Debris circus

Debris circus

頭の中に散らばっていた破片(debris)を改めて文章に書き起こし、オリジナルブログ小説としてサーカスの舞台に上げていきます。読みにくいものもありますが、お暇な時にパラパラとめくる感じででも読んでいただけたら嬉しいです……

 

テンプレートとお礼!

 今日一日テンプレートの変更にかかりきりになっていました。
 今回もSLUGさんのものを使わせていただきました。すっきりしてるんですけど中は相当複雑です。「カスタマイズは自力で。」ということですので調べながらゴソゴソと…
ヘッダに画像がおけるんですが適当な写真や絵がありません。仕方ないので真っ黒にしておきました。何か適当なものがあったらUPすることにします。
 あとカテゴリー3にTIPSを入れたり、Informationを付け足したり、ついでにFONTサイズも変更してみました。若干表示の縦幅を調整した部分もあります。いかがでしょう?
 しかし『第2回短編小説書いてみよう会』に参加して、それどころじゃないのに何やってるんでしょうね?でも山西はまず器から凝ってしまったのでした。あーぁ山西、相変わらずいらないところに力を入れるんだなー、これが。

 で、話は変わりますがこのブログができたころからお付き合いさせていただいている、高橋月子さんから少し前にイラストをいただいてました。「シスカ」のイメージを書いていただいてます。大事に置いてあったんですが、ここにUPして御礼に代えたいと思います。

(↓高橋月子さん作:シスカのイメージ)
シスカ・イメージ高橋月子さん作
 さらにこのブログの初めてのコメンテーター、結貴さんからもイラストとバナーをいただきました。こちらも、ここにUPして御礼に代えたいと思います。
 お二方とも、大変ありがとうございます。とても嬉しいです。
 結貴さんのイラストの彼女、とくに山西の物語のキャラクターのイメージで書かれているわけではないようです。そこで彼女を登場人物にして短い物語を書いてみようと思います。でも今『第2回短編小説書いてみよう会』でいっぱいいっぱいですので何時になるか分かりません。まあそのうちということで……

(↓結貴さん作:応援少女)

結貴さん作.jpg

 いやーイラストをいただけるなんて、思ってませんでしたので本当に舞い上がってます。
 バナーのほうはこれから応援ボタンにするべくがんばります。
 『第2回短編小説書いてみよう会』少しずつ書き始めています。ホラー?にはちょっと疑問符が付きますが、まあいいかな?という感じです。途中から話が膨らんで少し長くなりそうです。15000文字の制限がありましたね!引っかからないよう上手く収めていきたいと思います。
 ああ、それから600HITですね。お越しいただいた皆様、ありがとうございます。こっそりお礼申し上げます。
 

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---26---

 闇の中、坂の最上部の路面から白いLEDの灯りが左右に揺れながら上昇してくる。
 上昇を止めると今度は速度を上げてこっちへ近づいてくる。
 そしていっぱいに速度を上げた状態で格納庫に入ってくると、今度は後輪をロックさせて激しく滑らせながらキタハラのすぐ前に横付けになった。
 足を着くとシスカは自転車にまたがったままキタハラを見てニヤッと笑った。激しく吐く息が白い蒸気になって流れて行く。髪が帽子からはみ出している。
 ショウがシスカに収まってから髪を曝すことに躊躇しなくなった。
 背中に大きなリュックを背負っているのは長期出張の時のいつもの荷物だ。
「もっと早い方が良かったか?」息を切らしながらシスカが訊いてきた。
「いや。まだだいぶ時間があるぞ。ずいぶん張り切ったもんだな。まあいいさ。とりあえずブリーフィングルームに来てくれ」キタハラはシスカを誘った。
 シスカが先にブリーフィングルームに入ると「こんばんは」ヨウコとサエが立っていた。シスカは驚いて立ち止まると「どうした?2人でお見送りか?」と2人に尋ねた。
 ヨウコが「私はマザー2まで同乗させてもらうの」と言った。
「説明しよう」運行部長が話に割り込んできた。「アキヤマさんは看護師兼ベクル語の通訳としてマザー2に採用された。君らのヘリコプターに同乗してマザー2に赴任してもらう事になった」
「へえ。そうなのか?」シスカは驚きの声を上げた。
「ということだから。よろしくお願いします」ヨウコはシスカに向かって軽く頭を下げた。
「そりゃよかった。さすがだな。改めてこちらもよろしく」とシスカは同じようにあたまを下げてからサエの方を見やった。「サエは何で採用されたんだ?」
「もう。意地悪!私は本当に見送り!ちょっと今回は大変そうだからね」サエは唇を尖らせた。
「じゃあ俺達はブリーフィングを始めるからそこで待っていてくれ」キタハラは隅のソファーを指差してから、運行部長とシスカと一緒にブリーフィングを始めた。
 例のごとく3分でブリーフィングを済ませると、ヨウコと見送りのサエを加えて4人でAW289に向かった。すでに機体はヘリポートに引き出されていたので、シスカは機体のチェックを始めた。
 くるくると動き回って機体をチェックしていくシスカの動きは、まるでプログラミングされているかのように淀みなくスムーズだ。キタハラはその後を追いかけるように確認して行く。
 シスカを信用していない訳ではない。機長としてのダブルチェックをルーチンで行っているのだ。終わると操縦席に2人で並んですわり、例のごとくシスカがチェックリストを読み上げ、キタハラがチェックを入れていく。
 手際よく進んでゆく作業を見つめながらヨウコは驚いた様子だった。
 サエと何か話し込んでいたがチェックリストが終了すると「ヨウコ、そんな所に立ってないで乗って。出発する」シスカが声をかけた。
「それじゃ行ってくるわね」ヨウコはサエに挨拶してシスカの後ろのシートに乗り込んだ。
「うん。じゃ気をつけて」サエはヨウコに声をかけてから操縦席に近づき、シスカとキタハラにも「気をつけて!」と親指を上に突き出した。
「ありがとう。じゃ行ってくる」シスカとキタハラも親指を上に突き出して答えた。ローターのスピードがどんどん速くなって声も聞こえなくなった。
 サエは機体から安全な距離を取って整備士達と一緒に手を振った。エンジン音はさらに大きくなり機体は上昇を始め、サエの体はどんどん小さくなっていった。
 空はまだ暗いままだったが東側の地平線はほんのりと紫に染まり始めていた。

