Debris circus

Debris circus

頭の中に散らばっていた破片(debris)を改めて文章に書き起こし、オリジナルブログ小説としてサーカスの舞台に上げていきます。読みにくいものもありますが、お暇な時にパラパラとめくる感じででも読んでいただけたら嬉しいです……

 

コメット(12月24日)

只今、『第1回短編小説コンテスト』に参加しています。山西にとって大冒険です。
テーマは「クリスマスに関わるもの(自分にとってそうで有るものも可とする) 」です。
 参加者リスト(2011/12/24現在)
玩具箱を引っくり返したッ!! 自分 自身 様 この企画の黒幕さんです。詳しくはこちらのサイトで……
Blah-Blah-Time  N0min 様
 sonAs =幸=  藤仲美湖 様
kiminisottoblog  ゆり 様
妄想書架~郭公、KEIの小説ブログ。~  郭公 様
ピクルスの味  のりまき 様
マタアリ 様
白川琉 様
汰丸 様
と山西です。
で、締め切りには一日早いですが今日はクリスマスイブですので、コンテスト参加作品をとりあえずUPします。
すみません本当にショートショートです。

コメット(12月24日) 『第1回短編小説コンテスト』参加作品

 ネオエリア社の最新型旅客機コメットは、ホマレシティの南側を東西に連なる山脈の上空で着陸態勢に入っていた。
 CAのアナウンスは到着予定時刻、天候は快晴であること、空港の気温がマイナス5度であること、気流が乱れているが着陸に支障はないことを告げていた。
 北西風の強まるこの時期、空港への進入はこのコースを使うことがほとんどだ。逆に夏場は南からの風の影響を受け北からの進入になることが多い。

 エルはさっき、窓際の席で目を覚ましたところだった。腕時計を見ると18時20分、アナウンスにあった到着予定時刻に後10分ほどだ。
 隣の席では婚約者のシンが文庫本の上に目を落としている。時計を見る仕草で気がついたのか「目が覚めた?」と声を掛けてきた。
「うん。さっきね。ずっと本を読んでたの?」エルは少し甘えた声を出した。
「エルが寝てからずっとね。古い話だけど結構面白いんだ」と赤い表紙を見せてくれた。
 シンは本のタイトルと大まかな内容を説明してくれたが、エルにとってそれはあまり興味を持てる内容では無かった。
 それが表情に出たのかシンはエルの顔を暫く見つめてから「エルはあんまり本を読まないからなぁ」と言った。
「ごめんね。でも、好きじゃないものはやっぱりなかなか好きにはなれないもの。でも少しづつ好きになるように頑張る!」エルは最後のところに力を込めた。
「無理しなくていいよ。アレルギーにでもなったら大変だ」頑張るエルの様子が可笑しかったのかシンは顔をほころばせた。
 シンは前の席を斜めに覗きこんでから、そのままエルの方へ体を寄せてくると「今日は何の日だか知ってるよね?」と肩を抱いて髪をそっと撫でてくれた。
 エルも体をシンの方へ寄せ、シンの肩の上にそっと頬をのせて「クリスマスイブだよ」と答えた。
「じゃあ僕からのクリスマスプレゼント」とシンは手を伸ばしてウィンドウシェードを上げた。
 エルは窓の外を見て息をのんだ。
 窓の向こうには巨大な漆黒の大理石のテーブルがあって、その上にはこの銀河にある星の数ほどの宝石を詰め込んだ大きな宝石箱をひっくり返したように、ダイヤモンドやルビーやサファイアやエメラルドや瑪瑙や翡翠や……あらゆる種類の宝石がばらまかれていた。
 銀河の星の数ほどもある大小様々な宝石は、星々の原子の光を組み合わせて複雑に屈折させたように万色に輝き、放射状に並んだり、散らばったり、塊まったり、あるいは点滅したりした。
 それらの輝きは前方から新しいものが次々と現れて、そして後方へ滑るように流れ去って行く。
 エルは突然だったことと、あまりに美しかったことで、言葉を発するのも忘れて窓の外に見入っていた。
 コメットはホマレシティの中心部からやや外れた地域を低空で通過する着陸コースを、ILSに従って順調に飛行していたので、この窓からちょうどシティの中心部が斜め下正面に見える。
 そこは眩い宝石の塔が幾つもいくつもそびえ立ち、さながらクリスマスツリーの森の上空に迷い込んだかのような眺めだった。
 エルはシンの手を握ったまま、自分が眩いツリーの森の木々の上を通り過ぎるのを呆然と眺めていた。
 シンは手をエルに預けたまま優しく寄り添って、一緒に流れ去る宝石たちを見てくれていた。

