Debris circus

Debris circus

頭の中に散らばっていた破片(debris)を改めて文章に書き起こし、オリジナルブログ小説としてサーカスの舞台に上げていきます。読みにくいものもありますが、お暇な時にパラパラとめくる感じででも読んでいただけたら嬉しいです……

 

トマトピューレの空き缶

こまごまと修正を続けていますが、ここで大きな変更です。
と言っても話には何の影響もありません。
「トマトピューレの空き缶」を登場させています。
こんなイメージ
トマトピューレ缶

今のところ出てくるだけですが後でちょっとした役を持った小道具の
役回りをさせようかな、と思っています。
--- 7 --- の中ですので気になる方御一読を……
誰か見てるかな?

関連記事
スポンサーサイト
 
 

--- 11 ---

 *

 彼はまだ新入りで、背だけは高いがヒョロッとした体型の男だった。この就職難の時期、あちこち受験してようやく国境警備隊員として採用されたのだ。専門学校で学んだことを生かせる職では無かったが、この際贅沢は言っていられなかった。
 スナイパーとして適性試験をパスし厳しい訓練を受けた後、何回目かのパトロールに参加して、今しがた夕日が沈んでいったところだった。
 急速に暗くなってゆく丘陵地帯に、仲間の隊員と一緒ではあったが取り残されたような不安な気持ちがいっぱいになっていた。いつもは強く吹く風が今日は珍しく凪いでいた。
 動く物の無いこの丘で空気まで静止しているという状態は、この場所に音の無い世界を作り出し不安な気持ちをさらに大きくさせていた。
「全員ナイトスコープを装着」隊長の指示でスコープを装着すると、闇の中に風景が浮かび上がった。1つの隊は5名で構成され、隊長を始め全員がスナイパーだ。国境線に近づくものを容赦なく狙撃していくのが任務だった。
 特に向こう側から越境してくる者に対しては厳しい対処を求められていた。国境に一般市民が近づかないように牽制し、また向こう側からの侵入も阻止し国境が平和に維持されているように見せる。それがすべてだった。
 新入りの彼は、ナイトスコープで監視を続けながらふと動くものが見えたような気がした。「隊長。23度、何か動くものが……」
「23?見えた、2人だ。南に向かっている。北からの進入かな。ミヤシタ、2人を確認できるか?」
「確認できます」
「狙撃する!ミヤシタ、右の1人の足を狙え。もう1人が逃げるようなら新入り、お前が追射しろ。サヌキ!カバーに入れ。新入り!サヌキがカバーするから、訓練どおり落ち着いてやってみろ。狙撃用意!」
「はい!」新入りはドギマギしていたが訓練どおり呼吸を整えようやく体制が整った。
「狙撃よし」隊長の声を待ってミヤシタは引き金を絞った。
 発射音がして1人がゆっくりともう1人に寄りかかってから倒れた。もう1人は逃げ出す様子はない。
 射撃をしなくてもよさそうな状況にホッとしていると「撃つなーーーーーー!」その声はこのまったく音の無い丘陵地帯に響き渡りチーム全員に聞こえた。
「おい。イルマ語だぞ。こっちの人間か?」ミヤシタが言ったが隊長が続けた「油断するな。接近する。ミヤシタ、エンドウ、ここからスコープで監視を続けろ。おかしな動きが有れば援護しろ。サヌキ、新入り、付いてこい」3人はゆっくりと接近していった。
 こちらの様子が見えないように無灯火で接近してゆく、スコープには2つの人影が見えていたがおかしな動きはない。1人は座り込みもう1人はそれに寄りかかっている。
 隊長は2人の様子を観察していたが「高校の制服か?」とつぶやいた。
「2人ともスコープを外せ!新入り、照明を点けろ」隊長の命令で点けられた照明の中に、2人の姿が浮かび上がった。
「女子高生じゃないか!」隊長が叫んで駆け寄ろうとしたと同時に、座り込んでいた方の悲鳴が上がった。
「いやだーーーーーー!!サエ!サエ!」サエと呼ばれた方は口から血を流しぐったりとしていた。
「お前らなんでこんなところに?サヌキ、身体検査だ、女のお前の方がいい、怪我もみてやれ」隊長は女性隊員であるサヌキに指示した。
 サヌキは「大丈夫よ」と声をかけ座り込んでいる方の体を手早く確認してから、ぐったりしている方の体を確認し傷の具合を確かめるためそっとコートの前を開けた。
「胸に当たって抜けているようですね。小口径なんで傷口も小さいから出血はましです。」とサヌキは報告し、「サエ!サエ!」と泣きながらガタガタ震えている方に向かって「生きているわ!」と声をかけてから向き直り「新入り!レスキューキットと担架を用意して」と付け加えた。
 新入りは動揺していたが、それでもキットを出し担架を組み立てにかかった。
 隊長は新入りに「考えすぎるな。これが我々の任務だ」と声をかけてから「ミヤシタ、エンドウ合流しろ、けが人を担架で搬送する、担いでくれ」と無線で呼びかけた。
 さらに新入りに「もう1人はお前がおんぶしてやれ。荷物は俺が持つ。それから疲れたら言え、交代する」と言ってから本部への報告を始めた。
 手当てを終えたサヌキが新入りに近づいて「胸に当たってるけど急所は外れているようだから助かると思うわ」とそっと声をかけた。
 新入りはホッとして、少女をおんぶしようとして近づいた、彼女はもう1人が手当てを受けているので落ち着き始めた様子だった。
 新入りはその容姿に少し驚きながら背中を差し出した。
 彼女は担架に乗せられて連れて行かれるもう1人を見ていたが、それで安心したのかあるいは置いて行かれると思ったのか背中に体を預けてきた。
 隊長は号令をかけた。「よし、出発だ。国道まで出れば迎えが来ているはずだ。急げ!」
 すでに隊員達はスコープをはずしていて、各自小さな照明で足元を照らしながら早足で歩いていた。
 新入りの彼はその照明を拡散にして、自分の肩の上にある少女の顔を斜め下から照らした。
 帽子の下から出ている髪の毛はこの照明の下では白く見える。目は右が黒で左は黒では無いようだ。前を行く担架をジッと見つめている。
 なんとも不思議な組み合わせだ。その整った顔立ちをそっと見ていると目が合った。おびえるように目を逸らす様子を見て鼓動が速くなるのを感じた。
 背負うのを交代しないまま国道に出ると、オリーブドラブの軍用車が1台と救急車が1台、赤色灯を点滅させながら待っていた。手当と検査のため2人は救急車に乗せられ中央病院に向かうようだ。
 新入りの彼は背負っていた少女を救急車の中に降ろしながら、明るい中でもう一度少女の顔をそっと見た。
 左の目は透き通るようなブルーだった。