 キタハラはコ・パイロット席のシスカをそっと見た。シスカはGPSによる位置確認と前方監視に忙しい様子だった。キタハラは、その一端の顔に安心感を感じると同時に一種の喪失感を憶えていた。そしてシスカが出勤する前、ブリーフィングルームでサエと交わした会話を思い出していた。
「シスカはオルガの街に入れるのかな?」横に並んできたサエがぼそりと訊いてきた。
「さあな、今の計画だとそういう機会はないんだが、今回の仕事は何が起こるかわからんからな」
「行きたいんだろうね」
「だろうがシスカのことだ。仕事を優先するだろう」
 ヨウコは少し離れて立っているがそれとなく聞いている様子だ。だが遠慮しているのか会話には入ってこない。
「私はこの件には触れないようにしている」
「俺もそうだ。観光や調査でいけるような状態ではないからな。シスカも分かってるんだろう。そこに触れることはなかった。機会や出会いがあれば何か分かることもあるかもしれん。そこに期待するぐらいしかないな。シスカには悪いが、こちらから積極的には動けん」
「分かってる。一番安心できる人がそばについてるから、その点では心配していないけど……」
「ナオミのようなわけにはいかんがな……」
 ナオミの顔を思い出しながら、明け始めた空からシスカに目を向ける。
 そっと目を向けたつもりだったがシスカと目が合った。
(どうした?)シスカが目で訊いてくる。
(いや、なんでもない)キタハラも目だけで返事をして前方に目を戻した。
 AW289は巡航速度で一直線にマザー2を目指し飛行していた。


(2014/08/09 更新)
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シスカ26話をUPしました。

シスカ26話をUPしました。

こんばんは、"ネギ坊主の先"です。今日はサキの機嫌が悪いので代筆です。
今回は少し短めです。シスカ達は出発しました。
でも『第2回短編小説書いてみよう会』の参加作品はどうなってるんでしょうね?
シスカをUPしてる場合じゃないだろ?
あーぁサキ、やっぱり今やらなくてもいいことに力を入れるんだなー、ほんと。
「余計なお世話だ!」と言っています。

まぁでも少しシスカが進みました。
いよいよベクレラ連邦オルガノ州オルガ市での展開が始まります。
ここらあたりはまだ先日完成させたプロットが有効みたいです。
ウンウン唸って書いてましたからねぇ。○やら→やらがいっぱいでした。
上手くセッティングできたらいいんですけど…。
あっ。聞こえたみたいです。睨んでます。
つい10分ほど前、シスカを書き足している間に『第2回…』参加作品の煮詰まっていた展開が新しく広がったみたいなことを言ってました。次はこれを少し書き進めていくのかな?
「メモ。メモ!プロットを作っておかないと!!すぐ書き留めないと10秒で忘れてしまう」
なんかわめいています。
あっ!今イラストでいただいた”応援少女”を主人公にした物語のアイデアも湧いてきているようです。
この様子だと先に”応援少女”のプロット(メモ?)を作っていくみたいです。
それから『第2回…』参加作品にかかってくつもりにしているのかな?
そんなんでまにあうのか?
「でも今プロットやっておかないと二度とアイデアが出てこないかも!!!」
またわめいています。

他にやらなきゃならないことが溜まっているのに、サキは小説に取りかかるのでした……
どうすんだよ。

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シスカ26+話をUPしました。

えらく変則になりました。すみません26話の切るところを間違えました。次の27話の頭にくっつけても良かったんですが話がややこしいので26+としてUPすることにしました。細切れになって申し訳ありませんがお許しください。暫く経過した後統合します。
おお!『第二回…』の作品が完成したのか!と思われた方も申し訳ありません。そんな人いるのかな?と思いますがとりあえず謝っとこう。
『第二回…』はゆっくりとですが着実に進んでいます。
しかし"ネギの先"も書いていたとおり、プロットの方が小々煮詰まっておりましたので遅れ気味です。プロットの方は煮詰まっていたものに牛乳を足して何とか味付けをやり直しました。焦げ付かないようにこのまま上手くかき混ぜながら加熱できれば何とか完成するかな?トラブルの無いことを祈ってます。イライラやモヤモヤも何とか解消です。
頂いたイラストのキャラを使った物語は簡単なメモを作った段階です。
サキは今必要でないことに力を入れるのが好きですが、それにも限度があります。『第二回…』の参加作品に全力で取りかかっておりますのでお待ちください。
誰か待っててくれますよね?
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テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
 

