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Debris circus

Debris circus

頭の中に散らばっていた破片(debris)を改めて文章に書き起こし、オリジナルブログ小説としてサーカスの舞台に上げていきます。読みにくいものもありますが、お暇な時にパラパラとめくる感じででも読んでいただけたら嬉しいです……

 
★作品へのリンク!&お願い!
 
 

【オリキャラ飲み会】こんなの飲んでる

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 八少女夕さん企画の【オリキャラ飲み会】に参戦してみることにして、左紀の作品からヒロイン級のキャラクターを集めてみました。
 サキにはお酒に関する蘊蓄の持ち合わせがほとんど無いので、深く掘り下げられないのですが、サキの脳内で彼女らはこんなお酒を飲んでいます。
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[シスカ]シスカ
 だいたいビール・・・作中では仮想世界であるため発泡酒という表記になっています・・・で喉を潤し、それから強い蒸留酒へと進みます。作中ではロックと書いていますからウィスキー(スコッチ?)かなぁ。彼女には北方民族の血が入っていますのでアルコールには強いです。ウォッカ系が似合いそうですが、透明なものより琥珀色の方を好みます。

[254]コトリ
 普段アルコールはあまり飲みませんが結構強いです。
 親父さんに付き合っていた関係で何でも飲みますが(焼酎や日本酒もOK)、ビールはちょっと苦手です。
 バイクショップはギリギリでやっていますので、ヤキダマの収入と合わせてもあまり余裕はなく、夕食時に2人で安いワインを開けることが多いです。必然的に乾杯はワインになりますが、ヤキダマはビールも飲みます。
 どなたか高級なワインを手土産に「コンステレーション」を訪れてやってください。喜びますよ。

[Eridanus(エリダヌス)]クウ
 まったく不明ですが、印象的にはスパークリングワイン?
 ガブガブ飲むことはなさそうに思うのですが、開栓したら一気に飲まないと・・・。

[アスタリスク]アルマク
 サキキャラの中で彼女が一番強く、飲んでも変わりません。
 ビールだと底無しで飲んで、それでも物足りなくなって強いお酒に進みます。
 お洒落な飲み方はしないので銘柄に拘りもありません。
 ま、パイロットですから、わきまえてはいますが・・・。
 相方のミラクは好きですがあまり強くないので、一緒に飲みに行ったらたいていアルマクに介抱してもらうことになります。
 テーマからは外れますがアルコール系デザートは「チョコレートリキュールアイスクリーム」が気になっています[アスタリスク(12)「チョコレートリキュール」]

[フォマルハウト]フォマルハウト
 生まれてから酒という物を飲んだことはないはずですが、この世界にきてからは飲んでいるのかも・・・。

[新世界から]ズイキ
 職業柄ほとんど飲みませんが、今は戦闘機乗りを引退しているので飲酒シーンがあるかもしれません。「新世界から Scene1 Habitat」

[新世界から]フワリ
 まだ未成年なので飲んではいけません。でも生活していた場所が場所だからなぁ・・・。「新世界から Scene2」

[物書きエスの気まぐれプロット]エス
 舐めるぐらいかな?夏場はビールで喉を潤し、ワインやハイボールなんかも・・・(どこが舐めるぐらいなの?)。

[物書きエスの気まぐれプロット]コハク
 そういえばどこかでスパークリングワイン“カバ”を飲んでいましたね。「コハクの街」

[絵夢の素敵な日常]絵夢
 絵夢の家、ヴィンデミアトリックス (Vindemiatrix) 家は、ラテン語で「ぶどうを摘む女」という意味らしいですから、世界中にワイナリーを幾つか持っています。高級な物を飲んでいるんだろうなぁ。でも作者の知識不足のため描写出来ていません。

[絵夢の素敵な日常]絵瑠
 白川性を名乗っていますが、絵夢の娘ですからもちろんワインを好みます。
 作中[PX125]ではお寿司に合うワインを飲んでいたりして、ワインには拘りもあるようです。

[絵夢の素敵な日常]ミク
 ジョゼに付き合ってポートワインを飲むこともありますが、ドウロワインなどのポルトガルワインのtintoがメインでしょうか。
 ドイツのアパートでは[それぞれのロンド]冷蔵庫にピルスナービールが入ってましたね。あのカオスの部屋、今はキチンと片付いています。
 酒蔵の娘[貿易風(alisios)]ですが、故あって日本酒はほとんど口にしません。