(2014/08/06 更新)
関連記事
テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
 

更新しました。

更新しました。--- 11 ---を追加です。
今日は--- 2 ---で登場するライトレールです。

こんな感じ。
320px-ToyamaLightRail.jpg

モデルは富山ライトレールです。
このまあるい運転席の後ろにショウもシスカも立つんですよね。子供みたいですね。
でもこの位置で前を見ているのって楽しいですよね。
たいがい子供らが立っていてなかなか空いてないんですけど。
この電車は2両編成の窓が大きくデザインされた連接構造の低床車で、床は地面を這うように低くなっている設定です。
バリアフリーで人に優しい設計で、環境にも優しいと思われます。
マサゴ市ではメインの交通機関です。
作中ではちょっと変わった設定になっていて車掌が乗っています。
今流行のワンマンじゃないんですよね。
その証拠に出発の合図のベルを2つ鳴らします。

関連記事
 
 

--- 12 ---

 *

 キリュウの目の前に顔があった。髪の毛はブロンドというより、ほとんど白髪に近いくらい色素が少ない。目は右が黒、そして左はなんと透き通るようなブルーだ。
 その顔がキリュウの目の前でじっと前方を見つめている。それを下からそっと見ている……。
 ふっと下を見て「気がつきました?」キリュウは急に話しかけられて混乱した。
「エエッ!何?」
「中央病院に到着しました。これから降ろすからそのままじっとしててください」
 そして前方に視線を移して「キタハラ!先生!気がついた。うん。降ろせます」と呼びかけた。何人かの人の気配がする。
「君は?」キリュウはやっと尋ねたが「船の上で倒れたんです。ヘリで中央病院まで運んできました。これから入院です」と彼女は端的に答えて向こうへ行ってしまった。
 すぐに何人かが現れて担架ごと運び出された。もう空は真っ暗だった。アイドリングするローターの下をくぐり病院の建物内に運び込まれると、ローターの音が大きくなりヘリコプターが飛び立ってゆく気配がした。
 どうして自分がここにいるのかどうにか理解できたころ診察室に到着し、それから検査漬けの日々が始まった。寒さと疲労にやられていたのと、頭をひどくぶつけていたこともあって、テレビや面会が許可されたのは年末祭前日の朝だった。
 それまで検査以外は何もすることが無いのでトロトロと眠ってばかりいたが、その日は朝食前になんとはなしにテレビを点けた。
「マザー2……」という言葉が聞こえたので画面に注目すると、テレビではニュース番組をやっていて、パーソナリティと解説者がマザー2の爆発事故の解説をしていた。
「……ということは浮遊機雷の可能性が高いということですか?」
「発見された破片の分析はまだ全部終わっていませんが、これまでの情報ではベクレラの浮遊機雷の部品である可能性が高いという専門家の意見です。形式まではわかっていませんが、位置を自分で制御できる型の可能性もあります」
「位置を自分で制御といいますと?」
「そうですね。浮遊機雷ですからあくまで海流に乗って動くもので、自分で積極的に動き回るという動きはできないんですが、GPSで自分の位置を把握し少しずつですが位置を修正する機能を持った物もあるのがわかっています。事案のあった海域では北から南に向かって海流が流れています」
「ということは北側の何者かが意思を持って、我が国の民間船舶であるマザー2号に浮遊機雷をぶつけてきたということでしょうか?」
「まだ調査の途中ですからそこまではっきりと・・・・」キリュウは朝食を食べ始めながらじっと画面を見つめていた。
「その推測が真実だとすると、なぜマザー2を攻撃したのでしょうか?」
「もし事実なら、それはマザー2が資源調査行っていた事に関連があると思います。ご存知のように、べクレラとわが国は海底ガス田の開発に関して係争中ですから。北側はもうすでに試験生産に入っているといわれています。我が国も資源調査を進め、遅ればせながらガス田を掘削しようとしています。これは同じ鉱床からの生産になると思われますので、ガスの取り合いになる北側としては、牽制のつもりで今回のような行為に及んだのではないかと推測する専門家もいるようです」
 慎重な言い回しの解説を聞きながらキリュウは黙って朝食を食べ終えた。

 キリュウはテレビをつけっぱなしにしていたがそのままウトウトとしたようだ。
 コンコンと病室のドアがノックされた音で目覚め、キリュウは「どうぞ」と声をかけテレビを消した。
 入ってきたのはアツコだった。「年末祭おめでとうございます。艇長」といいながらベッドの横に立った。
「もう年末祭か……」とキリュウは驚いたが「艇長、よかったです」とハグされたのにはもっと驚いた。
「私たちを船内に残してずっと寒いところにいたから、すみません」と耳の横で言われてしどろもどろになって「いや、意地をはって迷惑をかけたな。ひっくり返るなんてほんとにカッコ悪いよ。恥ずかしい」と答え「シマはもういいのか?」と尋ねた。
 アツコはパッとキリュウから離れて「私は1晩泊まりで検査を受けただけで、異常なしといわれました。石頭なんですかね。」とニコッと笑って頭を掻きながら言うと「これ、一緒に食べませんか?ケーキなんですよ」と持ってきた箱を差し出した。
 箱の中からケーキとポットに入った紅茶、カップ、皿、さらには砂糖とミルク、スプーンとフォークまで出てきた。まだあった、ろうそくとライターもだ。
 潜水艇のWR2やマザー2の状態やその後の様子など仕事上の連絡事項の後は、「北風に願いを!」アツコはケーキを皿の上に出し、立てたろうそくに火をつけてから景気よくお祝いの掛け声を唱えた。
「南風に祝いを!」キリュウも答えて唱える。
 取り留めのない明るい話題ばかりを、アツコは回転のいい頭からあふれるように話題を展開させながら、キリュウは速い展開に少し疲れながらケーキを食べた。
「エッと、そろそろお暇します。疲れるといけませんから」とアツコは箱の中身を片付け始めながら言った。
「そう。ごめんな。わざわざ・・・帰る前に、ちょっと聞きたいことがあるんだけど・・・」キリュウが少し言いにくそうに尋ねるとアツコは「何でしょう?」と顔を上げた。
「俺を病院まで運んでくれたヘリコプターのパイロット、ブロンドの女性だったんだけどシマは知らないか?」
「ブロンドの女性パイロット?キタハラのことですか?パイロットじゃなくて整備士なんですけど、女性のヘリコプター乗りは彼女しか知らないです。ブロンドだったら彼女でしょう。なんと私のルームメイトなんですよ。彼女とルームシェアしてるんです。艇長も何度か彼女のヘリに乗ったことがあるはずですけど」
「そう。いちいち顔を見てないもんなぁ。キタハラっていうのか・・・」
「結構美人でしょ。彼女のこと気になりました?」
「まあね。昔あったことがあると思うんだけど、向こうは覚えていないだろうな」
「そうなんですか?いつごろですか?覚えてるか聞いてみます。って言っても、事故からお互いすれ違いで出会ってないんですけどね」
「いや、いいよ。あまりいい出会いじゃないし……」キリュウは言葉を濁した。
 アツコは後片付けを終えると「また来きますね」と予約を入れて帰っていった。


(2014/08/06 更新)
関連記事
テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
 

エリカ

--- 12 --- を追加更新です。
更新の案内代わりに、息抜きのショートショート書いてみました。
追記)「エリカ」はサイドストーリーです。「シスカ」本文---4---までをお読みになってからお読みになることをお勧めします。