B787と700HIT

 今日、ボーイング787を見ました。仕事中とぼとぼと歩いていて、聞きなれないジェット音にふと上空を見上げると、ブーメランのような翼と、787の文字を大きく書き込んだ機体が上昇していきました。「アッ!もう就航していたんだ」得した気分で事務所に帰りましたが、この気分を伝えられる人が居ません。
「あの!B787がね……」と言ってみても帰ってくるのは「なに?それ」とか「また飛行機見てたのか?」とか、せいぜい「あぁ、新しいやつだね」くらいです。
 初来航の時も1人屋上から見ていて怒られました。すみません。だいたい時間が分かっていたので、ちょっと抜け出しただけなんですけど…でもやっぱり怒られて当然ですよね。すみません、反省!!!
 あのセクシィな顔や弓なりの翼の話やエンジンのヒダヒダの話ができる人は居ないです。
 で、ここで書いてしまいました。ごめんなさい。
 乗り心地もいいみたいで、機内の気圧も高めに保ってくれるようですね。耳が弱い山西にとってこれは朗報です。いつも飴かガムが必要なんですがどうでしょう?
 機内空間も広いし、窓も大きくなっているみたい(1.3倍位?)でエンジンや翼を見張るのに好都合です。(無駄無駄!)地球や雲が良く見えるのは大歓迎です。透過光量を5段階に電動で調整できるウィンドゥシェードも注目しています。
 ドリームライナーという響きもいいですね。はやく乗る機会があればいいなと思っています。
 あとウォシュレットも試してみたいです~。
 ああ~スッとしました。ありがとうございました。
 
 それから、787にあやかったのか700HITになっていますね。
 先日、高橋さんからイラストを頂いています。記念と言っては失礼かもしれませんが、お礼に変えてここにUPさせていただきます。"背中合わせの二人" シスカとショウのイメージです。(クリックすると大きくなります)
背中合わせの二人(シスカとショウ)

こういうシチュエーションは思いついていなかったので新鮮です。作ったものとしてこういう発想が無かったのはちょっと盲点でした。反省!ありがとうございました。
 覗いていただいている方、ありがとうございます。『第二回…』参加作品、間もなくUPの予定にしています。もう少しお待ちください。
 では、また…
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V645 Centauri (プロキシマ) 1.朔

 僕はラウンジの中央に置かれた大きな円形のソファーにゆったりと腰を掛けてタブレットに目を落としていた。ジョーンズ博士の論文は非常に興味深かったが、如何せん手法が強引すぎる。強引な手法で得た結論は時として間違った結論を導き出す。そう思いながらも内容に夢中になって次々とページを繰っていく。
 そんな時、ふと視界の隅に気配を感じた僕は、タブレットから目を上げて思考が飛ぶほど驚いた。なんと空中に天使が居たのだ。天使にしては大きいがそんなことはどうでもいい。細身の体に亜麻色の髪を翻らせ、今宙返りを始めたところだった。そのまま2分の1の捻りを加えながら宙返りを終えると、僕の膝の上にすとんと降りてきた。タブレットは天使のお尻の下敷きになった。僕は天使を抱きかかえるような形で、天使の柔らかい体を感じながら、そのままの体勢を保っていた。
「ご……ごめんなさい!」天使はあわてて立ち上がると僕の方を向いて頭を下げた。肩まで伸ばした亜麻色の髪は顔の横に下がり。間から見える耳が真っ赤になっている。(途中からしか見てないから”多分”なんだけど、天使は廊下から勢いを付けて"1回転2分の1捻り"をして僕が座っていたソファーにお尻からストンと着地するつもりだったんだ。思いがけずそこに僕が座っていた。それだけのことだ。)
「いや。僕は別にかまわないよ」僕はそう言って立ち上がると、少し驚いて天使を見た。僕の背は天使の肩を少し超える位しか無かったのだ。「それより怪我はなかった?」その可愛い作りの顔に付いた琥珀色の瞳を僕が見上げるように見つめると、天使はまたパアッとバラ色になり、どうしていいかわからなくなったように俯いてしまった。そして「本当にごめんなさい」と少し早口で言うとそのままラウンジを飛び出て行った(強く蹴ったので本当に飛んで出るようになった)。

 そういうふうに僕は天使と出会った。
 僕のタブレットはそのままお釈迦になった。

 僕はとある大学で考古学の講師をしている。ここ1年ほど発掘調査と大学での講義で忙しく過ごしていたので、今はここで長期の休暇を取っている。なかなか来れる所では無いのだが、ずいぶん前から計画を立て予約を入れて、たまたまなのか運が良かったのか来ることができたのだ。今日はちょっと調べ物をしたくて、ここにあるライブラリーに来ていた。考古学のコーナーのセンターに置いてあるテーブル席に腰を掛け、棚から取り出した書籍を広げている。ほとんどがデジタルデータだが、一部アナログ書籍のコーナーも設けられている。
 アナログの感覚に夢中になりながら、ふと目を上げると僕の動きは止まった。そこに天使が居たのだ。
 一瞬の驚きの後、僕は笑顔になって「やあ」と微笑んだ。天使の顔はすでにバラ色だ。この状態では立ち去ることもできないのか、ぎこちなくやっとという様子で「こんにちは……」と言った。
 僕は自分の名前を名乗った。「ケントでいいよ」僕はそう言うと「君は?」と訊いた。天使は「タウリ・ノード」と答えた。「ファーストネームは前?後ろ?」と訊いてみると「前」と答えた。「じゃあ。タウリ?と呼んでもでいいかな?」僕は下から見上げて微笑んだ。天使は小さく頷いた。
「タウリ。この間の"1回転2分の1捻り"すごくかっこよかった」
タウリは「ごめんなさい……」と言ったまま、またバラ色になった。
僕は「いや。そうじゃなくて。本当にかっこよかったんだ。気を悪くしないでくれ」と言って周りを見回し「閲覧室じゃあまり喋れないな。タウリ、どこかゆっくり喋れるところを知らないかな?」と言った。
 タウリは黙ったまま歩き出した。コーナーの出口のところで振り返る。僕はあわてて読んでいた書籍を棚に戻すと、タウリのところに駆け寄ろうとしてバランスを崩した。空中を流れていく体を本棚にぶつけてようやく止めるとタウリの方を向いて照れ笑いした。「大丈夫?」タウリが尋ねてきた。
「大丈夫。こんなのしょっちゅうだよ。結構難しいもんなんだ。だからタウリの"1回転2分の1捻り"すごいって思ったんだ」と笑うとタウリもつられて笑顔になった。天使のような笑顔だった。僕の心臓の鼓動は早くなった。
「初めて笑ったな」僕はタウリと並んで歩き出した。自動ドアのガラスには僕らの姿が映りこんでいたが、タウリの頭が僕より10センチは飛び出していた。タウリはそれに気がついたのか少し猫背になった。

