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Debris circus

Debris circus

頭の中に散らばっていた破片(debris)を改めて文章に書き起こし、オリジナルブログ小説としてサーカスの舞台に上げていきます。読みにくいものもありますが、お暇な時にパラパラとめくる感じででも読んでいただけたら嬉しいです……

 
★作品へのリンク!&お願い!
 
 

サクラサク

サクラサク-01

・・・といってももうそろそろ散りそめの段階に差し掛かっているのですが、この画像は満開の時のものです。
 今年は開花はやや早かったのですが、その後に寒気がやってきて満開までにけっこう長く楽しむことができました。

サクラサク-02

 せっかくですから、近場の綺麗に咲いているところ(全く無名のところですが)まで出掛けて行って、動画とピンナップを撮ってきましたのでUPしておこうと思います。
 動画は若干手ブレで目が回りそうですがお許しください。


見られない方はこちら(https://www.youtube.com/watch?time_continue=126&v=WOna4Ut9yis

 こうやって綺麗な桜を見上げていると、サキは後何回くらいこんなに良いコンディションで満開を見ることができるんだろう?なぁ~んてちょっと感傷的になってしまいます。
 そしてそんなつまらないことを考えながらゆっくりと桜の下を歩いていると、ふと、自分で書いた作品のワンシーンが浮かんできましたので、宣伝をかねて載せておきましょう。
 壊滅的な打撃を受けた人類が、ようやく復活を遂げようとしている世界、主人公はトロッコで物や人を運ぶことを生業にしている少女です。名前はトロといいます。
 

 トロッコはやがて築堤に差し掛かり、辺りは淡紅色の花でいっぱいになった。 トロが仕事の事前調査で調べたところによると、この先には接触点と呼ばれる地点があって、その周辺半径10キロが森になっている。
 暖かくなり始めたこの時期、この広大な森を構成する数え切れないほどの木々は、枝全体に一斉に花を付けていた。淡紅色で埋め尽くされた世界は、線路の真上だけに僅かに真っ青な空が覗いているが、まるで花のトンネルだ。幾千幾万の花はトロッコの動きに合わせて前方から後方へと流れ去り、1つ1つの花は滲み混ざり合い、淡紅色の幻想空間を作り出す。トロは前方を確認することも忘れてその光景に見入っていた。

物書きエスの気まぐれプロット9(接触点)より

 流れるような文章を書きたいんだけど、さっぱり上手く流れない。
 才能の無さをつくづく感じている今日この頃です。
 あたりまえかぁ・・・
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テーマ : つぶやき    ジャンル : 小説・文学
 
 

お菓子の国

これは2019年のエイプリルフール記事です。

 こんばんは、スミ(墨)と申します。4月1日から臨時にこのブログのAuthorを努めることになりました。サキはちょっと事情がありましてお休みです。
 急なのですが、ほんの暫くの間だと思いますので、お付き合いの程よろしくお願いいたします。
 このブログは広告を出さずに7年以上運営してきたのが自慢だったみたいなのですが、ついに出てしまいました。見苦しいから一刻も早く広告を消せ、というのがサキからの最初の指令です。
 ということで取り急ぎ、サキが記事に使うつもりでまとめていた写真を、PCのフォルダから掘り起こして掲載しようと思います。

 サキがどんな記事を書くつもりだったかといいますと、ちょうど一年前にサキが訪れたポルトガルの旅行記事なのですが、やはり天邪鬼ですね。素直に旅行記を書けばいいのに、フォルダの中はお菓子の写真ばかり、奴はお菓子で記事をまとめようとしていたんですよ。
 わたしはお土産話をいっぱい聞いていますし、少し補足のインタビューをすることもできたので、大体のところ上手くまとめることができたと思っていますが、いかがでしょうか?では記事をどうぞ。

 ちょうど1年前になりますが、サキは伊丹から羽田・フランクフルトを経由してまずポルトガルのポルトに入っています。
 サキがずうっと行きたかった町、ポルト。ザァッと雨が降ったりパァッと晴れたり、気まぐれな天候の中、自分の書いた作品の後追い取材も兼ねながら、リベイラ地区の町並みやガイア地区のワインセラーなど、町の中を精力的に歩き回ったようです。
 それでこの写真一枚かよ!
 ほんと天邪鬼だな!
ポルトのカフェ_Ovos molus
 これは「オヴォシュ・モレーシュ(Ovos molus)」というお菓子で、外観はまさに「最中」そのものなのですが、皮の中には餡の代わりに激甘の卵黄クリームが入っています。貝やワイン樽の形が面白いですね。サキはポルトのカフェとタイトルを付けていますが、話を聞くとコンビニのような感じの店のカウンターの上で見かけたのだそうです。