 エリカはライトレールのドアが開くのを待って乗り込んだ。
 この車両はバリアフリーに設計されているので小さいエリカにも乗り降りに支障はない。ICカードを読み取り機にかざすと子供の利用を表す「ピヨ」という音が出て白いLEDが点灯した。
エリカはこの音が大嫌いだったので、早くこんな音がしないカードを使いたいと思っていた。
ベルが2回なって電車は加速し始めた。
 いつものように運転席の真後ろに立とうと思ったがそこにはすでに女の人が2人立っていた。エリカは自分の指定席を取られたような気持ちになって2人をそっとにらみ付けた。
 エリカはその場所に立つこと自体は好きだ。前に進む感覚は見晴らしが良くて理屈抜きで気に入っていたが、そこに立つのは子供だけのような気がしていつも複雑な気持ちだった。
 時には大人の人がそこに立っていることもあったが、込んでいて止むを得ずの場合を除いてほとんどの場合それは男の人で、エリカは(男って大きくなっても子供なんだ)と自分で納得していた。
 しかし今日は込んでもいないのに女の人が、しかも2人も立っている。それはエリカにとって想定外で、にらまずにはいられなかった。
 でもそこに立ちたいのは子供だけだと思っていたので、エリカはそっとにらむだけにした。自分がどうしてもそこに立ちたいと思っているのを認めるのは嫌だった。

 電車がスピードに乗るころ運転席の後ろに立っていた女の人のうちの1人が帽子を取った。
 エリカはドキリとした。
 帽子の中から真っ白な、いやちょっとキラキラ光るような色の髪の毛が出てきたのだ。
 そのまっすぐなきれいな髪の毛はフワッと流れ出し、その女の人が首を左右に振ったのでユラユラと揺れた。青い目がちらりと見えた。(片方だけなんだ)その様子が綺麗だったのでエリカは純粋に見とれていた。
 でも周りの大人たちの様子は違って見えた。同じように驚いているのだが、自分が見ているのとは全然別の尖った違った気持を感じ、それが何故かわからず遠慮なく周りを見回してしまった。
 帽子を脱いだ女の人もその空気に驚いていた様子だったが、その表情はもう一人の女の人が間に立ち塞がったので見えなくなってしまった。そしてその女の人が綺麗な髪に帽子をきっちりとかぶせてしまった。
 大人たちはもう何事もなかったように女の人から目を外し、みんなそれぞれの方向を向いていた。でもその奇妙な気配は女の人たちが電車を降りるまで続いていた。
 あんなに綺麗だったのに、なぜそんなことになったのかエリカには訳が分からず、自分はあんな嫌な気配を出したくないと思った。
 大人になったら自分も知らないうちにそうなるんだろうかとも思った。
 すこし寂しくなった。
「ピヨ」と鳴ってもいいような気がした。
関連記事
 
 

--- 13 ---

 アツコはライトレールの車内でぼんやりと窓の外を眺めて考え事をしていた。今日、シスカは帰っているだろうか。さっき病院で口にしたとおり爆発事故以来行き違いになってシスカには会っていない。
 マザー2でのシスカの異常な様子はずっと気になっていた。
(まるでシスカじゃないみたい)小さく口に出してからあわてて飲み込んで、過ぎてゆく景色を眺めていた。
 今にも雪が降りそうな灰色の空の下、そのどんよりとした暗さに対抗するように明るく飾り付けが施された商店街を、ライトレールは快適に進んで行った。
 ライトレールを降りたアツコは急ぎ足でアパートへ向かった。そして29と番号の振られた5階建ての建物を一気に3階まで駆け上がった。
 扉に鍵を差し込んで廻すと普段は気にしていない鍵の音が今日は大きく響くように感じられた。そっとドアを開けて中をのぞくと短い廊下の向こうにシスカの顔が見えた。
「シスカ!」ガターンとドアを閉めて靴を脱ぎ散らかしてアツコはシスカの胸ににハグした。
「よかった!シスカだ」抱きついた感触は確かにシスカだ。しかし、違和感を感じてアツコの動きが止まった。そしてサッとシスカから離れた。
「ごめんなさい。変……かな?」シスカが声を出した。
「ごめんなさ……?うん。すごく変。どうなったの?」アツコは警戒信号を隠そうともせずしげしげとシスカをみた。
「私……シスカなんだけど……こまったな」シスカは困惑した顔のまま突っ立っていた。
 アツコは少し離れたところからまじまじとシスカを見つめ「確かにシスカだけど、双子の姉妹とかクローンとか居ないよね?」と訊いた。
「居ないよ。私……は1人だよ。こんなふうにしかできないし……」シスカは言いにくそうに言葉を続けた。
「だよね。悪いけど印象が全然違う。でも危害はなさそうだよね?変身したりしないよね?」アツコはおっかなびっくり近づいた。
 そしてもう一度思いっきりハグした。長いハグになった。
「たしかにシスカそのままだ。でもなんでこんなに変なの。自分で説明できる?」
「あの……どう説明したらいいのかな。僕もよくわからない……」
「僕?フーン。わかったわ。本当にどうなっているのかもう少し様子を見る」アツコは感覚だけでそう決めることにした。
「とりあえず部屋に入れてくれる?着替えたいから」アツコは自分の部屋に入っていった。
 部屋に入るとアツコは携帯を開けてメール作成画面を選択し宛先にサエを選んだ。そしてシスカの様子がおかしいことを手短に記し、発信してから部屋着に着替え始めた。返信は少し時間がたってから来た。
『びっくりしたでしょ?あなたも何となくわかっていると思うけど、シスカの幼少時代の生活環境にはかなり問題があったみたいで、キタハラのところに来た時は精神的に破綻状態だったんだって。そこからシスカは立ち上がって今の状態まで持ってきたようなんだけど、まだ完全には安定していなかったみたい。何日か前からとっても不安定になってます。でもあなたが会っているのはちゃんとシスカだよ。安定に向けて試行錯誤している途中のようなので暖かく見守ってやって!よろしくね!』
「そういうこと……」アツコは呟いて携帯を閉じた。シスカとは専門学校時代に出会ってからの付き合いだが、時々不安定さを感じることがあった。そっと探りを入れようとした時もあったが頑なに拒絶され、というより封印されているようで本人もまったく触ることもできないようだった。
 無理やり触るわけにもいかずそのままにして置いたのだが、シスカは自分で封印を解こうとしているのだろうか?深呼吸を2つしてアツコは部屋を出た。
 まず洗面所に直行して手洗いとうがいをする。そしてダイニングキッチンへ入って行った。
 シスカはテーブルの横に立っていた。アツコはシスカに近づいて、シスカもアツコの方を向いて向かい合わせになった。
 アツコの身長はシスカの肩にようやく届くぐらいだったのでかなり見上げる形になった。
「あのさ……」
「あの……」
 2人同時にしゃべりだそうとして同時に止まる。
 アツコがどうぞという具合に手を差し出した。
「あの、私……何て言えばいいのか、ちゃんとシスカなんです。記憶も戻ってます。分ってもらえますか?」シスカが困ったように訴えた。
「無理!わからないわ。まるでイメージが違うもの。でも、今のあなたが今のシスカだということは理解するわ。あなたが自分で何とかしようとして、色々変わろうとしているらしいことも理解するわ。とりあえずそれでいい?」
 シスカはしばらく考えていたが「はい」と言った。
 アツコはシスカの肩を自分のほうに引っ張ってシスカを前かがみにし、自分は爪先立ちになると、ガバッとシスカに肩にハグをして耳元で「ただいま」と言った。
「おかえり」シスカはボロボロ涙を流しながらようやく答えた。
「シスカはそんなにボロボロ泣かないよ」アツコはハグを外しシスカの顔を見つめながら言った。
「はい」シスカは顔を袖でグイッとこすりながら言った。
「サエには言ったのよね」
「はい。最初に来てくれていろいろ助けてもらいました」
「キタハラは?」
「会いました。ママさんとはまだ会ってないんですけど。キタハラはシスカも僕も俺たちの子供だと言ってくれました」
「今シスカも僕もって言った?まあいいや。とにかくよかったね」アツコはまた短く胸にハグをし、そして「それから、その、です・ますと僕はやめた方がいいよ。変!」と言った。
「それ、サエにも言われました。でも難しいです」シスカは答えたが「ほら、また。努力して!ここら辺がこそばゆいから」とアツコは首の後ろを指差しながら頼んだ。
「うん」と言ってからシスカは決めたように顔を上げた。「あの、私これからキタハラの家へ行ってこようと思うんだ。いい……かな?」
「いいわ。行ってらっしゃい。場所とかわかってるよね?」アツコが尋ねると、シスカは何かしゃべろうとしてやめて、少し困ったような笑顔を浮かべ頷いた。