 そういうふうに僕はタウリと並んで歩き始めた。

 タウリは並んで歩きながら文教ブロックを出てCと表記のある渡り廊下に入り、その真ん中あたりの大きな窓のある部分に僕を案内した。大きな窓からは灰色の平原とその先に緩やかに盛り上がった大きな丘が見えた。遮るものも無く到達する太陽光線は、あらゆる物に光線の当たる部分とそうでない部分をくっきりと区別していた。光線の当たる部分は、反射率の違いで若干の明暗の違いはあったが、灰色以外の色は一切存在しなかった。すべての光を飲み込む真っ暗な空には、たくさんの星が瞬くことも無く静かにそしてはっきりと光っていた。この単調な音も風も無い世界は何億年も変わらずにこのまま存在する……そういう雰囲気だった。
「こんなところがあったんだ」僕は窓のそばに立つとその風景を飽きることなく眺めた。窓のそばには軽く腰をかけることのできるベンチがいくつかセットされていたので、自然と僕らはそこに並んで腰をかけた。座ると身長差が小さくなるのでタウリは少しほっとしたようだった。
 タウリのバラ色の顔はようやく落ち着いてきて透き通るような白に戻ってきていた。(ほんとに天使みたいだ)
「この町にはこういう外の見える場所ってほとんど見つからないんだ。ここは穴場だな」僕は景色を見ながら呟いた。
「窓を付けても有害な放射線を防ぐためや強度を保つためにコストが掛かるだけなんだって。だから、こんな大きな窓はたくさんは付けられないらしいよ」タウリも灰色の平原を見ながら答えた。そして僕のほうを見て続けた「観光で来ている人は専用の展望室から見ることがほとんどだし、住んでる人は好き好んでこの風景を見ることも無いから穴場と言えば穴場かもね……」
「ここに住んでいたら特に珍しいこともない風景なのかな。でもこの景色はすごいよ」僕は首を右から左へとゆっくり動かしながら尋ねた。「タウリはここに来てどれくらいになるんだ?」
「18年」
「そんなに!」一瞬僕は止まったが、思い当たることがあってやがて続けた。「……で、タウリは何歳なんだ?」
「18歳」
 僕は暫く絶句した。
「じゃあまさかタウリは……」
「そうだよ。私ルナリアンだよ。月で生まれて育ったんだよ」
「そうなのか。実際に会えるとは思わなかった。だからそんなに背が高いんだ。成長も早いのかな、実際よりもっと年上に見えた」
「いくつに見える?」
「28歳」
 タウリは黙って琥珀色の瞳で僕を睨みつけた。
「冗談だよ。怒るなよ。28は僕の歳さ」
「あなたは地球生まれ?」
「そう。月生まれはそんなにたくさんいないだろう?」
「だからそんなに背が低いんだ。成長も遅いのかな、実際よりもっと年下に見えた」タウリは少し声を低くして僕の口調を真似て言った。
「分かった。気に障ったならあやまるよ。素直な僕の感想だったんだ」
「なお悪いよ」タウリは口元を膨らませた。
「私は3人目のルナリアンなの。今みんなで50人ぐらい居るのかな。そう聞いてる」
「地球に行ったことは?」
「無いよ。まだここを離れるわけにいかないんだ。私は宇宙での人間の体の変化について研究するプロジェクトに参加してるんだ。もう少し協力するつもりだし」
 僕らは小一時間その何億年も変わらずにこのまま存在しそうな風景を眺めながら話し込んだ。僕はこの時間がずっとこのまま何億年も変わらなければいいのにと思った。その気持ちをそのままタウリに伝えると、タウリは「そんなにここに居たら少佐みたいになっちゃうよ」と笑った。
「少佐?」と尋ねたがタウリは風景を眺めながら黙っている。
「なあタウリ、また会うってことは出来るかな?」僕は遠くの丘にピントを合わせたまま訊いた。
 タウリはまたバラ色になって俯き加減で「いいよ」と答えた。そして「少佐の話は今度会う時にね」と言った。

 そういうふうに僕はタウリと話し始めた。
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V645 Centauri (プロキシマ) 2.上弦