 どうもうちはワイン派が多いようですね。
 サキが日本酒があまり飲めないので、ワインへ流れる傾向になるんでしょう。
 日本酒にはとても興味を持っているんですけれど・・・。
 お酒はコーヒーやお茶、煙草などと共に嗜好品に分類され、Wikiによれば「栄養・エネルギー源を期待しない」「病気治療を期待しない」「生命維持に強い効果はない」とか「薬理学的な機序により習慣性を有し、物質嗜癖の対象となりうる」とか散々なのですが、物語に深みを持たせるには必須のものだと思います。
 ただしうちのキャラ、煙草は誰も吸いません。嗜好品として煙草が幅をきかせた時代もありましたし、まだまだ吸う人も多いので少し不自然な気もしますが、登場したことは無いはずです。
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テーマ : つぶやき    ジャンル : 小説・文学
 
 

40000HIT記念作品の発表です

 今夜は40000HIT記念作品の発表です。

 40000HIT記念作品、第2作のタイトルは「みはらし屋のさくら」です。
(面倒な方はこのタイトルをクリックしていただくと本文に飛べます)

 今夜は八少女夕さんからいただいたリクエストにお応えしています。
 夕さんは、実に多種多様な小説を書かれるスイスに住んでおられるブロガーさんです。サキとほぼ同じ時期にブログを始められていてお付き合いは長いのですが、物書きとしての経歴はサキよりずっと長くて、レベルもずっと上です。サキはブロ友の皆さんにずっと引っ張られてここまでブログを続けてきたようなものなのですが、夕さんから受けた影響や刺激は計り知れないものがあると思っています。
 さて、夕さんからいただいているリクエストは以下のようなものでした。

 お題は「桜満開の吉野山」で。キャラは山がお名前に入っているあのご一家のどなたかで。あ、お勤め先の某名家の方でもOKです。

 サキは「桜満開の吉野山」どころか「吉野」にすら行ったことがありませんから、この部分はすべて想像とNETの情報に頼りました。齟齬がありましてもお許しください。
 そして「山がお名前に入っているあのご一家」ということは、「絵夢の素敵な日常」シリーズに登場する黒磯一家の誰か、という事ですね。「お勤め先の某名家の方」とは絵夢のことですね。
 久しぶりの登場なので過去に遡って作品をサーチしてきました。見返してみると随分忘れています。自分で作り出したキャラクターなのに薄情なものですが、新しく作り出したキャラに思い入れてしまう傾向が強いので、どうしてもそうなってしまうのでしょう。
 舞台設定とご指定のキャラの融合に手間取ってしまいましたが、新しいキャラを2人登場させて、そちらをメインにすることでなんとか乗り切りました。ご指定のキャラはサブとして登場させましたが、2人のその後の様子も描いてみました。女性の方、夕さんは憶えておられるでしょうか?
 上手くいっていれば良いのですが・・・。

 興味の湧かれた方は下のリンクからお進みください。
みはらし屋のさくら

 このイベント、4人の方からリクエストを承るということになっているのですが、現在3人の方からリクエストをいただいていて、リクエスト枠があと1つ残っています。
 よろしければお申し付けください。
 さて次は大海彩洋さんのリクエストに取り掛かります。
 なんと時代劇(ふう)の小説に挑戦です。時代劇は(ふう)だとしても初挑戦です。どうしよう?
 例によってまだなにも構想を練っていませんし、初めての試みなので、相応の時間をいただくことになると思います。というか今回の作品、タイトルだけなら時代劇ふうですよね。なんて、ごちゃごちゃ言ってないで書こうっと!
 お待ちいただければ嬉しいです。
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みはらし屋のさくら