(2014/08/06 更新)
関連記事
テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
 

13更新しました

更新しました。
--- 13 --- を追加です。
アツコとシスカ(ショウ)が出会います。
少しずつ物語は進んでいきます。

シスカやアツコの暮らす団地のイメージは
こんな感じです。
団地
「公団ウォーカー」http://codan.boy.jp/intro/index.html より引用

たくさんの労働者が生活できるように設計された低層の建物です。
ガス田や油田の有るマサゴ市では、ガスや石油の生産のための労働者を
たくさん必要としているため、市内にたくさん建てられています。
さらに海底のガス田の開発も進めているので、さらにたくさんの労働者を
必要としています。シスカやサエの家族もガス田や油田の開発に伴う労働力として
移住してきたという設定です。
5階建てなのでエレベーターはありません。
階段を駆け上がります。
土地はありますので高さは必要ないと考えられています。
同じような建物が並びますので、自分の建物を見失わないように
建物の妻面に番号が振られています。
シスカとアツコの棟は29です。

関連記事
 
 

---14---

 *

 シスカはいつものように防寒コートにきっちり被った帽子といういでたちでライトレールに乗っていた。例のごとく運転席のすぐ後ろで前方を見つめている。
 前方の空は濃い灰色で風も少し強い。
 このライトレールはシスカがこの町に引っ越してきた頃はまだ走っておらずバスが運行されていた。鮮明に思い出した子供の頃の記憶をたどると、ママさんと一緒に最初はバスで、高校生になってからは新しくできたライトレールで買い物に出かけたことを憶えている。
 一緒に並んで笑顔で出かけられるただそれだけの平凡なことが幼いころのシスカにとってどれだけ心安らいだかを、自分の記憶の中に見つけてシスカは胸がキュンと締まるのを感じていた。
 あわてて涙の出るのをこらえながら、今自分がショウなのかシスカなのか分からなくなり始めている事に気がついてうろたえた。
 どちらの記憶も持っている自分はいったい誰だろう。
 シスカの生き方はなんだかとってもわくわくする。
 外観はシスカだからシスカにならないといけないんだろう、だけどショウで無くなるのは嫌だ。
 ショウの意識は消したくない。
 消えたら僕はどうなるんだろう。
 上手く混ざるといいのに。
 自問自答を繰り返しながらシスカは考え続けていた。
 キタハラの家はサエの家とは反対方向に4つ目の停留所で降りてすぐだ。
 電車が停留所に滑り込むとシスカは待ちきれない様子でドアのところに歩いていき、ドアが開くと同時に寒気が吹き込む中、そのままポンとホームに飛び降りた。昨日と違ってシスカの記憶が戻っているので周りの風景はすっかり見慣れたものに変わっている。
 道路を渡ると目の前はすぐに団地で、キタハラ家はその中の17番の建物の2階だった。
 シスカは階段をゆっくりと上がっていって鉄の扉の横にあるインターホンのボタンを押した。応答はない。
 しばらく待ってシスカはポケットから鍵を取り出しシリンダーに差し込んで廻した。ドアを開けて中を伺ったが誰もいないようだ。
(休みだし。買い物にでも行ったかな)そう考えて玄関を入った。
 勝手知ったシスカの育ってきた家だ。あちこちに思い出が詰まっている。やっぱり自分はシスカになっているのかなと複雑な気持ちになった。
 シスカは靴を脱ぎ廊下を入って、ダイニングキッチンを覗いた。キッチンに立つママさんの声が聞こえるような気がして部屋を一周する。
 暖かい食事。
 何気ない家族の対話。
 これを素直に受け入れることができるようになるまでに長い時間がかかった。
(キタハラやママさんに苦労をかけたっけ)自分の記憶の中にそれを見つけてまた胸がキュンと締まるのを感じていた。
 ダイニングキッチンの横はパーテーションで区切られ居間になっている。シスカは居間の扉を開けると中を覗き込んだ。
 入って正面に女性の写真が額に入れて飾ってあってその額の両側には花かごが置いてある。
 写真にピントが合った瞬間(ママさん?)、意味を理解するのに数秒かかってシスカの視界は一挙に真っ暗になった。