 この町のあとサキたちは北上して国境を越えてスペインに入り、サンティアゴデコンポステーラを訪れています・・・って、そこの写真も無しかよ!
 大聖堂のミサに参加したり、町を散策したり、楽しんだようですが、UP用のフォルダーにはここ関連の写真は一枚も入っていませんでした。奴は感動を素直に表現しませんので、後回しにしたのでしょうか。
 その後は南下して再びポルトガルに戻り、次に写真が登場するのは運河の町、ポルトガルのヴェニス(?)、アヴェベイロです。
 けっこうたくさんの写真が用意されていたのですが、中身はお菓子屋さんで見かけたお菓子の写真ばかりで、やはり町の写真は無しです。
アべイロのお菓子屋さん_PASTEL DE CôCo アべイロのお菓子屋さん1

アべイロのお菓子屋さん2 アべイロのお菓子屋さん3

アベイロのお菓子屋さん4 アベイロのお菓子屋さん5

アベイロのお菓子屋さん6

アベイロのお菓子屋さん7 アベイロのお菓子屋さん8

アベイロのお菓子屋さん9 アベイロのお菓子屋さん10

アベイロのお菓子屋さん11 アべイロのお菓子屋さん_Ovos molus

アベイロのお菓子屋さん_Ovos molus2 アベイロのお菓子屋さん_Ovos molus de Aveiro
 その中に箱入りの「オヴォシュ・モレーシュ(Ovos molus)」の写真がありますが、これはサキのミクシリーズとコラボして八少女夕さんが書かれたお話「黄金の枷・外伝 アヴェイロ、海の街 」の中でヒロインのミクが購入するお菓子の箱、そのままですね。ポルトへ戻る自動車の中でジョゼと2人で食べさせっこしたお菓子はこれです。たぶんサキはこれを見つけてメッチャ感動したんだと思います。

 次はポルトガル発祥の古都、ギラマンイスのお菓子屋さんですね。
 ここも町の写真は一切無しかよ!巨石を抱え込んだ古城とか、古い町並みとか、いろいろあっただろう?
 この町で見かけたお菓子はネームカードが付いているで名前がわかります。話題に上げるつもりだったようで、ファイル名にお菓子の名前が入っています。写真に付けておきますので、興味のある方はご参考まで。

ギマランイスのお菓子屋さん_Douradinhas de Guimaràes ギマランイスのお菓子屋さん_Pastèis de nata
Douradinhas de Guimaràes                   Pastèis de nata

ギマランイスのお菓子屋さん_Tortas de Guimaràes ギマランイスのお菓子屋さん_Toucinho-do-cèu de Guimaràes
Tortas de Guimaràes                      Toucinho-do-cèu de Guimaràes

 さてその次に訪れたのは世界最古の大学の1つ、コインブラ大学ある町、コインブラですね。
 いろんなお菓子が並んでいますが、一番下の段の袋入りのお菓子は金平糖だそうです。
 これはお土産の中に入っていましたが、形は日本のものよりだいぶ精度が悪いですね。。
 でもここも町を巡って、大学の見学もしたんだろ?

コインブラのお菓子屋さん1 コインブラのお菓子屋さん2

 お、たった1枚のお菓子以外の写真がありました。コインブラ大学のキャンパスで見かけたカップルだそうです。この黒いマントの2人、ハリーポッターのワンシーンみたいですね。

コインブラ大学のカップル

 次はずっと南に下ってシントラです。他にも幾つか町を巡っているはずですが、お菓子の写真は撮れなかったのでしょう。
 シントラはポルトガル王室の夏の離宮だった城のある町で、離宮の中も見学したはずですが、やはり写真は無しです。
 ここでもお菓子屋さん「Piriquita(ピリキータ)」に連れて行ってもらったみたいで、そのお店の写真です。
 けっこう有名な店なのかとても混んでいて、整理券発行機で整理券を取って、番号がモニターに表示されたら商品を選ぶというシステムだったそうです。
シントラのお菓子屋さんピリキータ シントラのお菓子屋さん整理券発行機
シントラのお菓子屋さんピリキータ                整理券発行機