 コメットは大きな川を飛び越えファイナルアプローチに入った。川を越えると町外れになるのか宝石の数はぐんと減って、同時に光はどんどん大きくなって、一つひとつの正体が分かるようになった。
 まもなく迫ったタッチダウンに向けてエンジンの出力を調整しているのか、エンジン音が強くそして弱くそしてまた強く変化する。
 エルはようやく現実の世界に引き戻されて、シンの方へ振り返った。
 エルは言葉を発しようとしたが、奇妙な浮遊感に不安を感じてシンの目を見た。シンもエルの目を見ていた。
 その時、自分の体が左側に傾き始め、エルはシンとつないだ手に力を込めた。
 大きな振動を感じ傾きが大きくなった。
 傾きはさらに大きくなり、振動も激しくなって、機内ではたくさんの悲鳴が聞こえ始めた。
 シンがエルの体を背中から抱え込んでくれた。何か言ってくれているが、騒音のせいで良く聞こえない。
 機体は悲鳴を上げながら少し上昇したように感じたが、弱々しく首をもたげただけで飛び立つことはできなかったのだろう。激しい衝撃が伝わってきた。騒音と振動の中、シートベルトがおなかに食い込む激しい痛みと、力強く支えるシンの手を背中に感じたのが最後だった。

 周りは真っ暗になった。

 エルは窓際の席で目を覚ました。
 心臓はまだ早鐘のように鼓動を打ち続けていた。エルは周りを見回し今の状況を把握しようとした。
 機体は水平で、安定したエンジン音が静かに聞こえている。こちらを向いて座っているCAと目が合うと、彼女は小さく微笑みを返してくれた。
 隣の席では婚約者のシンが文庫本の上に目を落としている。周りを見回す仕草で気がついたのか「目が覚めた?」と声を掛けてきた。
「うん。さっきね。ずっと本を読んでたの?」エルは少しかすれた声を出した。
「エルが寝てからずっとね。古い話だけど結構面白いんだ」と赤い表紙を見せてくれた。
 シンは本のタイトルと大まかな内容を説明してくれたが、エルにとってはそれどころではなく曖昧に相槌を打つのが精いっぱいだった。
 それが表情に出たのかシンはエルの顔を暫く見つめてから「エルはあんまり本を読まないからなぁ」と言った。
「ごめんね。でも、好きじゃないものはやっぱりなかなか好きにはなれないもの……」言葉は途中で止まった。
「無理しなくていいよ。アレルギーにでもなっったら大変だ」シンは顔をほころばせた。
 シンは前の席を斜めに覗きこんでから、そのままエルの方へ体を寄せてくると「今日は何の日だか知ってるよね?」と肩を抱いて髪をそっと撫でてくれた。
 エルも体をシンの方へ寄せ、その手をしっかりと握って「クリスマスイブだよ」と少しこわばった声で答えた。心臓は早鐘のように鼓動を打ち続けている。
「じゃあ僕からのクリスマスプレゼント」とシンは反対側の手を伸ばしてウィンドウシェードを上げた。
スポンサーサイト
 
 

ほうき星

ほうき星        この作品は「コメット(12月24日)」を改題・加筆修正し再掲したものです。

 12月24日午後6時16分。飛行機は、最北の巨大都市の南側に連なる山脈の上空で着陸態勢に入っていた。
 CA(客室乗務員)のアナウンスは到着予定時刻、天候は快晴であること、空港の気温がマイナス5度であること、気流が乱れているが着陸に支障はないことを告げていた。
 北西風の強まる冬の間、空港への進入はこのコースを使うことがほとんどだ。逆に夏場は南からの風の影響を受け北からの進入になることが多い。

 エルはさっき、通路側の席で目を覚ましたところだった。『もう着くのかな?』ウィンドウシェードが閉まっていたので腕時計を見ると午後6時20分、アナウンスにあった到着予定時刻に後10分ほどだ。
 隣の窓際の席では婚約者のシンが文庫本の上に目を落としている。2人は年末の休暇を使ってエルの実家に顔を出すためこの便に乗っていた。
 シンはエルの時計を見る仕草で気がついたのか「よく眠れた?」と声を掛けてきた。
「うん。シンはずっと本を読んでたの?」エルは少し甘えた声を出した。
「エルが寝てからずっとね。古い話だけど結構面白いんだ」と赤い表紙を見せてくれた。
 シンは本のタイトルと大まかな内容を説明してくれたが、エルにとってそれはあまり興味を持てる内容では無かった。
 それが表情に出たのかシンはエルの顔を暫く見つめてから「エルはあんまり本を読まないからなぁ」と言った。
「ごめんね。でも、好きじゃないものはやっぱりなかなか好きにはなれないもの。でも少しづつ好きになるように頑張る!」エルは最後のところに力を込めた。
「無理しなくていいよ。アレルギーにでもなったら大変だ」頑張るエルの様子が可笑しかったのかシンは顔をほころばせた。
 シンは前の席を斜めに覗きこんでから、そのままエルの肩を抱いて体を引き寄せると「今日は何の日だか知ってるよね?」と髪をそっと撫でてくれた。
 エルも体をシンの方へ寄せ、シンの肩の上にそっと頬をのせて「クリスマスイブだよ」と答えた。
「じゃあ僕からのクリスマスプレゼント」とシンは手を伸ばして閉まっていたウィンドウシェードを上げた。
 エルは窓の外を見て息をのんだ。
 窓の外には、漆黒の大理石のテーブルに宝石をばら撒いたような夜景が広がっていた。
 銀河の星の数ほどもあるダイヤモンドやルビーやサファイアやエメラルドや瑪瑙や翡翠や……大小様々なあらゆる種類の宝石は、星々の原子の光を組み合わせて複雑に屈折させたように万色に輝き、放射状に並んだり、散らばったり、塊まったり、あるいは点滅したりした。
 宝石は前の方から新しいものが次々と現れて、そして滑るように流れ去って行く。
 エルは突然だったことと、あまりに美しかったことで、言葉を発するのも忘れて窓の外に見入っていた。
 飛行機は都市の中心部からやや外れた地域を低空で通過する着陸コースを、ILSに従って順調に飛行していたので、この窓からちょうどシティの中心部が斜め下正面に見え始めた。
 そこは眩い宝石の塔が幾つもいくつもそびえ立ち、さながらクリスマスツリーの森の上空に迷い込んだかのような眺めだった。
 エルはシンの手を握ったまま、自分が眩いツリーの森の木々の上を通り過ぎるのを呆然と眺めていた。
 シンは手をエルに預けたまま優しく寄り添って、一緒に流れ去る宝石たちを見てくれていた。