 *

 キタハラは買い物を済ませるとスーパーを出た。
 凍てつくような寒さだったが公園のベンチが目にとまり、ふっと考え事をするようにそれに座った。出来合いの夕食が入った大きなバッグは横に置く。
 中で発泡酒の缶がゴトリと音を立ててひっくり返った。
 妻のナオミを失って2カ月ほどたつのだが、まだ1人の食事というものになじめない。
 勤務先や出先での食事ではそんなことはないが、家での食事ではどうしても大きな喪失感を抱えてしまう。
 自分たちには子供は授からなかった。
 ナオミの体を守るために子供は作らないという選択をしたのだ。
 苦渋の選択だったが、2人で相談してそういうめぐりあわせだということで納得しようとした。実際お互い納得していたつもりだった。
 でもナオミが彼女を始めてみたとき、ナオミの納得は大きく揺らいだ。しかしキタハラの納得は揺らいでいなかったため2人は大いに揉めた。
 2人は長い話し合いと葛藤の末、養子のような形で彼女を引き取ったのだ。
 彼女はシスカという名前しかわからず。出生だけでなく国籍すら不明なこと、その容姿、ベクル語しか話さない、など非常に問題点が多かった。
 これらのあり得ないような問題の多さゆえに引き取り手が見つからないうえ、戦後の混乱期であったこともあって公的施設も引き取ることができず。非常にまずい状態になっていたのだった。
 それから地獄が始まった。人間の精神はとても複雑怪奇であるということを思い知った。
 キタハラもずいぶん努力をしたがナオミの献身的な育児にはかなわなかった。
 戦後の混乱期、まだ不十分なサポート体制の中、ナオミは色々なセミナーに出席し知識を蓄えてシスカに接していった。
 もちろんセミナーの間はキタハラがシスカを見ていたがそれだけでも大変なことだった。
 キタハラはナオミの講義を受け、ナオミのまねをしながら根気よく接したのだ。
 ある程度の理解だったが、それが無ければ自分とシスカの関係はとっくに崩壊していたに違いないと思う。
 そのうちにナオミの知識はいっぱしの心理学者か精神科医のようになっていった。
 それぐらいの態勢で取り組んだ以上に、ナオミの持つ強い愛情が有ってはじめてシスカは育てることができたのではないかとキタハラは思う。ナオミはそれほど意思と愛情の強い女だったと、失ってみて今更ながら思う。
 ナオミの愛情を一身に受けたシスカは長い時間をかけて立ち上がり、ようやく普通の生活が送れるようになった。
 学校も卒業し仕事も覚え、一人前になったと思っていたが今また大きく不安定になっている。
 シスカお前はどうするつもりだ?
 サエの話だと俺達に出会う前の記憶も戻っているようだがどんな記憶だ?
 つらい記憶ではないのか?
 思い出さないほうが良かったのではないのか?
 キタハラはベンチに腰掛けたまま深いため息をついた。息は白い水蒸気になって広がってゆく。ナオミを失って空いた空間はぽっかりと大きかった。
 体の端から凍え始め、いつまでもここに座っているわけにも行かず、ジャケットの襟を立て帽子を深くかぶりなおして家に向かって歩きだした。濁った灰色に染まっていた天空から白いものが舞い始めていた。

 2階までゆっくり階段を上ってポケットから鍵を出し、鍵穴に差し込むと鍵は開いていた。キタハラは小さく首をひねり「シスカか?」と用心しながらドアを開けた。玄関にはシスカの靴が行儀よく並んでいる。
「シスカ!帰ってるのか?」奥に向かって呼びかけてみるが返事がない。キタハラは廊下を進んでダイニングキッチンに入っていった。
 そして開けっ放しになっている居間の扉の中を覗いて中にシスカが倒れているのを見つけた。
 肩にかけていた大きなバッグがボタリと床に落ちた。
「シスカ!」駆け寄るとシスカの体をそっと触って呼吸を確かめた。呼吸が確認できると帽子を脱がせ、そっと抱き起こしてもう一度「シスカ、シスカ」と声をかけた。
 シスカは薄く目を開けると「キタハラ」と小さくつぶやいた。
「どうしたんだ?何が起こった」キタハラが問いかけると少し間が空いて「ママさんが。ママさんが」シスカは大粒の涙をこぼし、子供のような声を出して泣きじゃくり始めた。
 うわあぁぁぁ……シスカの泣き声はどんどん歯止めがきかなくなり大きくなっていった。
「シスカ、お前」キタハラはナオミの写真を見ながらシスカを抱き寄せ「お前、まさか……ママさんのこと知らなかったのか」と言った。
 葬式の時でもまったく涙を出さず気丈に振舞っていたシスカが、今大泣きに泣いている。まるで心の中の安全弁がふっ飛んだようだとキタハラは思った。
 両腕はだらりと力なく下がり、体も支えていないと倒れてしまいそうなほどだ。全身のエネルギーを全部泣くことに使っているかのように延々と大声で泣き続ける。
 キタハラは戸惑いながら小さい子供にそうするようにシスカをきつく抱きしめていた。ジャケットの胸はシスカの涙と鼻水とよだれでビショビショになった。
 失われた記憶の輪がつながった瞬間だと思った。
 キタハラ家に来た時バラバラに壊れていた記憶の輪が今繋がったのかもしれない。
 シスカの精神が繋げても問題無いまでに回復したのか、それともさらに破綻していく前兆なのかそれは判断できなかった。
 長い長い時間の後、激しい感情の噴出はようやく弱まってきたようだった。
 様子が落ち着いてきたので1人にした方が良いような気がして、キタハラはそっと体を離して居間を出た。
 振り返って確認すると、シスカは膝を抱えたまま肩だけを震わせていた。
「今日は泊まっていけ。晩飯を仕入れてくる。すぐ戻るからここから動くなよ」と声をかけるとシスカはコクッとうなずいた。
 かなり心配だったがビショビショのジャケットを防寒コートに着替えて帽子を引っ掛けた。そして玄関を出て大急ぎでスーパーに向かった。


(2014/08/06 更新)
関連記事
テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
 

カナとマキの場合

--- 14 ---追加しました。
失われた記憶の輪がいよいよ繋がります。
更新案内のショートショートです。よろしかったらどうぞ。本文の二次創作になっています。

 カナはスーパーのサービスコーナーで業務をこなしていた。
 客足が途切れたので、ふとガラス越しに外の公園に目がいった。
 公園のベンチにはさっき買い物を済ませた40位の男が座っていた。渋い色のジャケットにジーンズ、頭には暖かそうな帽子が乗っている。その男が何か考え事をするように横顔をこちらに向けて佇んでいる。
「ねえねえ」カナは隣のマキに声をかけた。「あの人ちょっと渋くない?」
「どれよ」マキは小声で答えた。
「あの公園のベンチに座ってる無精ひげの渋い感じの人」カナはそっと指差した。
「あんたどんな神経してんの?別に渋く無いよ。服の色がシブいだけじゃん。さっき買い物してるの見てたけど、あの横に置いてある袋の中、うちのお総菜コーナーの出来合いのお惣菜だよ。発泡酒の缶も入ってたし、あの無精ひげなんかどう見ても失業して奥さんに逃げられたおっさんって感じだよ」
「ええ!そうかなぁ。遠くを見つめるような憂いを含んだ目と思うけどー」
「違う違う!目の焦点が合ってないだけだよ、ボーッとしてどうせ碌なやつじゃないよ。こんな時間、普通まだ仕事してるはずだし」
「渋いと思うんだけどなぁ」
「ダメダメ!こんなに冷えてるのにあんなとこ座ってるなんて、帰る家も無いんじゃない?ホームレスだよ、きっと」
「う――ん」
 カナの頭の中で渋い中年男性から、失業して奥さんに逃げられたホームレスに格下げになった男は、ジャケットの襟を立て帽子を深くかぶりなおして歩きだした。
 濁った灰色に染まっていた天空から白いものが舞い始めていた。
関連記事
 
 

ゆっくりと100ヒット

 ゆっくりと100ヒットに達しました。
何人の方に見ていただいているのかわかりませんが、とにかく見ていただいた方、お越しいただいた方、ありがとうございます。
 特にコメントを頂いた方、拍手いただいた方、未熟な物にお付き合いを頂きまして本当にありがとうございます。自己満足の域を出ないのは重々承知しておりますが、長い期間頭の中で眠っていたものをこのまま腐らせてしまうことが我慢できなくなりました。

 少しでも読みやすくそして面白くなるように、試行錯誤しながら緩々と書いていくつもりですので、我慢できるようであればお付き合いください。

100ヒット記念といいますか写真を1枚UPします。
心が洗われるようでした。
空・光

関連記事
 
 