シントラのお菓子屋さん1
 ここの名物はこの「ケイジャーダ(上段左側)」。

シントラのお菓子屋さん2
 そしてもう1つの評判のお菓子は「Travesseiro(トラヴェセイロ)」、下の段の1個だけ残ってるやつだそうです。
 上段のも美味しそうだけどこれはなんて言うお菓子だろう?

 味は?「どちらも美味しかった」としか書いてないですね・・・。

 最後は首都のリスボンに立ち寄っています。
 ここの写真もお菓子関連しかありませんが、ベレンの搭からジェロニモス修道院を巡った後(定番のコースですね)、このお菓子屋さん「パステイス・デ・ベレン」に立ち寄ったみたいです。ここもけっこう有名みたいで観光客でいっぱいだったようです。

リスボンのお菓子屋さん_パステイス・デ・ベレン リスボンのお菓子屋さん_パステイス・デ・ベレン_Pastèis de nata
 もちろん、ここでは「Pasteis de nata(パステイス・デ・ナタ)」を食べていますね。
リスボンのお菓子屋さん_パステイス・デ・ベレンの工房
パステイス・デ・ベレンの工房

 味は?「美味しかった」ですか・・・。
 後の2枚はリスボン市内をぶらぶらした時にフィゲイラ広場あたりで撮影したと言ってました。
リスボンのお菓子屋さん1 リスボンのお菓子屋さん2

 ポルトガルってまるでお菓子の国だなぁ・・・そんな印象を持ったスミでした。

 きっと美味しかったと思うんだけれど、これだけのお菓子を奴に食わせても、その価値のどれだけを感じることができたのか、レポーターとしては失格ものだったんじゃないの?
 だっておみやげ物の山の中にはチーズ(塊やらスライスやら)とイワシやタコや貝やらの海産物の油漬け缶詰がたくさん、それにワインが規定いっぱい入っていたんですから。
 そんなに飲めるわけでもないのにね。

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物書きエスの気まぐれプロット エニフ(仮)

scriviamo! この作品は八少女夕さんの「scriviamo! 2019」参加作品です。

エニフ(仮)パイロットストーリー

 エニフは鏡の中の自分を見つめてため息をついた。
 美人とはとても言いがたい。
 髪は真っ直ぐで真っ黒だし、しかも彼の命令で肩の位置で醜く切られてしまっている。
 鼻は小さくて低く、縦よりも横幅の方が大きいぐらいだ。
 唇は薄くて小さく、黒目がちの大きな目は全体のバランスを大いに崩している。
 おまけに浅黒い肌、痩せっぽちで胸も小さくて、その上チビで・・・何もかもが気に食わない。
 彼・・・王には14人の妻、すなわち正室と13人の側室が仕えているが、正室と12位までの側室は、ウェーブした長い髪、縦長の高い鼻、つややかな唇、吸い込まれるような薄い色の瞳、白くて滑らかな肌、均整の取れた四肢と豊かな胸・・・みんなが見とれるほどに美しい。
 自分は13人目の側室なのに、それらのアイテムはどれ1つとして持ち合わせていない。
「それなのにどうして・・・」エニフは小さくつぶやくと、またため息をついた。

 エニフは首都から遠く離れた地方で、第3層民の農民だった両親のもとに生まれた。治世の安定した平和な時代だった。大自然の中で両親の愛情を一身に受けて育ち、この世界の王の寵愛を受けて王の子を産みたいなどと、その時代の女の子にはありがちな夢を抱く、穏やかで、争いごとが嫌いな、どうということの無い普通の少女だった。そしてそんな夢は叶うはずが無い、誰もがそう考えるように、彼女もそう考えていた。彼女は第3層民だった上に、その時代で言う美人でもなかったからだ。
 だが、安定した平和な時代は終わりを告げ、混乱と戦の時代が始まった。運命は常識をはるかに超えて彼女を翻弄した。