 咲良はなるべく辺りを見ないように歩いていた。
 柔らかな午後の日差しが降り注ぎ、4月の爽やかな風が吹き抜ける。周りの桜はきっと満開のはずだ。
 それなのに咲良はずっと下を向いて坂道を登っている。
 寺へと続く緩やかな坂は小さい頃から数え切れないほど行き来した道だ。それほど通いなれた道筋なのに彼女は何度も観光客にぶつかりそうになる。
「すみません」その度に謝りの言葉を発しながら、それでも彼女は下を向いたまま進んで行く。自分の大切な場所がどうなっているのか、どうしても確かめる必要があった。
 やがて目的の場所が近づいてくる。そっと顔を上げてその場所の様子を伺うと、そこには道沿いに軒を連ねる建物の中に挟まるようにして、一軒の木造の建物が建っていた。
 建物の形や構造は大きく変わっていない。変わっているのはその見かけだ。痛んでいた箇所が修理交換され、屋根瓦や板壁、窓、すべてが綺麗に磨かれ、長い歴史を歩んできた建物がそれに裏打ちされた美しさを醸し出している。
 悔しいが彼女が住んでいた頃のうらぶれた姿からは想像できないほど素敵に生まれ変わっている。
 咲良は暫くの間立ち止まってその建物を見つめていたが、やがて覚悟を決めたようにそこへ足早に近づいていった。
 玄関は元の位置にそのまま残されている。当時はガタガタと音を立てる引き戸だったが、大きな格子の自動ドアに取り替えられていて、中の様子が伺える。その横の板壁にはこの宿の名前がシックなデザインフォントで描かれ、上段には「みはらし屋」、これは咲良が住んでいた頃の屋号がそのまま使われている。下段にはやや大きなフォントで「葡萄館」とある。これが今の正式な名称だ。
 一旦立ち止まったらそのまま引き返してしまいそうな気がして、咲良は足を緩めないまま自動ドアを入った。
「いらっしゃいませ」咲良は落ち着いた声に迎えられた。入ったところは木をふんだんに使った暖かい雰囲気のホールで、突き当たりがフロントだ。
「ご宿泊ですか?」作務衣の様な服装の男性に声を掛けられた。ホテルで言うところのドアボーイのような役回りだろうか。
「予約している山岸です」咲良はなるべく明るく聞こえるように返事をした。
「山岸様。どうぞこちらへ」彼はさりげなく咲良の荷物を受け取ると彼女をフロントへ誘った。
「いらっしゃいませ」フロントでは1人の女性に笑顔で迎えられた。
「予約している山岸です」咲良は繰り返した。
 フロントクラークの女性は一瞬目を見開いたがすぐに笑顔に戻り「山岸様。承っております」とモニターを覗きながらキーボードを操作した。
『内田』ネームプレートにはそうある。咲良は彼女の顔に同名の幼馴染の面影を認めた。彼女は小さく頭を下げたが、そのまま何食わぬ顔で手続きを進めていく。咲良も何も返さず請われるままにサインをすませた。
 チェックインを済ませた咲良は先ほどの男性の案内で客室へ向かった。
 畳敷きの和室ばかりだった頃とは様変わりして、部屋はベッドが2つ並んだ洋室だった。インバウンドも意識されているのだろうか、実用的で落ち着いた雰囲気は客室として好感が持てる。
 咲良は旅装を解き、部屋着に着替えて窓から遠い方のベッドに倒れこんだ。カーテンはまだ開けていない。カーテンの向こうには絶景が広がっているはずだが、眺めるのは明朝まで待つつもりだ。日も傾いて光量も落ちている。どうせなら最高のコンディションで眺めよう。彼女はここへ着く前からそう決めていた。