--- 15 ---

 店ではとりあえずカレーを作ることに決めてルーや野菜・牛肉をかごに放り込んでゆく。うっかり昔の要領で大量に買い込みすぎているのはこの際忘れておく。
 あとオリジナルレシピで追加する香辛料と、必須の冷えた発泡酒の缶を何本か追加してかごに放り込む。蒸留酒はまだ棚に有ったはずだ。酒の肴はさっき買っていたが、いくつか適当に追加してレジに並ぶ。
 時間的に込み始めていてイライラしながら順番を待ち勘定を済ませると、中身を適当に大きなバッグに詰め込んで肩に掛けて店を出た。
 大急ぎで帰ろうと顔を上げると公園の向こうにシスカの姿が見えた。
 シスカは帽子も被らず冷たい風にプラチナの髪を揺らして立っていた。
 あわてて近づいて「動くなといったろう」と詰め寄った。
「ごめん、献立に注文を付けたくなったんだ。でも僕の希望通りだったな」シスカはバッグの中を覗きながらそう言った。
 まだ小言を続けようとしていたキタハラは、そのしゃべり様に驚いて硬直した。
 その隙にシスカはキタハラのバッグと帽子を取り上げ、髪をクシャッとかき回してから帽子を公園の真ん中に放り投げた。
「何するんだ。心配してやってるんだぞ」あっけにとられたキタハラがあわてて帽子を拾いに駆け出した隙に、シスカはダッシュした。
 振り返りながら「先に帰ってる!」と声をかけて、さらに速度を上げ家のほうへ向かって駆けていった。
(やれやれ……これはいったいどうしたことだ?こんな悪戯は学生時代のシスカが良くやっていたが……)キタハラは帽子を拾うとしばらく思案してから、ふっと顔をあげてスーパーの方に目をやった。
 店頭に施された年末祭の飾り付けと軽快な音楽は、さっきまでは目や耳に入ってもそうとは感じなかった。
 今初めてそうであることに気がついて、(そうか、今日は年末祭のイブだったな)キタハラは携帯電話を取り出してシスカを呼びだした。
「はい!」息を切らしながらシスカが出ると「ちょっと寄り道をする。先に用意を始めといてくれ」と言った。シスカなら要領はわかるはずだ。
「わかった。何の寄り道か知らないけど、あまり遅くならないでよ」
「了解。1時間ぐらいだ」よどみの無い受け答えに安心して携帯を閉じ、キタハラはライトレールの停留所を目指した。

 あらかじめ当ての有ったマニアックな買い物だったので短時間ですますことができ、予定通り1時間ぐらいでキタハラは団地の階段を上っていた。
 若干の不安を抱えながら鍵を開けてドアを開けるとキッチンに人の気配がして、ご飯の炊けるいい臭いが玄関に漂っていた。
 玄関にはシスカの靴がとりあえず揃えて脱いである。さっきのように”行儀よく”では無いところに妙に安心し、その横に靴を並べる。
 しばらくぶりに感じる帰宅した時の人の気配に安らぎを覚えて、キタハラは廊下を入って行った。
「ただいま」声をかける。
 シスカは髪が前に下がってこないように、耳を出してサイドの髪を後ろでくくっていた。エプロン姿で忙しく立ち働きながらチラッと玄関のほうを向いて「お帰り!」と作業に戻った。
 キタハラは寝室の隅に荷物を置き部屋着に着替えると、ダイニングキッチンに入っていきながら「どこまで進んだ?」と用意の進み具合を訊いた。
「カレーは下ごしらえができたところ。ご飯は10分ぐらいで炊き上がる」シスカは切りそろえた野菜や肉を顎で指した。
「よし。後は任せろ」腕まくりをして手を洗うと調理にかかった。
「じゃ。僕は風呂の用意をする。先に入ってしまおう」シスカはそう言うとダイニングキッチンを出て行った。食事の前に風呂を済ませてしまうのは昔からのキタハラ家の習慣だ。
「僕……か」肉を鍋に放り込むと勢い良く炒め始めた。


(2014/08/06 更新)
関連記事
テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
 

カナとマキの場合2

--- 15 ---追加しました。

更新案内のショートショートです。よろしかったらどうぞ。本文の二次創作で「カナとマキの場合」
との連作になっています。

 その男は猛烈な勢いで肉や野菜をカゴに放り込んでいた。
 カナはさっきから”失業して奥さんに逃げられたホームレス”に格下げになった男がまた店に現れたので、サービスコーナーの監視モニターで注目して観察していた。
 今度は憂いを含んだ、あるいは焦点の合っていない目では無く、多分若干目が血走ったような状態になっている事が想像できるほど大急ぎで買い物をしている。
 隣のマキは電子マネーカードの発行手続きを愛想よく終えた。
 客がカウンターを離れるのを待って。
「マキ、マキ、さっきの人がまた来てるよ」と声をかける。
「さっきの人ってあのホームレス?」とマキはモニターを覗きこんだ。
 何人前の料理を作るつもりなのか、とにかく4・5人前ぐらいは作れるぐらいの量をカゴにぶち込んでゆく。
「目の焦点は合ってるよね?」
「そうみたいだな」
 カレールーや香辛料を買っているのでおそらくカレーを作るつもりのようだ。
「今度は料理するつもりみたいだよ」
「そうみたいだな。えらい勢いだな」
(アッまた発泡酒の缶も放り込んだ)
「あれだけ大量に買い込むホームレスって見たことないよね?」
 おつまみの袋も適当に放り込んでいる。
「そうだな。ホームレスパーティーとか?」
「あり得ないでしょ?」
「じゃあホームレスじゃあ無いのかな」マキは呟いた。
「渋いと思うんだけどなぁ」横眼使いでマキを見る。
「わかったよ。そこそこ渋めの男ってことにしといてあげるよ」
「サンキュウー」
 男はすこしイライラした様子で順番を待ち勘定を済ませると、中身を適当に大きなバッグに詰め込んで肩に掛けて店を出た。
 カナはその男の様子を店の外まで観察していた。すると公園の向こうに女が立っているのが見えた。男は女に近づいてゆく。
「マキ、マキ、女が立ってる!」マキの肘をつつくとマキも並んで公園の方を見る。
 少し遠くて見にくいが髪をボブにカットした背の高い女が立っている。なんとプラチナブロンドの髪だ。そして若い、二十歳をすぎたぐらいか?
「えーっ。意外な組み合わせ!どういう関係だろう?」マキが耳元で言った。
「恋人?夫婦?親子じゃないよね?」カナも答えを見つけることができない。
 この意外な展開はさらなる男の格上げの充分な要素だ。
 そのうちに男はバッグと帽子を女に取り上げられた。(あれ?)
 そして帽子は公園の中央に投げられ、女はバッグを持ったまま何か言いながら駆けて行った。(あらら……)
 男は帽子に走り寄ってゆっくりとそれを拾うとしばらくこっちを見ていた。そしておもむろに携帯電話をかけ短い通話を終えると、少し急ぎ足で別の方向へ立ち去った。
 カナとマキは無言で顔を見合わせた。
「サービスさ―ん!」レジに呼ばれてカナは仕事に戻った。
関連記事
 