 ルナクルーザーは月面に一直線にひかれた道路の上を疾走していた。ハンドルはタウリが握っている。クルーザーは月面用の特殊な車両で、低重力・真空での高速走行とオフロード走行が可能な作りになっている。低重力下の慣性に対応するため車幅は広く低重心で、摩擦力を上げるためタイヤは異常に幅広だ。コックピットは高真空高放射線下の月面でも人間を地球上とほぼ同様の環境に保つことができる。もちろん運転には免許が必要で、タウリはそれを持っているのだ。免許は18歳から取ることができるらしい。だからタウリはまだ初心者ということになる。僕はさっきそれを聞いたので、シートの横の手すりをしっかり掴んで足を踏ん張っている。口数も少なくなった。
 タウリは免許を取り立てでクルーザーの運転をやってみたかったし、ここに長年住んでいるおかげで車両を借りることのできる相手を見つけることは簡単だったし、エアロックの使用許可や走行許可もどうすれば取れるかについても熟知していた(悪い意味でも)。だから自分で手配を済ませ、例のごとくバラ色に染まりながら僕を誘ってくれた。「いいよ。僕も外に出てみたかったし」とOKを出した時のそのほころぶような表情の変化は僕を有頂天にさせた。ただ僕はタウリの運転が超初心者だということにまで思いが至らなかった。それで今固まっている。
 タウリは僕に子供扱いされることに少し腹を立てていて、(まあ10年も離れているからしょうがないだろう?)見返してやりたいという思いもあったようだ。だから僕がタウリに頼らざるを得ない状況を作り出して、溜飲が下がる思いを楽しんでいる様子だ。得意げにハンドルを握っている。タウリは少しの間にずいぶん僕になじんでくれたようだった。
 クルーザーは"コメヅカ"という小さなクレーターのところでスピードを落として道路から外れオフロードに入った。
 スピードが落ちたので僕はようやく口をきいた「どこまで行くんだ」
「正面に見えてる"エンジェルズヒル"の頂上まで、そこだとこのあたり一帯が全部見渡せるから。綺麗だよ」タウリはニコッと微笑んで僕の方を見た。
「前を見ろ!頼むから真っすぐ前を見てくれ」僕は気が気ではない。
「大丈夫だよ。ちゃんと免許持ってるんだから」
「わかってる。わかってるけど。前。前!」
 タウリは可笑しくてたまらないのか、こみあげてくる笑いを堪えながらハンドルを回す。クルーザーは小さなピークを乗り越えるたびにジャンプしながら、丘の斜面を登ってやがてなだらかな頂上に到着した。
 フロントガラスから見える範囲の地面すべてが灰色の世界だった。空はすべての光を飲み込んで真っ暗に広がり、たくさんの星が光っていた。
「綺麗でしょ?」タウリは嬉しそうにそして少し自慢げに言った。
「素晴らしい!」僕はそう答えたがタウリとは違った感想を持っていた。
 僕らはそのままクルーザーの中でサンドイッチを食べコーヒーを飲んだ。サンドイッチはタウリの手作りだったし、コーヒーもタウリが豆から挽いてネルでドリップしたものをポットに入れて持ってきていた。
「このコーヒー豆、"静かの海"って言うんだよ。パンの小麦やレタス、ハムに使われてる大豆タンパクの大豆も月面産だよ。それから水もね」最近は月面でもさまざまなものが栽培されるようになったし、水も地下にあった物をリサイクルしながら大事に使っている。
「結構いい香りがするな」僕は"静かの海"が意外にいい香りがするのに驚いた。「味も酸味が押さえ目でいい」
 僕らはゆっくりと食事を始めた。
「あなたは仕事はなにをしてるの?」タウリが遠慮がちに訊いてきた。
「僕?”鳥採り”さ」
「”トリトリ”?」タウリは目を見開いている。
「そう。舞い降りてくる鳥の足を両手で押さえて袋に入れるのさ」僕は両手を広げる身ぶりを加えて説明した。
「鳥を?袋に?」タウリの目は満丸になった。何をどう想像しているんだろう?
 僕はその顔を充分堪能してから「冗談だよ。僕は大学で講師をしてる。まだ成り立てだけど」と言った。
「大学の先生なんだ。何の先生なの?」タウリの思考はようやく繋がった。
「何に見える?」
「そうだなー。頭の痛い数学とか、よく分からない物理学とか?」
「ひどい言いようだな。外れ!僕は考古学の講師なんだ」
「考古学って、あの昔の人のお墓とかを掘り返すやつ?」
「人聞きの悪いこと言わないでくれ。ちゃんとした学問なんだぞ」
「ごめんなさい。ほんとは興味があったんで少し勉強してる」
「そうだな。ライブラリーの考古学のコーナーで出会ったんだからな。そのコーナーに用があったんだろう?」
「なんとなく地球の上での歴史って興味があるんだ。行ったこともないのに。でも”鳥採り”って何?」
 僕らは食事をしながら話を続けたが、僕が長期の休暇をここ月面で過ごしていること。次の調査に出かける時期が迫ってきていて、今度の調査は約3ヵ月、そして講師として大学での講義を3カ月担当して合計6か月間の予定だという話になった。
「あとどれだけで出かけるの?」
「後2週間だな」
「そう」
「寂しい?」調子にのってそう聞いてみるとタウリのテンションは一挙に下がった。
「考古学って現地で調査しないと研究できないんだよね?」
「そうだな、考古学と発掘調査は切っても切れない関係にある。遺跡を発掘調査をしないと新しい事実は何も発見できないな」
「そうだよね……」

