは僕の精神状態について詳しく知っているよね」
 ヨウコはどこまで喋っていいのか判断しかねて黙っていた。
「ずいぶん調べたんじゃないの?」
「……友達のことだもの……そりゃぁ気になるわ」ヨウコは返事が硬くなるのを感じていた。
「怒ってるわけじゃないよ。僕の言ったことを解ってくれたかどうか気になっているだけなんだ」
「いくら友達でもその気持ちを完全に理解することはできないわ。でも理解しようと努力することと、自分に置き換えて想像することはできてると思う。それと、それをすることができる知識も充分に持っていると思う」
「本当に僕を友達と思っていてくれてる?」シスカはヨウコの目を真っすぐに見つめて訊いてきた。隠し事はすべて見抜いているという目だ。
「私はシスカを友達だと思っているわ」ヨウコは嘘偽りの無い真実を述べた。
「ありがとう。それが聞きたかった」シスカはこぼれるように微笑んだ。
「それから食事が始まったんだ。結構美味しかったよ」
「どんなものが出たの」重要な話は終わったと感じたヨウコは好奇心に任せて尋ねた。
「なんていうんだろう。よく分からないんだけど食べたことの無い料理だった。何かの肉料理だったけど“ラド・ネラック”って掛け声をかけてから食べ始めたんだ。どこの料理だろう?けっこう美味しかった」シスカは卵料理を口に運びながらしゃべり続けた。
「ふ~ん……」ヨウコは小さくつぶやくと少し首を傾げ顎に手を当てた。
シスカはその様子を見ていたが「さあ。難しい顔は終わりにして食事を済ませてしまおうよ」と言った。
「そうだね」ヨウコも答え、朝食を続けた。

関連記事
テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
<- 01 2013 ->
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
プロフィール
こんにちは!サーカスへようこそ! 二人の左紀、サキと先が共同でブログを作っています。
ようこそ!


頂き物のイラスト

アスタリスクのパイロット、アルマク。キルケさんに書いていただいたイラストです。
ラグランジア
左からシスカ、サヤカ(コトリ)、サエ。ユズキさんにイラストを描いていただきました~。掌編「1006(ラグランジア)」の1シーンです。
天使のささやき_limeさん2
limeさんのイラストをイメージにSSを書いてみました。「ダイヤモンド・ダスト」
イラストをクリックすると記事に飛びます。よろしければご覧くださいネ!
スカイさんシスカイメージ
スカイさんのシスカイメージ
シスカ・イメージ高橋月子さん作
シスカ・イメージ 高橋月子さん作
シスカ・イメージlimeさん作
シスカ・イメージ limeさん作 コトリ・イメージユズキさん作
コトリ(コンステレーションにて)ユズキさん作
リンク
ブロとも申請フォーム

Archive RSS Login