Debris circus

Debris circus

頭の中に散らばっていた破片(debris)を改めて文章に書き起こし、オリジナルブログ小説としてサーカスの舞台に上げていきます。読みにくいものもありますが、お暇な時にパラパラとめくる感じででも読んでいただけたら嬉しいです……

 

『第3回短編小説書いてみよう会』に参加していました。

『第3回短編小説書いてみよう会』に参加していました。6/30までの掲載期間が終了しましたので参加の記録としてここにこのTOP記事をここに置いておきます。参加作品のリンクもそのままですのでよろしければご覧ください。


只今、『第3回短編小説書いてみよう会』に参加しています。
(この記事はルールにより指定期間中TOPです)

 参加者リスト(2012/5/21現在)

玩具箱を引っくり返したッ!! 自分 自身 様 『夢ミ村』 ← この企画の黒幕さんです。詳しくはこちらのサイトで……


scribo ergo sum  八少女 夕 様 『明日の故郷』


凛音天青  紫木 凛音 様 『夜見祭』



グランベル魔法街のきまぐれ掲示板  栗栖紗那 様 『工房の町エリーテ』


今日この頃の吹き溜まり  鳥居波浪 様 『不思議な町 ~路端の小さな物語~



ピクルスの味  のりまき 様 『町並み』


百鬼夜行に遅刻しました  ウゾ 様 『俺達に赦されし地 赦されし永遠』


★山西 左紀  『254(前編)』『254(後編)』

 
参加される皆様、どうぞよろしくお願いします。

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2000HITありがとうございます!

2000HITありがとうございます!

 先ほどサキはモニターを覗きこんで2000HIT越えを確認しました。
 サキとしては暫く前から何か記念になるようなものが何か書けないかと考えていました。しかしサキにとっての大きなイベントで短編を書き上げた上に、さらに長編の一回分をUPし、それと並行して進めていた連載物を完結させた直後だったので、創作エンジンはもうほとんど回転してません。慣性で僅かに回っているという程度ですね。もう力尽きて余力が無いってことです。
 キーボードの前で暫く唸っていましたがついに諦めました。
 ちょっとした近況報告の様な物とお礼でお茶を濁しておくことにします。すみません。

 で……

 近況報告です。
 今、途中で止まっているお話は“エスの話(仮題)”です。冒頭部分は気に入って書き始めたんですが展開できず止まっています。これは結貴さんに作っていただいたキャラを使って書いてみようと始めた作品だったんですが、他の話を書くのに忙しくなってしまい中断したままになっています。結貴さん、偉そうに宣言したのにすみません。そのうち冒頭部分だけでも公開するかもしれません。かなり変わったお話です。ですから余計に展開が難しいのかもしれません。
 そしてアイデアの状態でプロットを作成中の物が1つあります。タイトルも未定ですがカテゴリーは一応SFになると思います。(一応というところがミソですが)でも先ほども書いたように創作エンジンはもうほとんど回転してません。気力が上がってきません。動き始めるのを静かに待つことにします。
 サキは体力的に問題を抱えているので夏場の更新速度が遅くなると思います。焦らずに書いて行っていずれUPしますのでよろしければどうぞ。
“先”が動いてくれるといいんですが……

 で……

 2000HITを越えました。去年の10月にスタートしてから9か月と少し、他の方のブログに比べて到達がかなり遅いような気もしますが、まあ中身がこれですから良く覗いていただけてる方だなと思っております。
 覗いていただいている方。コメントや拍手をいただいている方、本当にありがとうございます。この拙い文章に反応があるということだけでもとても嬉しいです。
 サキの苦手な熱い季節がやってきますがバテないように体力をコントロールしながら、創作を続けていこうと思っています。

 変なブログ「Deblis circus」をよろしくお願いします。




 先です。
 コメントを追記しておけと言われたんですが書くこと無いですよねぇ。
 サキはもう寝てしまいました。ちょっと疲れが溜まっているのかな。
 まあ先の見たところ、一段落着いて気が抜けちゃったというところかな?仕事のモヤモヤが溜まっているということもあるようですが、人付き合いのいい方では無いのでよくあることです。心配は無いと思います。そのうち動き出すでしょう。
 明日は少しビールを飲ませて愚痴を吐かせてみようと思います。(飲めないくせにビールが好きなんです)どんなのが出てくるか楽しみです。
 ではでは……。
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絵夢の素敵な日常(3)(2012-07-07)