 いつの間にか眠っていたのか、咲良はふとベッドから頭を起こした。ノックの音がした気がしたのだ。どれくらい眠ったのだろう。部屋の中は薄暗くなっている。
 もう一度ノックの音がする。
「はい?」咲良は明かりをつけ、小さな予感を抱きながらベッドから起き上がった。部屋を横切り、そっとドアを開けるとさっきのフロントクラークが立っていた。 
「咲良・・・だよね?」彼女が尋ねる。
「明里?」咲良は確認を取った。
「やっぱり!」数年の時の隔たりは一気に取り払われ、時間はその流れを逆行する。
 2人は一通りの挨拶を済ませると近況報告に話題を移した。
「どうしてここに?」咲良はずっと気になっていたことを訊いた。
「咲良こそ、びっくりしたわ」明里は質問を返したが「私から話した方がいいかな?」と応じた。「私は大学を出た後大阪のホテルに就職したんだけど、自分はアーバンホテルってガラじゃないなと思い始めて、それで転職先を探していたら、偶然ここを見つけたの。吉野で『みはらし屋』って言ったら咲良ん家しかないじゃない。でも調べてみたら経営者は変わっているし、改装されて新しくなっているし、驚いたわ。でもね、働いてみると働きやすいし、環境も良いし、ここへ来てよかったと思ってる」
「そう、よかったね」咲良はホッとした表情になった。
「次はあなたの番よ。何がどうなったの?聞かせてちょうだい」
 咲良は一旦息を吐き出してから大きく吸い込み、それから話し始めた。
「うちの経営が行き詰っていたことは知っていたわよね?」
「ええ、まぁ」
「家族経営で人手不足、両親も歳を取っていたし、資金も回らないから改修もままならないし、いっそのことここを手放して引退しようってことになったの。そこで手を差し伸べてくれたのが今の経営者ってわけ。今のあなたの雇い主ね」
「巨大なグループの傘下だからもっと締め付けが厳しいのかと思ったけど、結構裁量を任されてるって感じで、生き生きと仕事ができてるよ」
「そう、いい経営者みたいだね。でも私はここでで生まれ育ったし、私の家だったし、こっちの都合で手放したんだけど、やっぱり逃げ出したみたいで残念な気持ちもあったし、複雑な感情を持っていたの」
「でしょうね」
「それで、ここを離れて何年も過ごすうちに、ここがどうなったのかどうしても確かめたくなって、我慢できなくなって戻ってきてしまったの」
「そう・・・」
「素敵な宿になっていたわ・・・」
「ありがとう、私が言うのも変だけど・・・」明里が照れた様に言った。
「ここからの風景は変わらないんでしょうね」
「ええ、なんと言っても『みはらし屋』だもの。桜はそれなりに大きくなっているけれど美しさは変わらない。いえ、大きくなった分、さらに綺麗になっているかも・・・って、咲良!まだ見ていないの?」
「見れないのよ。ここへ来るまでもずっと下を向いて歩いてきた」
「じゃぁ・・・」明里は立ち上がってカーテンを開けようとした。
「待って!ちゃんと見たいの。明日朝、日が昇って明るくなってから」咲良はすがるように明里を止めた。
「そうだね。もう暗いものね」明里は小さく頷いて話題を変えた。「そうだ、食事は?確か夕食が付いていたっけ?」
「うん、さっきあなたが確認したじゃない?」
「おっと、そうだった。じゃぁ一緒に食べない?」
「え?いいの?」
「私はもうすぐ上がりなの、お食事処の予約を組み替えて2人で食べられるように変更する。それでいいわね?」明里は有無を言わせぬ雰囲気だ。
「ええ、ぜひ」咲良はありがたく申し出を受けることにした。
「じゃぁ、そういうことで。私はもう仕事に戻る。終わったら誘いに来るからシャワーでも浴びて、ここでくつろいでいて」
「わかった」
「あとでね」明里は仕事に戻っていった。
 咲良は夕食までの間にシャワーを浴びることにして支度を始めた。

 夕食は楽しいものになった。
 スタッフの対応は身内の明里が居るにもかかわらずなれ合いにはならず、しかし適度に暖かく家庭的だった。気に入ったのは料理を出すとき「・・・になります」と言わないことだ。「・・・でございます」と言われるとサービスのレベルが一段上がったような心持ちになる。新鮮な素材を使った懐石料理は美味しく、明里が料理に合わせてオーダーしてくれたワインや日本酒の酔いは会話を弾ませた。建物にはあちこちに咲良が住んでいた頃の雰囲気が残されていて、それがまるで彼女を家に居るような寛いだ気分にさせた。咲良は遠慮なくそれを受け入れ、その夜は更けていった。
 久しぶりの心地よい時間だった。

 翌朝、咲良はみはらし屋のデッキに佇んでいた。
 早朝と言うには太陽は幾分高度を上げ過ぎているが、冷たく澄んだ空気の中、くっきりとした日差しが山肌全体に届いている。昨夜飲みすぎたのか、ベッドの寝心地がよかったのか、少し寝坊してしまったのだ。だがその寝坊のお陰で、この素晴らしい光線状態を得ることが出来たと考えれば、それも幸運と呼んでもいいのかもしれない。
 眼下にはシロヤマザクラを中心に一目千本と例えられるたくさんの桜が植えられていて、それが今満開を向かえている。
 一面の桜色と言ってしまえば簡単だが、見渡す限りの山肌がその桜色に埋め尽くされている様は圧巻だ。
 桜色は非常に淡い紅色のことだが、桜1本1本の個性や生育環境によって微妙に変化する。本来の桜色に加えて、濃い目の聴色(ゆるしいろ)や退紅(あらぞめ)から、ほとんど白に近い薄桜色まで、様々な桜花の色に加えて、散り始めた花に残された桜蘂の深紅や花と一緒に芽を出す若葉の萌赤や萌木色、桜を取り巻くように植えられた常緑樹の深緑、それらが絶妙なグラデーションとなって山肌の起伏を覆っている。
 咲良は物心がついてからずっと、毎年この光景を見続けてきているのだが、いまだにこれに飽きるということは無い。この光景は見るたびに鼻の奥にツーンとした刺激を呼び覚まし、涙腺を緩ませるのだ。