 ここはアスピディスケ地方、アルギエバ戦線区、要するにアルギエバ制圧戦の最前線、陣地の中央に作られた10張りの大型テントのうちの1張りの中だ。
 アルギエバは豊かな土地だ。征服すればその地方を含め膨大な領土を得ることができ、その経済効果は計り知れないものがあった。
 王の軍隊の戦力は圧倒的で、当初は威圧するだけで制圧できるいう見方が大勢だった。そのため、王は自身の威信を高めることもできると踏んで、この戦に自らが出陣した。
 いかに王がこの戦を甘く見ていたかがよくわかるが、正室と出産を控えた側室を除いてなんと10人もの側室を帯同させたのだ。10張りの大型テントは帯同させた側室それぞれのためのものだ。
 王は陣地に設けられた王座に鎮座し、夜には10張りのテントを巡りながら戦いを後方から眺めていれば、すべては自分の手中に納まると考えていた。
 だが、思いのほか抵抗勢力の反発は激しく、戦線は膠着し長期戦の様相になった。
 思うように戦況は展開せず、一時は陣地目前にまで敵軍が接近する事態にまで陥った。
 危険を感じた臣下たちは側室や女官たちを次々と戦線から脱出させ、最後にエニフだけを残した。
 彼女は第3層民の出身だったから身の回りのことは1人でできたし、万が一のことがあっても大きな問題にならないということもあったが、彼女だけは残せという王の命令でもあったと聞かされている。
 いまや王の傍に仕える女はエニフと王付きの数名の女官だけになった。
 彼女はできれば他の側室たちと一緒に前線を去りたかったが、1人だけ残せというのが王の望みならばと覚悟を決めていたし、1人残れば王の愛を一身に受けられるのではという思惑もあった。

「エニフ!エニフ!」王の声だ。
「はい」エニフは鏡の前から立ち上がり、急いで入り口の方へ向かった。
 入り口の布を跳ね上げて王が入ってくる。付いている者はいない。
 このテントには王かエニフが呼ばない限りだれも入ってこないから、今は本当に2人だけということになる。
 エニフが走り寄ると王は彼女の小さな体を抱きしめた。
「今日はもうよろしいのですか?」エニフは王の胸に顔を埋めて小さな声で言う。
「よい。軍議も終わらせた。あとはお前だけだ」
「あの、湯浴みは・・・」エニフはすでに済ませている。
「よい、お前はあまり気にならんのだろう?」
「はい」高貴な生まれの正室や第1層第2層の側室たちはとても気にするが、エニフは第3層出身だ。そんなに上品にできてはいない。
 王はエニフを閨へと誘った。

 +++

 エニフはそっと目を開けた。
 何度か絶頂へ導かれたが、王もやはり疲れていたようだ。いつに間にか眠ってしまい、それにつられて自分も眠りに落ちたようだ。
 エニフは寄り添おうとそちらへ体を向けたが、そこは空洞だった。
 あわてて少し体を起こして様子を伺う。
 辺りはすっかり暗くなっていて、隣の部屋との境の布から明かりが漏れている。
 エニフはゆっくりとそちらへ歩いていき、境の布を上げた。
「エニフか?」王がこちらを見た。ゆらゆらとうごめく灯りの中に王の厳しい顔が浮かんでいる。
 部屋の床には大きな白い布が広げられ、そこに幾つもの模様や図が描かれている。さらにその図の上には、赤と青の様々な形をした駒が幾つも置かれている。
「何をなさっていたのですか?」エニフは近づきながら尋ねた。
「戦の段取りをな・・・やってみると面白いものだぞ」
「そうなのですか?」
「ここはわが軍の本陣だ。そしてここはアルギエバの本陣だ」王はそれぞれの駒の説明から始め、白い布に描かれた地形を説明し、昨日の軍議で決めた作戦のシュミレーションを展開して見せた。
「どうだ、こうやってわが軍は勝利するのだ。面白いものだろう?」
 エニフはだまってその様子を見ていたがやがて口を開いた。
「もう一度最初から見せていただけますか?」
「面白いか!よし」王はもう一度はじめからシュミレーションを展開して見せた。
 エニフはやはり黙ってみていたが、やがてまた「もう一度最初から見せていただけますか?」と言った。
 王は驚いた表情と、疲れた表情を同時に見せたが、それでも「よし」ともう一度シュミレーションを展開した。
 だがエニフが「もう一度最初から見せていただけますか?」と言った時には少し怒りの表情を見せた。
「そんなに面白いのか?だが余もそんなに暇ではない。もう一度だけだぞ」
 怪訝な表情で王はもう一度シュミレーションを始めたが、「待ってください」というエニフの声で動きを止め、彼女のほうへ顔を上げた。
 エニフは白い布の上に並べられた駒をじっと見つめていたが、やがて「この駒がこう動いたらどうなりますか?」と1つの駒を動かした。
 王の動きが止まった。
 王もじっとその駒を見つめる。
「ここをその勢力で一気に衝かれると、西側の翼がもがれる」
「こちらの駒があらかじめこう回り込んで、ここで待ち伏せをするとしたら・・・」
「・・・」王は黙っている。
「申し訳ありません・・・」エニフは深く頭を下げて後ずさりをした。
「いや、かまわん!かまわんぞ!エニフ」思いのほか明るい声が返ってきた。
「は?」エニフは恐る恐る顔を上げた。
「エニフ、余の隣に座るのだ。もう一度始めからやり直してみよう」
 ゆらゆらとうごめく灯りの中で、王の顔は輝きを取り戻していた。