2012.07.09微妙に校正
2012.07.14絵夢の性格に微妙にかかわる若干の修正

 絵夢はレースをあしらった白のワンピースに身を包んでいた。その上にマリンブルーのベストを羽織っている。全体としてシンプルなデザインだが、胸元のペンダントやレースがアクセントになって、細身の彼女に良く似合っていた。黒く長い髪は後ろにまとめ、イヤリングが耳元に揺れている。絵夢はガラス張りの壁面の前で一瞬立ち止まってガラスに映り込む自分をすばやく確認すると、レストランの自動ドアセンサーの感知圏に入っていった。
「いらっしゃいませ」スタッフが控えめに声をかけた。
「ヴィンデミアトリックスですけれども……」(待ってるかな?)連絡も無しに遅れた絵夢は確認を取るような口調で告げた。
「ヴィンデミアトリックス様、お連れ様がお待ちです。こちらへどうぞ」スタッフは絵夢からベストを預かるとクロークに渡し、よく訓練された身のこなしでホールを横切り、一番奥の窓際のテーブルへと案内した。
 天井まで届く大きな窓からは、夜のとばりの中に浮かび上がる宝石をちりばめたタワーのような超高層のビルを幾つも見下ろすことができた。
 その素晴らしい夜景を背景に彼は立ち上がって絵夢を迎えた。「やあ絵夢。少し遅かったね。仕事、忙しいの?」
 白いワンピースの絵夢は少し微笑むとそのまま椅子の前に立ち、スタッフが椅子を合わせるのを待って優雅に腰掛けた。
「メニューはボクがチョイスしておいたよ。文句は無しだ。遅れた罰だよ。でも気に入ると思うよ」彼は絵夢の目を見ながら悪戯っぽく言ってからスタッフに向かって「じゃあ。始めてください」と言った。
 ゆっくりとワインが運ばれてきた。彼がテイスティングを済ませると、それは最良のコンディションで2人のグラスに注がれた。
「じゃぁ」グラスを軽く合わせる時、彼は「君の瞳に……」と歯の浮くような台詞を口にした。多分これは歯の浮くことを計算でやっている。
 絵夢はクイィッとワイングラスを空にすると、今までずっと我慢していた話題を口にした。「ヒッグス粒子が見つかったかもって、発表されたね!!!」
 彼の瞳は意味不明な言語の登場に一瞬宙をさまよったが、すぐに落ち着きを取り戻し口元に曖昧な笑みを浮かべた。
 絵夢はその曖昧な笑みを微笑みと解釈し、長い長い感想と意見と絵夢なりの素粒子論と量子力学を踏まえた解説を始めた。

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絵夢の素敵な日常(1)(2012-05-21)

(注)山西にしては驚異的な速さで書いてUPしています。ですから校正・修正なんでも有り得ます。お許しください。
2012.07.15さっそく微妙に校正

「お嬢様!」「絵夢お嬢様!!」黒磯は玄関を入ると声をかけた。時計は午前6時をさしている。
 返事は無い。「お嬢様!」もう一度声をかけてから「上がらせていただきます」と入り込み、廊下からリビングそしてキッチン・ベランダと覗いてトイレ・浴室まで手馴れた様子で確認していく。
 寝室のドアの前で立ち止まりもう一度「お嬢様!」と声をかけ「開けさせていただきますよ!」とゆっくりとドアを開けた。部屋の中とクローゼットを確認するが誰もいない。
「逃げられたか!!」黒磯は携帯電話を取り出すとボタンを操作した。「山本。駐車場はどうだ?……何!無い。やはりそうか。車を玄関にまわせ。お追いするぞ!だいたい立ち寄られる先はわかっているからな。急げ!」黒磯は寝室を出ると丁寧にドアを閉めもう一度部屋を確認してから玄関を出た。ダブルロックをかける音が部屋に響いた。

 その音を確認し、暫く待ってから絵夢はベランダの壁を離れた。ここは上手い具合に死角になっていて、リビングから覗いただけでは見つからない。そのままそっとリビングの様子を窺う。(大丈夫)ゆっくりとリビングに入って他の部屋も確認する。(大丈夫)前に鍵の音だけさせて隠れられていたことがあった。その時はクローゼットの奥に隠れていたのだが、帰ったと思って出て行って捕まってしまったのだ。今日は隠れる場所も工夫したし、車も友達の所に預かってもらい万全の準備をした。思った以上に上手くいった。
 絵夢はやっと安心してデスクの引き出しから何かを取り出した。日食観察グラスだ。そう、今から金環日食があるのだ。
 今日は父親の関係でどうしても出席しなければならない集まりがあって、その準備の為に黒磯が迎えに来ていたのだが、絵夢はそんなつまらない集まりよりも日食が見たかったのだ。日食の観察の為に2時間ぐらい準備が遅れてもなんてことは無い。絵夢はそう思っていた。
 絵夢はそれを持ってベランダへ出た。雲はかなり出ているが太陽の周りにはかかっていない。一旦下を向いて観察グラスを目に当ててからそのまま顔を上げて太陽の方を向く、太陽は端の方から欠け始めていた。絵夢は暫くじっと眺めていたが、一旦リビングに入ると朝食の用意を始めた。時々ベランダに出ては暫く観察し、また朝食の用意を続ける。それを繰り返しながら過ごしていると、だんだん金環になる時間が近づいてくる。絵夢はベランダの椅子に腰を据えてその瞬間を待った。
 絵夢の住んでいるマンションは南側に開けた丘陵の上にあって、遠くの都市からその向こうに広がる海までを一望に見渡すことができる。しかし絵夢は広がっているいつもの風景に、ふと不思議な雰囲気を感じて立ち上がった。太陽は輝いているのに何か違う。
(夕暮れ?)そうまるで夕暮れが迫ったように……、まるで黄泉の世界に堕ちていくように、世界が沈んでいるのだ。
 何千年も前の古代の人々は皆既日食が起こった時、それは恐怖に慄いただろう。(真っ暗になるんだもの)でも金環の時はそれほど暗くなるわけではない。しかしこの不思議な雰囲気はなんだろう。現代人よりも遙かに自然に関して感性の強かったと思われる古代の人々は、どんな気持ちでこの金環日食を体験したのだろう。暫く古代人の気持ちを想像していた絵夢は、ふとそれどころではないことに気付いて、あわてて観察グラスを目に当てて太陽の方を向いた。
 金環が完成しようとしていた。このマンションは金環が見られる地域のほぼ北限にあるため、月はほんの少しの間だけ絵夢の見ている前で太陽の前に完全に立ち塞がり金環を作り出した。
 息を呑む美しさだった。
 やがて月は太陽の前からゆっくりと退場し始め金環の幕は閉じた。絵夢は一旦太陽から目を離し観察グラスを外した。長時間の観察は禁止されているのだ。
 その時一陣の冷たい風が絵夢の長い髪を揺らせた。半そでの腕を思わず抱え込むほど冷たい風だった。
 絵夢は周りを見回した。月の影の中で気温が下がったのだろうか。科学的には納得できるが、黄泉色の空気の中とても不思議な体験だった。その貴重な体験を充分に堪能してから、絵夢は朝食を食べにリビングに入っていった。
 世界は黄泉から徐々に現世に帰りつつあった。