 後ろから話し声が聞こえた。
「・・・だから、今のプロジェクトが終わるまでは日本に戻ってこれないんだってば。わかってよハル」女性の苛立った声だ。
「わかるよ。ユウがそれをどれだけ大切に思っているかもわかっているつもりや。でも、こっちにも予定というものがある。大体のスケジュールだけでも把握しておきたい。それだけなんや」男性がそれに答えた。なるべく感情を抑えて話している。
 咲良は目立たないように声のするほうに目をやった。
 ひと組のカップルがドアを開けてデッキへ出てくるところだった。
 少し長めのふわりした髪のほっそりとした男性と、潮に焼けているのだろうか、少し色黒の化粧気の無い顔にショートカットのボーイッシュな女性だった。
「それがわかったら苦労は無いよ」女性は大きく溜息をついた。「生き物は人間の都合に合わせてくれないし、受け入れてくれる機会も限られている。もう少しで研究の成果が出そうなんだ。でも、それがいつかなんてわかるわけないよ」
「僕のほうも次の仕事は海外になりそうなんだ。たぶん数年がかりになる。ユウのスケジュールがわかればこっちも無理を利かせることができると思う。だから・・・」そこまで言ったところで彼は咲良の存在に気が付いて言葉を止めた。何事も無かった様に、ゆっくりとデッキの端へと彼女を誘う。彼女もそれにしたがってデッキの端へと向かう。
 2人が息を呑む雰囲気が伝わってきた。
 暫くの間、2人は無言でデッキからの風景を眺めていた。
『みはらし屋からの眺めは天下一品だよ』咲良は誇らしげな気分になって2人の様子をそっと眺めている。
「きれい・・・」やがて女性がたまりかねたように言った。
 音量を落したつもりのようだが、極めて静寂な環境は2人の会話を伝えてくる。
 男性は黙ったまま女性の肩を抱き、そのまま2人は寄り添った。
「ねえ・・・ハル」
「うん・・・?」
「ボクたち、普通なら分かれたほうがいいのかもしれないね」女性が言った。
「ユウ、本当にそんなふうに考えているのか?」咎めるような口調で男性が応じる。
「普通なら・・・だよ。ボクたちじゃなかったら・・・だよ」
「僕らは普通やないってか?」
「そうじゃない?」
「そうやな」男性は再び女性を引き寄せた。
 暫く無音になった。何処かから鶯の声が響く。練習を終えた完璧なさえずりだ。そのまま谷渡りにかかる。
「またここへ帰ってこようよ」唐突に彼女が言った。
「桜の季節に?」
「そう。そしてそれを繰り返すの」
「ずっと?」
「そう、上手く融合するまで・・・」
「上手く行くよ、きっと・・・」
「予約を入れておかなくちゃ」彼女は笑顔になった。
「いくらここのお偉いさんだからって絵夢にお願いしてばかりじゃ悪いな」彼も応える。
 寄り添ったまま2人は手摺を離れ、デッキを出て行った。
「帰ってこよう・・・か」咲良はそう呟きながら2人が入って行った建物を見上げ、そして笑顔で語りかけた。「いい宿になったね」
 咲良は再び視線をデッキの外に戻すと、眼下に広がる風景に見入った。
 わだかまりは消えていた。
 自分たちの選択は間違っていなかったのだ。
「私も来年の予約を入れておかなくちゃ」咲良は呟いた。
 あの2人と同じように・・・。

2021.04.22
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今夜は40000HIT記念作品の発表です。

 40000HIT記念作品、第1作のタイトルは「Glamorous Glennis」です。
(面倒な方は上のタイトルをクリックしていただくと本文に飛べます)
 あ、この記事はエイプリルフール記事ではありませんからね。

 現在3人の方からリクエストをいただいていますが、今夜はまずTOM-Fさんからいただいたリクエストにお応えしています。
 TOM-FさんはハードなSF系小説を中心に、幅広いジャンルを書かれる創作ブロガーさんです。ほとんどの作品に胸キュンヒロインが登場するので、いつもキュンキュン胸を鳴らしながら読ませていただいています。
 サキとはメカニック系大好きという点が共通していて、色々と刺激を受けたり、参考にさせていただいたり、楽しくお付き合いさせていただいています。
 まぁ、TOM-Fさんの書かれる物語の超緻密でリアリスティックな設定や描写にはいつも脱帽なのですが・・・。

 いただいているリクエストは以下のようなものでした。

 テーマが「40000」、内容としては「四つの何か」と「四人のキャラ」が出てくる小説なんて、どうでしょうか。難しいようであれば、テーマだけでも採用してくださると嬉しいです。