 会話が一旦途切れた時、タウリが「少佐の話憶えてる?」と訊いてきた。
 僕は「タウリとの会話は全部憶えてるよ」と答えた。
 タウリは少し笑って「正面に見えているのが”晴れの海”なんだけどその隅に見えるかな?ほら……」と平原の一角を指差した。
「何?どれ?」僕は目を細めた。タウリは双眼鏡を取って僕に渡し「ほら、あそこ。あの小さな構造物」と指差した。僕はその方向を双眼鏡で覗いた。
「何か足の生えたドラム缶みたいなものが見える」僕は言った。
「あれはね。古い時代のベクレラの月着陸船なんだよ」
「ベクレラにこんな古い形の着陸船があったっけ?」
「アレはね人類最初の月着陸船なんだよ」
「人類初めての月着陸はグロイカだろ?」
「変でしょ?丘をおりてあそこに行ってみない?」
「お手柔らかにね」タウリは僕の言葉を聞き流してクルーザーを発進させた。
 クルーザーは丘を下りその着陸船に近づいて行った。
「思ったより小さいものだな」僕はそう呟いてから船体に大きく描かれたマークをみて「あれ?あのマーク……」と言った。
「気が付いた?あれはベクレラの国旗だよ」
「じゃあ、本当にベクレラの月着陸船なんだ」
「嘘だと思った?」タウリはまじめな顔で僕の顔を覗き込んだ。
「いや。そんなことはない。そんなことはないから前!前を見ろ!」
「昔、ベクレラとグロイカが月の一番乗りを争っていた時代が有ったでしょう?」タウリが訊いた。
「80年くらい前の話だな」僕が答えた。
「ほとんど知られていないんだけど、ベクレラには極秘の月着陸計画があったの。それはね、2組の母船と着陸船を用意して、1組はバックアップとして先に無人で月へ向かって着陸して万が一に備えてるの。後からもう1組の有人の着陸船がやって来るという計画だったの。これならもしトラブルがあっても何とかなりそうでしょ?」
「そうだな。グロイカはバックアップなんか無かったし一発勝負だったよな。確か」
「うん。でね、ベクレラはまず観測衛星ということにしてこっそり1組目を打ち上げたの。でも2組目は打ち上げられなかったの」
「なぜ?」
「打ち上げ用のロケット、N-1って言うんだけど、これの信頼性がすごく低かったからって言われてる」クルーザーは着陸船の手前で停止した。
「じゃあこいつはたまたま上手くいったんだ」
「で、これはずいぶん後になって上空からの精密撮影で発見されたの」タウリが続けた。
 僕が頷いて目で話を促すとタウリはぽつぽつと話し始めた。
「そして、最初にここに調査隊が入った時。ステップの下からずっと続く足跡が発見されたの」
「有人だったってことか?」
「そうなるね。その足跡を追跡すると、やがて山岳地帯に入って消えてしまっていたの」
「どういうことだ?」
「この計画、記録がほとんど残ってないからよくわかんないんだけど。乗ってたのは志願した軍人だったらしいよ。月一番乗りを焦っていたベクレラは自動操縦のこの船になら誰でも乗れることを利用したの。もし上手くいけば快挙だし、失敗してもやむを得ないということで……。命を賭けたのね。案の定2組目の着陸船は上がらなかった。多分発射後すぐ失敗したんじゃないかって言われてる。でも月面からの離陸に失敗して月面に証拠が残るというのは想定外だったみたい。そして待てど暮らせど迎えの無人艇は来なかった……。コックピットからは少佐の徽章が発見されたらしいよ」
「それで少佐……か、でもそんなことって……」僕は離陸に失敗して月面に1人残された少佐の気持ちを想像しながら首の後ろに手を回して呟いた。たぶん人類が誕生してからもっとも孤独だった人間だ。彼の本当の気持ちを想像することは、王のピラミッドに生贄として生きたまま閉じ込められる奴隷の、墓の入口が閉じられる瞬間の気持ちを想像することと同じくらい困難だろう。もし本当の気持ちをシュミレーションできたとしたら僕は狂ってしまうだろう。
「最初は2組目の着陸船に希望を繋いだんだろうな。そしてどれぐらい待ったんだろう。酸素や食料の予備なんてそんなに積んでないだろうし……」
 タウリはクルーザーを発進させて元来た道を戻り始めた。砂を掻きあげながら”海”を進み勢いよく丘を登り始める。
 僕はその少佐がいつステップを下りて、どんな気持ちで帰らぬピクニックに出発したのだろう?と考えながら黙り込んでいた。
「ケント……」タウリが声をかけてきた。
「なに?」僕は生返事を返してから、始めてケントと呼ばれたことに気がついた。
「今でもこのあたりでは宇宙飛行士が歩いている姿を見ることがあるらしいよ」タウリは真っすぐ前を見つめながら言った。
「考古学者にそんなことを言っても驚かないよ」僕は少し笑ってタウリの顔を見たが、たぶんその言葉は強がりに聞こえただろう。
 ……と、タウリは急ブレーキをかけた。
「どうした?」僕はつんのめりながら言った。
「あの岩の手前!」タウリは右手をジッと見つめていたが、急いで双眼鏡を取り上げると右手の岩の方向を向けた。
「どうしたんだ」僕は身を乗り出した。
「あそこ!」タウリは僕に双眼鏡を渡して右側を指差した。僕はあわてて双眼鏡を覗いた。オートフォーカスでピントが合うとそこには人が倒れているのが見えた。気密服を着て仰向けに岩にもたれるような形で倒れている。
「人だ!倒れてる。遭難者か?」
「わからない!」タウリは急いでクルーザーをそちらに向けて発進させた。
 大きなリュックを背負ったような白っぽい気密服がだんだん肉眼でもはっきりと確認できるようになってきた。それは宇宙服と呼ばれていた時代の古いタイプのものだ。
「まさか……」僕は嫌な予感を感じながら呟いた。
 タウリは少し離してクルーザーを止めた。僕は「気密服!」とバックシートから気密服を取りだした。最新型の1気圧服はスマートだし脱着の手間もかからない。タウリは手慣れた様子で着替えると、焦りすぎてもたもたしている僕を手伝い始めた。
 ようやく僕の着替えが終わると、タウリは気密状態のチェックをおこなってからエアロックを解除した。タウリが機敏な動きでクルーザーの外に飛び出し、僕をシートから引っ張り出した。今度は僕が前になって倒れている遭難者に近づいて行く。遭難者の救助は最優先におこなわなければならない。
『そんなにここに居たら少佐みたいになっちゃうよ』タウリの言葉と同時に、僕は砂の下に千年以上も眠っていたミイラの姿を想像していた。水分を完全に失って小さくなった顔、落ちくぼんだ眼球と鼻、開いた口から覗く歯、髪だけは生時の状態をほぼ保っている。正直言って考古学者でもこういう系統が苦手な者も居るのだ。
「そこで待ってろ!」何が起こるかわからないので5メートルほど手前でタウリに声をかけると僕は恐る恐る近づいて、まず仰向けに倒れている遭難者を観察した。
 動く様子はない。僕の耳には自分の心臓の音が聞こえ始めた。
 顔の部分は丸い強化ガラスでできていて黒いサンバイザーが降りている。
 ゆっくりと顔の部分に近づいてバイザーに手を掛けた。
 少しの間躊躇してからゆっくりとバイザーを上げた……