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シスカ30話って?

絵夢の素敵な日常(1)(2012-05-21)
空気の読めないお嬢様、絵夢が素敵!と感じたことを感じたままに写し取る、とっても自分勝手なショートストーリー第二弾をUPしています。よろしければご覧ください。

 先日、「シスカ」を30話まで出力しました。そしてそこまで読み切ってくださった方からコメントを頂きました。素人が書いたこんなに長い駄文をここまで読んでいただける、なんてそれだけでとても嬉しいことです。

「シスカ」というのは確か樺太(サハリン)に昔あった町の名前です。「敷香」という漢字を当てるようです。「シクカ」と読んだりすることもあるようなんですが、こちらの響きが山西の心に残り、ヒロインの名前になっているのと同時に物語のタイトルになっています。
 この単語を耳にした時、山西の頭の中でそれは女性の名前に繋がり、1人の女性が生まれたのです。すべてはシスカ、彼女をどう生活させてゆくか、生かせてゆくか、それを構成してゆく過程が物語の骨格になっています。
 舞台は領土の問題が色々とあった樺太(サハリン)が設定のきっかけにはなっているとは思いますが、山西の中ではまったく別物で関連はまったくありません。あくまで仮想世界でのお話です。タイトルからその歴史的背景を思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、まったく別物であるとお考えください。あくまで「シスカ」という名前を拝借しただけの関係です。
 彼女を思いついてから山西はコミックとして出力したくてキャラクターシートを作ってみたり、何枚か書き出しを書いてみたりしていたのですが、満足のいくイラストが書けずそのまま断念したような状態になっていたのです。悶々とした状態の中でも彼女の設定はどんどん出来上がってゆき、取り巻くサブキャラも増えてゆきました。
 プロローグにある書き出しはコミックのファーストシーンを文章にしたものです。この数行の文章だけが出来上がった状態で、後は山西の頭の中に置かれたままで長い年月が経過しているのです。
 山西はさらに膨れ上がる設定を頭の中には収めきれなくなってついに文章化を決意しました。このままだと本当に腐敗して無くなってしまうと思ったのです。小説などというものはまったく書いたことの無い素人にどこまでこの物語を書くことが出来るのか不安一杯でしたが、コミック化が出来ない以上仕方ないなと考え、勢いでいけるところまで出力することにしたのです。
 案の定途中で物語は崩壊し進めなくなりました。頭の中にあったことにはやはり矛盾点がたくさんあり、文章にしたとたん崩壊したのです。
 そこで初めてプロットのようなものを作って物語を再構成し息も絶え絶えに30に到達したのです。ここから先はもうプロットもありません。また少しづつ物語を構成し先へと進みたいのですが、このブログを始めた頃と違って他にも書いている短編とかがあってそれぞれ気になっています。
「シスカ」をブログに発表してからこのブログを通じて様々な出会いがありました。その中でも短編を書いて応募者で感想を書きあう会に参加させて頂いたのは大きな収穫でした。短編を書く、つまり短編1つ1つについてそれぞれいくつもの仮想世界を作るっていうのは楽しいものだということを発見できたんです。
 そして今、山西の頭の中には「シスカ」以外に3つの仮想世界があります。「絵夢」の世界「エス」の世界、そして「赤い」世界です。
 山西は創作速度が異様に遅いので、とても一挙に書き上げることが出来ません。1つの短い文章でも何回も読み返して校正しながら完成させてゆくのは自分のやり方なんだとわかってきました。読み返しに何日もかかる場合が多いです。ですからゆっくりとしか完成させられないのです。楽しみにしている他の方のブログ小説を読む時間や、感想を書く時間も取りたいと思っています。
「シスカ」の更新はますます遅くなっていくと思いますがお許しください。でもなんとか完成までもって行きたいとは思っています。
 シスカやショウは最初の山西の分身なのですから。


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*アスタリスク(1)