 

--- 16 ---

 2人はダイニングテーブルに向かい合わせに座っていた。二人の前には炊き上がったご飯を盛った皿が置かれ、テーブルの中央にはカレーの鍋、その周りには適当に肴を盛り付けた皿やボールが囲むように置かれていた。
 そしてナオミがいつも座っていた椅子の前のテーブルにはナオミの写真が置かれていた。
 支度が済んだ時、シスカが居間から持ってきてそっと置いたのだ。写真の前にはもちろん発泡酒の入ったグラスが置かれている。
「北風に願いを」キタハラが発泡酒の入ったグラスを掲げて唱えると「南風に祝いを!」シスカも高くグラスを掲げて景気良くお祝いの掛け声を唱えグラスを合わせ、ナオミともグラスを合わせると2人同時に一気に飲み干した。
 発泡酒をお互いのグラスになみなみと追加してから、キタハラは皿に盛られたご飯の上にカレーをたっぷりとかけてガッツくように口に運んだ。
 シスカはそれを横目に2杯目を開けてからカレーを食べ始めた。
 キタハラは少し腹が落ち着くと今度は肴をつまみながらまた発泡酒を飲み始めたが、シスカは棚から蒸留酒を出してきてロックでやり始めた。
「やっぱりそっちへ行くか」キタハラが言うと「発泡酒は腹がいっぱいになるからな」いつも通りの返事が返ってきた。
 職業柄2人とも酒量はそれなりにセーブしているが、アルコールに関してはシスカの方がかなり強い。(ベクル人の血が入っているからだろう)根拠はないがキタハラはそう考えていた。
 頃合を見て、キタハラは「ちょっと待ってろ」と席を立って寝室に入って行った。
 部屋の中でゴソゴソして帰ってきて「シスカ。年末祭のプレゼントだ」とリボンの付いた赤い箱を渡した。
 しばらくポカンとしていたシスカは「ありがとう。でも僕の方は何も用意をしてない」と受け取るのをためらった。
「いいから。開けてみろよ。俺はお前が帰って来て付き合ってくれてるだけで充分だ」と強引に箱を押しつけた。
「ありがとう。じゃあ」もう一度礼を言ってシスカはリボンを解きにかかった。包装をビリっと破ってふたを開けると「あぁっ」歓声が上がった。
「サイクロスX32だ」箱の中には最新型のヘリコプターのディスプレイモデルが入っていた。
「やったー!どこから手に入れたんだこれ?」満面の笑みを浮かべて訊いてくるシスカに「俺の特別な裏ルートさ」と得意げに胸を張る。キタハラは見たかった通りのシスカの反応を見ることができて胸をなでおろした。
「ヘリコプターのディスプレイモデル自体少ないのに、こんな試作機のような機体よく手に入ったな。X32ってたしか高速実証機だったろう?」シスカはまだ興奮気味だ。取り出してローターを回してみたりしている。
 少なくとも今日ここに来るまでのシスカならこんな風には反応しなかっただろうなと思いながら、キタハラは2杯目のご飯にカレーをたっぷりとかけた。
 そしてシスカの様子をそっと観察しながら2人の時間を過ごした。シスカもまた充分に楽しんでいるように見えた。
 失われた記憶の輪がつながった。
 そのことはどんな影響を及ぼすのか、まだ全部現れたわけではないだろう。
 久しぶりにシスカと過ごす年末祭のイブの夜は更けていった。


(2014/08/06 更新)
関連記事
テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
 

16追加しました

--- 16 ---追加しました。
更新案内のひとりごとです。
---16---は静かに年末際を過ごすキタハラ親子を描いています。
この場面では登場人物は3人という意識です。
プレゼントとして登場する「サイクロスX32」はこんなイメージです。

X32イメージ
EUROCOPTER JAPANホームページより

モデルはユーロコプター高速・長距離ハイブリッドヘリコプター実証機「X3」です。
シスカが言っているように、こんな機種のディスプレーモデルなどまず一般人が手に入れることはできません。キタハラの特別な裏ルートってどんなルート??
関連記事
 
 

--- 17 ---

 キタハラは激しい叫び声に飛び起きた。(シスカか?)シスカの部屋に飛び込むとやはり叫び声はシスカだ。
 今日は2回目だなと思いながら、わめいているシスカの両肩を「シスカ!シスカ!」と揺さぶる。
 と、シスカの手足かギュ~っと縮まった次の瞬間キタハラは壁に飛ばされた。今度は手足をバタつかせて暴れているのだ。
「痛ーっ」と頭をさすりながら、暴れるシスカを強く抱きかかえ「シスカ!シスカ!」と耳元に声をかけるとようやく動きが穏やかになってきた。
 シスカの身長が自分より高いことに今更ながら気づき「小さい頃のようにはいかないな」と呟きながら少しづつ力を抜いた。やがて穏やかな寝息が聞こえるようになり静かになった。
 そっと布団に降ろして離れようとすると「キタハラ、キタハラ」シスカが弱々しい声で呼んだ。
「どうなってた?」シスカが訊いてきたが「ちょっとうなされてた。落ち着いたら寝ろ」と顔を近づけた。
「うそだ!うそを言うな!ちょっとじゃなかっただろ?大きな声で暴れたんだろ?すごく嫌な夢を見た。小さい頃の。耐えられないけど、何もできないんだ。抑えつけられて殴られて怖くて動けないんだ」シスカはしゃべるのを止めるのが怖いように一挙にしゃべった。「ずっと続くんだ。嫌なのに……」
 ここでつっかえて震えているが、涙は必死にこらえているようだ。
「無理に話さなくていい」キタハラはそっと肩を抱いた。
「ごめん。こんなで」シスカは下を向いた。
 今度は大粒の涙がぽろぽろとキタハラのひざの上に零れ落ちた。
 激しい環境と精神的な変化で相当疲れがたまっているはずだ。キタハラは小さい子供にするようにシスカの頭を抱えてやさしく髪を撫でてやると、シスカは手をキタハラの背中に回し遠慮がちに彷徨わせた。やがて彷徨っていた手は目的ものを手に入れたのか動きを止め、小さな寝息が聞こえ始めた。
 キタハラは昔の生活が戻ってきたような気がして暗澹たる気持ちになった。
 不安定な状態が長引かなければいいが、と思いながらシスカの重さを感じていたキタハラだったが「勘弁してくれよ」と情けない調子で呟くと、シスカをそっと寝床に降ろした。背中に有った手はするりと離れた。キタハラは静かに自分の寝室へ戻っていった。