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V645 Centauri (プロキシマ) 3.幾望

 ……中は空だった。人の頭が納まる位置には何も無い。

「ププッ……」
 何の音か暫くわからなかった。
「クククク…………」
 それはタウリが堪え切れなくなって吹き出した音、そして笑い声だと気づくのに数秒を要した。
 僕は暫くじっとしていたが「騙したな?こらっ!」と立ち上がった。
 タウリはダッシュで逃げだしたが「アハハハハハ……」と本格的に笑い出してしまい、少し走っただけで僕に捕まってしまった。
 僕は気密服を傷めないように気を使ってそっと捕まえた。

 そういうふうに僕はタウリに心を開いた。
 そしてタウリも僕に心を開いてくれたのだと思う。

(この事件はすべてタウリの計画した悪戯だったんだ)“少佐”の話はこの着陸船が発見された時、おどろおどろしく語られた伝説のようなものらしい。それをタウリが上手く利用したのだ。しかも資料室から無断で持ち出した古いタイプの宇宙服を、前日にクルーザーを使ってあの岩陰にセッティングに来るという念の入れようだ。僕はその空っぽの宇宙服にへっぴり腰で近づいて、おっかなびっくりでサンバイザーを上げたのだった。

 この話にはさらに後日談がある。宇宙服を無断で持ち出したこと、遭難者と紛らわしく置いたこと、許可なく道路を外れて走り回ったこと、について各方面から厳しくお咎めがあったのだ。同行した僕が矢面に立って事の処理にあたったので、事情を良く知らなかったということも配慮されて何とか穏便に収まった。(タウリがこんなにハチャメチャとは思わなかった)後日漏らした僕の感想だ。

 そういうふうに僕はタウリを少し理解した。

 さらにベクレラの名誉のために付け足すが、例の着陸船はバックアップ用に着陸したもので、もちろん無人だった。ただ、そのあとに打ち上げようとしたロケットで事故があったかどうかは定かではない。そのロケットは有人だったはずだ。

 2週間後、僕らは宇宙港の出発ロビーに並んで座っていた。待ち合わせてからタウリの口数は少なかった。
 ずいぶん逡巡していた様子だったが「ケント、本当は行ってほしくないの」タウリは僕の手をそっと取ると言った。
 僕は「地球に?」と当たり前のことを訊き返した。
「そう。だって私はそこに行くことができないんだもの……月で生まれた私は地球の重力には耐えられないもの。私は一生あなたの故郷へ行くことはできないんだよ」
 タウリは挑むように僕を見ながら続けた。僕はその目に狼の印象を持った。
「そしてケントの仕事は地球に居ないとできないんだよ」
 僕はそのことについては返事を返さなかった。
 タウリは琥珀色の瞳で僕を見つめて、無言の時間が過ぎていった。
「仕事が終わったらなるべく早く帰ってくるよ」僕は手を握り返した。
 タウリは目を閉じ亜麻色の髪を揺らして頷いた。
「タウリはとてもきれいだよ。最初出会ったとき天使かと思った」
「ありがとう」タウリはそう言ってから手をそっとひっこめた。
「たくさんメールを入れるよ。長いのを。電話も入れるよ」
「うん」タウリは頷いた。
 出発の時、宇宙港の出発ゲートのところでタウリは「またね」と言った。
 僕も「じゃあ、また」と返してゲートを入った。

 そういうふうに僕はタウリと離れた。

 長い6か月がゆっくりと過ぎていった。僕にとっては非常に充実した発掘調査だったし、それに対応した有意義な講義ができたと思う。僕らはあらゆるメディアを駆使してこまめに連絡を取り合ったが、タウリはタウリなりに学校生活を楽しみながらこの期間を過ごしていたようだった。しかし、それが過ぎても僕は月に帰ることは出来なかった。
 僕の居る地球からタウリの居る月までは申請が必要な特殊な旅行であり、"恋人に合うため"だけでは申請理由として通らない(婚約者や配偶者だと申請理由として認められ配慮される)。観光ツアーにまぎれようとしても1年以上予約でいっぱいだ。キャンセル待ち名簿に登録してキャンセルを待つのが精いっぱいだったのだ。僕は仕事のスケジュールを変更して、タウリへの想いを心の中にもやもやと抱えたまま毎日を過ごしていた。そしてダラダラと数か月が過ぎていった。僕は今夜も思うようにならない状況に少し自棄になって、大して飲めもしない酒を少し飲みすぎてそのまま眠りについた。