 ドリフト・ターン、そしてスイッチ・ロール、続けてデブリ・フォール、シフティ・スピンと次々と操作を繰り出しながら星屑をすり抜け加速してゆく。
 大きい物は数メートル、小さいものは砂粒のようなものまで、無限にたくさんの星屑を感じる。その向こうには巨大なガスの惑星、まるで配合割合を微妙に変えたチョコレートクリームを何層にも重ねた巨大なパフェと表現されることがあるが……が広がっている。ただオレの感覚ではそんな風には感じないし、あまりにも巨大なので食欲に繋がることはない。そして気密Gスーツの中は窮屈だし、今は機体のコントロールで忙しい。
 この機体のデブリガードは直径10cmまでの物体の衝突に充分耐えることが出来る。しかし衝突しない方がレースには有利だ。衝突の個数や大きさに応じて定められた減点が課せられるのだ。減点は無い方が有利に決まっている。それに大きいのに当たったらお陀仏だ。ただし回避するためのロスが必要以上に発生するとタイムの方に影響が出る。コンピュータでもコースを予測はするが、大きいもの以外計算が間に合うことはほぼ無い。パイロットの勘がものをいう世界だ。
 コントロールスティックを微妙にかつ大胆に操作してゴールを目指す。あと少し……。集中力を切らさないように前方に意識を集中し、“無心”や“フォースのままに”という状態が本当に存在するならそれを維持しながらついにゴールを切った。モニターパネルは2着でのゴールを表示している。
(ストライクポイントは?)パネルの変化を待つ。(やった!)衝突減点の差でオレがTOPになったことを確認すると慣性航行のままサテライトを呼び出した。
「こちらアンドロメダ。オレがTOPだね。いただき!」
「今、判定中だ。少し待て……よし確定が出た。アンドロメダ、お前がTOPだ」サテライトの審判員が答えた。
「OK!ありがとう」
「おい!ドロメ!またストライクポイントの差か?」ヘッドセットから喚くような声が聞こえる。
「その泣くような声はデバラか?こっちにはちゃんとアンドロメダっていうコールサインがあるんだけど?」デバラは1着でゴールしたはずだ。
「へへっ。何がアンドロメダだ。お前なんかドロメで充分だろうが。それに俺にもアルデバランっていうコールサインがあるんだぜ。ストライクポイントの差でばかりTOPになりやがって、度胸ってもんが無いのか?」
「ストライクポイント差でもなんでもTOPはTOPだ。誰にも文句を言われる筋合いは無い。悔しかったらTOPを取ってから言って欲しいな」
「言ってくれるな。次は上手くやるさ!俺とお前で1・2だからどっちにしても結果は順当だと大方のギャラリーは思ってるんだろうけどな」
「順当なのは1だけだよ」オレは軽く付け加えた。
「口の減らないやつだ。後ろに気をつけろ」デバラは笑いを付け足すと軌道を変更し先に帰路に着いた。他の艇もそれぞれ短い挨拶や祝福の言葉を入れてから順次軌道を変更していった。
「こちらアンドロメダ。帰投する」オレは5秒ほど慣性航行を続けてから遅れて軌道を変更し帰路に着いた。



 昨日の夜オレは飲みすぎたのだろう。意識がまだ朦朧としている。頭もガンガンする。
 昨夜は確か地元産の麦芽とホップで作られたビールの発売イベントで飲んだんだ。女友達と行くことになっていたのにドタキャンされてちょっとふて腐れていたんだけど、飲んでみると味や飲み口の点では合格どころかかなりいけてるので、飲み放題というのをいいことにどんどんビールを追加した……というところまでは憶えている。本当にビールの味がちゃんとしたのに、何か未知の不純物でも含まれていたんだろうか。酔い方が半端でない。幻覚まで見えている。
 頭を上げると目眩がさらに酷くなりそうなので、ベッドに横になったまま首を少し上に曲げ眼球が回る範囲だけを確認すると、ここは確かに自分の部屋だ。憶えていないがちゃんと帰ったらしい。見慣れた壁紙、オレのクローゼット、デスク、その上にあるタブレットは最近買った最新型のものが少し見えている。いつものベッドだし寝具は見慣れた自分の物だ。窓に引かれたいつものカーテン、少し開いた向こうには朝の光があふれている。枕もとの時計は10時を少し過ぎている。
 いつもの自分の部屋だ。ただ1つの点を除いては。
 一周したオレの眼球は元の位置に戻って固定された。
 そこには女の子が眠っている。ほんのすぐ傍20センチ程のところだ。オレの顔のすぐ前で心地よさそうに寝息を立てている。整った顔立ちの長い金色の髪の女の子だ。オレの布団を軽く体に掛けて眠っている。やっぱりこれは幻覚だ。地元産のビールはやはり半端でない。

 農耕をつかさどる年老いた神の名前を与えられた巨大なガス惑星。その惑星は赤道面に美しい輪を持ち、さらに衛星タトゥーンを従えている。そしてその衛星の表面には人類が設けたものの中でも最大級の殖民都市が存在する。
 銀河市あるいはギャラクシアス・シティと名付けられたその都市は、自給自足を基本理念に建設されている。直径千メートルほどの管理用や居住用や生産用等のドームが多数設けられ、それぞれが泡のように重なり合い、あるいはチューブで結ばれて一つの都市を形成している。さらにいくつものドームが建設中で、それらを含め人口は当面百万人が計画されている。
 オレはその都市の32番ドームにあるアパルトマンの一室に居を構えている。この2LDK50㎡ほどの慎ましやかなアジトで目覚めたオレの、昨夜イベントの無料ビールをたらふく飲んで少し羽目を外しただけの慎ましやかな生活に、あるいは不純物入りのタトゥーン産ビールを飲みすぎた脳に、今異変が起こっている。