「でも、なに?このタイトル。“仮”が付いているし、それに“パイロットストーリー”って?」コハクがモニターから顔を上げた。
「なにってそのままだよ。ヒロインの名前がまだちゃんと決まってないんだ。だから“仮”」エスは慌てたように説明する。
「で、この“パイロットストーリー”ってのは?」コハクは疑問がいっぱいという顔だ。
「この物語はね、長編として構想したものなんだ。だから、どうかなぁ?って感じでチラッと雰囲気だけを書いてあるわけ。だからパイロット。それで長編として書き始めてもいいか判断してもらおうと思って」
「誰に?それにあなたの書き方は、最初から順番に書かないと書けないんじゃなかったっけ?」
「そうなんだけど、この作品だけは例外、短いものだけどプロットがあるんだ」
「へぇ!珍しい。いつも行き当たりばったりで書いてるのに、そんなこともあるんだ。そのプロットは見ちゃだめ?」
「だめ!!!というかそれを見せちゃったら、こっちの楽しみがなくなるもの」
「エニフについては聞かせてもらえるの?」
「少しだけだったら・・・」
 その時、コーヒーメーカーがプシュ~ッと音を立てた。ドリップが終わった合図だ。
 コハクは立ち上がってキッチンへ向かった。

 ***

「で?」コーヒーカップを両手に持って戻ってきたコハクがその先を促す。
「エニフっていうのは星の名前で、“鼻”をあらわすアラビア語が元になってるらしいんだ」
「そんな解説を求めてるんじゃない」コハクは少し語気を強めた。
「ごめん。じゃ、ちゃんと話すね」エスはコーヒーにそっと口をつけた。
「物語は激しい殺戮の夢からヒロインが目覚めるシーンから始まるの」
「お、インパクトあるね」コハクもコーヒーを飲んだ。
「王宮の下働きとして働いていたエニフは、小さい頃から、王の寵愛を受けて王の子を産みたいっていう、その時代の女の子にはありがちな夢を抱く、穏やかで、争いごとが嫌いな、どうということの無い普通の少女だったの。
「彼女の性格については書いてあったね」コハクはなるほどという表情だ。
「パイロットストーリーだから設定も書き込まなくちゃいけないから、ちょっと詰め込みすぎになったかもね」
「エニフの容姿も書き込んであるけど、彼女って今で言うと可愛い系?」
「どうだろう?ま、艶麗な美女ではなかったのは確かだね。だから、もちろんそんな夢は叶うはずは無いとわかってるんだよ。自分は醜いと思ってるから。でもね、信じられないことに、彼女は王の目に留まり、その夢が現実になっていくの」
「王様も濃い味付けばかりで飽きちゃって、エニフみたいなのが新鮮に映ったんだ」コハクは楽しそうだ。
「パイロットストーリーではそうなった後のシーンを書いたんだけど、ここから彼女の本質が暴かれていくんだ」
「というと?」
「エニフは戦術を立てることが得意だったの、まるで戦争の神のように・・・」
「マールス?あのシュミレーションのシーンが始まりだね」
「やがて彼女は側室としてだけでなく、戦争アドバイザーのような立場でも王に仕えていくようになるの。穏やかな性格の彼女は争い事は嫌いなんだけど、王の事は愛しているから、王に求められればアドバイスを止めることはできない。そして王は軍議でそれを自分の考えとして発言するの。あくまで戦争は王が行い、彼女は助言を与えるだけの影のような立場なの。でもその助言は的確なんだ」
「ほほう」コハクが感心したような声を出したのは、ストーリーとしてある程度纏まっているからだろう。