「40000」をテーマに・・・と言われてもただの数字じゃないですか。サキは頭を悩ませた末に、なんとか通過点として盛り込みました。テーマとしては力不足になってしまいましたがお許しください。
「四つの何か」についても「四人のキャラ」と連動させて何とか登場させました。
 ただでさえ登場するキャラの少ないサキがこの掌編で4人ものキャラを同時に扱うのはちょっと難しくって、実際に登場するキャラは2人だけです。この辺でご勘弁ください。
 そしてTOM-Fさん仕様としてメカメカにしています。メカメカ部分、読み込まなくてもストーリーに差し障りはありませんので、苦手な方はササッとスルーしていただいても大丈夫だと思います。あ、スルーしたら読むところが無くなるか・・・。
 なんだかイベントを繰り返すたびにリクエストが難しくなっていくような。
 ま、リクエストは頂けるだけでもうれしいですし、やりがいはあるんですけれどね(ちゃんと書けているかどうかは別にして)。

 興味の湧かれた方は下のリンクからお進みください。
Glamorous Glennis

 このイベント4人の方からリクエストを承るということになっているのですが、現在3人の方からリクエストをいただいていて、リクエスト枠があと1つ残っています。
 よろしければお申し付けください。
 さて次は八少女夕さんのリクエストに取り掛かります。
 まだなにも構想を練っていませんので、少し時間をいただくことになると思います。
 サキはいたってマイペースです。気長にお付き合いいただければ嬉しいです。
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Glamorous Glennis

 地平線の彼方に小さく黒い点が見えた。
 それは見る見る大きくなり、やがてそのペンシルのようなスマートな容姿が顕わになる。機体はスーパージュラルミン製だが塗装されておらず、照りつける太陽の光をキラリと反射する。ダンドリはファインダーに入った機体にフォーカスするとシャッターを切り始めた。
 向かう先は基地のメイン滑走路だ。ダンドリはズームレンズを振りながらシャッターを切り続ける。唐突に機体から着陸装置がせり出した。二重反転プロペラが空気を切り裂く音が耳をつんざき、機体はほとんど減速しないまま滑走路に滑り込んだ。すぐにエアーブレーキが展開される。
 滑走路は舗装されていない、着陸装置が巻き上げる砂煙に、たちまち視界は遮られる。
 やがて砂煙が治まり、機体が滑走路の向こうに無事に停止しているのを確認すると、ダンドリはその場を離れた。