 オレはその女の子をつぶさに観察した。
 幻覚にしては寝息を立てる肩の動きが妙にリアルだし、彼女のシャンプーだかコロンだか汗だかなんだ知らないが、の微かな匂いまでしてくる。ほっそりとした体型だが肩や腕などバランスよく筋肉が付いていて何かスポーツでもやっているんだろうか?ゆったりと着たマリンブルーのカットソーの大きく開いた首元からキャミソールの紐が見えている。その向こうはオレの布団をかぶっていて、その先には長い足が見えている。これはひょっとして現実なんだろうか。そう思い始めた時、彼女は微かに唸って顔を上げパチッと目を開けた。
 やっぱり幻覚だ。
 だって瞳の色が赤だなんてありえない。彼女が少し顔を上げたのでカーテンの隙間から入って来る外の光が彼女の目に入っている。輝くルビーのような赤だ。RPGじゃあるまいし。オレはそんなにハマる方じゃ無いんだけど……。すぐに彼女は顔を下ろしたので光が入らなくなって、夕焼けの光の中に置かれた赤ワインの色に変化した。 
 オレは姿勢を保ったまま一旦目を閉じて自我を確認するために深呼吸をしてから再びゆっくりと目を開けた。
 やっぱりその瞳が目の前にある。今は赤ワインの色だ。
 どこを見ているのかいまいち視点が定まっていないが、人懐っこいけど少し引いたような笑顔を向けてくる。そしてそのまま布団をはね上げて起き上ると向こうを向いて、ベッドのパネルにひっかけてあったヘッドホーンを頭に付けた。耳あての部分が細く前方に伸びた“流線形”のデザインの前世紀のSFにでも出てきそうな代物だ。
 彼女の金色の髪は腰まで届いていて美しい。しかし寝癖が付いていてボサボサだし、ファッションはそのまま寝ていたもんだからしわが寄っていて見苦しいし、その上ショートパンツからスラリと伸びた長い足は精神衛生上よろしくない。ドキドキする。何とも摩訶不思議な姿に唖然としていると、くるりと振り向いて赤い瞳をオレの方に向け「お腹空いた」と言った。
 ややハスキーな刺激的な声だった。

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*アスタリスク(2)

 オフィスはざわめきに包まれていた。この衛星タトゥーンを従えている巨大な母惑星のとてつもなく厚いガス層の表面を掠めようとしていたタンカーが一隻、制御不能になって行方不明になったのだ。ガスの採取というのは極めて危険な作業であるため、会社もある程度の失敗はあらかじめ複雑な予測計算をして織り込み済みだ。もちろん無人だし、タンカーにかけるコストもこうしたロスを見込んだものだ。『今回発生したことはあくまで事故では無い、想定の中で発生した一種の損失にすぎない』いつものようにそう会社は発表するはずだ。
 でもオレはこれで今日帰宅できなくなった。たぶんこの事故(事故じゃないか)の処理でここに張り付いていなければならなくなるだろう。次回からのロス率を下げるためにデータの収集と解析はとても重要な作業になる。仕事だからしょうがないが、今日のオレには別に事情があった。
「こまったな」つい言葉が口をついた。
「デートの約束でもあったのか?」部長がそれを聞き付けて後ろから声を掛けてきた。
「いいえ。べつにたいしたことじゃないです」
 部屋に赤い瞳の眠り姫を置いてきたからそれが気になる……なんて言えるわけない。オレは何でもない、という風に手を横に振りながら否定した。
 今朝オレは彼女に朝食を食べさせた。それもたっぷりとだ。トーストを3枚にミートやサラダを山盛り食べやがった。そして午後3時からの勤務に間に合うように部屋を出てきたのだが、うかつにも部屋の予備の鍵を渡してきてしまった。出ていく時これで部屋に鍵を掛けること。そして鍵をドアポケットに入れておくこと。と言い置いて出てきたのだが、気が気でない。嫌に愛想よく鍵を受け取っていたけど、あいつ『お腹空いた』以外喋って無い。部屋に帰ったら中は家具も何もかも空っぽだったなんてことを想像して、オレの心は不安だらけになった。
 その後オレはそんな不安と付き合っている暇が無いほど忙しく立ち働いた。モニターをにらみキーボードを叩いて片っぱしからデータを収集し解析していく作業は、どうもオレの性にあっているらしい。夜が明けるころになって(といってもこの都市は人口照明なので、夜パターンから昼パターンへの変化の時間帯ということだ)ようやく損失に値するデータの解析が終了した。
 これで次回作業からのロス率を何ポイントか下げることができると、うちのメインコンピュータがはじき出した。ようやく手の空いたオレは給湯室で2人分のコーヒーを入れると、1つをまだモニターを覗き込んでいた部長に手渡した。
「オォ。サンキュー。やれやれ、これで週末のアスタリスクをゆっくり家で見ることができるな」部長が大きく伸びをしながら言った。
「部長はアスタリスクをやられるんですか?」いままでそんな話は聞いたことが無かったので驚いて尋ねると「ここじゃあまりレジャーというものが無いからな。ちょっとした憂さ晴らしだ。お前はやらんのか?」少し疲れた表情で椅子の背にもたれながら部長が振り向いた。
 アスタリスクというのは正式な名称をアスタリスクレースという賭けレースで、小型の高速艇で宇宙空間を航行し速さを競うものだ。このレースの特徴は途中で惑星の輪の中を斜めに通過することだ。輪の中には無数の大小の星屑があってこれを避けながら航行しなければならない。もちろん艇にはデブリガードという防御装置があって小さいものならあたってもどうということはない。ただストライクポイント(衝突減点)として衝突の個数や大きさに応じて定められた減点が課せれ、ゴールタイムに一定の比率で加えられる。当たらないように避けて航行すればタイムロスが大きくなる。当たれば減点を食らう上に、大きい物に当たるとお陀仏となる。艇の性能とパイロットの腕が物を言うスリル満点の掛けレースだ。
「基本的なことは知ってますけど、詳しくはないです。やったことも無いです」オレは答えを返した。
「そうか。でもけっこう面白いんだぞ。単純な賭けレースのようだが結構複雑だ。ストライクポイントの減点とタイムの駆け引きはなかなか熱くなる。搭載カメラの映像もスリルあるしな」
「少しくらいやってみてもいいかなとは思ってるんですけど。部長はどこに賭けることが多いんですか?」
「そうだな。チームだったらブースカだな」チームというのはアスタリスクレースの厳しい規格に合わせて、競争艇を製造しチューニングするメーカーだ。「メジャークラスのパイロットならアルデバランがいいと思うんだが、チームとの組み合わせが問題だな。艇との相性ってのは結構あるからな。アンドロメダもいいんだが、勝負のかけかたがもう1つ好きになれんなぁ。ま、クールといえばクールだし、人気も実力もトップかもしれんが。好みの問題だな」パイロットはその名の通り艇を操縦する人間だ。星や星座の名前を付けたコールサインで呼ばれることが多い。彼らのテクニックは定評があるし、輪の中を駆け回る度胸は相当なものだ。特にメジャークラスにランクされるパイロットは特別だ。
「アルデバランとアンドロメダですか?憶えておきます。今度買ってみようかな」オレがそう言うとと「2人とも今週は出てないぞ。先週出てたからな。俺は今週は見るだけにするか、それともストロボナイツのモノケロスでも買ってみるかな。やってみる気になったら休み時間にでも声をかけろ。オレの端末で買ってやるよ」そういいながらカップを空にすると部長は「コーヒーもう一杯もらおう。お前にも入れてきてやるよ」と立ちあがった。