 寝付けないと思っていたが、いつのまにか眠ってしまったらしい。目が覚めるともう周りは明るかった。今日は珍しくいい天気のようで、カーテン越しに朝日が差し込んでいる。
 シスカはあのまま寝たはずだったが大丈夫だろうか?
 そう考えたとたんに飛び起きた。(シスカは?)
 急いで扉を開けて廊下に顔を出すと、ダイニングキッチンで人の気配がする。
 ダイニングキッチンに飛び込むとシスカの後姿が見えた。窓から差し込む朝日にプラチナの髪が眩しく輝いている。サイドの髪を後ろでくくっているのもいつものとおりだ。
「おはよう」振り向いて笑顔のシスカが言った。
 キタハラはこんな屈託の無い笑顔は始めて見るような気がしてシスカの口元を一瞬見つめて静止した。
「おはよう。ちゃんと寝れたか?」キタハラが様子を窺うと、「ちゃんと眠れたよ。朝ごはん作ったから食べよう。今日はまた第2勤務だからゆっくりできるだろ?」とカレンダーを指さした。
「そうだな」シスカの安定した受け答えにとりあえず安心しながら「ちょっとトイレだ」といったん廊下へ戻った。
 用を済ませるとキタハラは「先にママさんに挨拶だ」とシスカに声をかけた。
「朝一に済ませたよ」と言うシスカに「二人一緒がいいんだ」と一緒に並んで写真に手を合わせた。
 そっとキタハラはシスカの様子をうかがったが、目をつぶって唇をきつくかみしめて下を向いている様子に自分が泣いてしまいそうになりあわてて横を向いた。
 朝食はハムエッグとトースト。それに野菜サラダ、コーヒーと牛乳が付いていた。シスカが朝食当番の時の定番だ。
 向かい合わせに座り「いただきます」とそれぞれ言って食事を始めた。
「キタハラ、昨夜はありがとう」少し下を向いて、バターをパンにたっぷり塗りながらシスカが言った。
 バターを塗ったパンの上にハムエッグを乗せてかぶりつこうとしていたキタハラは一旦止めて「いや。なんでもないさ。俺はお前の親だぞ。こういう時に利用するために居るようなもんだ」と大盛りパンにかぶりついた。
「ありがとう。感謝してる」シスカはまた泣いてしまいそうになるのをこらえているのか、下を向いてパンに口を付けた。
「なんだか涙もろくなったな」となんとなく顔を覗くと「ショウが涙もろいんだよ。でもショウはもともとのシスカだから、僕はシスカだよ」と顔を上げた。
「すまん。余計なことを言ったな。あまり深く考えるな。お前はお前だ。無理をしなくてもいい。それで良いんじゃないか?」キタハラはコーヒーをゆっくりと口元に運んだ。


(2014/08/06 更新)
関連記事
テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
 

プロンプト(17追加です)

--- 17 ---追加しました。
更新案内のひとりごとです。
15・16のサイドストーリーです。本文を読んでから読まれることをお勧めします。

 プロンプトは来店を示すカウベルの音に、店の奥の倉庫にある棚の間からカウンターに顔を出した。「よお、キタハラか」初老の小柄な男は、老眼鏡をおでこに上げながらしわがれた声を出した。
 ”ホビー・ショップ”。ライトレールの走る大通りから1本奥まった通りにあるこの店は、もともとプラモデルを主に販売する廃業寸前の店だった。
 ジリ貧の模型店を買い取りフィギアとディスプレーモデル専門店に改装したプロンプトは、芸術系大学のキャラクター造形学科などの教授を勤めていた関係もあって、フィギアやディスプレーモデルの作家やメーカー・流通業者にコネが効いた。
 そのコネを最大限に利用し、レアな商品や特注のフィギアの製作などをNETを経由して取り扱い、あくどく儲けていた。プロンプトが気に入って住み着いたこの最北の地でもNETさえあれば老人一人ぐらいは贅沢に暮らすことができた。
「暫くぶりだな。ドクター」キタハラはカウンターの前の椅子に腰をかけた。
「ドクターなんて言ってくれるのはお前さんが最後だよ」
「本当に博士なんだからそう呼んで何がおかしい?ドクター・プロンプト」
「フィギア屋の親父にドクターは合わんよ」と薄く笑って「で、今日は何の用かな?」とからかうような口調で付け足した。
「もうボケたか?俺の依頼品はどうなってる?」
 プロンプトは黙ってキタハラを見つめている。
「おい。まさかドクターのところで手に入らないなんてことがあるのか?」キタハラは少しイラついた表情になった。
 じっと見つめていたプロンプトは「ククッ……」とあまり品の良くない笑いを漏らした。
「少しぐらい楽しむ時間をもらってもいいだろう?少し待ってろ」と奥に入っていくと、箱を持って出てきて黙ってカウンターの上に置いた。
「開けていいか?」
 プロンプトは黙ってうなづいた。キタハラはそっと箱を開けた。
「オオッ。確かにX32だ。本当に有ったんだな」箱から出してゆっくりと眺めている。
「メーカーのサイクロス社が航空ショーでの成約記念と重要顧客用に小ロット用意したものだ。ヘリコプターの契約でもすれば確実にもらえるが、一般には出回らない」
「ドクターはヘリコプターの購入契約でもしたのか?」
「バカな。とある飛行機屋の重役からNETゲームの特注ドジっ子フィギアと交換で手に入いれたのさ。お前さんならこれをまたすぐに流通させたりしないだろう?」
「重役がフィギアをほしがるのか?」
「まあ人それぞれだからな。苦労したんだぞ。非常にレアなフィギアだったからな」プロンプトは巧妙に値段を吊り上げる。
「分かったよ。で、値段だが、いくらだ?」プロンプトにしては珍しく今回は適正に利益を見込んだ値段を言うと、キタハラは一発で了承した。
「ほお。今日は値切らないのか?」プロンプトは額にあったメガネを元に戻した。
「プレゼントだからな。値打ちを下げたくない。それに相場はそんなものじゃないのか?」
「いい見識だ。受け取るのはシスカか?」プロンプトはメガネの奥から目を細めて探るようにキタハラを見つめていた。
「そんなようなもんだ」キタハラは急に歯切れが悪くなった。
「えらく奮発したもんだな。上等の指輪が買えるぞ」その後にプロンプトは、あまり品の良くない笑いを続けた。
「ナオミが亡くなった時に涙も流さずに耐えていたからな。年末際の時にサプライズプレゼントをと思ったんだ。それだけだ」キタハラの目はプロンプトの後ろの棚の方に泳いでいた。
「今でもただのサプライズプレゼントなのか?」メガネの奥から見つめる目は優しく変わっていた。

関連記事
 
<- 11 2011 ->
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 - - -
プロフィール
こんにちは!サーカスへようこそ! 二人の左紀、サキと先が共同でブログを作っています。
ようこそ!


頂き物のイラスト

アスタリスクのパイロット、アルマク。キルケさんに書いていただいたイラストです。
ラグランジア
左からシスカ、サヤカ(コトリ)、サエ。ユズキさんにイラストを描いていただきました~。掌編「1006(ラグランジア)」の1シーンです。
天使のささやき_limeさん2
limeさんのイラストをイメージにSSを書いてみました。「ダイヤモンド・ダスト」
イラストをクリックすると記事に飛びます。よろしければご覧くださいネ!
スカイさんシスカイメージ
スカイさんのシスカイメージ
シスカ・イメージ高橋月子さん作
シスカ・イメージ 高橋月子さん作
シスカ・イメージlimeさん作
シスカ・イメージ limeさん作 コトリ・イメージユズキさん作
コトリ(コンステレーションにて)ユズキさん作
リンク
ブロとも申請フォーム

Archive RSS Login