 基地は広大で巨大だ。真っ平らな干湖を利用して作られた10000メートル以上もあるメイン滑走路を始め、あらゆる方向を向いた何本もの滑走路を持つ空軍の基地であると同時に、砂漠のど真ん中にあるという立地を生かして、航空機の開発・研究・調査・テストを行う空軍飛行試験センターや、そのためのパイロットを教育するパイロットスクール、国の研究機関である飛行研究センターなども基地内に抱えている。基地では多くの人が働いていて、所属する軍人、働いている民間人、それにその家族までを合わせると、小さな都市位の規模になる。当然ながら、基地にはその規模に見合ったインフラや住民が生活するための様々な機能も用意されている。
 ダンドリが仕事場として納まっているこのバーもそのうちの1つだった。バーは巨大なショッピングセンターの一角にあり、カウンターの10席と4人掛けのテーブル5つを何とか詰め込めるくらいの小さな店だ。まだ早い時間だから客はいない。
 暗めの照明、ミシミシと軋む床、磨き上げられたカウンター、奥の棚にはズラリと並んだ酒瓶の数々、ダンドリが趣味で集めたレコードがセットされたジュークボックス、そして渋い色調の板壁に貼られたたくさんの写真。雰囲気は悪くは無いはずだ。
 ドアを押して客が1人入ってきた。
 よく知った人物だったが、店にやってくるのは初めてだ。赴任してからもう何ヶ月にもなるのに、ここへは一度も顔を出さなかった。
 基地は砂漠のど真ん中にある。一応道路で外界とは繋がっているが気軽に出かけられるような距離ではない。どこへも行くところがないから、すべては基地内で済ませることになり、必然的にダンドリの店にも顔を出すことになる。少なくともこれまではそうだった。
 女だからだろう。男と女は根本的に別の生き物なのだ。ダンドリは単純にそう考えていた。
 女は窓際の一番奥のテーブルに座った。
 白い小ぶりな顔につんと上を向いた小さな鼻、そばかすのある頬、やや厚めだが横幅の小さい唇、肩の上でカットされた髪は真っ直ぐで真っ黒だ。大きな黒い瞳がこっちを向いて、すぐに窓の外を向いた。どうやら呼ばれているようだ。
「いらっしゃい」ダンドリはテーブルに出向いて挨拶した。
「飲みもの、何がある?」少しハスキーな声だった。
「酒なら強いものから軽いものまで大体なんでも」ダンドリはそこで一拍置いて「ソフトドリンクなら・・・」と、壁に貼られたメニューの方を指差した。
 女はそれをじっと眺めていたがやがて「コーヒーを・・・」と言った。
「熱いやつ?」
「そう、火傷しそうなやつ」
「ラジャー」ダンドリは敬礼を決めるとカウンターに戻ろうとした。
「ねぇ」女の声がそれを追う。
 ダンドリが振り返ると、女はまだ壁の方を見つめている。
「ここに貼られた写真、ほとんどが飛行機だけど、中に混ざってるポートレートはみんなパイロットなの?」
「そうでもない。パイロットは11人だけだ。あとは技術者やメカニック、将校もいる」
「パイロットって、テストパイロット?」
「この店から一番近い施設は空軍の飛行試験センターだ。だからまぁそういうことになるな。テストパイロットのヒカップさん」
「私のこと知っているの?」女は一瞬顔を歪ませ、壁の写真から目を戻した。
「当然さ。よく存じ上げておりますよ」ダンドリは唇の端を曲げる。
「どれくらい知っているの?」不安そうに彼女は訊いた。
「本名はヤマウチ・ルナ。ヒカップというのはあんたの通り名だ。どうしてそう言うかというと・・・」
「止めてよ」ルナは強い調子でダンドリの言葉を制した。
「止めておこう。ま、テストパイロットなんてのは個性的なやつらばかりだ。いろんな言われ方をする」
「冗談じゃないわ。どうしてこんな名前で呼ばれなきゃいけないの?」
「プライドは高いんだな。あんたはテストパイロットだから当然といえば当然のことだが、まぁあんたへのやっかみもあるんだろう」
「ふざけたことを言わないでよ」ルナは顔を横に向けた。
「ふざけているわけではない」ダンドリはコーヒーを入れるために踵を返した。
「ねぇ」ダンドリがカウンターに背中を向けてコーヒーの用意をしていると、後ろから声が掛かった。
「なんでしょう?」背中を向けたまま返事を返す。ルナはいつの間にかカウンター席に腰掛けていた。カウンターに肘を突いて手を顎に当て、顔を真横に向けている。
「壁の写真って、あなたが貼っているの?」ルナは壁に貼られたたくさんの写真を眺めながら言った。
「ああ、上の方は先代のマスターだが、途中からは俺が貼っている」
「くだんない・・・」ルナは横を向いたまま言った。
「すまないな。機体もそうだが、ポートレートの方も先代のオーナーと俺が気に入った奴の写真だけを貼っている。昔は何となく基準のようなものはあったんだが、最近では考えるのを止めてしまった。今は、そう、直感って奴かな?直感で選んでいる」
「くだんない・・・」ルナはいかにも関心の無さそうに言った。
 そのまま暫く沈黙の時間が流れた。ルナはまだ顔を真横に向けて退屈そうに写真を眺めている。
「あんた、次ぐらいには音速を超えるつもりだろ?」唐突にダンドリが訊いた。
「どうしてそれを!」ルナの大きな目がさらに大きく広げられた。
「ダイブする音を聞いていればわかるさ」なんでもないことのようにダンドリは言う。
「公式発表では・・・」
「わかってるさ。俺がすっぱ抜いても誰も信じやしない」
「それもそうね」ルナは少し顔を緩めた。
「俺の想像だが、飛行プランはこうだ」ダンドリは熱々に入れたコーヒーをルナの前に置いた。