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文体診断(ロゴーン)って?

文体診断(ロゴーン)って?
他のブログでやっておられるのを見かけて、面白そうだったので試してみました。どういう仕組みになっているんでしょうね?
まず、連載を始めた「*アスタリスク(1)」からやってみましょう。

文体診断結果
一致指数ベスト3
1 浅田次郎 76.9
2 紀田順一郎 72.6
3 松本幸四郎 72.3

一致指数ワースト3
1 新美南吉 45.1
2 吉川英治 45.6
3 阿川弘之 47.5

文章評価
1 文章の読みやすさ D 一文がやや長い
2 文章の硬さ B 適切
3 文章の表現力 A とても表現力豊か
4 文章の個性 A とても個性的
浅田次郎先生があなたの味方です。がんばってください。

おお!浅田次郎さんですか。すみません読んだことないです。一文がやや長いですか。読みにくいということですね。「とても表現豊か」と言われて嬉しいんですけど、「とても個性的」ってなんか微妙な表現ですね。
じゃ、次は「*アスタリスク(2)」を……

文体診断結果
一致指数ベスト3
1 浅田次郎 76.2
2 松本幸四郎 73.1
3 井上ひさし 70.9

一致指数ワースト3
1 吉川英治 43.1
2 阿川弘之 43.8
3 岡倉天心 44.9

文章評価
1 文章の読みやすさ E 一文が長い
2 文章の硬さ C 文章がやや柔かい
3 文章の表現力 A とても表現力豊か
4 文章の個性 A とても個性的

なるほど吉川英治さんとは合わないのかな。で、やっぱり「一文が長い」んですね。
次は「シスカ プロローグ」を入れてみましょう。

文体診断結果
一致指数ベスト3
1 浅田次郎 79.9
2 松たか子 74.5
3 井上ひさし 74

一致指数ワースト3
1 岡倉天心 38.8
2 吉田茂 45.9
3 橋本龍太郎 46.2

文章評価
1 文章の読みやすさ E 一文が長い
2 文章の硬さ C 文章がやや柔かい
3 文章の表現力 A とても表現力豊か
4 文章の個性 A とても個性的

なるほど、じゃもう1つ「254(前編)」を……

文体診断結果
一致指数ベスト3
1 浅田次郎 80.9
2 松たか子 75.3
3 小林多喜二 74.8

一致指数ワースト3
1 岡倉天心 33.8
2 吉田茂 42.7
3 岩波茂雄 46.5

文章評価
1 文章の読みやすさ E 一文が長い
2 文章の硬さ B 文章がやや硬い
3 文章の表現力 A とても表現力豊か
4 文章の個性 A とても個性的

やっぱり浅田次郎さんですか。あれ、井上ひさしさんの名前も見えますね。ワーストでは岡倉天心さんですか。すみません読んだことないです。いずれにしろ「一文が長い」ということはわかりました。そうですね、心当たりはあります。状況を説明しようと文章を付け足してゆく傾向があるのは自覚しています。すこし気をつけたほうがいいのかな。全般的に「とても表現力豊か」で「とても個性的」なんだそうですがこんな分野をどうやって判定してるんでしょう?解説を読んでもさっぱりです。すごく不思議です。それに個性的ってどう取ればいいんでしょうね?まあ、面白そうなのでやってみましたということで。