 僕はふと気配を感じたような気がして暗闇の中で目が覚めた。
 月光が部屋の中に入り込んでボウッと部屋の中が明るくなった。と、誰ががベッドの横に立っている。
 その細身の体のなめらかな曲線を描く肩から腰にかけては、薄っすらと生えた産毛を月光が透過して輪郭をぼかし、月夜茸のように柔らかく光を出している。柔らかく光りながらそれは僕の顔を覗きこんでくる。目の前に輝く亜麻色の髪、こちらを見つめる瞳は琥珀色、タウリだ。
 僕は否定しようと目を凝らしたが、どう見てもそこに居るのはタウリだ。
 でも、その瞳はいつもの好奇心に満ちたタウリの瞳ではない。それは、長い時間をかけて地層を通り抜けた、まったく不純物を含まない水のように透きとおっている。あまりに透明なその瞳はまるでそこには存在していないように、そう、光ですら届くのに何十年も何百年もかかるようなかなたの空間から、僕の瞳を見つめているように感じる。そんなに遠くから見つめても光が届く頃にはもうすべては存在しないというのに。
(タウリ!どうやって地球に降りたんだ?動けるのか?)声が出ない。さわろうともがくが体が動かない。鼓動がどんどん速くなる。全身に力を込める……。全身寝汗でビッショリなのがわかる。呼吸が落ち着くのを待って僕はようやく「タウリ?」と声を出した。大きく息が漏れる。
 それが合図だった様に、タウリは微笑んだ。そしてゆっくりと漂うように僕のそばを離れて、カーテンを少し開くとベランダの月明かりの中へ消えた。今、確かにカーテンが揺れた……
 心臓の鼓動は徐々に落ち着きを取り戻し始めたが、急激に不安が頭の中に広がってゆく。「またね」と手を振るタウリの姿が蘇る。
 ようやく体の自由を取り戻した僕は大急ぎでベランダへ飛び出した。誰も居ない。激しい胸騒ぎを感じながらベランダから下を見下ろすが月光に照らされた地面には何も無い。
 部屋に戻ると僕は不安の闇の中、大急ぎでベッドのそばにある棚から手探りで電話をとりだし、リストからタウリを選んで発信ボタンを押した。
 月への接続には若干の時間がかかる。その数秒は僕にとってプロキシマ時間のように長く感じられた。接続の気配がして、呼び出し音が鳴り始める。
 1回目……
 2回目……
 3回目……
 4回目……
 5回目……


*.

 ジョーンズ博士と天の川の鳥捕り、そしてノノちゃんに……
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『第2回短編小説書いてみよう会』参加作品を公開します。

『第2回短編小説書いてみよう会』参加作品を公開します。
V645 Centauri (プロキシマ)
1.朔
2.上弦
3.幾望
10700文字位あります。ちょっと長くなってしまいました。ごめんなさい。
3つのセクションから構成されています。
それぞれリンクしておりますので1.からお読みください。
参加されている方以外の方のコメントなども大歓迎です。
よろしければお願いします。
いろいろ思うところはありますが、一人反省会の開催は、(土屋マルさんのブログを参考にさせてもらってます)皆さんの感想をいただいてからということにしたいと思っています。
では……まずビールから始めて……クィ~ッと
続けてワインをば(赤ワインで)チビチビと…もう一杯追加~…
で、「記事を保存」っと……
では、よろしくお願いします
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777から800HITへ…(B777)

 777HITを通り過ぎて800HITに達しているようです。
787HITを監視していたんですが、夜中になってしまい確認できませんでした。残念!
でもラッキーナンバー777HITはどなたか確認できています。
その方のご健勝とブログの発展を祈念いたしまして乾杯!!!
(エッ!それだけ?)そうです。山西にできることはそれぐらいです。すみません。
そして787HITの方にも乾杯!!!
と、乾杯のワインをクイッと空けました。(もちろん赤ワインです)

777

 ところで777といえばもちろんボーイング777ということに山西的にはなります。なるんです!酔うと少し強引になります。
 エールフランスの777なんかエレガントですねぇ。

エールフランス777

 この飛行機は山西も出張の際などにもよく利用する結構ポピュラーな機体なんですが、これが結構侮れません。最大500人+の乗客が乗れる大型でありながら双発なので低燃費・低騒音です。しかも長距離飛行もできるオールマイティな機体です。そのうえ1995年以来1000機以上製造(要確認)されていますが、全損事故はあるものの未だに死亡事故を起こしていません。
 恐がりの山西もこの機体なら居眠りができます。
 実際、777で一回居眠りをしていて目が覚めて驚いたことがあります。エンジン音が聞こえなかったんです。エンジンが故障して滑空しているのかと思って、驚いてきょろきょろしているとCA(キャビンアテンダント・客室乗務員)と目が合って、ニッコリと微笑まれたことがあります。結局気圧差で耳が詰まっていただけで、唾を飲み込むと耳の奥がバリッと鳴ってエンジン音が聞こえ始めました。(この経験は、短編:コメット(12月24日)の中に使わせてもらいました)でも、本当に恐がりですから一瞬びっくりしたんですよ。他の乗客がなぜ冷静に座っているのかな?と思ったりして……。

 まあ戯言は置いておいて、おこしいただいた皆様、ご訪問ありがとうございます。
 拙い文章を読んでいただいた方、本当に感謝いたします。
 コメントをいただいた方、ありがとうございます。励みになります。
 変なブログ「Deblis circus」をよろしくお願いします。

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アスタリスクのパイロット、アルマク。キルケさんに書いていただいたイラストです。
ラグランジア
左からシスカ、サヤカ(コトリ)、サエ。ユズキさんにイラストを描いていただきました~。掌編「1006(ラグランジア)」の1シーンです。
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