「王は変わられた・・・これまで王の指揮に懐疑的だった将軍たちの評価も変わっていくの。王の役に立つことは至上の喜び、彼女は出し惜しみなくアドバイスを与えて何度も戦争を勝利に導き、ますますその立場を離れられなくなっていく・・・。戦いに勝利するたびに大勢の敵味方が戦死し、やがて自分の立てた戦略のせいで親しい友人や両親までもを失ってしまう・・・彼女は王の軍師としての自分と本来の自分との間で引き裂かれて行く・・・そんな感じかな」
「それから?」
「これ以上は無理!もうしゃべらないよ。で、どうかな?進めてもいいかな?」エスは口角を上げる。
「え?何でそんなことを私に訊くの?」
「だって、そのためのパイロットストーリーだし、そのために呼んだんだし」
 なんてこったい、そういう面持ちでコハクはため息をついた。
「これ、マリアには見せたの?」
「もちろん翻訳して送ったよ。これウェブ小説コンテストの異世界物企画に参加するために書いてるから意見を聞いておきたいんだ」
「異世界物企画?マリアはなんて言ってたの?」
「まだ返事は返ってきてない。マリアも参加するから自分の創作で忙しいと思うんだ。だからとりあえず・・・」
「とりあえず?」コハクはエスの顔を覗き込む。
「ううん、まず、コハクの意見を・・・」エスは慌てて言い直す。
 コハクは諦めの顔になって言った。
「私でいいの?」
「うん!」エスは大きな目をコハクに向ける。
「素人の意見だよ。かまわないの?」
「お願い!!」エスはお願いの顔をした。
「しょうがないなぁ。でも、その前に・・・」コハクは空のコップを持つとキッチンへ向かった。

 おしまい


2019.02.17

追記と解説へ続く(読んでね!)
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「エニフ(仮)」追記と解説

 この作中作「エニフ(仮)」は「サキの気まぐれポロット?」の中に出てきた“サキが夢の中で体験した物語”のパイロットストーリーです。
 パイロットストーリーって、ほら、映画や番組を作るときにスポンサーやプロデューサーたちに、どんな感じの作品なのかを見てもらうために作られる、パイロットフィルムってあるじゃないですか。それの小説版という設定です。
 しかも“仮”。夢の中ではちゃんと名前があったヒロインなのですが、寝起きに忘れてしまったので、作中では仮名になっています。
 書いていて馴染んできたのでエニフでもかまわないんですけれどね。
 鼻ちゃんですけど。
 そしてこの作品、作中でコハクやマリアがどんな判断を下したかは今のところわかりませんが(マリアやコハクに見せているということはダイスケの推敲は受けています)現実世界ではまず完成することはありません。
 長い物語ですし、古い時代のヨーロッパをイメージした舞台設定にもまったく理解がありません。
 もちろん異世界ですから設定はどうとでもなりますが、それにしても知識が必要です。戦争を盛り込まなくてはいけませんからそっちの方面の知識も欲しいですし、戦略なんかも想像だけでは難しいと思います。今回も2・3行書くだけでもう不自然に感じています。
 ということで「無理」と判断しています。
 でも、せっかくサキにしては珍しいプロットができたんです。
 このままお蔵入りとしてしまうには忍びなくて、ここにワンシーンだけですがパイロットストーリーということして登場させました。
 そしてまたずうずうしいお願いなのですが、この作品を八少女夕さんの「scriviamo! 2019」参加作品とさせていただきます。
 2作品目ですが参加数に制限は無いようなので。
 夕さんごめんなさい。