 そして、「アスタリスク」ですが、実はもう少し先まで(プロローグ部分の終わりまでですが)すでに完成して読み込みと校正を済ませています。これで少しの間書くことを休めるかな。皆さんのブログにお邪魔して、小説を読んだりコメントを入れたりできたらいいな思っています。
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*アスタリスク(3)

 オレは並んで乗り込もうとしている通勤客の動きに逆らうようにトラムを降りた。徹夜の仕事になったのでもうクタクタだ。ゆっくりと改札を通るとオレの体内のチップに反応して緑のLEDが点灯し運賃が表示された。今日・明日と特別休暇をもらったがとりあえず腹が減ったし、やたらと眠い。だがこのまま部屋に帰っても冷蔵庫は空だし、ひと眠りしてから食料の買い出しなんかに出かけるスケジュールを組んだら、エネルギー不足で眠ったまま遭難しそうだ。止むを得ず先に買い出しをすることにして広場の向こうにあるコンビニエンスストアのドアを押した。
 銀河市では農産物の工場栽培を進めており、ほぼ自給できる状態になっている。それを使ったライス系やパスタ系の出来合いのパックを買いこもうとして、ふと赤い瞳の眠り姫のことを思い出した。
 ずっと気になっていたのだが、なんとなく泥棒には見えないし、ましてや本当に家中の家具を強奪する一味のメンバーとも思えない。そういうふうに自分に思い込ませて、そしてまあ金に関する重要な情報はオレのチップの中だし家具位かまうものか、と仕事に集中しているうちに忘れてしまっていた。
 もう彼女は退散しただろう。そう思いながらも少しの期待もあって買い込む量を1.5倍にした。オレの購入用ポイントにはまだ余裕がある。植物性タンパクや人工タンパクを使ったミートの類、そして発泡酒(まだ本物のビールは発売されていない)とワイン(これは銀河市産のブドウを使ったものだ)もどうせ消費するものだから多めにカゴに放り込んだ。レジを済ませ小さく折りたたんで持ち歩いていたマイバッグに買い込んだ物を入れると店を出た。アパルトマンまであと少しだ。オレの周りには朝の光があふれていた。もちろん人工照明だが……。

 オレはエレベーターを13階で降りた。オープンになっている廊下を自分の部屋へと歩いて行く。
 ドアのノブに手を掛けるとやはり閉まっている。自分の鍵でドアを開けると、自分の部屋なのになんだか遠慮しながらそっと入り込んだ。
 中の様子を窺うが静かなものだ。急いで上がり込んでリビングやキッチンの家具や貴重品を確認したが、無くなっている様子はない。
 オレは大丈夫と判断し、玄関に戻りドアポケットを開けた。(?)鍵が入っていない。持っていかれたのか?まあいいか、と考えながら部屋着に着替えようと寝室に入った。
 ここにも家具はちゃんとある。
 ホッとした時、ベッドの上の毛布の膨らみに気が付いた。
 変な不安と少しの期待に胸をドキドキさせながらベッドに近づいて毛布をそっとめくる。すると金色の長い髪が目に飛び込んできた。壁の方を向いて丸くなって、やっぱり眠っている。丸めている背中から肩にかけてが、聞こえてくる小さな寝息に合わせてゆっくりと動いている。
 よくまあこれだけ寝れるもんだ。少し呆れながらよく見るとパジャマを着ている。ピンク色の着心地の良さそうなものだ。昨日の朝は何も持っていなかったはずだ。長い髪も丁寧に手入れされているみたいで、昨日のようにボサボサではなくサラリとまとまって流れている。微かにシャンプーの香りもする。ということは一旦買い物に出かけて、パジャマを買って、帰ってきて、風呂に入ったかシャワーでも浴びて、着替えて、また寝たということになる。(何を考えてるんだ?こいつは)オレは眠いことなんかすっかり忘れて眠り姫を起こす方法を考えていた。
「眠り姫を起こす方法は王子様のキスしかないよなぁ」少し大きめの声で言ってみた。暫くすると彼女は寝がえりをうち、ゆっくりと顔をこちらに向けた。起きてるんじゃないのか?
 寝ている顔は結構かわいい……と思う。やがてまた規則正しく寝息が聞こえ始め、小さな胸がゆっくりと上下し始めた。
 オレは覚悟を決め、ゆっくりと顔を近づけていった。昨日の朝出会った彼女はどう見ても普通の女の子では無い。急に口が大きく裂けて飛び出した牙に引き裂かれ喰われてしまう自分の姿を想像しながら、おっかなびっくりそしてそっと唇を合わせた。
 柔らかい唇を感じるが特に何も起こらなかった。暫くそうして顔を見つめていると彼女の目がそっと開いた。焦点の定まらない赤い瞳がずっとこちらを向いている。オレはそっと唇を離した。彼女の唇がゆっくりと動き始める。
「お腹空いた」