 飛行機は大きな川を飛び越えファイナルアプローチに入った。川を越えると町外れになるのか宝石の数はぐんと減って、同時にどんどん大きくなって、一つひとつの正体が分かるようになった。
 まもなく迫ったタッチダウンに向けてエンジンの出力を調整しているのか、エンジン音が強くそして弱くそしてまた強く変化する。
 エルはようやく現実の世界に引き戻されて、シンの方へ振り返った。
 エルは言葉を発しようとしたが、奇妙な浮遊感に不安を感じてシンの目を見た。シンもエルの目を見ていた。
 その時、自分の体が左側に傾き始め、エルはシンとつないだ手に力を込めた。
 大きな振動を感じ傾きが大きくなった。
 傾きはさらに大きくなり、振動も激しくなって、機内ではたくさんの悲鳴が聞こえ始めた。
 シンがエルの体を背中から抱え込んでくれた。何か言ってくれているが、騒音のせいで良く聞こえない。
 機体は悲鳴を上げながら少し上昇したように感じたが、弱々しく首をもたげただけで飛び立つことはできなかったのだろう。激しい衝撃が伝わってきた。騒音と振動の中、シートベルトがおなかに食い込む激しい痛みと、力強く支えるシンの手を背中に感じたのが最後だった。

 周りは真っ暗になった。

 エルは目を覚ました。
 心臓はまだ早鐘のように鼓動を打ち続けている。エルはキョロキョロと周りを見回した。
 機体は水平で、安定したエンジン音が静かに聞こえている。こちらを向いて座っているCAと目が合うと、彼女は小さく微笑みを返してくれた。
 隣の席では婚約者のシンが文庫本の上に目を落としている。周りを見回す仕草で気がついたのか「よく眠れた?」と声を掛けてきた。
「うん。ずっと本を読んでたの??」エルは少しかすれた声を出した。
「エルが寝てからずっとね。古い話だけど結構面白いんだ」と赤い表紙を見せてくれた。
 シンは本のタイトルと大まかな内容を説明してくれたが、エルにとってはそれどころではなく曖昧に相槌を打つのが精いっぱいだった。
 それが表情に出たのかシンはエルの顔を暫く見つめてから「エルはあんまり本を読まないからなぁ」と言った。
「ごめんね。でも、好きじゃないものはやっぱりなかなか好きにはなれないもの……」言葉は途中で止まった。
「無理しなくていいよ。アレルギーにでもなっったら大変だ」シンは顔をほころばせた。
 シンは前の席を斜めに覗きこんでから、そのままエルの肩を抱いて体を引き寄せると「今日は何の日だか知ってるよね?」と髪をそっと撫でてくれた。
 エルも体をシンの方へ寄せ、その手をしっかりと握って「クリスマスイブだよ」と少しこわばった声で答えた。心臓は早鐘のように鼓動を打ち続けている。
「じゃあ僕からのクリスマスプレゼント」とシンは反対側の手を伸ばしてウィンドウシェードを上げた。


テーマ : 自作小説    ジャンル : 小説・文学
 
<- 08 2017 ->
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
プロフィール
こんにちは!サーカスへようこそ! 二人の左紀、サキと先が共同でブログを作っています。
ようこそ!


頂き物のイラスト

アスタリスクのパイロット、アルマク。キルケさんに書いていただいたイラストです。
ラグランジア
左からシスカ、サヤカ(コトリ)、サエ。ユズキさんにイラストを描いていただきました~。掌編「1006(ラグランジア)」の1シーンです。
天使のささやき_limeさん2
limeさんのイラストをイメージにSSを書いてみました。「ダイヤモンド・ダスト」
イラストをクリックすると記事に飛びます。よろしければご覧くださいネ!
スカイさんシスカイメージ
スカイさんのシスカイメージ
シスカ・イメージ高橋月子さん作
シスカ・イメージ 高橋月子さん作
シスカ・イメージlimeさん作
シスカ・イメージ limeさん作 コトリ・イメージユズキさん作
コトリ(コンステレーションにて)ユズキさん作
リンク
ブロとも申請フォーム

Archive RSS Login