 そして最後に補足です。
 サキがこの作品を書いている最中に、夕さんのscriviamo!作品『あの日、庭苑で』がUPされたんですが、それを読ませていただいて驚きました。なんとどちらもヒロインが鏡を覗き込んでいるシーンから始まっているじゃないですか。
 またシンクロしてしてた~というお話でした。

 サキの自己満足作品、読んでいただいてありがとうございました。

 本編に戻る

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新世界から(番外)

Habitat

 眼下は一面の雲だった。
 性質の異なる空気の境界面がそこにあるのだろう。
 柔らかそうで優しげなその境界は、真下は真っ白、地平線に近づくにつれて灰色味を増しながら、目視できる範囲の彼方まで拡がっている。
 その遙か下は海面のはずだが、雲は隙間無く広がっていて見えることは無い。

 42式高速偵察機は、その高速に特化されたスマートなシルエットを雲の表面に投影しながら、巡航速度で飛行を続けている。
 涙滴型のナセルに覆われた2機の二重星形エンジンは軽快な音を響かせて自らが順調であることを示唆し、それと同時に最高出力までの余裕を感じさせている。
 すべては順調だ。
 ズイキは進行方向に向けていた目を、一瞬オドメーターとプレッシャーゲージにやってから、再び進行方向に戻した。

 終戦協定は二ヶ月前に締結され、長く続いた大戦はようやく終結を迎えた。
 戦勝国となったイルマは、自国周辺での支配を確定的にするため、西域での軍の撤収を優先的に進めようとしていた。西域の軍備を解いて東域に再配備することによって、軍備の集約と軍事費の削減を図ったのだ。戦勝国同士の諍いで本国の国境線にきな臭い煙が上がり始め、遠く離れた地域に軍備を裂いている余裕は無くなっていた。
 そんな状況の中でズイキに与えられた任務は、この機体を西域の最前線基地から同盟国にある拠点基地まで撤収させることだった。
 この高速偵察機は名前の通り他に類を見ないほど高速で、敵機はおろか友軍の戦闘機でもこれに追いつける機体は存在しない。航続距離も充分で、機体やエンジンも非常に安定している。普通に考えればたやすい任務と言えるだろう。
 だがそれはすべてが順調に推移した場合のことだ。トラブルの発生や、未知の敵の存在は完全には否定できない。まだ世界は終戦の混乱の中にあるのだ。
 西域戦線でのエース級パイロットであったズイキがこの回航の任務に選ばれたのは、司令部がこの最新鋭の機体を失いたくないという思いでいることを物語っていた。