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*アスタリスク(4)

 オレは大きくため息をつくともう一度唇を合わせた。彼女はぺろっとオレの舌を絡め取ると唇を離し、また「お腹すいた」と言った。放っておいたらオレが食われてしまいそうだったので、オレは仕方なくキッチンに向かった。
 それからが大変だった、オレは出来合いのライス系のパックとパスタ系のパックをレンジに入れ加熱するとテーブルに並べ「お~い」と彼女を呼んだ。彼女は昨日のようにヘッドホーンを付けてゆっくりとキッチンに入ってきた。
「食べるか?どっちがいい?」オレが尋ねるとライス系の方の前に座り蓋を開け、オレがスプーンを渡すとがっつくように食べ始めた。 オレは残されたパスタ系を食べ始めたがすぐに中断することになった。
 彼女が空の容器とスプーンを持って黙って座っているので、次のライス系を用意しなければならなくなったのだ。彼女はライス系のパック2つ目と、驚くことにパスタ系をもう1つペロリとたいらげると、今度は「喉渇いた」と言った。オレはもうやけくそで「発泡酒でいいか?」と訊いた。
 ニッコリとする彼女の前に缶を置くと、クウ~ッとそれを空けこっちを向いてまた「喉渇いた」と言った。これを繰り返し合計3本の缶を空にするとようやく落ち着いたのか、オレがパスタ系を食い終わり発泡酒を1缶飲み終わるまで、おとなしく座っていた。
「お前、名前は?」ようやく人心地が付いたオレが尋ねると、彼女は「名前?好きに呼んでいいよ。お前は?」と逆に訊いてきた。「オレはミラク。オレが名乗ったんだからお前もちゃんと名乗れよ。好きになんて呼べない」そう言ってやると彼女は少し考えてから「オレはアルマク」と言った。
 なんだ?こいつ。と思ったが「アルマク、お腹はいっぱいになったのか?」と名前を付けて訊いてやると「オレ?うん。いっぱいになったよ。ミラク」ニッコリとなんだかもう言葉まで馴れ馴れしい。
 ここらあたりできちんと線引きをしておかないと取って喰われてしまいそうな気がするので、オレは勢いを付けて立ち上がって「オレは今日は徹夜明けでものすごく疲れてる。これからシャワーを浴びて寝るから、アルマク、お前が自分の棲処に帰るなら前にも言ったようにドアに鍵を掛けて鍵をドアポケットに入れて置いてくれ。じゃあな」と一気にまくし立てて浴室に向かった。アルマクは慌てて立ち上がってすぐ後ろを付いてくる。「なんだよ」オレが振り返って訊くと「一緒にオレもシャワーを浴びる」またニッコリとしてそう言うので、オレはまた大きく大きく溜息をついてアルマクの両肩に手を乗せた。(あれ?)アルマクの肩はずいぶん下にある。アルマクってずいぶん小さいんだな、と頭の隅で思いながら言ったので「たのむからオレを1人にしておいてくれ。シャワーは1人で浴びたい」オレの台詞はもう1つ強い調子にはならなかった。アルマクは少しの間そのままじっとしていたが残念そうにキッチンに戻って行った。
 ちゃんと戻っていったことを確認してからオレはドアを閉め服を脱ぎ始めた。何の気なしに洗面所の棚に目が行くと(あれ?)オレの紺の歯ブラシの横に水色の歯ブラシが立っている。それにタオル掛けには二つタオルが並んでかけてある。これも買ってきたのか?そう思いながら浴室に入るとシャンプーとコンディショナーそしてボディーソープが並んでいるのを見つけた。オレのオールインワンのがみすぼらしく見えるくらい高そうな代物だ。またまた溜息をついてからオレはシャワーを浴び始めた。
 シャワーを終え体をふき(ここでまた見慣れないふわふわのバスタオルを発見した)頭を念入りに乾かすとそっと廊下へ出た。廊下からキッチンを覗くと、アルマクはピンクのパジャマのままちょこんとダイニングテーブルの椅子に腰かけてモニターを観ていた。(なんでヘッドホーン付けてるんだ?)オレはそのまま気付かれないように寝室へ入るとそっとドアを閉めベッドに倒れ込んだ。壁の方を向いて丸くなる。眠い。泥のような眠りがオレを包み込もうとした時、(あれ?)背中に妙な感触を憶えゆっくりと向きを変えると、そこには赤い瞳があった。

「おい。ミラク何をボーッとしてるんだ?」部長に声をかけられオレは慌てて振り向いた。
「どうしたんだ。徹夜明けにはちゃんと2日間の休暇をやっただろ。若いんだから疲れが溜まったなんてことは無いんじゃないのか。眼の下にクマができているぞ」
「ありがとうございます。ちゃんと休んだんですけど……」オレは目の下をこすりながら答えた。
「女でも出来たのか?」
 あまりに的を得た指摘に「……」と固まっていると部長は唇をニヤリと歪めて「おろ……、図星だったか?悪い悪い。だがちゃんと仕事はしてくれよ。ボーッとしてミスでもされちゃかなわないからな」と言った。そしてオレの肩をポンとたたくと自分のデスクへ戻って行った。
 赤い瞳の小悪魔は急速に浸潤する強力なキャンサーのように、オレの生息域を犯し始めていた。

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