 ルナはそれにそっと唇を付け、空気と一緒にそれを口に含んでから目で先を促す。
「まず滑走路17から離陸する。北西に飛行しながら高度を40000ft、あるいはそれ以上まで上げる。そしてUターン。南東を向いて水平飛行でトップスピードまでフル加速、トップスピードに達したらダイブに入る。40000ftからのダイブだ。そしてレーダーの追尾を受けながら音速を目指す。限界まで行ったら引き上げに入る。ま、そんなとこだろう」ダンドリは手振りを交えながら解説する。
「・・・」ルナは黙って見上げている。薄く唇が開いているから、おそらくダンドリの想像が当たっているのだろう。
「タービンエンジンが完成すればもっと楽になるんだろうが、レシプロで40000ft以上まで上がるのは至難だ。過給器はまだ開発途中で不安定だし、故障も多い。空気も薄いからパイロットもそのままでは無事でいられない。そこへ到達するだけでも凄いことだと俺は思うが、そこから誰も経験したことのない、しかもレシプロ機には理論的に不可能と言われている音速に挑戦する。亜音速や超音速からの引き上げ操作が上手く行く保証なんてどこにもない。そんな命知らずが出来る奴を俺が気に入らないなんてことはあり得ない。もちろん気に入るに決まっている」ダンドリはそう断定してから付け加えた。「あんたになんと思われようともだ」
「何が言いたいの?」ルナは気圧されたように少し体を引いた。
「ここに写真が有る」ダンドリは棚の小さな引き出しを開けて、1枚の写真を取り出し、カウンターに置いた。そこには乗機をバックにルナの笑顔がアップで写っている。
「どこでこれを?」ルナが訊いた。
「任務を終えて一番ホッとした瞬間だ。意識はまったくこっちに向いていない。どうとでも撮れるさ」
「こんなもの・・・」ルナは突き放すように言った。
「実にいい表情をしていると思わないか?」
「ふざけたことを言わないでよ」
「ふざけているわけではない」ダンドリはカウンターを出ると「これをここに・・・」と壁の端に並んだ比較的新しい3枚のポートレートの横に彼女の写真を並べた。そして「張り出す許可をもらえないかな?」と彼女の顔を覗き込んだ。
「くだんない・・・」ルナは突然の申し出に戸惑った様子で言った。
「男共は概ね喜ぶものなんだ。何と言ったって男は、特にテストパイロットみたいな人種は、この世に何らかの記録を残したいと心のどこかで思っている。どうもそういうものらしい。だが、女がどんなふうに思うのか。ひょっとしたら嫌がるのか、その辺がわからなかった。だから一応聞いてみた。なにしろ始めてなんでね」
「女のテストパイロットがって事?」
「ああ、あんたが始めてさ」
「どうだろう・・・嬉しいという気持ちにはならないけど、嫌だとは思わなかった。女としてじゃなくて私が・・・だけど」
「じゃぁ、いいんだな?」
「テストパイロットはみんなこの世に何らかの記録を残したいと思っているんでしょう?」ルナは異を唱えなかった。
「わかった。だが、言っておかなくちゃならないことがある」
「まだ何かあるの?」
「さっきも言ったように、この壁に貼られている写真の中にテストパイロットは11人いるが、1人もこの世にはいない」ダンドリは壁に向かって言った。
「それがどうかしたの?」
「あんたの乗っている機体はプロメテウスの4号機だ」
「そうだけど?」
「プロメテウスの1号機から3号機までは失われている」
「そんなことはもちろん知っている」
「だったらどうやって失われたかは聞いてるな」
「当然よ。原因はバフェッティングによる制御不能や空中分解、そしてそれぞれの事故でパイロットがどうなったかまでね」
「その3人もここにいる」ダンドリは3枚のポートレートを次々と指した。「奴は命からがら脱出したが降りてきたときにはもう息をしていなかった。奴は引き上げが間に合わなくて地面に突き刺さった。奴は機体と一緒にバラバラになった」
「私もそう聞いている」
「プロメテウス計画は誰も見たことがない世界を目指している。あんたはその4人目の挑戦者ってわけだ」
「ここに貼られたパイロットはみんな失われるって?だから私も失われるって?そういうこと?」
「そうとは言ってないが、ここに貼る前に事実を伝えたかっただけだ」
「冗談じゃないわ。私は上手くやる」彼女はダンドリを見上げて頬笑んだ。「だって私はどうしてもあの先へ・・・誰も見たことがない世界へ行ってみたいんだもの」それ以外のすべてが満たされ、それ以外の何をも求めない笑顔だ。
「サインを・・・」ダンドリは彼女のポートレートとサインペンを彼女の前に置いた。
 ルナはサインペンのキャップを外し、ポートレートの隅にぎこちない手つきでLuna Hiccupとサインを入れた。
 ダンドリは何も言わず3人の写真の隣にルナのポートレートを貼り、その上段にルナの乗機の写真を貼った。着陸装置がせり出す直前のスマートなフォルムが美しい。壁に4人のポートレートと4機のテストプレーンの写真が誇らしげに並んだ。
「質問があるんだけど?」それを眺めながらルナが訊いた。
「なんなりと」カウンターに戻りながらダンドリが応える。
「さっき、ここに貼られているテストパイロットは1人もこの世にはいないって言ったわよね」
「ああ、確かにそう言った」
「あなたはどうなの?」
「俺はもうこの世にはいない」ダンドリはルナに背を向けると、グラスを磨き始めた。


2021.03.31
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