 ズイキの目が左側を向いたまま固定された。
 遠方の雲の中に何かを見つけたのだ。
 ぼんやりと現れた黒い影は徐々に大きくなり、形もはっきりし始めた。
『戦闘機か?』ズイキはスロットルを少し引いて機速を上げた。
 やがてそれは雲の中から姿を現した。やはり戦闘機だ。機体後部にプロペラを持つ単発機でライトブルーに塗装されている。見たことのない機種だったが、敵機に分類されるマークを付けている。識別信号は発していない。
 並行に飛行していて、今のところ敵意は無さそうだ。
 ズイキはフルスロットルに入れた。
 振り切れると予想していたのだが、相手も速度を上げ2機の間隔は徐々に詰まってくる。
『付いてこれるのか?』ズイキは諦めて巡航速度まで速度を落とした。いくら航続距離に余裕があるとはいえ、出来れば余計な燃料は使いたくなかったし、いまだに対象に攻撃の意図は感じられなかったからだ。
 機体はいよいよ接近し、パイロットの姿が見えるようになった。
 パイロットは顔の横に手を上げ、指で形を作った。無線機の出力を最低にしろと言っているようだ。
 ズイキは了解の合図を送って、出力を最低にして無線機のスイッチを入れた。
 ザ・・・ノイズに混じって声が入ってくる。
「ファーキンだな?」女の声だ。
「何故わかる?」ズイキは自分のコードネームを呼ばれて驚いた。
「お前たちの暗号を解読するのにそんなに時間は必要ない。それに戦勝に浮かれて弛んでいるからな。行動はすべて筒抜けだ」
 ズイキの顔は苦笑いになった。確かに軍規は緩んでいるように感じていたのだ。
 機体は更に接近する。そしてお互いの主翼に僅か30センチほどの隙間を空けただけの編隊飛行になった。巡航速度でこの間隔を保ったままの飛行を続けられるテクニックは、このパイロットがただ者ではないことを示している。
「オッドアイか?」ズイキは確信を持って訊く。西域戦線での敵側エースパイロットのコードネームだ。
「ふふ・・・何故わかる?」相手は同じ言葉で返してくる。
「どうしてだろう?」ズイキは自分に問いかけるように答えた。
「もう乗らないのか?」オッドアイが突然訊いてきた。
「戦闘機にか?」
「そうだ。その機体は速いが、自由には飛べない」
「戦争は終わった。潮時だろう?」
「飛びたいとは思わないのか?」
「飛びたいとは思うが、人殺しはもう止めようと思う」
「人には3つ必要なものがある。なんだかわかるか?」オッドアイは唐突に話を変えた。
「さあね・・・」
「居場所と役割そして死に場所だ・・・」
「なんだそれ」ズイキは苦笑を漏らした。
「お前はこの戦争で居場所と役割を得ていた」
 確かにそうだった。ズイキは空軍に居場所を得、エースパイロットとしての役割を担った。
「後は死に場所を探していればそれでよかったのだ」
 そうだったのかもしれない。ズイキは思った。
「だが戦争が終わった今、お前はすべてを失った・・・」
「オッドアイ、それはお互い様じゃないのか?」ズイキが問いかける。
「そうだな。だが私にとってはまだ戦争は終わっていなかった。だから私は今日ここでお前と一戦交えるつもりだった。そうすればここがどちらかの死に場所になる」
「勘弁願いたいな」
「心配するな。お前がその機体を操縦していた時点で作戦は放棄された。そして私もすべてを失ったのだ」
「お互いにその3つの必要なものとやらを探さなければならなくなったというわけか?」
「そうだ、だが私はまだ自由に飛ぶことをあきらめたわけではない。そしてファーキン、お前と戦うことも・・・」
「そう思うことは勝手だが、アタシはアタシのやり方でやる。自由に飛べなくても良い、人殺しはもうごめんだ」
「そうかな?」オッドアイはそう言葉を発した瞬間、機体をロールさせて反転し、背面飛行でコックピットを対面させた。真上、1メートル程の距離を置いてキャノピー越しにオッドアイの顔がある。
 彼女はバイザーを上げた。バイザーの下からは、サファイアのような青い左目と、ルビーのような真紅の右目が現れた。雪のように白い顔には、まだ少女のようなあどけなさが残っている。僅かに覗いた髪はパールホワイトだ。
『本当にオッドアイなんだ』ズイキはイメージと全く異なる顔に一瞬たじろいだ。高度が下がりオッドアイの顔が遠ざかる。
「顔を見せろ」オッドアイが要求する。
 ファーキンもバイザーをあげて機体の間隔を戻す。
 暫くの間対面飛行が続く。
「その顔は永遠に忘れないぞ」オッドアイは背面のまま機体を上昇させると大きくロールさせ、そのままズイキの側方をダイブした。
「また会おう」
 たちまち機体は雲の中に消えた。


2019.02.12

追記と解説へ続く(読んでね!)
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プロフィール
こんにちは!サーカスへようこそ! 二人の左紀、サキと先が共同でブログを作っています。

山西 左紀

Author:山西 左紀
「山西 左紀について知りたい方はこちら」
(ニコニコ静画フリーアイコンより)

ようこそ!


頂き物のイラスト

アスタリスクのパイロット、アルマク。キルケさんに書いていただいたイラストです。
ラグランジア
左からシスカ、サヤカ(コトリ)、サエ。ユズキさんにイラストを描いていただきました~。掌編「1006(ラグランジア)」の1シーンです。
天使のささやき_limeさん2
limeさんのイラストをイメージにSSを書いてみました。「ダイヤモンド・ダスト」
イラストをクリックすると記事に飛びます。よろしければご覧くださいネ!
スカイさんシスカイメージ
スカイさんのシスカイメージ
シスカ・イメージ高橋月子さん作
シスカ・イメージ 高橋月子さん作
シスカ・イメージlimeさん作
シスカ・イメージ limeさん作 コトリ・イメージユズキさん作
コトリ(コンステレーションにて)ユズキさん作
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